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法規 ・ 11 / 12

自家用電気工作物の点検・検査制度

読み終えると、こうなる

自家用電気工作物の『点検業務が誰の責任で、どんなサイクルで回っているか』を需要家に説明できるようになる

  • 保安規程に基づく点検が、日常の巡視から年1回程度の設備停止を伴う精密点検まで段階を持つ理由を説明できる
  • 主任技術者を自ら選任しない小規模需要家が、外部委託承認制度でどう保安を確保しているかを説明でき、受託先が電気保安法人・電気管理技術者に限られる理由と、外部委託後も保安確保の一次的な責任は設置者に残るという原則を、あわせて説明できる
  • 発電所の運転状態を誰がどこで監視するかという観点から、随時巡回方式・随時監視制御方式・遠隔常時監視制御方式という『常時監視をしない発電所』の3つの施設方式を区別できる
考えてみよう

自社に主任技術者を置いていない小さな工場が、キュービクル(受変電設備)を持っている。 主任技術者の選任は電気事業法上の義務のはずなのに、この工場はどうやって法令を 満たしているのか。誰かに丸投げしているのか、それとも何か別の仕組みがあるのか。

このトピックを読み終えるころには、主任技術者を自社に置かない需要家が、 どんな仕組みで保安を確保しているかを説明できるようになっている。

種明かしは、保安規程が求める「点検の段階」と、主任技術者を自ら選任する代わりに 外部の専門家に委ねる「外部委託承認制度」という、2つの仕組みにある。

点検には段階がある — 巡視から精密点検まで

保安規程には、工事・維持・運用に関する保安のための巡視・点検・検査に関する事項を 定めることが義務づけられている(電気事業法施行規則50条3項)。実務では、この「巡視・ 点検・検査」は、次のような段階を持つのが一般的な運用だ。

  • 日常の巡視:目視や簡易な確認で、設備を止めずに異常の兆候(異音・異臭・変色・ 緩みなど)を早期に見つける
  • 月次点検:毎月〜隔月程度の頻度で、運転中の設備の状態を確認・測定する
  • 年次点検:年1回程度、設備を停止させたうえで、絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・ 保護継電器動作試験など、測定器を使ったより精密な確認を行う
なぜ「年1回のしっかりした点検」だけでは足りないのか。設備を止めて行う精密点検は、 絶縁劣化のような「止めないと測れない・見えない」異常を検出するのに向いている一方、 日常的に進行する異音や過熱の兆候には向かない。逆に日常の巡視だけでは、絶縁抵抗の 数値低下のような、外から見えない劣化を捉えられない。段階の違う点検を組み合わせて 初めて、保安が成り立つ。

主任技術者を自ら置けない需要家は、どうするか — 外部委託承認制度

主任技術者の選任は原則として設置者自身が行う。だが、小規模な自家用電気工作物を持つ 需要家すべてに、専任の主任技術者を雇う体力があるわけではない。そこで用意されているのが 外部委託承認制度だ。

受電電圧や出力等が一定規模以下の自家用電気工作物については、設置者が電気保安法人 または電気管理技術者と保安管理業務の委託契約を結び、所轄の産業保安監督部長の承認を 受けることで、主任技術者を自ら選任しないことができる(電気事業法施行規則52条2項)。 対象となる設備規模の具体的な数値は、発電設備・蓄電設備・需要設備など設備の種類ごとに 細かく定められているため、最新の規定を確認することが前提になる。

ここで受託先になれるのは誰でもよいわけではない。主任技術者免状の交付を受けたうえで 一定の実務経験等の要件を満たし、経済産業省へ必要な申請を行った電気保安法人・ 電気管理技術者に限られる。電気工事士免状を持つだけの者では、この受託要件を満たさない。 電気工事士は「工事という作業をしてよい資格」であり、外部委託が肩代わりしているのは 「保安を監督する主任技術者の役割」だからだ。

外部委託承認制度を「専門家に丸投げできる制度」と捉えると、責任の所在を見誤る。 制度が変えているのは「主任技術者を自社の社員として選任するか、外部の専門家に 委ねるか」という選任の形態であって、保安確保の一次的な責任そのものは、 制度を利用していても設置者に残り続ける。委託先は設置者の保安体制を支える 専門家であって、責任の受け皿そのものではない。

発電所そのものも、常に人が見ているとは限らない — 常時監視をしない発電所の施設

ここまでは、需要家の受変電設備を「点検」する側の話だった。視点を変えて、発電所そのものの運転を、日常的に誰が見ているのかを考えてみる。大規模な火力発電所であれば運転員が常駐しているイメージが強いが、水力・風力・太陽光などの発電所では、必ずしも人が常駐しているわけではない。

電気設備技術基準の解釈は、技術員が発電所に常駐しない運転形態をいくつか認めている。代表的なものが次の3方式だ。

  • 随時巡回方式 — 技術員が適当な間隔をおいて発電所を巡回し、運転状態の監視を行う。技術員は発電所に常駐しない
  • 随時監視制御方式 — 技術員が必要に応じて発電所へ出向き、運転状態の監視や機器の操作を行う。こちらも技術員は常駐しない
  • 遠隔常時監視制御方式 — 技術員が制御所等に常時駐在し、発電所の運転状態の監視及び制御を遠隔で行う
3方式とも「発電所に技術員が張り付いていない」点は共通するが、遠隔常時監視制御方式だけは技術員が常時駐在している。ただし駐在先が発電所ではなく制御所等(別の場所)だという違いがある。「常時監視をしない発電所」という呼び方は、あくまで発電所そのものへの常駐がないという意味であって、監視自体が行われていないという意味ではない。

いずれの方式も、技術員がその場にいない時間帯に異常が起きても被害が広がらないよう、異常を検知したら自動的に運転を停止する、あるいは技術員へ自動的に通報するといった保護装置を備えることが前提になる。発電の種類(水力・火力・風力・太陽光等)によって、どの方式を採用できるか、また出力にどの程度の制限が付くかは個別に定められており、一律ではない。具体的な数値・条件は電気設備技術基準の解釈の最新版で確認することが前提になる。

キュービクルの日常巡視・年次点検が需要家側の「点検の段階」だったのに対し、常時監視をしない発電所の施設は、発電所側の「運転監視の体制」を定めた規定だ。どちらも「誰が、どんな間隔で、その設備を見ているか」という同じ問いに対する答えだが、対象(需要家の受電設備か、発電所そのものか)が異なる別の制度だと整理しておくと混同しにくい。

電材商社の実務で、この知識がどう効いてくる

自家用電気工作物を持つ取引先の多くは、キュービクルや受変電設備を持つ中小規模の 工場・ビルであり、その相当数が外部委託承認制度を利用している。取引先の担当者から 「うちは電気管理技術者さんに見てもらっている」という話が出たとき、それが電気事業法上 どういう位置づけの契約なのかを理解していれば、更新工事や設備更新の相談を受けたときに、 主任技術者や電気管理技術者との連携がどう必要になるかを見通した提案ができる。

自社に主任技術者を置いていない工場が、どうやって法令上の義務を満たしていたか。 答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 外部委託すれば設置者の保安責任がなくなると誤解する

    なぜ引っかかる『専門の法人・技術者に任せた』という言葉の印象から、責任そのものも委託先に移ると考えやすい

    見破り方外部委託承認制度は『主任技術者を自ら選任しなくてよい』制度であって、『保安の責任を委託先に移す』制度ではないと切り分ける。事故が起きたときの一次的な責任は、あくまで設置者にある

  2. 点検は年1回の精密点検さえ行えば十分で、日常の巡視は不要だと誤解する

    なぜ引っかかる『年次点検』という言葉が持つ『しっかりした点検』という印象から、それだけで保安が完結すると考えやすい

    見破り方保安規程には巡視・点検・検査という複数の段階が定められている(施行規則50条3項)。日常的な異常の早期発見(巡視)と、測定器を使った精密な確認(年次点検)は役割が違い、どちらか一方で足りるものではない

  3. 外部委託は電気工事士免状を持つ者なら誰でも受託できると誤解する

    なぜ引っかかる『電気の資格を持つ人』という括りで、電気工事士と主任技術者を同一視してしまう

    見破り方外部委託の受託者になれるのは、主任技術者免状に加えて一定の実務経験等の要件を満たした電気保安法人・電気管理技術者に限られる。電気工事士免状はそもそも工事の作業を行う資格であり、保安を監督する主任技術者の役割とは別物だ

  4. 随時巡回方式を『技術員が発電所に常駐して見回る方式』だと誤解する

    なぜ引っかかる『巡回』という言葉から、技術員がその場にいて定期的に見て回るイメージが浮かびやすく、実際には発電所そのものに技術員が常駐していないことを見落としやすい

    見破り方随時巡回方式は、技術員が適当な間隔をおいて発電所を巡回し、運転状態の監視を行うだけの方式であり、発電所に技術員が常駐する方式ではないと確認する。技術員が制御所等に常時駐在するのは、3方式のうち遠隔常時監視制御方式だけだと区別する

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 保安規程には、工事・維持・運用に関する保安のための巡視・点検・検査に関する事項を定める義務がある(電気事業法施行規則50条3項)
  2. 点検は日常の巡視だけでなく、年1回程度、設備を停止させたうえで絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・保護継電器動作試験などを行う精密な点検までの段階を持つのが実務上の一般的な運用である
  3. 受電電圧が一定以下・出力が一定未満などの小規模な自家用電気工作物では、電気保安法人または電気管理技術者と保安管理業務の委託契約を結び、所轄の産業保安監督部長の承認を受けることで、主任技術者を自ら選任しないことができる(外部委託承認制度、電気事業法施行規則52条2項)
  4. 外部委託を受託できるのは、主任技術者免状に加えて一定の実務経験等の要件を満たし、経済産業省へ必要な申請を行った電気保安法人・電気管理技術者に限られる
  5. 外部委託を利用していても、保安確保の一次的な責任は委託先ではなく設置者に残る
  6. 発電所の運転状態を『誰が、どこで、どうやって』監視するかについて、電気設備技術基準の解釈は技術員が常駐しない施設方式を認めている。技術員が適当な間隔をおいて発電所を巡回し運転状態を確認する随時巡回方式、技術員が必要に応じて発電所へ出向き運転状態の監視・操作を行う随時監視制御方式、技術員が制御所等に常時駐在し運転状態の監視及び制御を遠隔で行う遠隔常時監視制御方式の3つが代表例で、いずれも異常時に自動的に運転を停止する等の保護装置を備えることが前提になる。発電の種類(水力・火力・風力・太陽光等)によって、どの方式を採用でき、出力にどの程度の制限が付くかは個別に定められているため、具体的な数値は電気設備技術基準の解釈の最新版で確認すること
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