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機械 ・ 12 / 16

電熱(抵抗加熱・誘導加熱)

読み終えると、こうなる

電気ヒーターや誘導加熱炉を見たとき、電気がどんな経路をたどって熱に変わっているかを、電流が流れる先の違いから言い当てられるようになる

  • 電流・抵抗・通電時間からジュール熱を計算し、変換効率や顕熱(Q=mcΔT)・潜熱(融解熱・気化熱)を踏まえて必要な電力・時間を逆算でき、直接抵抗加熱・間接抵抗加熱・誘導加熱の違いも電流が流れる経路の観点で説明できる
  • 熱の伝わり方を電気回路とのアナロジー(温度差⇔電圧、熱流⇔電流、熱抵抗⇔電気抵抗)で捉えて定常状態の熱伝導による熱流を計算でき、熱媒体を必要としない熱放射(ステファン・ボルツマンの法則)による熱流も計算できる
  • 誘導加熱で被加熱物が加熱されやすいかどうかを、透磁率・電気抵抗率・周波数(表皮効果)の観点から説明できる
  • ヒートポンプの成績係数(COP)を使い、消費電力量から供給熱量・加熱後の水温を計算できる
考えてみよう

電気ヒーターは、電源コードを通じて流れてきた電流が発熱体を熱くし、その熱が空気や 被加熱物に伝わって温める。一方、IH調理器や誘導加熱炉は、被加熱物に電極もコードも 接触させないまま、被加熱物そのものを内側から発熱させる。

同じ「電気で熱を作る」仕組みなのに、片方は電極を接触させ、もう片方は接触させない。 電流が一切流れ込んでいないはずの金属が、なぜひとりでに発熱するのか。

このトピックを読み終えるころには、電気ヒーターや誘導加熱の仕組みを見て、電気がどんな 経路をたどって熱に変わっているかを言い当てられるようになっている。

種明かしは、電気を熱に変える経路が1つではないという点にある。電流が被加熱物自身を 流れるか、別の発熱体を流れるか、それとも磁界だけで誘導されるか——この違いが、 抵抗加熱と誘導加熱を分けている。

ジュール熱 — 電気エネルギーが、そのまま熱エネルギーになる

電流が抵抗を流れると、電気エネルギーの一部(あるいは全部)が熱に変わる。この熱量は、 電流・抵抗・通電時間から次の式で求まる。

Q=I2Rt=VIt[J]Q = I^2 R t = VIt \quad \text{[J]}

例題

5Aの電流を20Ωの抵抗に2分間(120秒)流したとき発生する熱量は何Jか。

Q=52×20×120=25×20×120=60000J=60kJQ = 5^2 \times 20 \times 120 = 25 \times 20 \times 120 = 60000\text{J} = 60\text{kJ}
投入した電気エネルギーの全部が、被加熱物の温度上昇に使われるとは限らない。放熱などの 損失があれば、実際に有効な熱として使われるのは変換効率η分だけになる。 問題文に「効率」の指定があれば、Q有効 = η × VIt と、効率をかけ忘れないことが検算の要になる。

温度上昇に必要な熱量 — Q = mcΔT との組み合わせ

被加熱物の温度を上げるのに必要な熱量は、質量・比熱・温度上昇幅から求まる。

Q=mcΔTQ = mc\Delta T

このQ=mcΔTと、電気エネルギーの式Q=VItを効率ηでつなげば、「目標の温度上昇に必要な 電力・時間」を逆算できる。

例題

消費電力2kW、変換効率90%の電気ヒーターで、5kgの水(比熱4.2kJ/(kg・K))を20℃から 80℃(ΔT=60℃)まで温める。必要な通電時間は何秒か。

Q=mcΔT=5×4.2×60=1260kJQ = mc\Delta T = 5 \times 4.2 \times 60 = 1260\text{kJ} 入力エネルギー=Qη=12600.9=1400kJ=1,400,000J\text{入力エネルギー} = \frac{Q}{\eta} = \frac{1260}{0.9} = 1400\text{kJ} = 1{,}400{,}000\text{J} t=1,400,0002000=70011.7t = \frac{1{,}400{,}000}{2000} = 700\text{秒} \approx 11.7\text{分}

潜熱 — 温度を上げずに、状態だけを変える熱もある

ここまで見たQ=mcΔTは、物質の温度を変化させる熱量(顕熱)だった。だが熱が 必ず温度上昇に使われるとは限らない。氷が0℃のまま水に変わる(融解)、水が100℃のまま 水蒸気に変わる(蒸発)——こうした状態変化(相変化)の間、物質の温度は一定に 保たれたまま、状態を変えるためだけに熱が使われる。この熱を潜熱と呼び、単位質量 あたりの潜熱量を融解熱気化熱という。

Q=mLQ = mL

mmは質量[kg]、LLは単位質量あたりの融解熱(または気化熱)[J/kg]。

「0℃の氷が0℃の水になる」と聞くと、温度変化ΔTがゼロだからQ=mcΔTでQ=0になりそうに 見える。だがこれは誤り。温度が変わらない区間は顕熱の式そのものが当てはまらず、 状態変化専用の式Q=mLに切り替える必要がある。「温度が変わる場面か、状態が変わる場面か」を 先に見分けてから、使う式(顕熱か潜熱か)を選ぶ癖をつけたい。

例題(自作の数値例)

0℃の氷2kgを、融解熱334kJ/kgとしてすべて0℃の水に変えるのに必要な熱量は、

Q=mL=2×334=668kJQ = mL = 2 \times 334 = 668\text{kJ}

これを効率ηの電熱装置で作るのに必要な電力・時間も、これまでと同じように Q入力=Q/ηQ_{\text{入力}} = Q/\etaの関係で逆算できる。熱効率80%の電熱装置で、消費電力1.4kWを 使う場合の通電時間は、

Q入力=6680.8=835kJ=835,000J,t=835,00014005969.9Q_{\text{入力}} = \frac{668}{0.8} = 835\text{kJ} = 835{,}000\text{J}, \qquad t = \frac{835{,}000}{1400} \approx 596\text{秒} \approx 9.9\text{分}

抵抗加熱 — 電流が流れる先で、直接と間接に分かれる

抵抗加熱は、抵抗によるジュール熱を利用する加熱方式だが、電流がどこを流れるかで2つに 分かれる。

  • 直接抵抗加熱:被加熱物自体を回路の一部として電流を直接流し、被加熱物自身の抵抗損失で 発熱させる方式
  • 間接抵抗加熱:ニクロム線などの専用の発熱体に電流を流し、その熱を放射・伝導によって 被加熱物に伝える方式(家庭用・業務用の電気ヒーターの多くはこちら)
直接と間接を混同しそうになったら、「電流が最終的にどこを流れているか」で切り分ける。 被加熱物そのものが回路の一部(=電流の通り道)になっていれば直接、被加熱物とは別の 発熱体が通り道になっていれば間接だ。

誘導加熱 — 電極を使わず、磁界だけで発熱させる

誘導加熱は、コイルに交流電流を流して作る交番磁界によって、被加熱物(導電性の材料)の 内部に渦電流を誘導し、その渦電流が流れることで生じる抵抗損失(ジュール熱)で被加熱物 自身を発熱させる方式だ。直接抵抗加熱・間接抵抗加熱のどちらとも違い、被加熱物に電極を 接触させる必要が一切ない非接触方式である点が最大の特徴になる。

誘導加熱の「加熱されやすさ」— 透磁率・周波数・材質の効き方

誘導加熱がどれだけ効率よく被加熱物を発熱させられるかは、被加熱物の性質と、交番磁界の周波数の組み合わせで決まる。

  • 透磁率:被加熱物の透磁率が高いほど(鉄などの強磁性体)、磁束が被加熱物に集中しやすく、加熱されやすい。銅・アルミのような非磁性体(透磁率が真空とほぼ同じ)は、この点で加熱されにくい。
  • 電気抵抗率:被加熱物の電気抵抗率が大きいほど、同じ誘導電流でもジュール熱(I2RI^2R)が大きくなりやすく、加熱に有利に働く。
  • 周波数(表皮効果):交番磁界の周波数が高いほど、誘導電流は被加熱物の表面近くに集中する(表皮効果)。周波数を上げても、内部まで加熱されやすくなるわけではなく、むしろ表面だけが集中的に加熱される方向に働く。

鉄は、銅・アルミに比べて透磁率が高く電気抵抗率も大きいため、この両方の点で加熱されやすい。鍋やフライパンの底に鉄やステンレスが使われることが多いIH調理器も、この性質を利用している。

「周波数を上げれば、より強く・より深く加熱できる」という直感は誘導加熱には当てはまらない。周波数はあくまで『表面に集中させるか、内部まで浸透させるか』という加熱の**分布**を左右するパラメータだ。焼き入れのように表面だけを硬化させたい用途では高い周波数、鍛造前の鋼材を芯まで加熱したい用途では低めの周波数、というように目的に応じて使い分けられている。

熱回路のアナロジー — 熱の伝わり方を電気回路として捉える

ここまでの式は「発熱」そのものの計算だったが、発生した熱がどれだけ伝わりやすいかを 考えるときは、電気回路とのアナロジーで捉えると理解しやすい。電気系と熱系には、 次のような対応関係がある。

電気系の量熱系の量
電圧V [V]温度差θ [K]
電気量Q [C]熱量Q [J]
電流I [A]熱流Φ [W]
導電率σ [S/m]熱伝導率λ [W/(m・K)]
電気抵抗R [Ω]熱抵抗R_T [K/W]
静電容量C [F]熱容量C [J/K]
電気量Q[C]と熱量Q[J]は同じ記号Qを使うため混同しやすいが、対応関係は「総量どうし」 「単位時間あたりどうし」で仕分けると整理できる。電流I[A]は単位時間あたりに流れる 電気量なので、対応するのは単位時間あたりに移動する熱量=熱流Φ[W]であり、熱量Q[J] (電気量Qに対応)とは別の量になる。

温度差があるところには熱が流れる。定常状態(温度分布が時間的に変化しなくなった状態) では、熱流Φと温度差θ、熱抵抗R_Tの関係は、オームの法則I=V/Rとそのまま同じ形で表せる。

Φ=θRT\Phi = \frac{\theta}{R_T}

平板を熱が伝わる場合の熱抵抗R_Tは、電気抵抗R=L/(σA)(L:長さ、σ:導電率、A:断面積)と 同じ形で、厚さL・熱伝導率λ・断面積Aから求まる。

RT=LλAR_T = \frac{L}{\lambda A}

例題(自作の数値例)

厚さ4mm、断面積0.05m²の平板があり、熱伝導率が0.2W/(m・K)である。この平板の両面に 30Kの温度差を与えたときの定常熱流Φを求める。

RT=0.0040.2×0.05=0.0040.01=0.4K/WR_T = \frac{0.004}{0.2 \times 0.05} = \frac{0.004}{0.01} = 0.4\text{K/W} Φ=θRT=300.4=75W\Phi = \frac{\theta}{R_T} = \frac{30}{0.4} = 75\text{W}

電気回路のオームの法則がそのまま使えるので、電気系の感覚で熱の伝わりやすさを 見積もれるようになる。

熱放射 — 熱媒体を介さず、真空中でも熱を伝える

ここまで見てきた熱伝導・熱伝達(対流)は、どちらも熱を運ぶ媒体(固体や流体)が 必要な伝わり方だった。これに対し熱放射は、電磁波の形で熱エネルギーが直接飛んでいく 現象であり、熱媒体をまったく必要とせず、真空中でも熱を伝達できる。太陽光が 何もない宇宙空間を越えて地球を温めているのは、この熱放射によるものだ。

高温側の温度T2T_2[K]・面積S2S_2[m²]の面と、低温側の温度T1T_1[K]・面積S1S_1[m²]の面が 向かい合っている場合、その間を熱放射で伝わる熱流Φ\Phi[W]は、次の式で表される。

Φ=S2F21σ(T24T14)\Phi = S_2 F_{21} \sigma (T_2^4 - T_1^4)
  • F21F_{21}形態係数。2つの面がどれだけ向かい合っているか(幾何学的な位置関係)を表す係数
  • σ\sigmaステファン・ボルツマン定数[W/(m²・K⁴)]。物理定数として与えられる
熱伝導の式$\Phi=\theta/R_T$は温度差$\theta$($T_2-T_1$)の**1乗**に比例していたのに対し、 熱放射の式は絶対温度の**4乗の差**($T_2^4-T_1^4$)に比例する。この指数の違いが、 熱伝導と熱放射を混同しないための最大の手がかりになる。$(T_2-T_1)^4$のように温度差を 先に引いてから4乗するのではなく、$T_2^4$と$T_1^4$をそれぞれ計算してから引き算する、 という計算の順序も間違えやすいポイントだ。

例題(自作の数値例)

高温側の温度300K・面積0.02m²の面と、低温側の温度200Kの面が向かい合っている (形態係数F21=1F_{21}=1とする)。ステファン・ボルツマン定数を5.67×1085.67\times10^{-8}W/(m²・K⁴) として、熱放射による熱流Φ\Phiを求める。

T24=3004=8.1×109,T14=2004=1.6×109T_2^4 = 300^4 = 8.1\times10^9, \qquad T_1^4 = 200^4 = 1.6\times10^9 Φ=0.02×1×5.67×108×(8.1×1091.6×109)=0.02×5.67×108×6.5×1097.37W\Phi = 0.02 \times 1 \times 5.67\times10^{-8} \times (8.1\times10^9-1.6\times10^9) = 0.02\times5.67\times10^{-8}\times6.5\times10^9 \approx 7.37\text{W}
$T_2^4$と$T_1^4$をそれぞれ先に計算してから差を取ること。$(T_2-T_1)^4=100^4$のように、 先に温度差を計算してから4乗してしまうと、まったく違う(小さすぎる)値になる。逆に $T_1^4$を引き算し忘れて$T_2^4$だけを使うと、値を過大に見積もってしまう。この2つの 計算順序の誤りは、熱放射の計算でもっとも起こりやすいミスだ。

ヒートポンプと成績係数(COP)— 消費電力より多くの熱を運ぶからくり

ここまで見てきたジュール熱による加熱は、投入した電気エネルギーをそのまま熱に変える 方式だった。だがヒートポンプは違う発想で動く。エアコンやヒートポンプ式給湯器は、 消費した電力を熱に変えているのではなく、その電力を使って大気などの外部から熱を 汲み上げ、移動させている——冷蔵庫が庫内の熱を外へ汲み出しているのと同じ原理を、 逆向き(外の熱を汲み入れる向き)に使っている。

このため、ヒートポンプが実際に生み出す(移動させる)熱量QQは、投入した電力量 WW(=消費電力PP×時間tt)そのものより大きくなりうる。その比を成績係数 (COP:Coefficient Of Performance)と呼ぶ。

Q=COP×W=COP×P×tQ = \text{COP} \times W = \text{COP} \times P \times t

COPは1を超えるのが普通で、同じ消費電力の電気ヒーター(電気エネルギーをそのまま熱に 変えるだけなので、実質COP=1に相当する)よりも、はるかに多くの熱を作り出せる。 これが、給湯やエアコンの分野でヒートポンプ方式が省エネルギーとされる理由だ。

COPを見たら、必ず「投入した電力量そのものではなく、COP倍した熱量が得られる」と 読み替える癖をつけたい。COPが1より大きい値として問題文に与えられている時点で、 答えとなる熱量は消費電力量の数値よりも大きくなるはずだ、と先に見当をつけておけば、 COPを掛け忘れる誤りに気づきやすい。

例題(自作の数値例)

消費電力1.5kWのヒートポンプ式電気給湯器を5時間運転し、温度18℃、体積0.4m³の水を 加熱する。COPは4.2、水の比熱は4.2×1034.2\times10^3J/(kg・K)、密度は1.0×1031.0\times10^3kg/m³ とする。

まず消費電力量を求める。

W=P×t=1500×(5×3600)=1500×18000=27,000,000J=27MJW = P \times t = 1500 \times (5\times3600) = 1500\times18000 = 27{,}000{,}000\text{J} = 27\text{MJ}

COPを掛けて、実際に水の加熱に使われた熱エネルギーを求める。

Q=COP×W=4.2×27=113.4MJQ = \text{COP}\times W = 4.2\times27 = 113.4\text{MJ}

このQを使って、これまでと同じQ=mcΔTの逆算で温度上昇を求める。水の質量は m=0.4×1000=400m=0.4\times1000=400kg。

ΔT=Qmc=113,400,000400×4200=113,400,0001,680,000=67.5\Delta T = \frac{Q}{mc} = \frac{113{,}400{,}000}{400\times4200} = \frac{113{,}400{,}000}{1{,}680{,}000} = 67.5\text{℃}

加熱後の水温は、初期温度18℃にこの上昇分を足して、

18+67.5=85.518 + 67.5 = 85.5\text{℃}
もしCOPを掛け忘れて消費電力量27MJだけで計算すると、ΔT=27,000,000/1,680,000≒16.1℃、 加熱後の温度は18+16.1≒34.1℃と、実際の85.5℃よりはるかに低い値になってしまう。 COPという1つの係数を掛けるかどうかで、答えが2倍以上変わる——それだけヒートポンプの 熱の生み出し方は、電気ヒーターの単純な発熱とは違う仕組みだということだ。

なぜ電材業界の実務でこれが効いてくるのか

業務用の電気ヒーターや電気炉を選定する場面では、カタログに載っている消費電力だけでは 「目標の温度までどのくらいの時間で上がるか」は分からない。変換効率と比熱を組み合わせた Q=mcΔTの逆算ができれば、消費電力・通電時間・被加熱物の質量のどれかが決まっていれば 残りを見積もれるようになる。また、誘導加熱設備の問い合わせで「電極はどこに接続するのか」 と聞かれたとき、誘導加熱がそもそも非接触の方式であることを説明できるかどうかも、 専門商社としての信頼に関わってくる。

冒頭で出した「電気がどんな経路をたどって熱に変わっているか」——答え合わせは理解度チェックの 最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 電気エネルギー(VIt)がそのまま加熱に使われたものとして計算し、変換効率を掛け忘れる

    なぜ引っかかる投入した電気エネルギーの全部が、必ずしも被加熱物の温度上昇に使われるわけではない。放熱などの損失がある場合、実際に有効な熱として使われるのは効率η分だけであることを見落としやすい。

    見破り方問題文に「効率」「熱損失」の記載があるかを必ず確認する。入力エネルギー(VIt)と、実際に温度上昇に使われた有効熱量(η×VIt)を区別してから式を立てる。

  2. 誘導加熱を「電極を被加熱物に接触させ、直接電流を流す加熱」だと誤解する

    なぜ引っかかる「加熱=電流を流す」というイメージが先にあると、誘導加熱も電極を使う方式だと思い込みやすい。実際は交番磁界だけで被加熱物内部に渦電流を誘導する、非接触の方式である点が見落とされがちだ。

    見破り方「電極」「接触」の有無を確認する。誘導加熱はコイルが作る交番磁界だけで加熱でき、被加熱物に電極を接触させる必要が一切ない——この非接触性が、直接抵抗加熱との最大の違いになる。

  3. 直接抵抗加熱と間接抵抗加熱を、名前の響きだけで逆に覚えてしまう

    なぜ引っかかるどちらも「抵抗発熱」という共通点を持つため、電流が流れる対象(被加熱物自身か、別の専用発熱体か)の違いが曖昧になりやすい。

    見破り方電流が最終的にどこを流れるかで区別する。「被加熱物そのもの」に電流を流すなら直接抵抗加熱、「ニクロム線などの専用発熱体」に電流を流し、その熱を放射・伝導で被加熱物に伝えるなら間接抵抗加熱。

  4. 氷を水に変える熱量の計算に、顕熱の式Q=mcΔTをそのまま使ってしまう(ΔT=0なので熱量ゼロだと誤答する)

    なぜ引っかかる0℃の氷が0℃の水になる過程は、温度変化ΔTがゼロに見えるため、Q=mcΔTに機械的に代入するとQ=0という誤った結論に達しやすい。だが実際には状態変化(融解)そのものに熱が使われており、温度が変わらないからといって熱量がゼロなわけではない。

    見破り方『温度が変わる場面か、状態(固体⇔液体、液体⇔気体)が変わる場面か』を先に見分ける。温度が変わる区間はQ=mcΔT(顕熱)、状態が変わる区間はQ=mL(潜熱)——同じ加熱でも区間ごとに使う式が違う、と切り分けて考える。

  5. 電気系と熱系のアナロジーで、電流I[A]に対応する熱系の量を熱量Q[J]だと勘違いする

    なぜ引っかかる電気量Q[C]と熱量Q[J]がどちらも同じ記号Qで表されるため、『電流に対応するのは熱のQでは』と直感的に結びつけてしまう。だが電流I[A]は単位時間あたりに流れる電気量であり、これに対応するのは単位時間あたりに移動する熱量=熱流Φ[W]である。熱量Q[J]が対応するのは電気量Q[C]の方だ。

    見破り方『単位時間あたりの量か、総量か』で仕分ける。電流[A]・熱流[W]は単位時間あたり(=仕事率と同じ次元)、電気量[C]・熱量[J]はある時間内の総量。対応表を丸暗記せず、単位(A・W なのか、C・J なのか)から機械的に仕分ければ取り違えない。

  6. 誘導加熱で、交番磁界の周波数を高くするほど被加熱物の内部まで加熱されやすくなると誤解する

    なぜ引っかかる『周波数が高い=エネルギーが大きい=よく加熱される』という漠然とした連想から、周波数を上げれば加熱範囲も広がる(内部まで届く)と考えやすい。実際には表皮効果により、周波数が高いほど誘導電流は被加熱物の表面近くに集中し、内部までは流れにくくなる。

    見破り方表皮効果(周波数が高いほど電流が表面に集中する現象)を思い出す。深部まで加熱したい(厚みのある部材を芯まで加熱したい)用途では周波数を低めに、表面だけを焼き入れしたいような用途では周波数を高めに選ぶ、という使い分けがされている。

  7. ヒートポンプ給湯器の加熱エネルギーを求めるとき、COPを掛けずに消費電力量(P×t)をそのまま供給熱量として計算してしまう

    なぜ引っかかる『電気ヒーターの効率と同じように、消費した電力量がそのまま熱になる』という直接抵抗加熱の感覚を引きずると、ヒートポンプ特有の『COPを掛けて、外部からくみ上げた分まで含めた熱量になる』という関係を見落としやすい。

    見破り方問題文に『COP』『成績係数』という言葉が出てきたら、必ずQ=COP×P×tの形でCOPを掛ける計算だと確認する。COPが1より大きい値として与えられている時点で、供給熱量は消費電力量そのものより大きくなるはずだ、と先に見当をつけておく。

  8. 熱放射の式を熱伝導の式と混同し、温度差の1乗(T2−T1)に比例すると考えてしまう。または熱伝導と同様、熱媒体(空気や固体)が必要だと誤解する

    なぜ引っかかる『熱が伝わる=何かを介して伝わる』という直感が先に立つと、熱放射も熱伝導・熱伝達と同じく熱媒体を必要とすると思い込みやすい。また、これまで見てきた熱伝導の式(温度差θの1乗に比例)の印象が強いと、熱放射の式も同じ1乗の比例関係だと誤って一般化してしまう。

    見破り方熱放射は電磁波による熱の伝達であり、熱媒体を必要とせず真空中でも成立する(太陽光が真空の宇宙空間を越えて地球を温めるのと同じ仕組み)。また温度の効き方は1乗ではなく、絶対温度の4乗の差(T2⁴−T1⁴)である点を、熱伝導のΦ=θ/R_T(温度差の1乗に比例)とセットで対比して覚える。

参考文献・出典

理解度チェック(15問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、15問で確認しよう。 内訳は基本7問・応用7問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 15 問正解

覚えておきたいポイント

  1. ジュール熱:Q = I²Rt = VIt(J)。電気エネルギーがそのまま熱エネルギーに変わる基本式
  2. 実際に加熱に使われる熱量は、入力エネルギーに変換効率ηをかけた値:Q有効 = η × VIt
  3. 温度上昇に必要な熱量:Q = mcΔT(m:質量kg、c:比熱、ΔT:温度上昇)。効率と組み合わせれば必要な電力・時間を逆算できる
  4. 直接抵抗加熱は被加熱物自身に電流を流し、被加熱物自身の抵抗損失で発熱させる方式
  5. 誘導加熱は交番磁界で被加熱物内部に渦電流を誘導し、電極を使わず非接触でその抵抗損失により加熱する方式
  6. 誘導加熱の加熱されやすさは、被加熱物の透磁率が高いほど(強磁性体である鉄など)、電気抵抗率が大きいほど有利になる。周波数が高いほど表皮効果により電流が被加熱物の表面近くに集中し、内部までは加熱されにくくなる(内部までしっかり加熱したい用途にはむしろ低めの周波数が使われる)
  7. 物質が温度を変えずに状態(固体⇔液体など)だけを変えるときに使われる熱を潜熱と呼び、Q=mL(L:融解熱・気化熱など単位質量あたりの潜熱)で計算する。温度が変わるQ=mcΔT(顕熱)とは別の式であり、状態変化中は温度が一定に保たれる
  8. 熱の伝導は電気回路とのアナロジーで捉えられる:温度差θ⇔電圧V、熱流Φ[W]⇔電流I、熱抵抗R_T[K/W]⇔電気抵抗R、熱容量[J/K]⇔静電容量C。定常状態ではΦ=θ/R_T(オームの法則と同じ形)で熱流を計算でき、平板の熱抵抗はR_T=L/(λA)(L:厚さ、λ:熱伝導率、A:断面積)で求まる
  9. 熱放射は熱媒体を必要とせず、真空中でも熱を伝達する熱の伝わり方(熱伝導・熱伝達とは別の仕組み)。高温側の温度T2[K]・面積S2[m²]と低温側の温度T1[K]・面積S1[m²]が向かい合う場合の熱流Φ[W]は、Φ=S2×F21×σ×(T2⁴−T1⁴)で求まる(F21:形態係数、σ:ステファン・ボルツマン定数[W/(m²・K⁴)])。温度差の1乗ではなく、絶対温度の4乗の差に比例する点が熱伝導との決定的な違い
  10. ヒートポンプ式の給湯器・エアコンは、投入した電力を直接熱に変えるのではなく、大気などの外部から熱を汲み上げて移動させる装置。投入電力量W(=P×t)と得られる熱量Qの比を成績係数(COP)と呼び、Q=COP×Wという関係になる。COPは1を超えるのが普通で、同じ消費電力の電気ヒーター(実質COP=1相当)より多くの熱を運べる
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