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機械 ・ 7 / 16

直流発電機の原理と特性

読み終えると、こうなる

制御盤や機械室で「昔はこうやって直流電源を作っていた」という直流発電機の仕組みを見て、なぜ今はほとんど使われなくなったかまで含めて説明できるようになる

  • 極数・導体数・磁束・回転速度から発電機の起電力Eを計算し、分巻発電機の界磁電流・負荷電流から電機子電流Iaを求められる
  • 無負荷時と定格負荷時の端子電圧から、電圧変動率を計算できる
  • 自己励磁発電機が電圧を立ち上げられない典型的な原因(残留磁気・界磁抵抗・結線極性)と、電機子反作用を緩和する実務的な対策(補償巻線・補極・ブラシ位置の移動)を説明できる
  • 直流機の固定子(界磁鉄心・継鉄)と回転子(電機子・整流子)の構成、電機子鉄心に積層鉄心が使われる理由、重ね巻・波巻の使い分けを説明できる
考えてみよう

古いビルのエレベーター機械室や、更新前の工場設備の現場で、天井近くに大きな回転機が 2台、軸を連結されて並んでいるのを見かけることがある。片方はふつうの三相誘導電動機、 もう片方は——直流発電機だ。

なぜわざわざ交流電動機で直流発電機を回し、そこから直流を取り出していたのか。 交流の電気はすでに来ているのに、一度「回転」というワンクッションを挟んでまで 直流を作る必要が、いったいどこにあったのか。

このトピックを読み終えるころには、直流発電機がどうやって電気を生み出しているかを 式で説明でき、次のトピックにつながる伏線——なぜ今ではその役割の多くを半導体に 譲ったのか——まで見通せるようになっている。

種明かしの前半は、回転する導体が磁束を切るとそこに起電力が生まれるという、 電磁誘導のもっとも基本的な性質にある。

直流発電機の原理 — 回転する導体がつくる起電力

磁界の中で導体を動かすと、フレミングの右手の法則に従って導体に起電力が生じる。 直流発電機の電機子(回転する巻線)は、この原理で交流の起電力を生み出しているが、 それをそのまま外に取り出せば交流のままだ。ここで働くのが整流子とブラシで、 回転に合わせて接続を機械的に切り替えることで、外部から見ると常に同じ向きの 直流として取り出せるようにしている。

電機子全体で生まれる起電力の大きさは、次の式でまとまる。

E=pZΦN60aE = \frac{pZ\Phi N}{60a}

ppは極数、ZZは電機子の総導体数、Φ\Phiは1極あたりの磁束、NNは回転速度[min⁻¹]、 aaは巻線の並列回路数(波巻なら極数によらずa=2a=2、重巻ならa=pa=p)だ。 磁束が強いほど、導体の数が多いほど、そして速く回すほど、起電力は大きくなる—— という直感どおりの関係が、この1本の式にまとまっている。

例題

極数4、電機子総導体数300、1極あたりの磁束0.02Wb、回転速度1200min⁻¹、波巻(a=2a=2)の 直流発電機がある。この発電機の起電力はいくらか。

E=4×300×0.02×120060×2=28800120=240VE = \frac{4 \times 300 \times 0.02 \times 1200}{60 \times 2} = \frac{28800}{120} = 240\text{V}

直流機の構造 — 固定子と回転子、なぜ電機子鉄心は積層されているのか

起電力の式の中身に入る前に、直流機がどんな部品で組み立てられているかを押さえておく。 直流機は大きく固定子回転子の2つに分かれ、それぞれ役割の違う部品で構成されている。

  • 固定子:界磁巻線を巻きつける界磁鉄心(主磁極)と、磁気回路を閉じる外殻である 継鉄(ヨーク)からなる。ここで直流の界磁電流をつくり、一定方向の磁束(界磁磁束)を つくり出す。
  • 回転子:電機子巻線を収める多数のスロットを持つ電機子鉄心(電機子)と、 回転に合わせて巻線の接続を切り替える整流子からなる。
「固定子=界磁(磁石をつくる側)」「回転子=電機子・整流子(起電力を生み、外部に取り出す側)」 という対応を先に固定しておくと、直流機の構造に関する穴埋め問題で語句を取り違えにくい。

回転子側の電機子鉄心には、もう1つ押さえておきたい工夫がある。積層鉄心だ。電機子は 回転しているため、界磁から見た電機子鉄心内部の磁束の向きは絶えず変化する交番磁束になる。 無垢の鉄塊のままだと、この交番磁束によって鉄心内部に大きなうず電流が流れ、うず電流損 として発熱・損失につながってしまう。そこで、薄い鋼板を1枚ずつ絶縁して重ね合わせた積層鉄心を 使うことで、うず電流の通り道を断ち切り、損失を抑えている。一方、継鉄のように磁束の変化が 比較的少ない部分では、電機子鉄心ほど積層の必要性は高くない。

電機子巻線の接続方法にも、重ね巻と波巻の2種類がある。重ね巻は並列回路数aaが極数ppと 同じになり(a=pa=p)、多くの並列回路で大きな電流を扱いやすい。波巻は並列回路数が極数に 関係なく常にa=2a=2になり、少ない電流で高い電圧を得やすい——大電流機には重ね巻、 高電圧機には波巻、という使い分けの背景にはこの並列回路数の違いがある。

界磁の与え方 — 他励と自励(分巻・直巻・複巻)

起電力の式の中のΦ\Phi(磁束)は、界磁巻線に流す電流でつくられる。この界磁電流を どこから取るかで、発電機は性格の違う何種類かに分かれる。

  • 他励:界磁巻線を、電機子とは別の外部電源につないで励磁する。電機子側の状態に 関係なく磁束を独立して制御できる。
  • 分巻:界磁巻線を電機子(端子)に並列に接続し、発電機自身の出力電圧で 励磁する。追加の電源が要らない代わりに、負荷をかけると端子電圧がわずかに下がり、 界磁電流もそれに応じて変化する。
  • 直巻:界磁巻線を負荷回路に直列に接続し、負荷電流そのものを界磁電流として 使う。負荷が変わると磁束が大きく変わるため、単独では電圧が安定しにくい。
  • 複巻:分巻と直巻の界磁巻線を両方持ち、双方の特性を組み合わせる。

分巻発電機では、界磁巻線が電機子の出口(ブラシ)に並列に接続されているため、 電機子はブラシから見て「負荷側」と「界磁側」の2方向に電流を供給していることになる。

Ia=IL+IfI_a = I_L + I_f
Ia = IL + If という関係は、理論科目で学んだキルヒホッフの電流則をブラシという1つの 分岐点に当てはめただけのものだ。ブラシに流入する電流(電機子電流Ia)は、ブラシから 流出する電流の合計(負荷側ILと界磁側If)に必ず等しい。丸暗記ではなく、回路図の 分岐点として見れば、この式は自然に導ける。

例題

端子電圧200V、界磁抵抗100Ω、負荷電流50Aの分巻発電機がある。この発電機の電機子電流は いくらか。

If=VRf=200100=2A,Ia=IL+If=50+2=52AI_f = \frac{V}{R_f} = \frac{200}{100} = 2\text{A}, \quad I_a = I_L + I_f = 50 + 2 = 52\text{A}

電圧変動率と電機子反作用 — 負荷をかけると電圧はどれだけ下がるか

発電機に負荷をかけると、電機子巻線の抵抗による電圧降下(IaRaI_aR_a)に加えて、 電機子反作用と呼ばれる現象が働く。電機子に流れる電流自身がつくる磁束が、界磁が つくる主磁束に重なって磁束の分布を歪ませ、実質的な磁束をわずかに減らす方向に働く。 その結果、負荷をかけたときの端子電圧は、単純なIaRaI_aR_aの計算だけで見積もるより さらに下がりやすい。

この「負荷をかけると電圧がどれだけ下がるか」を表す指標が電圧変動率だ。

ε=E0VV×100[%]\varepsilon = \frac{E_0 - V}{V} \times 100\,[\%]

E0E_0は無負荷時の端子電圧、VVは定格負荷時の端子電圧を表す。

例題

ある直流発電機の無負荷時端子電圧は220V、定格負荷時の端子電圧は200Vだった。この発電機の 電圧変動率はいくらか。

ε=220200200×100=10%\varepsilon = \frac{220 - 200}{200} \times 100 = 10\%

自己励磁が起きないとき — 電圧が立ち上がらない3つの原因

分巻発電機のように自分自身の出力で界磁を励磁する自己励磁方式は、実は少し不思議な 仕組みで動いている。回り始めた瞬間は界磁電流がまだゼロのはずなのに、そこからどうやって 電圧が育っていくのか。答えは、鉄心にわずかに残っている残留磁気にある。残留磁気が 生む小さな起電力が界磁電流をわずかに流し、それがさらに磁束を強め、起電力を増やし……と 連鎖的に電圧が立ち上がっていく。

この連鎖が起きるには、次の3条件がそろう必要がある。

  1. 電機子に残留磁気が残っていること
  2. 界磁抵抗が、電圧が発散的に立ち上がれる限界の値(臨界界磁抵抗)より小さいこと
  3. 界磁の結線極性が、残留磁気による磁束を打ち消さず強め合う向きになっていること

このどれか1つでも欠けると、発電機を回しても電圧はいつまでも立ち上がらない。

電機子反作用の緩和策 — 補償巻線・補極・ブラシ移動

電機子反作用は、電機子電流がつくる磁束が界磁の主磁束に重なることで、磁束の分布を歪ませる現象だった。この歪みを放置すると、整流(ブラシで巻線の接続が切り替わる瞬間)のタイミングがずれて火花が生じたり、実効的な磁束が変化して起電力が不安定になったりする。実務では、この影響を緩和するために次の3つの対策が組み合わせて使われる。

  • 補償巻線:主磁極の磁極片(ポールシュー)の表面に設けた巻線に、電機子電流をそのまま流す。電機子電流がつくる歪みを、位置的に近いところで直接打ち消すのが狙いで、大容量の直流機ほど効果が大きい。
  • 補極:N極とS極の間(幾何学的中性点の付近)に小さな磁極を追加し、そこに巻いたコイルに電機子電流を流す。主な狙いは整流の改善——ブラシが接触を切り替える瞬間に、ちょうど良い向きの磁束を補って火花の発生を抑える。
  • ブラシの位置移動:ブラシの位置そのものを、電機子反作用でずれた実際の中性点に合わせて動かす。補償巻線や補極を追加しない小容量機では、この方法だけで対応することもある。
補償巻線と補極は、どちらも「電機子電流を巻線に流す」という共通点があるため混同しやすいが、設置場所と主な狙いが違う。補償巻線は主磁極の表面にあり、磁束の歪みそのものを打ち消す。補極はN極とS極の間の隙間にあり、主に整流時の火花対策として働く。両方を備える中〜大容量の直流機では、この2つが役割分担している、と覚えておくとよい。

なぜ今、直流発電機はほとんど姿を消したのか

かつて、直流電動機の速度を滑らかに変えたい場面(エレベーターやクレーン、圧延機など) では、直流発電機の界磁電流を加減して発生電圧そのものを連続的に変化させ、それを 電動機に供給するという方式(ワードレオナード方式)が使われていた。半導体による 電力変換がまだなかった時代、「回転機の界磁を加減する」ことが、直流電圧を滑らかに 変える唯一に近い実用的な手段だったからだ。

制御盤や電源装置の中を今のぞいても、この種の回転機セットにはまず出会わない。 代わりにそこにあるのは、ダイオードやサイリスタで交流を直流に変える整流回路だ。 「回転で電圧をつくる」という直流発電機の役割は、半導体による整流回路へとほぼ 置き換わっている。この置き換えの中身は、次のトピックで扱う。

冒頭で見た「なぜ回転機を2台連結してまで直流を作っていたのか」——答え合わせは 理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 分巻発電機の電機子電流を Ia = IL − If としてしまう

    なぜ引っかかる「界磁にも電流を取られるのだから、電機子電流は負荷電流より少なくなるはずだ」という直感で考えると、引き算にしてしまいやすい。実際には界磁巻線もブラシ(電機子の出口)から分岐しているため、電機子は負荷分と界磁分の両方を合わせて供給しなければならない。

    見破り方回路図で、ブラシから出た電流が「負荷側」と「界磁側」の2方向に分かれる分岐点になっていることを確認する。キルヒホッフの電流則をそのまま当てはめれば、流入する電機子電流Ia=流出する電流の合計(IL+If)と、機械的に導ける。

  2. 自己励磁発電機の始動失敗の原因を「界磁抵抗が小さすぎたため」だと考えてしまう

    なぜ引っかかる界磁抵抗と電圧確立の関係を漠然と逆向きにとらえていると、実際には界磁抵抗が臨界界磁抵抗を超えて大きすぎることが電圧が立ち上がらない典型的な原因である、という向きを取り違える。

    見破り方自己励磁の3条件(残留磁気があること・界磁抵抗が臨界抵抗より小さいこと・界磁の結線極性が残留磁気を強め合う向きであること)を先に思い出し、どれが欠けているのかを1つずつ確認する。

  3. 電機子反作用による中性点の移動方向を、発電機と電動機で逆に覚え違える

    なぜ引っかかる発電機では回転方向に、電動機では回転方向と逆にずれるという「向きが逆」の関係を、どちらがどちらか機械的に暗記していると入れ替わりやすい。

    見破り方自分なりの覚え方を1つ決めておき、次のトピック(直流電動機)で同じ現象と比較して、向きが逆になっていることを確認する。

  4. 補償巻線と補極の役割・設置位置を混同する

    なぜ引っかかるどちらも「電機子反作用を緩和するために、電機子電流を巻線に流す」という共通点があるため、設置場所や狙いの違いを曖昧に覚えてしまいやすい。

    見破り方補償巻線は界磁磁極片(主磁極の表面)に設け、電機子反作用そのもの(磁束分布の歪み)を直接打ち消す。補極はN極とS極の間の隙間に設け、主に整流(ブラシで切り替わる瞬間の火花)を改善する目的で使われる、という設置位置と狙いの違いで区別する。

  5. 電機子鉄心が積層される理由を『軽量化のため』『整流子との接触抵抗を下げるため』など、うず電流損とは無関係な理由だと誤解する

    なぜ引っかかる『積層=薄くして軽くする』という漠然としたイメージが先に立つと、実際の目的(回転にともなう交番磁束によるうず電流損の低減)を見落としやすい。

    見破り方電機子は回転するため、界磁から見た電機子鉄心内部の磁束の向きは絶えず変化する交番磁束になる、という点を先に思い出す。無垢の鉄塊のままだと、この交番磁束が鉄心内部に大きなうず電流を生んで発熱・損失につながるため、薄い鋼板を絶縁して積み重ねることでうず電流の経路を断ち切っている、という因果関係で理解する。

参考文献・出典

理解度チェック(9問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、9問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用2問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 9 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 起電力の式:E = pZΦN/(60a)(p=極数、Z=総導体数、Φ=磁束、N=回転速度、a=巻線の並列回路数)
  2. 分巻発電機の電機子電流:Ia = IL + If(電機子は負荷電流と界磁電流の両方を供給する)
  3. 電圧変動率:ε = (E0 - V)/V × 100[%](無負荷時端子電圧E0と定格負荷時端子電圧Vの差で、負荷をかけたときの電圧の下がり具合を表す)
  4. 電機子反作用により、真の中性点は発電機では回転方向にずれる
  5. 自己励磁発電機が電圧を立ち上げるには、残留磁気があること・界磁抵抗が臨界抵抗より小さいこと・結線の極性が残留磁気を強め合う向きであることの3条件がそろう必要がある
  6. 電機子反作用を緩和する代表的な対策は3つ:界磁磁極片に補償巻線を設けて電機子電流を流す方法、界磁のN極とS極の間に補極を設けてそこに電機子電流を流す方法、ブラシの位置を適切な位置へ移動させる方法
  7. 直流機の固定子は、界磁巻線を巻く界磁鉄心と、磁気回路を閉じる継鉄(ヨーク)で構成される。回転子は、電機子巻線を収める電機子鉄心(電機子)と、整流子で構成される
  8. 電機子鉄心には、回転にともなって向きが変化する交番磁束が通るため、うず電流損を減らす目的で薄い鋼板を絶縁して重ねた積層鉄心が使われる。磁束の変化が少ない継鉄では、電機子鉄心ほど積層の必要性は高くない
  9. 電機子巻線の重ね巻(並列回路数a=極数p)は大電流・低電圧向き、波巻(並列回路数a=2、極数によらず一定)は低電流・高電圧向きという使い分けがある
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