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需要率・不等率・負荷率の計算

読み終えると、こうなる

配電盤や変電設備の容量が、なぜ単純な足し算より小さく設計されているかを、需要率・不等率という2つの数字で説明できるようになる

  • 設備容量と需要率から個々の需要家(または設備群)の最大需要電力を計算し、複数の需要家(設備群)の最大需要電力と不等率から合成最大需要電力を計算できる。また『正時からの30分間平均使用電力』という最大需要電力(デマンド)の定義に基づき、目標値を超えないために必要な負荷抑制量を計算できる
  • 平均需要電力と最大需要電力から負荷率を計算し、設備稼働の効率を評価できる
  • 需要率・不等率・負荷率の3つの指標を混同せず、それぞれの分母・分子を正しく使い分けられる
  • 配電線路の抵抗・リアクタンス・負荷電流・力率から、電圧降下の近似式で電圧降下を計算し、力率改善が電圧降下を小さくする方向に働く理由を説明できる
考えてみよう

ある工場に、電動機やヒーターなど、定格容量を単純に合計すると500kWにもなる設備が並んでいる。 だが、実際にこの工場が契約している電力は300kWしかない。契約電力を超えたら大問題のはずなのに、 なぜこの工場は何事もなく動き続けていられるのか。

答えの手がかりは「すべての機器が同時にフル稼働することは、実務上ほとんどない」という一点にある。 この「同時には使わない」という事実を、どうやって数値として容量設計に織り込むのか。

このトピックを読み終えるころには、工場や受変電設備の容量が、なぜ単純な足し算より 小さく設計されているかを、需要率・不等率という2つの数字で説明できるようになっている。

種明かしは、電気施設管理で使う3つの指標——需要率・不等率・負荷率——にある。 どれも「実際の使われ方は、カタログスペックより小さく・ムラがある」ことを数値化したものだ。

需要率 — 設備容量のうち、実際にどれだけ使われているか

需要率は、設備容量に対して、実際の最大需要電力がどれだけの割合かを示す。

需要率=最大需要電力設備容量×100 (%)\text{需要率} = \frac{\text{最大需要電力}}{\text{設備容量}} \times 100\ (\%)

工場に設置された機器の定格容量をすべて合計したものが「設備容量」だが、実際にすべての機器が 同時にフル稼働することは考えにくい。だから最大需要電力は、たいてい設備容量より小さくなる。 需要率はこの「割引率」を数値で表したものだ。

例題

設備容量120kW、需要率75%の需要家がある。最大需要電力はいくらか。

120kW×0.75=90kW120\text{kW} \times 0.75 = 90\text{kW}
需要率は通常100%以下になる。計算結果が100%を大きく超えたら、分母(設備容量)と 分子(最大需要電力)を取り違えていないか、まず疑うとよい。

不等率 — 複数の需要のピークは、めったに重ならない

1つの需要家(または設備群)の中の話が需要率なら、不等率は複数の需要家(設備群)をまとめたときの話だ。

不等率=各需要家の最大需要電力の合計合成最大需要電力\text{不等率} = \frac{\text{各需要家の最大需要電力の合計}}{\text{合成最大需要電力}}

A社の電力使用のピークと、B社のピークは、同じ時刻に重なるとは限らない。むしろズレるのが普通だ。 だから複数の需要家をまとめた「合成最大需要電力」は、個々の最大需要電力を単純に足し合わせた値より 小さくなる。この差を表すのが不等率で、通常1以上の値になる。値が大きいほど、各需要家のピークが 分散していることを意味する。

例題

最大需要電力80kWのA社、60kWのB社があり、2社をまとめた合成最大需要電力が112kWだった。不等率はいくらか。

80+60112=140112=1.25\frac{80+60}{112} = \frac{140}{112} = 1.25
不等率を使って合成最大需要電力を求めたいときは、この式を逆算する。 「各最大需要電力の合計 ÷ 不等率 = 合成最大需要電力」。掛け算と間違えると、 実際より大きい容量を見積もってしまう——変圧器を過大に選定する典型的な原因になる。

負荷率 — 設備は「ムラなく」使われているか

需要率・不等率が「容量に対する割引」を扱うのに対し、負荷率は時間の中での需要の変動を扱う。

負荷率=平均需要電力最大需要電力×100 (%)\text{負荷率} = \frac{\text{平均需要電力}}{\text{最大需要電力}} \times 100\ (\%)

一日のうちピーク時しか電力を使わない需要家より、昼夜を通じて満遍なく電力を使う需要家の方が、 設備を効率よく使えている。負荷率はこの「稼働のムラのなさ」を表す指標で、値が高いほど良い。

例題

平均需要電力40kW、最大需要電力80kWの需要家の負荷率はいくらか。

4080×100=50%\frac{40}{80} \times 100 = 50\%

電圧降下 — 配電線路の「抵抗とリアクタンス」から電圧の目減りを計算する

需要率・不等率・負荷率が「どれだけの電力を使うか」を扱う指標だったのに対し、電圧降下は「その電力を送るとき、線路のどこでどれだけ電圧が目減りするか」を扱う、また別の計算だ。変電所や配電用変電所から需要家まで電気を送る配電線路には、電線自体の抵抗Rとリアクタンス(誘導性のインピーダンス成分)Xがあり、電流が流れるとこの2つの成分でそれぞれ電圧が消費される。

三相3線式配電線路の電圧降下ΔVは、線路1条あたりの抵抗R・リアクタンスX、負荷電流I、力率cosθ(遅れ)を使って、次の近似式で概算できる。

ΔV3×I×(Rcosθ+Xsinθ)\Delta V \approx \sqrt{3} \times I \times (R\cos\theta + X\sin\theta)

例題

三相3線式配電線路(電線1条あたり抵抗2Ω、リアクタンス3Ω)で、負荷電流40A、力率0.8(遅れ、sinθ=0.6)のときの電圧降下を求める。

ΔV=3×40×(2×0.8+3×0.6)=1.732×40×3.4236V\Delta V = \sqrt{3} \times 40 \times (2\times0.8 + 3\times0.6) = 1.732 \times 40 \times 3.4 \approx 236\text{V}
式の中でRにかかるのはcosθ、Xにかかるのはsinθだ。「抵抗は有効電力を生む側の成分だからcosθ、リアクタンスは無効電力に関わる側の成分だからsinθ」と対応づけて覚えると、取り違えにくい。cosθが分かればsinθ=√(1-cos²θ)で求められることも、あわせて確認しておく。

力率改善は、電圧降下も小さくする

高圧受電設備にコンデンサ(進相コンデンサ)を設置して力率を改善する目的は、力率そのものを良くすることだけではない。同じ有効電力を送るのに必要な線路電流Iは、力率が改善するほど小さくなる。電圧降下の式ΔV=√3×I×(Rcosθ+Xsinθ)において、電流Iが減ることに加え、sinθも小さくなるためリアクタンス分(Xsinθ)の寄与も縮み、電圧降下は小さくなる方向に働く。

需要率・不等率が「変圧器や配電盤の容量をどう決めるか」という設計の入口だったのに対し、電圧降下は「実際に送った電気が、末端でどれだけの電圧で届くか」という出口側の話になる。力率改善は、この入口(容量設計)と出口(電圧降下)の両方に効いてくる、電気施設管理でよく登場する共通の打ち手だ。

最大需要電力(デマンド)は「瞬間値」ではなく「30分間の平均」

需要率・不等率・負荷率の式にはいずれも「最大需要電力」という言葉が登場した。ここまでは、この値をあらかじめ与えられた数値として扱ってきたが、実務でこの値がどう決まるかを知っておくと、電力管理の現場で起きていることの見え方が変わる。

「最大需要電力」と聞くと、グラフの一番高い一瞬のピーク値を思い浮かべやすい。だが実務上のデマンド管理でいう最大需要電力は、そうではない。正時(0分・30分)から30分間の平均使用電力のうち、最大のものを指す。

なぜ瞬間値ではなく30分間の平均なのか。契約電力を超えたかどうかで課金や設備容量の判断が行われる以上、一瞬だけ跳ね上がった電力ではなく、変圧器や配電設備に継続的にかかる負荷の大きさを見る必要がある。30分間という区切りは、瞬間的な突入電流やノイズに引きずられず、実質的な負荷の大きさを捉えるための「ならし」の時間だと理解すればよい。

例題 — 後半をどこまで絞れば間に合うか

ある工場が、正時からの30分間平均使用電力を250kW未満に抑える運用をしている。9時00分から9時15分までの15分間、使用電力は260kWで推移した。このまま何もしなければ、9時00分からの30分間平均が250kWを超えてしまう。9時15分から9時30分までの15分間、使用電力をいくらまで抑えれば、30分間平均を250kW未満に収められるか。

260kW×15+P×1530<250kW\frac{260\text{kW}\times15\text{分} + P\times15\text{分}}{30\text{分}} < 250\text{kW} 260+P2<250P<240kW\frac{260+P}{2} < 250 \quad\Rightarrow\quad P < 240\text{kW}

9時15分以降の使用電力を240kW未満まで引き下げれば、30分間平均は目標を下回る。この工場では、換気用の冷却ファン(1台あたり4kW)を最大6台まで停止できる運用にしていたとすると、260kWから240kW未満まで下げるには20kWを超える削減が必要になる。ファン5台の停止では20kWちょうどの削減にとどまり、ぎりぎり足りない(260-20=240kWは「240kW未満」を満たさない)。6台停止(24kW削減)で236kWまで下げて、初めて条件を満たす。

このタイプの計算で見落としやすいのは、「削減量がちょうど目標との差に届けばよい」と考えて、不等号の『未満』を見落とすことだ。ちょうど届く削減量では、平均が目標値と同じになるだけで、目標を『下回る』条件は満たさない。境界値ぎりぎりの選択肢が並ぶ設問では、削減量を目標との差より少し多めに確保する必要がある、という点を意識しておくと取りこぼしにくい。

需要率・不等率が「容量設計の入口」で使う指標だったのに対し、この30分間デマンド管理は「日々の運用」で効いてくる考え方だ。契約電力を超えそうになったとき、どの負荷を、いつ、どれだけ絞れば間に合うかを判断する場面は、電力会社との契約電力の管理を任されている需要家では日常的に発生する。

制御盤・受変電設備の容量設計にどうつながるか

これら3つの指標は、単独では出題対象の計算問題にすぎないが、実務では変圧器容量や配電盤の ブレーカー容量を決めるときの出発点になる。設備容量をそのまま足し合わせて機器を選ぶと、 実際にはまず起こらない「全負荷同時使用」を前提にした、無駄に大きく高価な設備になってしまう。 需要率で個々の需要家(設備群)の実態を絞り込み、不等率で複数の需要をまとめたときのピークのズレを 織り込む——この2段階の計算が、電材を扱う実務で変圧器の更新提案をする際の容量算定の土台になる。

冒頭で挙げた「定格容量500kW、契約電力300kW」という工場の謎——答え合わせは 理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 合成最大需要電力を求めるときに、不等率を掛けてしまう(割るべきところを掛ける)

    なぜ引っかかる需要率も不等率も「率」という言葉でひとくくりにして覚えると、需要率は掛ける、不等率は割るという逆方向の演算だということを意識しづらくなる。

    見破り方不等率は必ず1以上になる値であることを確認する。「各最大需要電力の合計 ÷ 合成最大需要電力 = 不等率」という定義に立ち返り、合成最大需要電力を求めるときはこの式を逆算する(合計を不等率で割る)。

  2. 需要率の分母を「最大需要電力」、分子を「設備容量」と逆にしてしまう

    なぜ引っかかる需要率は「設備容量のうち、どれだけが実際に使われているか」を表す指標なのに、両者の位置を覚え違えると、計算結果が100%を大きく超えても違和感を持てなくなる。

    見破り方需要率は通常100%以下(実務上はおおむね50〜80%程度)になるのが自然。計算結果が100%を大きく超えたら、分母・分子を取り違えていないか疑う。

  3. 負荷率の「平均需要電力」を「設備容量」と取り違える

    なぜ引っかかる需要率・負荷率のどちらも設備容量が絡む文脈で一緒に出題されるため、分母に何を置くべきかが混同しやすい。

    見破り方負荷率は「時間軸での需要の変動」を表す指標であり、設備容量ではなく必ず最大需要電力を分母に置く。「平均 ÷ 最大」という言葉の並びで覚える。

  4. 電圧降下の近似式で、リアクタンス分にかける係数をcosθのまま使ってしまう(sinθと取り違える)

    なぜ引っかかるΔV=√3×I×(Rcosθ+Xsinθ)という式は、RにもXにも同じ『力率っぽい係数』が掛かっているように見えるため、両方にcosθを使ってしまいやすい。

    見破り方抵抗分(有効電力を生む側)にはcosθ、リアクタンス分(無効電力に関わる側)にはsinθが対応すると覚える。cos²θ+sin²θ=1という関係を使って、力率が分かればsinθ=√(1-cos²θ)で求められることも合わせて確認する。

  5. 最大需要電力(デマンド)を『ある瞬間のピーク値』だと思い込み、30分間の平均値であることを見落とす

    なぜ引っかかる『最大需要電力』という言葉の響きから、グラフの一番高い一瞬の値をそのまま指すと直感的に考えやすい

    見破り方最大需要電力は、正時(0分・30分)から30分間の平均使用電力のうち最大のものを指す、と定義に立ち返る。前半が高い値で推移していても、後半をどれだけ絞れば30分間の平均が目標値未満に収まるかを、平均の式(合計÷30分)から逆算する必要がある

参考文献・出典

理解度チェック(9問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、9問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用2問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 9 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 需要率 = 最大需要電力 ÷ 設備容量 × 100(%)。設備をどれだけ余裕を持たせて使っているかの指標で、通常100%以下になる
  2. 不等率 = 各負荷の最大需要電力の合計 ÷ 合成最大需要電力。通常1以上になり、値が大きいほどピークが分散している
  3. 負荷率 = 平均需要電力 ÷ 最大需要電力 × 100(%)。値が高いほど設備が時間的にムラなく稼働している
  4. 需要率で個々の最大需要電力を求め、不等率でそれらをまとめた合成最大需要電力を求める——という2段階の計算が典型パターン
  5. 実務上『最大需要電力(デマンド)』は、瞬間値ではなく『正時(0分・30分)からの30分間の平均使用電力』のうち最大のものを指す。契約電力を超えないよう管理する場合、この30分間平均の値を目標値未満に抑える必要があり、前半の実績が高いときは後半の使用電力をどこまで絞れば間に合うかを、平均の式から逆算する
  6. 三相3線式配電線路の電圧降下ΔVは、線路1条あたりの抵抗R・リアクタンスX、負荷電流I、力率cosθ(遅れ)から、近似式 ΔV=√3×I×(Rcosθ+Xsinθ) で概算できる。力率を改善する(コンデンサ設置等でcosθを1に近づける)と、同じ有効電力を送るのに必要な電流Iが減り、sinθも小さくなるため、電圧降下は小さくなる方向に働く
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