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法規 ・ 5 / 12

保安規程と電気主任技術者の選任義務

読み終えると、こうなる

「この設備なら第三種の免状で担当できるか」を、電圧と発電所の出力の両面から自分で判断できるようになる

  • 電気事業法上、設置者が負う保安規程の届出義務と主任技術者の選任義務、それぞれの根拠条文を挙げられる
  • 第一種・第二種・第三種、それぞれの電気主任技術者免状が保安の監督を行える事業用電気工作物の範囲を言える
  • 電圧の条件だけでなく、発電所の出力による除外規定まで含めて、第三種免状の守備範囲を判断できる
  • 主任技術者に電気事業法が課す2つの職務規定——保安の監督を誠実に行う義務(43条3項)と、工事・維持・運用に従事する者が主任技術者の指示に従う義務(43条4項)——を、選任義務(43条1項)と区別して説明できる
考えてみよう

電験三種(第三種電気主任技術者)に合格すると、電気主任技術者として現場に立てるようになる。だが、その資格には上限がある。合格した本人が「どこまでの設備を担当してよいのか」は、実は免状の種類そのものに明記されている。

電圧が同じ高圧受電設備でも、担当できる/できないの境界線が引かれることがある。その境界線はどこにあるのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電験三種の免状で担当できる設備の範囲を、電圧と出力の両面から自分で判断できるようになっている。

答えの鍵は、電気事業法が事業用電気工作物の設置者に課す2つの義務——保安規程と主任技術者の選任——と、主任技術者免状の種類ごとに定められた守備範囲にある。

設置者の義務 — 保安規程と主任技術者選任

事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く)の設置者は、保安を一体的に確保する組織ごとに保安規程を定め、使用開始「前」に主務大臣(経済産業大臣)に届け出なければならない(電気事業法42条1項)。ここで重要なのは、これが「認可」ではなく「届出」だということだ。 国が保安規程の中身を事前に審査して許可を与える制度ではなく、設置者が自ら保安体制を作り、その内容を国に知らせる仕組みになっている。届け出た保安規程が不十分だと主務大臣が判断すれば、変更を命じることができる。

もう1つの柱が主任技術者だ。設置者は、主任技術者免状の交付を受けている者から主任技術者を選任しなければならない(43条1項)。この免状は経済産業大臣系の制度で、都道府県知事が交付する電気工事士免状とは別系統になる。

選任した後も続く義務 — 誠実義務と、指示に従う義務

主任技術者を選任すれば、電気事業法上の義務がそこで終わるわけではない。43条には、選任義務(1項)に続けて、主任技術者本人と、その現場で働く他の作業者、それぞれに向けた別々の義務が定められている。

  • 主任技術者自身の誠実義務(43条3項) — 主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない
  • 工事等に従事する者の指示従属義務(43条4項) — 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない
この2つの条文は、義務を負う「主語」が違う。43条3項は主任技術者**自身**に向けた義務(誠実に監督せよ)、43条4項は主任技術者**以外**の作業者に向けた義務(主任技術者の指示に従え)だ。「主任技術者を選任すること」(1項)と「選任された主任技術者が何をすべきか・現場の他の人間がどう動くべきか」(3項・4項)は、別の条項として積み重なっている。43条という1つの条文の中に、設置者・主任技術者・現場の作業者という3者それぞれへの義務が並んでいる、と捉えると全体像が見える。

現場で高圧設備の作業手順を変更するかどうかは、担当者の裁量ではなく、保安の監督者である主任技術者の判断を優先させる仕組みになっている。これは主任技術者の権限を強めるための規定というより、保安の監督責任の所在を1点に集約し、現場の判断がばらつくことで事故につながるのを防ぐための仕組みだ。

免状の種類と守備範囲 — 上位が下位を包含する入れ子構造

主任技術者免状は第一種・第二種・第三種の3区分に分かれ、それぞれ保安の監督を行える事業用電気工作物の範囲が異なる(電気事業法施行規則 別表第2)。

免状の種類保安の監督を行える範囲
第一種電気主任技術者すべての事業用電気工作物
第二種電気主任技術者電圧17万V未満の事業用電気工作物
第三種電気主任技術者電圧5万V未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所を除く)
この範囲は「別々の設備を分担する」構図ではなく、**上位の免状が下位の範囲を包含する入れ子構造**になっている。第一種の免状を持つ者は、6.6kVの高圧受電設備も含め、あらゆる事業用電気工作物を監督できる。免状の種類は「できることが増えていく上位互換」であって、担当分野が横に分かれているわけではない。

第三種の範囲には、電圧の条件に加えてもう1つ、見落としやすい条件が付いている。「出力5,000kW以上の発電所を除く」という除外規定だ。電圧が5万V未満であっても、対象が出力5,000kW以上の発電所であれば、第三種免状では保安の監督を行えない。電圧だけを見て判断すると、この除外規定を取りこぼしやすい。

なお、一定規模以下の事業用電気工作物については、主任技術者を選任せず、外部の電気管理技術者等に保安管理業務を委託できる制度(外部委託承認制度)もある。対象となる設備の規模や要件は細かく定められているため、実際の該当性は経済産業省・産業保安監督部が公表する最新の関係規程で確認する必要がある。

電材商社の現場で、この境界線がどう効いてくるか

自家用電気工作物を持つ需要家と話していると、「うちの設備は誰が主任技術者になれるのか」という相談は珍しくない。高圧受電設備(多くは6.6kV)を持つだけの需要家であれば、第三種の範囲で完結する。だが構内に自家発電設備を持ち、その出力が5,000kWに達するような大口需要家では、第三種の免状だけでは保安の監督者として選任できない。設備更新やキュービクルの増設を提案するとき、電圧の数字だけでなく、構内に発電設備があるか・その出力はどれくらいかまで確認する視点があると、主任技術者の選任という顧客側の実務にも踏み込んだ提案ができる。

「電圧だけ見て判断しない」という姿勢は、絶縁耐力試験の倍率選び(最大使用電圧が7,000Vを超えるかどうかで倍率が変わる)とも共通する発想だ。法規の数値基準は、単一の条件だけでなく、複数の条件の組み合わせで区分されていることが多い。

冒頭の疑問、電験三種の免状で担当できる設備の境界線はどこにあるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 電気主任技術者免状の種類による範囲を「電圧の上限」だけで覚え、出力による除外規定を見落とす

    なぜ引っかかる「電圧5万V未満」という条件のインパクトが強く、その後に付く「出力5,000kW以上の発電所を除く」という除外規定が付帯条件として抜け落ちやすい

    見破り方第三種の範囲を答える設問では、電圧の条件と発電所の出力の条件を必ずセットで確認する。電圧が範囲内に収まっていても、発電所の出力次第で対象から外れることがある

  2. 保安規程の届出を「認可」だと思い込む

    なぜ引っかかる重要な保安体制の書類だと聞くと、国が内容を審査して許可する手続きだと連想しやすい

    見破り方条文の言葉が『届出』であることを確認する。設置者が自ら定めて知らせる制度であり、国が事前に細部を審査して許可を出す認可制ではない

  3. 第三種免状で監督できる範囲を「その免状でしか監督できない」と誤解し、上位の免状保有者は低い電圧の設備を監督できないと思い込む

    なぜ引っかかる免状の種類ごとに、別々の設備が割り当てられていると誤解しやすい

    見破り方免状の範囲は、上位(第一種)が下位(第二種・第三種)を包含する入れ子構造になっている、と確認する。第一種免状保有者は、高圧受電設備を含むあらゆる事業用電気工作物を監督できる

  4. 主任技術者の職務を「選任されて終わり」だと捉え、選任後に働く誠実義務・指示従属義務を見落とす

    なぜ引っかかる43条1項の選任義務のインパクトが強く、その後に続く43条3項・4項の職務規定を『同じ選任の話の続き』程度に軽く読み流してしまいやすい

    見破り方43条は1項(選任義務・設置者が負う)、3項(誠実義務・主任技術者自身が負う)、4項(指示従属義務・工事等に従事する他の者が負う)というように、義務の主語が条項ごとに変わっていくと整理する。『誰が、何を』守るべき条文かを条項番号とセットで確認する

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 事業用電気工作物(小規模事業用を除く)の設置者は保安規程を定め、使用開始前に主務大臣(経済産業大臣)に届け出る(電気事業法42条1項)。これは認可ではなく届出
  2. 設置者は主任技術者免状の交付を受けている者から主任技術者を選任しなければならない(43条1項)
  3. 第一種電気主任技術者免状はすべての事業用電気工作物、第二種は電圧17万V未満、第三種は電圧5万V未満の事業用電気工作物(出力5,000kW以上の発電所を除く)が対象(電気事業法施行規則 別表第2)
  4. 免状の範囲は入れ子構造で、上位の免状(第一種)は下位(第二種・第三種)の範囲を包含する
  5. 一定規模以下の事業用電気工作物には、主任技術者を選任せず外部委託できる制度がある。対象範囲・要件は最新の関係規程で確認する
  6. 主任技術者を選任すれば義務が完結するわけではない。選任後は、主任技術者自身が保安の監督の職務を誠実に行う義務(43条3項)と、その事業用電気工作物の工事・維持・運用に従事する他の者が主任技術者の指示に従う義務(43条4項)という、2つの職務規定が働き続ける
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