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機械 ・ 14 / 16

シーケンス制御とリレー回路

読み終えると、こうなる

制御盤の中の配線を見たとき、それが「自己保持」「インターロック」のどちらの役割を持つ回路かを、接点の配置だけで読み解けるようになる

  • リレーのa接点(常開)・b接点(常閉)の動作原理を理解し、自己保持回路(並列接続)やインターロック回路(b接点の直列挿入)の接点配置から動作を説明できる
  • シーケンス制御とフィードバック制御の違いを、制御の進み方の観点から説明できる
  • 論理回路の基本ゲート(AND・OR・NOT)とリレー接点の対応関係を理解して真理値表・タイムチャートから出力を求められ、排他的論理和(ExOR)・否定論理和(NOR)を含む論理演算や2進数と16進数の相互変換もできる
  • ブール代数の法則(分配則・吸収則・ド・モルガンの定理など)を使って、論理式(積和形式・和積形式)を簡単化できる
考えてみよう

制御盤の起動ボタンを、ほんの一瞬だけ押してすぐ指を離しても、モータは回り続ける。 ボタンに電気を流し続けているわけでもないのに、回路はまるで「押されたこと」を 覚えているかのように動作を保っている。

一方で、正転用と逆転用、2つのボタンを同時に押しても、モータは決して同時に 両方向へは回らない仕組みになっている制御盤もある。

この「覚える力」と「同時に動かさせない力」は、どちらもリレーという単純な部品の 接点の組み方だけでつくられている。このトピックを読み終えるころには、 制御盤の配線を見て、それが自己保持なのかインターロックなのかを、 接点の配置だけで読み解けるようになっている。

種明かしは、あらかじめ定めた順序・条件で動くシーケンス制御の考え方と、 その最小部品であるリレーのa接点・b接点の組み合わせにある。

シーケンス制御とは — あらかじめ決めた順序・条件で進む制御

前のトピックで扱ったフィードバック制御は、出力を常に測定し、目標値との偏差を 修正し続ける制御だった。これに対してシーケンス制御は、あらかじめ定めた 順序・条件に従って、制御の各段階を逐次進めていく制御だ。

信号機が「青→黄→赤」と順番に切り替わる、洗濯機が「給水→洗濯→すすぎ→脱水」と 工程を進める、制御盤の起動シーケンスがボタン操作の順に段階を踏む——こうした 「次に何をするか」があらかじめ決めた手順表(条件)で決まっている制御が シーケンス制御にあたる。

フィードバック制御は「ずれを常に測って直し続ける」制御、シーケンス制御は 「決めた順序・条件で段階を進める」制御——この2つは制御の考え方そのものが違う。 制御盤の中には両方が同居していることが多く、見分けの軸は「偏差を継続的に 修正しているか」の1点になる。

リレーの基本 — a接点とb接点

シーケンス制御を実際の回路にするための最小部品が電磁リレー(継電器)だ。 コイルに電流を流すと鉄心が電磁石になり、可動接点を吸引して接点を開閉する。

  • a接点(メーク接点、常開):コイルが無励磁のとき開いており、励磁すると閉じる(ON)
  • b接点(ブレーク接点、常閉):コイルが無励磁のとき閉じており、励磁すると開く(OFF)

a接点を複数直列につなぐと、すべてが閉じたときだけ導通するAND動作になり、 並列につなぐと、いずれか1つでも閉じれば導通するOR動作になる。b接点は、 コイルが動作すると回路を切る働きを持つため、NOT(否定)に相当する動作をつくる。

a接点・b接点の判断基準は、必ず「コイルが無励磁のとき」を出発点にする。a接点は 無励磁で開=励磁でON(閉じる)、b接点は無励磁で閉=励磁でOFF(開く)。リレーが 動作した“後”の状態を先にイメージすると符号を逆に覚えやすいので、常に無励磁の状態から考える。

自己保持回路 — 一瞬押しただけで動作を保つ仕組み

起動用の押しボタンPB1(a接点)を押すとリレーRのコイルが励磁される。ここで、 Rの補助a接点をPB1と並列に入れておくと、PB1を離した瞬間にも、R自身の接点を 通る電流経路が残っているため、コイルの励磁は保持され続ける。これが自己保持回路だ。

停止用の押しボタンPB2(b接点)をコイル回路に直列に入れておけば、PB2を押した 瞬間に電流経路そのものが切れ、いつでも保持を解除できる。

例題

押しボタンPB1(起動用)を押すとリレーRが動作し、PB1を離してもRの動作を継続させたい。 リレーRの補助a接点はどのように配置すればよいか——答えは「PB1と並列に接続する」。 直列に接続すると、PB1を離した瞬間に電流経路が切れてしまい、自己保持は成立しない。

インターロック回路 — 同時に動かせない仕組み

正転用リレーRfと逆転用リレーRrのように、同時に動作すると機器の破損や短絡につながる 2つの回路には、インターロックをかける。Rfのコイル回路にRrのb接点を直列に入れ、 同時にRrのコイル回路にもRfのb接点を直列に入れておくと、どちらか一方が動作している間は もう一方のコイル回路が切れ、動作できなくなる。

なぜa接点ではなくb接点を使うのか——「相手が動作しているときは自分が動作できない」 という排他条件は、相手が励磁されたときに開く接点でなければ実現できない。 励磁で開く接点はb接点であり、a接点を使うと逆に「相手が動作しているときだけ 自分も動作できる」という連動回路になってしまう。実務では、この電気的インターロックに 加えて、機械的な機構によるインターロックも併用することが多い。

タイマー(限時継電器)— 時間差をつくる部品

コイルが励磁されてから、あるいは無励磁になってから、一定時間後に接点が動作する リレーをタイマー(限時継電器)と呼ぶ。

  • オンディレイタイマー:コイル励磁後、設定時間が経過してから接点が動作する(遅れてON)
  • オフディレイタイマー:コイル無励磁後、設定時間が経過してから接点が復帰する(遅れてOFF)

制御盤では、モータをY(スター)結線で始動し、一定時間後にΔ(デルタ)結線の 通常運転へ切り替えるY-Δ始動のような、時間差を持たせた切替にオンディレイタイマーが 使われる。始動直後の突入電流を抑えつつ、加速が進んだところで自動的に運転結線へ移行できる。

論理回路の基礎 — ANDゲート・ORゲート・NOTゲートとリレー接点の対応

リレーのa接点・b接点の組み合わせは、実は論理回路という、もう少し一般的な考え方の 具体例そのものだ。論理回路では、入力・出力は「1(ON)」か「0(OFF)」かの2値しか取らず、 その変換規則を表す最小単位が次の3つの基本ゲートになる。

  • ANDゲート(論理積):すべての入力が1のときだけ、出力が1になる
  • ORゲート(論理和):入力のどれか1つでも1なら、出力が1になる
  • NOTゲート(否定):入力を反転させる(1なら0、0なら1)

この3つは、前の節で見たリレー接点の性質とそのまま対応している。a接点の直列接続は すべてが閉じないと導通しない=AND、a接点の並列接続はどれか1つでも閉じれば導通する=OR、 b接点は励磁で開く=NOT——シーケンス制御の回路図が読めれば、論理回路の基本ゲートも 同じ発想で読み解ける。

入力の組合せをすべて書き出し、それぞれに対応する出力をまとめた表を真理値表、 時間の経過に沿って入力・出力がどう変化するかをグラフにしたものをタイムチャートと呼ぶ。 複数のゲートが組み合わさった回路でも、入力から出力へ向かって、ゲートを1つずつ 順番に計算していけば、最終的な出力を機械的に求められる。

ゲートが複数組み合わさった回路を見て身構える必要はない。全体を一気に読もうとせず、 「まず一番手前のゲートの出力を求める」→「その結果を次のゲートの入力として使う」という 順番を、入力側から出力側へ1段ずつ追っていけばよい。ANDは「厳しい条件(全部1)」、 ORは「甘い条件(1つでも1)」というイメージを持っておくと、複雑な組合せでも 取り違えにくい。

例題

2つの入力A・Bに対し、出力X = (AとBのAND) OR (Bの反転=NOT B) という論理回路がある。 A=0、B=0を入力したときの出力Xはどうなるか。

AND部分:A AND B = 0 AND 0 = 0 NOT部分:NOT B = NOT 0 = 1 出力:X = (AND部分) OR (NOT部分) = 0 OR 1 = 1

入力から出力まで、ゲートを1つずつ順番にたどれば、複雑に見える組合せ回路でも 機械的に答えを導ける。

発展的な論理演算 — ExOR・NORと2進数の16進数変換

AND・OR・NOTの3つは論理回路の基本だが、実務やPLC(プログラマブルロジックコントローラ) のビット演算では、これに加えて排他的論理和(ExOR)否定論理和(NOR)もよく使われる。

  • ExOR(排他的論理和):2つの入力が異なるときだけ出力が1になる(同じなら0)
  • NOR(否定論理和):ORの結果を反転させたもの(両方とも0のときだけ出力が1になる)
ExORは「どちらかが1なら1になる」という説明だけを覚えるとORと混同しやすい。両方とも 1を入力したときに出力がどうなるかで検算すると確実——ORなら1のまま、ExORなら0になる。

例題(自作の数値例)

ビットパターン1100と1010のビットごとの論理演算を求めてみる。

  • AND(1桁ずつ両方1のときだけ1):1100 AND 1010 = 1000
  • OR(1桁ずつどちらかが1なら1):1100 OR 1010 = 1110
  • NOR(ORの結果を反転):1100 NOR 1010 = 0001
  • ExOR(1桁ずつ異なるときだけ1):1100 ExOR 1010 = 0110

こうしたビットパターンは、PLCの入出力状態や通信データの一部としてそのまま16進数で 扱われることが多い。2進数を16進数に変換するには、右端から4ビットずつ区切り、 それぞれを0〜Fの1桁に対応づければよい。

11010110(2)1101=D,0110=6D6(16)1101\,0110_{(2)} \rightarrow 1101 = D, \quad 0110 = 6 \quad \Rightarrow \quad D6_{(16)}

半加算器と全加算器 — 論理ゲートを組み合わせて「足し算」を作る

ここまで見た論理ゲート(AND・OR・NOT・ExOR)を組み合わせると、2進数の足し算を 行う回路を作れる。この最も基本的な単位が半加算器(half adder)全加算器(full adder)だ。

半加算器は、2つの1ビット入力A・Bを足し算し、和S(Sum)と桁上げC(Carry)の 2つを出力する回路だ。

S=AExORB,C=AANDBS = A \operatorname{ExOR} B, \qquad C = A \operatorname{AND} B

A=0,B=0→S=0,C=0(0+0=00)、A=0,B=1→S=1,C=0(0+1=01)、A=1,B=0→S=1,C=0(1+0=01)、 A=1,B=1→S=0,C=1(1+1=10、2進数の10は10進数の2)——2進数の足し算の結果と ちょうど一致する。

半加算器の名前の「半」は、下位の桁からの繰り上がり(キャリーイン)を受け取る入力を 持たない、という意味だ。1桁目(最下位ビット)の足し算だけならこれで済むが、 2桁目以降は下の桁からの繰り上がりも足し込む必要がある——これが半加算器だけでは 足りず、全加算器が必要になる理由だ。

半加算器を2個と、ORゲート1個を組み合わせると、下位桁からの繰り上がり入力CinC_{in}も 受け取れる全加算器を作れる。全加算器は3つの1ビット入力(A・B・下位桁からの 繰り上がりCinC_{in})を受け取り、和Sと上位桁への繰り上がりCoutC_{out}を出力する。

例題(自作の数値例)

全加算器にA=1、B=1、CinC_{in}=1を入力する。1+1+1=3(10進)=11(2進)なので、 和S=1、繰り上がりCoutC_{out}=1になるはずだ。これを2つの半加算器で確かめる。

1段目の半加算器(AとBを加算):

S1=AExORB=1ExOR1=0,C1=AANDB=1AND1=1S_1 = A \operatorname{ExOR} B = 1 \operatorname{ExOR} 1 = 0, \qquad C_1 = A \operatorname{AND} B = 1 \operatorname{AND} 1 = 1

2段目の半加算器(S1S_1CinC_{in}を加算):

S=S1ExORCin=0ExOR1=1,C2=S1ANDCin=0AND1=0S = S_1 \operatorname{ExOR} C_{in} = 0 \operatorname{ExOR} 1 = 1, \qquad C_2 = S_1 \operatorname{AND} C_{in} = 0 \operatorname{AND} 1 = 0

最終的な繰り上がりは、1段目の桁上げと2段目の桁上げのORで求まる。

Cout=C1ORC2=1OR0=1C_{out} = C_1 \operatorname{OR} C_2 = 1 \operatorname{OR} 0 = 1

結果、S=1、CoutC_{out}=1となり、3(10進)=11(2進)と一致する。

全加算器の出力を求めるときは、いきなり3入力の真理値表を覚えようとせず、「半加算器を 2段通す」という手順に分解すると計算しやすい。1段目でAとBを先に加算し、その和(S1)を 2段目でCinとさらに加算する。桁上げは、1段目の桁上げ(C1)と2段目の桁上げ(C2)の どちらかが1であればOK(OR)——という積み上げ方を覚えておけば、複雑な組合せ回路に 見えても機械的に答えを出せる。

論理式の簡単化 — ブール代数で回路をシンプルにする

論理ゲートを組み合わせた式は、そのままではゲート数が多く、リレー接点の数やPLCの ロジック行数がかさむことがある。ブール代数の法則を使うと、こうした論理式を より少ない項・少ないゲート数に書き換えられる。実務では、これがそのまま配線数の 削減やプログラムの見通しの良さに直結する。

代表的な法則は次のとおり。

  • 分配則A(B+C)=AB+ACA\cdot(B+C) = A\cdot B + A\cdot C(数式の分配法則と同じ形)
  • 吸収則A+AB=AA + A\cdot B = A(Bがどうであれ、Aが1なら全体が1、Aが0ならABA\cdot Bも0で結局Aのまま)
  • 吸収則(もう1つの形)A+AˉB=A+BA + \bar{A}\cdot B = A + BAˉ\bar Aという条件だけが外れ、Bの項自体は残る)
  • ド・モルガンの定理AB=Aˉ+Bˉ\overline{A\cdot B} = \bar A + \bar BA+B=AˉBˉ\overline{A+B} = \bar A \cdot \bar B(ANDとORが、否定を挟むと入れ替わる)
$A+A\cdot B=A$と$A+\bar A\cdot B=A+B$は見た目が似ているため混同しやすい。前者はBが 完全に消える、後者は$\bar A$という条件だけが外れてBの項はA+Bという形で残る——迷ったら $A=0$を代入して検算する。$A+\bar A\cdot B$に$A=0$を入れると$0+1\cdot B=B$、 $A+B$に$A=0$を入れても$B$になり一致する。もし$A+\bar A\cdot B=A$が正しいなら $A=0$のとき常に0になるはずだが、実際にはBの値次第で1にもなる——この検算で 2つの吸収則を区別できる。

例題(自作の数値例)— 積和形式を簡単化する

論理式 F=ABC+ABCˉ+AˉBCF=A\cdot B\cdot C+A\cdot B\cdot \bar C+\bar A\cdot B\cdot C を積和形式のまま 簡単化してみる。

まず第1項と第2項に共通するABA\cdot Bでくくる。

ABC+ABCˉ=AB(C+Cˉ)=AB1=ABA\cdot B\cdot C+A\cdot B\cdot \bar C = A\cdot B\cdot(C+\bar C) = A\cdot B\cdot 1 = A\cdot B

C+Cˉ=1C+\bar C=1(補元則:どちらか一方は必ず成り立つので、全体は常に真になる)を使った。 ここまでで式は F=AB+AˉBCF=A\cdot B+\bar A\cdot B\cdot C に縮まる。残った2項に共通するBで さらにくくる。

F=B(A+AˉC)F = B\cdot(A+\bar A\cdot C)

カッコの中は、さきほど見た吸収則A+AˉC=A+CA+\bar A\cdot C=A+Cの形そのものだ。これを適用すると、

F=B(A+C)=AB+BCF = B\cdot(A+C) = A\cdot B+B\cdot C

3項あった式が2項になった。B=0B=0なら元の3つの項はすべて0になるので必ずF=0F=0B=1B=1ならF=A+CF=A+C(吸収則の結果)になる——この2点を確かめれば、簡単化した式が 元の式と常に同じ値を返すことを検算できる。

例題(自作の数値例)— 和積形式を簡単化する

積和形式だけでなく、OR項をANDでつなぐ和積形式の簡単化にも同じ分配則が使える。 G=(A+B)(A+C)G=(A+B)\cdot(A+C)を展開すると、

G=AA+AC+AB+BC=A+AC+AB+BCG = A\cdot A+A\cdot C+A\cdot B+B\cdot C = A+A\cdot C+A\cdot B+B\cdot C

AA=AA\cdot A=Aを使った)。ここでA+AC+ABA+A\cdot C+A\cdot Bの部分は、吸収則A+AX=AA+A\cdot X=Aを 2回使うとAだけに縮む。結果、

G=A+BCG = A+B\cdot C

(A+B)(A+C)(A+B)\cdot(A+C)という和積形式2項の式が、A+BCA+B\cdot Cという積和形式1項+1項の式に 変わった——見た目の形(和積か積和か)が変わっても、真理値表で全パターンを確認すれば 両辺は常に一致する。

簡単化の手順に迷ったら、①共通の項でくくれないか探す、②くくった残りに吸収則・補元則 ($X+\bar X=1$、$X\cdot\bar X=0$)が当てはまらないか確認する、③それでも簡単にならない 式にはド・モルガンの定理を使って否定の位置を動かせないか考える——という順番で 機械的に試していけばよい。最後は必ず、簡単化前後の式にA・B・Cの全パターン(それぞれ 0/1で計8通り)を代入し、両辺が一致するかを検算する。

なぜ制御盤にこの仕組みが積み重なっているのか

制御盤の内部を見ると、自己保持回路とインターロック回路とタイマーが何段にも 組み合わさって、複雑に見える配線ができあがっている。だが1つ1つは、 a接点・b接点をどう配置するかという単純な選択の積み重ねにすぎない。

「押しボタンを離しても動作を保ちたい」なら自己保持(自分のa接点を並列に)、 「相手が動いている間は自分を止めたい」ならインターロック(相手のb接点を直列に)、 「一定時間おいて次の段階へ進みたい」ならタイマー——シーケンス制御の回路図は、 この3つの基本パターンの組み合わせとして読み解ける。

冒頭の「一瞬押しただけでモータが回り続ける仕組み」の答え合わせは、 理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. a接点とb接点の、コイル励磁時の動作方向を取り違える

    なぜ引っかかる「a接点=通常開いている」「b接点=通常閉じている」という無励磁状態の定義と、「励磁したときにどちらがONになるか」という動作結果を混同しやすい。特に自己保持やインターロックの回路図で、リレーが動作した“後”の状態をイメージすると符号を逆に覚えやすい。

    見破り方必ず「コイルに電流が流れていない(無励磁)ときの状態」を基準に考える。a接点は無励磁で開=励磁でON(閉じる)。b接点は無励磁で閉=励磁でOFF(開く)。この無励磁を出発点にする癖をつければ取り違えない。

  2. 自己保持回路で、保持用の接点を並列ではなく直列に配置してしまう

    なぜ引っかかる起動ボタン(PB1)と保持用のリレー自身のa接点は「どちらかがONならコイルへの電流経路が保持される」というOR条件のため並列接続が正しいが、直列だと考えると回路がAND条件になり、PB1を押している間しかリレーが動作しない(自己保持にならない)。

    見破り方「PB1を離した後もコイルへの電流経路が途切れないか」を回路図でたどって確認する。並列なら、PB1が開いてもR接点を通る経路が残る。直列だとPB1が開いた瞬間に電流経路そのものが切れる。

  3. インターロック回路で、相手のb接点ではなくa接点を自分の回路に入れてしまう

    なぜ引っかかる「相手が動作していないときだけ自分が動作できる」という排他条件はNOT条件であり、相手のリレーのb接点(相手が動作すると開く接点)を使う必要がある。a接点を入れると逆に「相手が動作しているときだけ自分も動作できる」という誤った連動になってしまう。

    見破り方「相手のリレーが動作(励磁)しているときに、自分の回路が切れる(開く)接点でなければならない」と確認する。励磁で開く接点はb接点であり、a接点(励磁で閉じる)を入れると排他ではなく連動になってしまう。

  4. 論理回路のタイムチャート問題で、ANDゲートとORゲートの出力波形を取り違える

    なぜ引っかかる『どちらか一方でも1なら1になる(OR)』と『両方とも1でなければ1にならない(AND)』という条件の厳しさの違いを、波形の上でとっさに判断できず、入力波形が重なる区間の広さだけで直感的に判断してしまう。

    見破り方各時刻について、入力の組合せを1つずつ表に書き出し、AND=両方1のときだけ1、OR=どちらか1つでも1なら1、という定義に機械的に当てはめる。波形を目で追うだけで判断せず、まず数点だけでも真理値表的に検算する。

  5. 排他的論理和(ExOR)を、単純なOR(論理和)と同じ結果になると思い込む

    なぜ引っかかる『どちらかが1なら1になる』という説明の響きがORと似ているため、ExORもORと同じ演算だと勘違いしやすい。実際はORと違い、両方とも1のときはExORの出力は0になる点が異なる。

    見破り方『入力が異なるときだけ1になる』という定義を、両方1のケースで必ず検算する。1と1を入力したとき、ORなら出力は1のままだが、ExORは0になる——この1点を確認するだけで、ORとExORの混同を防げる。

  6. 全加算器の出力を求めるとき、3つの入力(A・B・Cin)をいきなり同時に扱おうとして、桁上げの経路を見落とす

    なぜ引っかかる半加算器(2入力)に慣れた直後に3入力の全加算器を見ると、AND・OR・ExORをどう組み合わせればよいか一度に判断しようとしてしまい、繰り上がりが2段階に分かれて生まれることを見落としやすい。

    見破り方全加算器を『半加算器を2段つなげたもの』と分解して考える。1段目でAとBを先に加算し、その和S1を2段目でCinとさらに加算する。最終的な繰り上がりCoutは、1段目の桁上げC1と2段目の桁上げC2のOR(どちらか一方でも1なら1)で求まる、という手順を固定すれば、3入力でも迷わない。

  7. 吸収則 A+Ā・B=A+B を、A+Ā・B=A(Bの項がまるごと消えてしまう)と混同する

    なぜ引っかかる見た目のよく似たもう1つの吸収則 A+A・B=A(こちらはBが完全に消える)と混同しやすい。だがA+Ā・Bでは、消えるのはĀという条件だけで、Bの項そのものはA+Bという形で残る。

    見破り方真理値表で確認する。A=0のとき、A+Ā・B=0+1・B=B、A+B=0+B=Bで一致する。A=1のときはどちらも1で一致する。すべての場合で両辺が一致するので、A+Ā・B=A+Bが正しく、A+Ā・B=Aではないと確かめられる。

参考文献・出典

理解度チェック(13問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、13問で確認しよう。 内訳は基本7問・応用5問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 13 問正解

覚えておきたいポイント

  1. シーケンス制御は、目標値との偏差を常に修正し続けるフィードバック制御とは違い、あらかじめ定めた順序・条件に従って制御の各段階を逐次進めていく制御である
  2. リレーのa接点(常開)はコイル励磁でON、b接点(常閉)はコイル励磁でOFFになる。a接点の直列はAND、並列はOR、b接点はNOTに相当する動作になる
  3. 自己保持回路は、リレー自身のa接点を起動用押しボタンと並列に入れることで、ボタンを離してもコイルの励磁を保持する
  4. インターロック回路は、同時に動作させたくない2つの機器の回路に互いのb接点を直列に入れ、一方が動作中は他方を動作させない排他制御をつくる
  5. タイマー(限時継電器)にはオンディレイ(遅れてON)とオフディレイ(遅れてOFF)があり、モータのY-Δ始動などの時間差制御に使われる
  6. 論理回路の基本ゲートはリレー接点と対応づけられる:ANDゲート=a接点の直列、ORゲート=a接点の並列、NOTゲート=b接点。入力の全組合せに対する出力をまとめたものが真理値表、時間軸に沿った入出力の変化を表したものがタイムチャートである
  7. AND・OR・NOTに加え、排他的論理和(ExOR:2つの入力が異なるとき1、同じとき0)と否定論理和(NOR:ORの結果を反転、両方0のときだけ1)もビットパターンごとの論理演算として扱える。2進数は4ビットずつ区切ることで16進数1桁に対応づけられる(0000〜1111が0〜Fに対応)
  8. 論理式の簡単化にはブール代数の法則を使う:分配則 A・(B+C)=A・B+A・C、吸収則 A+A・B=A および A+Ā・B=A+B、ド・モルガンの定理(A・Bの否定=Āの論理和B̄、A+Bの否定=Ā・B̄)。積和形式(AND項をORでつなぐ)・和積形式(OR項をANDでつなぐ)のどちらも、共通項でくくり出す・吸収則で不要な項を消す、という手順で項数を減らせる
  9. 半加算器(half adder)は1ビットの入力A・Bから和S=A ExOR B、桁上げC=A AND Bを出力する回路。全加算器(full adder)は、下位桁からの繰り上がりCinも受け取れるよう半加算器を2段組み合わせ、それぞれの桁上げをORでまとめて最終的な繰り上がりCoutを作る
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