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変圧器容量・設備容量の決定

読み終えると、こうなる

変圧器のカタログを見たとき、なぜこの容量が選ばれているかを、需要率・不等率・力率の3つの数字から逆算して説明できるようになる

  • 合成最大需要電力と力率から必要な変圧器容量(kVA)を計算し、規格容量の中で過不足のない容量を選定して、需要率・不等率の計算(kW)から変圧器容量の選定(kVA)までを一連の流れとして説明できる
  • 力率改善の目標値と改善前の力率から、必要な進相コンデンサの容量(kvar)をtanθの差から計算できる。また第n次高調波に対してコンデンサ・リアクトルのインピーダンスがそれぞれ基本波の1/n倍・n倍になることを踏まえ、高調波抑制対策ガイドラインの流出電流上限と契約電力から高調波電流の許容値を計算できる
  • 低圧幹線に電動機等が接続される場合の許容電流の求め方(電動機等の定格電流の合計と他の機械器具の定格電流の合計の大小関係で計算式が変わる)と、その幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の上限を計算できる
考えてみよう

設備更新の相談を受けた工場から、古い変圧器の銘板に書かれた「150kVA」という数字だけが 手がかりとして渡された。設備台帳を洗い出すと、電動機やヒーターの定格容量の合計は230kW。 力率はおおむね0.9だという。

需要率も不等率も分かっているのに、このままでは新しい変圧器の容量をいくつで提案すればいいのか 判断がつかない。需要電力から変圧器容量まで、あと1つ足りない計算がある。

このトピックを読み終えるころには、需要率・不等率で求めた需要電力から、実際にカタログで 選ぶべき変圧器容量まで、迷わず一本の計算でつなげられるようになっている。

種明かしは、需要率・不等率の計算が「有効電力(kW)」の世界で完結するのに対し、 変圧器のカタログはすべて「皮相電力(kVA)」で表記されているという、単位のズレにある。 このズレを埋めるのが力率(cosφ)だ。

変圧器容量は「有効電力」ではなく「皮相電力」で決まる

需要率・不等率を使って求めた合成最大需要電力は、有効電力(kW)——実際に仕事をする電力の値だ。 だが変圧器のカタログを見ると、容量は必ずkVA(皮相電力)で書かれている。この2つを結びつけるのが力率で、

cosφ=有効電力皮相電力\cos\varphi = \frac{\text{有効電力}}{\text{皮相電力}}

という関係にある。この式を皮相電力について解くと、

変圧器容量[kVA]=合成最大需要電力[kW]cosφ\text{変圧器容量}[\text{kVA}] = \frac{\text{合成最大需要電力}[\text{kW}]}{\cos\varphi}

となる。力率は1以下の値なので、有効電力を力率で割ると、必ずそれより大きい値になる。

例題

合成最大需要電力90kW、力率0.9のとき、必要な変圧器容量はいくらか。

90kW0.9=100kVA\frac{90\text{kW}}{0.9} = 100\text{kVA}
迷ったら「掛けると小さくなる、割ると大きくなる」で検算する。力率は1以下の値だから、 有効電力に力率を掛けると値は小さくなり、割ると大きくなる。皮相電力(変圧器容量)は 有効電力より必ず大きいはずなので、割り算が正しいと確認できる。

規格容量から選ぶ — 「計算値以上」が鉄則

計算で出た必要容量ぴったりの変圧器が市販されているとは限らない。変圧器は50kVA、75kVA、 100kVA、150kVA、200kVAというように、あらかじめ決められた規格容量の中から選ぶのが実務だ。

このとき鉄則になるのが、計算値「以上」で最も近い規格容量を選ぶこと。計算値をわずかでも 下回る容量を選んでしまうと、通常の使用でも過負荷になり、変圧器の劣化や保護装置の動作(停電) につながる。

例題

必要な変圧器容量が計算上138kVAだった場合、100kVA・150kVA・200kVAという規格容量の中から どれを選ぶべきか。

138kVAに最も近いのは100kVAだが、これでは必要量を下回ってしまう。150kVAを選ぶのが正しい。 「一番近い値」ではなく「計算値以上で一番近い値」という条件を、常にセットで意識する必要がある。

需要率・不等率から変圧器容量までの一本の流れ

ここまでの内容と前のトピックの需要率・不等率を組み合わせると、次のような一続きの計算になる。

  1. 各設備の設備容量 × 需要率 → 個々の最大需要電力[kW]
  2. 個々の最大需要電力の合計 ÷ 不等率 → 合成最大需要電力[kW]
  3. 合成最大需要電力 ÷ 力率 → 必要な変圧器容量[kVA]
  4. 規格容量の中から、3の計算値以上で最も近いものを選定

例題

設備容量150kW・需要率60%の設備Aと、設備容量100kW・需要率50%の設備Bがある。不等率1.4、 力率0.9として、必要な変圧器容量を求める。

A:150×0.6=90kW,B:100×0.5=50kW\text{A:}150\times0.6=90\text{kW}, \quad \text{B:}100\times0.5=50\text{kW} 合成最大需要電力=90+501.4=1401.4=100kW\text{合成最大需要電力} = \frac{90+50}{1.4} = \frac{140}{1.4} = 100\text{kW} 必要な変圧器容量=1000.9111kVA\text{必要な変圧器容量} = \frac{100}{0.9} \approx 111\text{kVA}

規格容量の中に100kVAと150kVAがあれば、111kVAを下回る100kVAでは不足するため、150kVAを選ぶことになる。

力率改善に必要な進相コンデンサの容量を計算する

ここまでは、力率を「所与の値」として扱い、有効電力から変圧器容量(皮相電力)を逆算する話だった。実務ではもう一歩踏み込んで、「力率が悪い負荷に、どれだけの容量の進相コンデンサを追加すれば、目標の力率まで改善できるか」を計算する場面がある。

力率改善の考え方は、電力を有効電力(P)・無効電力(Q)・皮相電力(S)の直角三角形で捉えるところから始まる。負荷の有効電力Pは変わらないまま、コンデンサが打ち消す無効電力の分だけ、皮相電力(見かけの電力)が小さくなる——これが力率改善の仕組みだ。

改善前の力率をcosθ1、改善後の力率をcosθ2とすると、必要な進相コンデンサの容量Q[kvar]は、次の式で求められる。

Q=P×(tanθ1tanθ2)Q = P \times (\tan\theta_1 - \tan\theta_2)

tanθは、cosθから sinθ=√(1−cos²θ) を求め、tanθ=sinθ/cosθの順に計算する。

例題

有効電力200kW、力率0.6(遅れ、sinθ1=0.8)の負荷の力率を1.0まで改善するために必要な進相コンデンサの容量を求める。

tanθ1=0.80.61.333,tanθ2=0(力率1.0のとき)\tan\theta_1 = \frac{0.8}{0.6} \approx 1.333, \qquad \tan\theta_2 = 0(\text{力率1.0のとき}) Q=200×(1.3330)267kvarQ = 200 \times (1.333 - 0) \approx 267\text{kvar}
Qの式で使うのはcosθの差ではなく、tanθの差だ。コンデンサが打ち消しているのは無効電力(P×tanθ)であって、力率という比率そのものではない。「力率の差をそのまま使えばよい」という直感に流されず、いったんtanθ(無効電力と有効電力の比)に変換してから引き算する、という一手間を忘れないようにする。

力率を1.0まで完全に改善する必要は、実務上は必ずしもない。目標をcosθ=0.9程度に置くケースも多い。この場合はtanθ2も0ではなくなるため、改善前後のtanθをそれぞれ求めてから差を取る、という同じ手順を繰り返すことになる。

直列リアクトル付き進相コンデンサ — なぜコンデンサの端子電圧は回路電圧より高くなるのか

実際の高圧受電設備では、進相コンデンサを単体で接続するのではなく、コンデンサと直列にリアクトル(SR:直列リアクトル)を接続した「進相コンデンサ設備」として施設することが多い。直列リアクトルの主な目的は、電源側や負荷側で発生する高調波電流がコンデンサに集中して流れ込むのを抑制することにある。

ここで見落としやすいのが、この直列リアクトルが、コンデンサ自身の端子電圧を回路電圧より高く押し上げてしまう、という副作用だ。

コンデンサSCとリアクトルSRが直列に接続された回路を、線間電圧Vの高圧回路に接続する状況を考える。コンデンサのリアクタンスをXC、リアクトルのリアクタンスをXLとすると、この直列回路に流れる電流Iは、コンデンサとリアクトルのリアクタンスが打ち消し合った実効リアクタンス(XC−XL)によって決まる。

I=VXCXLI = \frac{V}{X_C - X_L}

このIがコンデンサ自身にかかる電圧V_SCは、I×XCで求められる。

VSC=I×XC=V×XCXCXL=V1XLXCV_{SC} = I \times X_C = \frac{V \times X_C}{X_C - X_L} = \frac{V}{1 - \dfrac{X_L}{X_C}}

リアクトルのリアクタンスXLがコンデンサのリアクタンスXCのk倍(例えば6%や8%)だとすると、この式はV_SC=V/(1-k)と書き換えられる。kは1より小さい正の値なので、1-kは1より小さくなり、結果としてV_SCはVより必ず大きくなる。

例題

線間電圧3,000Vの高圧回路に、直列リアクトル付き三相コンデンサ設備を接続する。リアクトルSRのリアクタンスXLが、コンデンサSCのリアクタンスXCの8%のとき、コンデンサSCの端子電圧を求める。

VSC=3,00010.08=3,0000.923,261VV_{SC} = \frac{3{,}000}{1-0.08} = \frac{3{,}000}{0.92} \approx 3{,}261\text{V}
「リアクトルを直列に入れる」と聞くと、電圧降下の話と同じ感覚で「電圧が下がるはずだ」と思い込みやすい。だが実際には、コンデンサとリアクトルのリアクタンスが逆方向(進み・遅れ)に働くため、両者が打ち消し合って回路の実効的なインピーダンスは**小さくなり**、電流はむしろ**増える**。そしてこの増えた電流が、コンデンサの高いリアクタンスにそのままかかるため、コンデンサ自身の端子電圧は回路電圧より高くなる——という一見直感に反する結果になる。コンデンサを選定する際は、この電圧上昇を見込んだ定格電圧のものを選ぶ必要がある。

高調波に対するインピーダンスの変化 — 第n次高調波では、リアクトルとコンデンサが逆方向に動く

直列リアクトル付き進相コンデンサ設備を語るとき、これまでは基本波(電源周波数そのもの)だけを前提にしていた。しかし実際の受電設備には、整流器やインバータなどの高調波発生源から、基本波の整数倍の周波数を持つ高調波電流が流れ込んでくることがある。この高調波に対して、コンデンサとリアクトルはまったく逆の反応を示す。

リアクトルのリアクタンスXL、コンデンサのリアクタンスXCは、それぞれ次の式で表される。

XL=2πfL,XC=12πfCX_L = 2\pi f L, \qquad X_C = \frac{1}{2\pi f C}

XLは周波数fに比例し、XCは周波数fに反比例する。第n次高調波は周波数が基本波のn倍になるため、リアクトルのインピーダンスはn倍に増加し、コンデンサのインピーダンスは1/n倍に減少する。配電線のインピーダンス(変圧器・電線路のインダクタンス分)も、リアクトルと同じくインダクタンス性なので、高調波に対してはn倍に増加する。

「高調波になるとインピーダンスが変わる」というところまでは覚えやすいが、その変化の**方向**を取り違えると計算を誤る。合言葉は「コイルは高調波で強くなる(n倍)、コンデンサは高調波で弱くなる(1/n倍)」。周波数が上がるほどコイルは電流の変化を嫌って抵抗が増し、コンデンサは電荷の出入りが追いつきやすくなって抵抗が減る、という物理的なイメージとセットで覚えると混同しにくい。

例題

基本波(50Hz)に対するインピーダンスが、配電線Ẑs1=j2Ω、直列リアクトルẐSR1=j15Ω、コンデンサẐSC1=−j300Ωである高圧進相コンデンサ設備を考える。第5次高調波に対するそれぞれのインピーダンスを求める。

Z˙S5=j2×5=j10 Ω,Z˙SR5=j15×5=j75 Ω,Z˙SC5=j300×15=j60 Ω\dot{Z}_{S5} = j2 \times 5 = j10\ \Omega, \qquad \dot{Z}_{SR5} = j15 \times 5 = j75\ \Omega, \qquad \dot{Z}_{SC5} = -j300 \times \frac{1}{5} = -j60\ \Omega

コンデンサ設備側(リアクトルとコンデンサの直列合成)のインピーダンスは、

Z˙SR5+Z˙SC5=j75j60=j15 Ω\dot{Z}_{SR5} + \dot{Z}_{SC5} = j75 - j60 = j15\ \Omega
高調波発生機器が流し込んだ電流は、配電線側(系統)とコンデンサ設備側の、どちらか一方だけに流れるわけではない。2つの経路が並列につながっている状態なので、それぞれのインピーダンスの大きさに応じて電流が分流する(インピーダンスが小さい経路ほど、より多くの電流を引き込む)。系統に流出する高調波電流を抑えたい場合、コンデンサ設備側のインピーダンスを相対的に小さく保つ設計が意味を持つ、という理屈がここにつながる。実際の分流計算は回路の接続形態によって式が変わるため、個々の単線結線図に沿って確認する必要がある。

高圧又は特別高圧で受電する需要家には、系統に流出させる高調波電流の抑制に関するガイドラインがあり、次数ごと・電圧階級ごとに、契約電力1kW当たりの流出電流上限値[mA/kW]が示されている。需要家の契約電力にこの上限値を掛けることで、その需要家からの高調波電流の流出をどこまで許容するかという基準値を求められる。具体的な数値・適用条件(需要形態による緩和措置等)は、実務・受験ともに最新のガイドラインで確認することが前提になる。

低圧幹線の許容電流 — 電動機の割合が高いほど、太い幹線が必要になる

ここまでは「変圧器全体の容量」を扱ってきたが、変圧器から先、工場内に張り巡らされる低圧幹線(分電盤へ電気を送る太い配線)にも、それぞれ必要な太さ(許容電流)を決める計算がある。

低圧幹線に、電動機又はこれに類する起動電流が大きい機器(以下「電動機等」)と、それ以外の一般的な電気使用機械器具が接続されている場合、電気設備技術基準の解釈は、幹線に必要な許容電流Iaの求め方を、電動機等の定格電流の合計IMと、それ以外の機械器具の定格電流の合計IHの大小関係で使い分けている。

IMIH のとき: IaIM+IHI_M \leq I_H \ \text{のとき:} \ I_a \geq I_M + I_H IM>IH のとき: Ia1.25×IM+IH (IM50A),Ia1.1×IM+IH (IM>50A)I_M > I_H \ \text{のとき:} \ I_a \geq 1.25 \times I_M + I_H \ (I_M \leq 50\text{A}) , \qquad I_a \geq 1.1 \times I_M + I_H \ (I_M > 50\text{A})
なぜIM>IHになった途端に割増しが必要になるのか。電動機は起動する瞬間、定格電流よりずっと大きな起動電流を一時的に流すという性質を持つ。電動機等の割合(IM)が全体の中で大きいほど、幹線が同時にさらされる起動電流のインパクトも大きくなるため、単純な合計(IM+IH)では足りず、IMの側にだけ割増し係数(1.25倍または1.1倍)を掛ける。IMが大きくなるほど幹線が太くなるという傾向自体は変わらないが、割増しの掛け方に一段階の判定が挟まる、という構造を押さえておく。

例題

低圧幹線に接続される電動機等の定格電流の合計IMが40A、他の電気使用機械器具の定格電流の合計IHが20Aのとき、必要な幹線の許容電流Iaを求める。IM(40A)はIH(20A)より大きく、かつ50A以下なので、

Ia1.25×40+20=50+20=70AI_a \geq 1.25 \times 40 + 20 = 50 + 20 = 70\text{A}

幹線を保護する過電流遮断器の定格電流 — 「小さいほうを取る」という考え方

幹線の太さ(許容電流Ia)が決まったら、次はその幹線を保護する過電流遮断器の定格電流Ibを決める。ここにも、電動機等の起動電流を踏まえた考え方が出てくる。

Ib3×IM+IH,かつIb2.5×IaI_b \leq 3 \times I_M + I_H, \qquad \text{かつ} \qquad I_b \leq 2.5 \times I_a

過電流遮断器の定格電流は、電動機等の起動電流を踏まえた上限(3×IM+IH)と、幹線そのものの許容電流から決まる上限(2.5×Ia)の、両方を満たさなければならない。つまり実際に使える上限は、この2つの計算値のうち小さいほうになる。

例題(続き)

先ほどのIM=40A、IH=20A、Ia=70Aの幹線を保護する過電流遮断器の定格電流Ibの上限を求める。

3×IM+IH=3×40+20=140A,2.5×Ia=2.5×70=175A3 \times I_M + I_H = 3\times40+20=140\text{A}, \qquad 2.5 \times I_a = 2.5\times70=175\text{A}

2つの値のうち小さいほうが実際の上限になるため、Ib≦140Aとなる。

「2つの式のどちらか一方だけを見て判定してしまう」のが、この計算で最も起きやすいミスだ。3×IM+IHと2.5×Iaは、それぞれ別の理由(電動機等の起動電流、幹線自体の耐量)から出てくる上限であり、遮断器はそのどちらの上限も超えてはならない。だから常に「小さいほうを採用する」という一手間を忘れないようにする。

なぜ電材商社の実務でこの計算が重要か

変圧器の容量選定を誤ると、影響は両方向に出る。小さく見積もりすぎれば過負荷による事故や 頻繁な保護装置の動作につながり、大きく見積もりすぎれば無駄なコストがかかるだけでなく、 軽負荷時に鉄損(無負荷でも常に発生する損失)の割合が相対的に増え、効率が落ちる。 更新提案や新設の見積もりに関わる場面では、需要率・不等率・力率という3つの数字を 一連の流れとして扱えるかどうかが、そのまま提案の精度に直結する。

冒頭の「設備容量230kW、力率0.9」の工場に、いくつの変圧器を提案すべきか—— 答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 有効電力から変圧器容量(皮相電力)を求めるとき、力率を掛けてしまう

    なぜ引っかかる力率は「小さい値を掛けて割り引く」というイメージが強く、皮相電力を求める場面でも同じ感覚で掛け算してしまいやすい。

    見破り方力率の定義 cosφ = 有効電力 ÷ 皮相電力 に立ち返る。皮相電力(変圧器容量)を求めたいなら、有効電力を力率で割る。掛けると必ず有効電力より小さい値になり、変圧器容量としては小さすぎる危険な値になる。

  2. 規格容量の選定で、計算値に一番近い容量(切り捨てを含む)を選んでしまう

    なぜ引っかかる「一番近い値を選ぶ」という発想は他の丸め処理と同じ感覚で行いやすいが、変圧器容量は必要量を下回ると過負荷になる。

    見破り方選ぶべきは「計算値以上で、最も近い規格容量」。計算値をわずかでも下回る容量は候補から外す。

  3. 需要率・不等率で求めた合成最大需要電力(kW)を、そのまま変圧器容量(kVA)として扱う

    なぜ引っかかる需要率・不等率の計算はkW(有効電力)の世界で完結するため、続けて変圧器容量もkWのまま考えてしまいやすい。

    見破り方変圧器のカタログ表記が常にkVA(皮相電力)であることを思い出す。kWの計算結果が出たら、必ず「力率で割ってkVAに変換する」という一手間が残っていることを確認する。

  4. 力率改善に必要なコンデンサ容量を、有効電力と力率の差(cosθ1−cosθ2)だけで計算してしまう

    なぜ引っかかる『改善の度合い』を求める式だと考えると、力率の差をそのまま使えばよいと直感的に考えやすい。

    見破り方コンデンサが打ち消すのは無効電力(kvar)であって、有効電力(kW)や力率そのものではないと確認する。Q=P×(tanθ1−tanθ2)という式は、改善前後の無効電力(P×tanθ)の差を計算しているのだと理解し、cosθの差ではなくtanθの差を使うことを徹底する。

  5. 直列リアクトル付き進相コンデンサの端子電圧を、単純に回路電圧と同じ、あるいはリアクトル分だけ差し引いた値だと誤解する

    なぜ引っかかる『リアクトルを直列に入れる=電圧が下がる』という直感的なイメージが先に立ちやすく、コンデンサ側の端子電圧がむしろ回路電圧より高くなる現象を見落としやすい

    見破り方直列LC回路では、コンデンサとリアクトルのリアクタンスが打ち消し合う方向に働くため、回路電流は「XC−XL」という小さくなった実効リアクタンスで決まり、電流はむしろ大きくなる。その大きくなった電流がコンデンサの高いリアクタンスXCにかかるため、コンデンサ単体の端子電圧はV/(1-XL/XC)というように回路電圧より高くなる、という因果関係で覚える。

  6. 第n次高調波に対するリアクトル・コンデンサのインピーダンスの変化方向を取り違える(両方ともn倍、あるいは両方とも1/n倍だと誤解する)

    なぜ引っかかる『高調波になるとインピーダンスが変わる』という理解だけが先に立つと、リアクトルとコンデンサで変化の方向がまったく逆(一方はn倍に増加、他方は1/n倍に減少)であることを見落としやすい

    見破り方リアクトルのリアクタンスXL=2πfL、コンデンサのリアクタンスXC=1/(2πfC)という基本式に立ち返る。周波数fが大きくなる(高調波次数nが上がる)と、fに比例するXLはn倍に大きくなり、fに反比例するXCは1/n倍に小さくなる、という逆方向の変化を式から確認する。

  7. 低圧幹線の許容電流を、電動機等の定格電流IMと他の機械器具の定格電流IHを単純に足し合わせるだけ(Ia=IM+IH)だと思い込み、IM>IHのときに必要な割増しを見落とす

    なぜ引っかかる『合計すればよい』という発想は直感的に分かりやすく、IM≦IHの場合の式(Ia≧IM+IH)が最初に頭に入ると、IMがIHより大きくなった途端に割増し係数(1.25倍・1.1倍)が必要になることに気づきにくい

    見破り方まずIMとIHの大小関係を確認する癖をつける。IM≦IHならそのまま合計でよいが、IM>IHになった瞬間、電動機等の始動電流を見込んでIMだけに1.25倍(IM≦50A)又は1.1倍(IM>50A)を掛けてからIHを足す、という一段階の割増しが挟まると覚える

参考文献・出典

理解度チェック(13問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、13問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用5問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 13 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 変圧器容量は有効電力(kW)ではなく皮相電力(kVA)で決める。合成最大需要電力を力率(cosφ)で割ってkVAに変換する
  2. 変圧器容量[kVA] = 合成最大需要電力[kW] ÷ 力率(cosφ)
  3. 選定する変圧器容量は、規格容量の中から計算値「以上」のものを選ぶ。切り捨てや近似値選びは過負荷につながる
  4. 容量ぴったりの選定では将来の負荷増加に対応できない。需要率・不等率の計算に将来の余裕をどう織り込むかも実務では検討事項になる
  5. 力率を改善するために必要な進相コンデンサの容量Q[kvar]は、負荷の有効電力P[kW]と、改善前の力率cosθ1・改善後の力率cosθ2から Q=P×(tanθ1−tanθ2) で計算できる。tanθはcosθから sinθ=√(1−cos²θ)、tanθ=sinθ/cosθの順に求める
  6. 高調波抑制等の目的で三相コンデンサSCに直列リアクトルSRを接続した進相コンデンサ設備では、リアクトルSRのリアクタンスXLがコンデンサSCのリアクタンスXCのk倍(例:6%)のとき、コンデンサSC自身の端子電圧は回路の線間電圧Vより高くなり、V_SC=V/(1-XL/XC)=V/(1-k)という関係で近似できる。直列リアクトルは回路電圧を下げる働きに見えて、コンデンサ自身にかかる電圧はむしろ回路電圧より高くなる点に注意
  7. リアクトルのリアクタンスXL=2πfLは周波数に比例し、コンデンサのリアクタンスXC=1/(2πfC)は周波数に反比例する。そのため第n次高調波(周波数が基本波のn倍)に対しては、配電線・リアクトルのようなインダクタンス性のインピーダンスはn倍、コンデンサのような容量性のインピーダンスは1/n倍になる。高調波発生機器から系統側へ流出する高調波電流は、配電線側インピーダンスとコンデンサ設備側(リアクトル+コンデンサの合成)インピーダンスの比によって決まる分流の関係で計算できる。高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドラインは、系統に流出させる高調波電流の上限値を契約電力1kW当たりの電流値[mA/kW]で定めている(具体的な数値・適用条件は最新のガイドラインで確認すること)
  8. 低圧幹線に電動機又はこれに類する起動電流が大きい機器(電動機等)が接続される場合、電技解釈は幹線に必要な許容電流Iaの求め方を、電動機等の定格電流の合計IMと、他の電気使用機械器具の定格電流の合計IHの大小関係で使い分けている。IM≦IHのときはIa≧IM+IH。IM>IHのときは、IMが50A以下ならIa≧1.25×IM+IH、IMが50Aを超えるならIa≧1.1×IM+IHとする。電動機等の割合が高くなるほど、起動電流を見込んだ割増し(1.25倍・1.1倍)が効いてくる
  9. 低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流Ibは、電動機等の定格電流の合計IMの3倍に他の機械器具の定格電流の合計IHを加えた値(3×IM+IH)以下で、かつ幹線の許容電流Iaの2.5倍(2.5×Ia)以下でなければならない。2つの上限のうち小さいほうが実際の制約になる
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