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機械 ・ 6 / 16

同期電動機の原理と特性

読み終えると、こうなる

工場の力率改善設備を見たとき、進相コンデンサだけでなく「過励磁の同期電動機」も同じ役割を果たせる理由を説明できるようになる

  • 極数と周波数から、同期電動機の回転速度(脱調していない場合)を計算でき、誘導電動機との違い(すべりを持たず、常に同期速度で回る)も説明できる
  • 界磁電流(励磁)を強める・弱めることで、電機子電流の力率が進み側・遅れ側のどちらに動くかを説明でき、力率1で運転しているときの相電圧・同期リアクタンス・電機子電流から内部誘導起電力Eの大きさを等価回路(E=V-jXsI)を使って計算できる
  • 同期電動機がそのままでは自己始動できない理由と、実際に使われる始動法を説明できる
  • 負荷角と脱出トルクの関係、負荷急変で乱調が起こる仕組みと、制動巻線による乱調抑制の働きを説明できる
考えてみよう

工場の受変電設備には、力率を改善するための進相コンデンサが設置されていることが多い。 だが大型の設備では、コンデンサの代わりに「過励磁で運転している同期電動機」が 同じ役割を果たしていることがある。ただ電動機を回しているだけに見えるその機械が、 なぜコンデンサの代わりになれるのか。

そしてもう一つ。この電動機は、電源につないだ瞬間には自分の力で回り出すことすらできない。 励磁を与えれば磁石として力が働くはずなのに、なぜ自己始動できないのか。

このトピックを読み終えるころには、同期電動機が誘導電動機とどう違うのか、 そしてなぜ力率を自在に操れる機械になるのかを、原理から説明できるようになっている。

種明かしは、同期電動機が誘導電動機と違ってすべりを持たないという性質と、 界磁電流(励磁)の強さが電機子電流の位相そのものを動かすという性質にある。

誘導電動機との決定的な違い — すべりを持たない

同期電動機は、同期発電機と基本構造がよく似ている。固定子側に回転磁界を作る電機子巻線、 回転子側にDC励磁された界磁を持つ。この界磁の磁極が、固定子の回転磁界に同期して 追従することで回転する。

Ns=120fpN_s = \frac{120f}{p}

誘導電動機は、負荷が増えるとすべりが増え、回転速度がわずかに下がる。だが同期電動機は、 脱調(同期が外れること)しない限り、負荷の大小にかかわらず常に同期速度で回り続ける。 負荷が増えたときに変化するのは回転速度ではなく、内部の起電力と端子電圧の間の位相差 (負荷角)である。負荷角が広がりすぎると同期を保てなくなり、電動機は脱調する。

例題

8極の同期電動機を60Hzの電源で運転すると(脱調していない限り)、 Ns=120×60/8=900N_s = 120\times60/8 = 900rpm で回転し続ける。負荷を増やしても、この900rpmという 数値自体は変わらない。

「誘導電動機=すべりで速度が変わる」「同期電動機=速度は変わらず、負荷角が変わる」という 対比で覚えると、2つの電動機の違いを取り違えにくい。同期電動機の名前の由来そのものが、 この「常に同期速度で回る」という性質にある。

励磁とV曲線 — 界磁電流が、力率を自在に動かす

同期電動機のもう一つの特徴は、界磁電流(励磁)の強さを変えることで、電機子電流の 力率を進み側・遅れ側に動かせることにある。

  • 不足励磁(界磁電流を定格より弱くする):電機子電流は遅れ力率になる
  • 過励磁(界磁電流を定格より強くする):電機子電流は進み力率になる

負荷を一定にしたまま界磁電流を変化させ、電機子電流の大きさをグラフにすると、 力率1(電機子電流が最小)の点を底にしたV字型の曲線になる(V曲線)。

「過励磁は進み、不足励磁は遅れ」という対応は、コンデンサ(進み)とリアクトル(遅れ)の 性質に近いイメージで結びつけて覚えるとよい。過励磁の同期電動機が、あたかも巨大な 進相コンデンサのように振る舞える理由は、この対応そのものにある。

等価回路で内部起電力を求める — 発電機とは符号が逆になる

V曲線は「界磁電流を変えると力率がどちらに動くか」という定性的な関係だったが、同期電動機の 1相分の等価回路を使うと、相電圧・電機子電流・同期リアクタンスから内部誘導起電力(逆起電力) EEの大きさを実際に計算できる。電機子巻線抵抗を無視すると、等価回路は相電圧V˙\dot V・ 同期リアクタンスjXsjX_s・内部誘導起電力E˙\dot Eの直列回路で表せる。

V˙=E˙+jXsI˙\dot V = \dot E + jX_s\dot I

この式をE˙\dot Eについて解くと、

E˙=V˙jXsI˙\dot E = \dot V - jX_s\dot I

前のトピックで見た同期発電機の関係(E˙=V˙+jXsI˙\dot E = \dot V + jX_s\dot I)と、電圧降下の符号が になっている点に注意したい。発電機は内部起電力EE側が電源で、そこから外部(VV側)へ 電力が流れ出す。電動機は逆に、端子電圧VV側が電源で、そこから内部(EE側)へ電力が流れ込む ——電源側が反対になっているため、jXsI˙jX_s\dot Iの符号も反対になる。

発電機の等価回路に慣れていると、電動機でも同じ符号($E=V+jX_sI$)を使ってしまいやすい。 迷ったら「今、電力はどちら向きに流れているか」を先に確認する。発電機は$E\to V$、電動機は $V\to E$——この向きが逆であることが、そのまま電圧降下の符号が逆になる理由になっている。

力率1(電機子電流I˙\dot Iが相電圧V˙\dot Vと同位相)で運転しているときは、jXsI˙jX_s\dot Iの ベクトルがV˙\dot Vに対してちょうど90°ずれる。したがって、内部誘導起電力の大きさは 三平方の定理で求められる。

E=V2+(XsI)2|E| = \sqrt{V^2 + (X_sI)^2}

例題(自作の数値例)

ある三相同期電動機の1相分の等価回路で、相電圧V=100V=100V、同期リアクタンスxs=6Ωx_s=6\Omegaの 電動機を力率1で運転したところ、電機子電流I=8I=8Aになった。このときの内部誘導起電力EEは、

E=1002+(6×8)2=10000+2304=12304111VE = \sqrt{100^2 + (6\times8)^2} = \sqrt{10000+2304} = \sqrt{12304} \approx 111\text{V}

同期調相機 — 電動機なのに、力率改善設備として使う

同期電動機を無負荷に近い状態で過励磁運転すると、電動機は仕事(トルク)をほとんどせずに、 系統に進み無効電力だけを供給する状態になる。この使い方を同期調相機(synchronous condenser)という。工場の受変電設備で、進相コンデンサの代わりに、あるいはコンデンサと 組み合わせて力率改善に使われることがある。コンデンサと違って界磁電流を連続的に調整できるため、 必要な無効電力の量を細かく変えられる点が特徴だ。

なぜ自己始動できないのか

同期電動機は、静止した回転子にそのまま定格のDC励磁を与えただけでは、自分の力で 回り始めることができない。固定子の回転磁界に対して、静止した回転子の磁極が追従できず、 引力と反発力を交互に受けて、トルクの向きが周期的に反転してしまう。1周期の中でトルクを 平均するとゼロになり、正味の始動トルクが得られないためである。

このため、同期電動機の始動には別の仕組みが必要になる。代表的なのが、回転子に かご形誘導電動機と同じような制動巻線を追加し、始動時はこの巻線による誘導電動機的な トルクで回転数を上げ、同期速度に近づいたところで界磁のDC励磁を投入して同期に引き込む方法 (誘導始動)である。ほかにも、始動用の電動機で回転数を上げてから同期投入する方法や、 インバータで低い周波数から徐々に加速する方法が使われる。

脱出トルクと乱調 — 同期を保てる限界と、そこに至るまでの振動

同期電動機のトルクTT[N・m]は、負荷角δ\delta(内部の起電力と端子電圧の位相差)の 正弦(sinδ\sin\delta)に比例する。円筒形2極の同期電動機であれば、次の関係が成り立つ。

TsinδT \propto \sin\delta

負荷が増えるほどδ\deltaは広がっていくが、sinδ\sin\deltaδ=π/2\delta=\pi/2(90°)で最大値1を とる周期関数だ。したがって、このδ=π/2\delta=\pi/2で電動機のトルクは最大になる。同期電動機が 脱調せずに耐えられるこの最大トルクを脱出トルクという。δ\deltaがこれを超えて さらに広がると、トルクはむしろ減少していき、電動機は同期を保てなくなって脱調する ——この関係は、前のトピックで見た同期発電機の出力P=(EV/Xs)sinδP=(EV/X_s)\sin\deltaと、まったく 同じsinδ\sin\deltaの山型カーブに基づいている。

「負荷を増やせば増やすほどトルクも増え続ける」というイメージのまま負荷角δを考えると、 脱出トルクの意味を取り違えやすい。δ=π/2を境に、トルクと負荷角の関係は増加から減少へ 折り返す——この山の頂点にあたるトルクが脱出トルクであり、それ以上の負荷には同期を 保ったまま応えられない、という「限界値」の意味を持つ。

負荷が急激に変化すると、負荷角δ\deltaは新しい釣り合い点へ瞬時には落ち着かない。 回転子には慣性(はずみ)があるため、新たなδ\deltaを中心として、行き過ぎては戻り、 また行き過ぎては戻り……という周期的な変動が生じることがある。これを乱調と呼ぶ。 乱調は負荷の急変だけでなく、電源の電圧や周波数が変動した場合にも生じうる。

乱調を抑制する代表的な方法が、始動法のところで見た制動巻線をそのまま活用することだ。 制動巻線は始動時にはかご形導体として誘導始動トルクを生んでいたが、通常運転中に 負荷角が変動しようとする瞬間にも、回転磁界に対してわずかな相対運動が生じて誘導電流が 流れ、その振動を打ち消す方向のトルクを発生させる。ほかにも、回転部分にはずみ車 (フライホイール)を取り付けて回転子の慣性を大きくし、変動そのものを緩やかにする 方法も併用される。

制動巻線を「始動時だけの部品」だと思い込まないこと。始動時は誘導始動トルクを生む かご形導体として、通常運転中は乱調(周期的な負荷角の振動)を打ち消す制動要素として ——同じ1つの巻線が、場面によって異なる役割を果たしている。

冒頭の「過励磁の同期電動機がなぜコンデンサの代わりになれるのか」—— 答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 同期電動機も誘導電動機と同様に、負荷が増えるとすべりが生じて回転速度が下がると考えてしまう

    なぜ引っかかる誘導電動機で『負荷が増えるとすべりが増え、回転速度がわずかに下がる』という関係を学んだ直後だと、同期電動機にも同じ性質があると思い込みやすい。

    見破り方同期電動機は名前のとおり、脱調しない限り常に同期速度で回り続ける。負荷が増えて変化するのは回転速度ではなく、内部の起電力と端子電圧の位相差(負荷角)である、と区別して覚える。

  2. 過励磁(界磁電流を強める)と不足励磁で、力率が進み側・遅れ側のどちらに動くかを逆に覚える

    なぜ引っかかる『励磁を強める=出力が増える』という漠然とした連想から、力率の向きとの対応を取り違えやすい。

    見破り方V曲線を思い浮かべ、『過励磁は進み力率、不足励磁は遅れ力率』という対応を、コンデンサ(進み)・リアクトル(遅れ)に近い性質として結びつけて覚える。過励磁の同期電動機が進相コンデンサの代わりに使われる(同期調相機)という実務上の使い方も、この対応の裏付けになる。

  3. 同期電動機は界磁に定格のDC励磁を与えれば、誘導電動機のように自己始動できると考えてしまう

    なぜ引っかかる『励磁を与えれば磁石として力が働くはず』という直感から、静止状態でも励磁さえあれば回転を始められると誤解しやすい。

    見破り方静止した回転子にDC励磁を与えても、回転磁界に対して磁極が追従できず、引力と反発力が交互に働いて平均トルクはゼロになる、という理屈を思い出す。だからこそ制動巻線による誘導始動など、同期電動機には別の始動法が必要になる。

  4. 制動巻線の役割を、始動時の誘導始動だけの機能だと思い込み、通常運転中の乱調抑制にも働くことを見落とす

    なぜ引っかかる制動巻線という名前を最初に学ぶのが『誘導始動』の文脈であることが多いため、その1つの役割だけで完結していると思い込みやすい。だが同じ制動巻線が、始動が終わった後の通常運転中にも別の役割を果たしている。

    見破り方制動巻線は始動時にはかご形導体として誘導始動トルクを生み、通常運転中は負荷角が変動(乱調)しようとする瞬間に、回転磁界に対する相対運動が生じて誘導電流が流れ、その振動を打ち消す方向のトルクを発生させる——始動と乱調抑制という2つの役割をセットで覚える。

  5. 同期電動機の等価回路でも、同期発電機と同じ符号(E=V+jXsI)を使ってしまう

    なぜ引っかかる同期発電機の等価回路や出力の式(P=(EV/Xs)sinδ)に慣れていると、同期電動機も同じ符号関係だと思い込みやすい。だが電動機は電源から電力を受け取る側であり、内部起電力(逆起電力)は同期リアクタンスの電圧降下の分だけ端子電圧より小さくなる(Ė=V̇-jXsİ)という、発電機とは逆向きの関係になる。

    見破り方電力がどちらからどちらへ流れているかを先に確認する。発電機は内部起電力E側が電源(Eから外部Vへ電力が流れ出す)、電動機は端子電圧V側が電源(Vから内部Eへ電力が流れ込む)——電源側が反対になっている、と整理してから式の符号を立てる。

参考文献・出典

理解度チェック(10問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、10問で確認しよう。 内訳は基本5問・応用4問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 10 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 同期電動機の回転速度は、脱調しない限り常に同期速度 $N_s = 120f/p$ に固定される。誘導電動機のようなすべりは存在しない
  2. 界磁電流を定格より強くする(過励磁)と電機子電流は進み力率になり、弱くする(不足励磁)と遅れ力率になる(V曲線)
  3. 無負荷に近い状態で過励磁運転し、系統に進み無効電力を供給する使い方を同期調相機(synchronous condenser)という。進相コンデンサと同じ役割を果たせる
  4. 静止した回転子にそのままDC励磁を与えただけでは、平均トルクがゼロになり自己始動できない。制動巻線による誘導始動など、別の始動法が必要
  5. 負荷が増えて内部の起電力と端子電圧の位相差(負荷角)が広がりすぎると、電動機は同期を保てなくなり脱調する
  6. 円筒形2極の同期電動機では、負荷角δ=π/2[rad](90°)のときにトルクが最大値をとる。同期電動機が脱調せずに耐えられる最大のトルクを脱出トルクという
  7. 負荷が急変すると、負荷角δは新しい釣り合い点へ一気には落ち着かず、回転子の慣性のため新たな値を中心に周期的に変動する。これを乱調といい、電源の電圧や周波数が変動した場合にも生じうる。乱調を抑制するには、始動巻線を兼ねる制動巻線を設けたり、はずみ車を取り付けたりする
  8. 同期電動機の1相分の等価回路(電機子巻線抵抗を無視)は、相電圧V̇・同期リアクタンスjXs・内部誘導起電力(逆起電力)Ėの直列回路で表せる。電機子電流İに関するキルヒホッフの電圧則からV̇=Ė+jXsİ、すなわちĖ=V̇-jXsİという関係が成り立つ(同期発電機のĖ=V̇+jXsİとは電圧降下の符号が逆になる点に注意)
  9. 力率1(電機子電流が相電圧と同位相)で運転しているとき、jXsİの電圧降下は相電圧V̇に対して90°位相がずれたベクトルになるため、内部誘導起電力の大きさは|E|=√(V²+(XsI)²)という三平方の定理で求められる
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