倉庫や工場の照明を改修する提案をするとき、「この照明器具を、この本数、この配置で 天井に取り付けたら、床面の明るさは何ルクスになるか」を、実際に施工して測定する前に 言い当てられるだろうか。
照明器具のカタログには「光束○○lm」という数値が載っている。だが現場で本当に必要なのは、 床面の「明るさ(照度)」だ。光源そのものの明るさと、離れた場所が実際に受け取る明るさは、 なぜイコールにならないのか。
このトピックを読み終えるころには、照明器具の仕様と配置から、床面の照度を計算で 言い当てられるようになっている。
種明かしは、光の量を表す複数の物理量——光度・光束・照度——を区別し、 距離や角度によって光がどう「薄まる」かを式にすることにある。
光度と照度は別物 — 光源の強さと、受け取る明るさ
- 光度 (単位:cd、カンデラ):光源そのものが、ある方向に出している光の強さ
- 光束 (単位:lm、ルーメン):光源が全方向に出している光の総量
- 照度 (単位:lx、ルクス):ある面が実際に受け取っている明るさ
同じ光源でも、そこから離れるほど光は広がって薄まるため、照度は光度そのものより小さくなる。 この「薄まり方」を数式にしたものが、次の逐点法だ。
逐点法 — 距離の2乗に反比例し、斜めに入射するほど弱まる
点光源の真下(入射角0°)にある点の照度は、光度に比例し、距離の2乗に反比例する。
例題
光度1000cdの点光源の真下2mの位置における照度は何lxか。
測定点が光源の真下からずれていて、光が斜めに入射する場合は、入射角 (光源から 測定点へ引いた直線と、床面の法線がなす角)のコサインをかける。
ここで は光源から測定点までの実際の距離(斜距離)であり、光源の設置高さ とは 別物である点に注意したい。
例題
光度800cdの点光源から距離5m、入射角60°の位置における照度は何lxか。
光束法 — 部屋全体の平均照度を、灯数から逆算する
逐点法は1点ごとの照度を求める方法だが、部屋全体の設計では「平均的にどれくらいの明るさに なるか」を知りたい場面が多い。そこで使うのが光束法(光束計算法)だ。
- :1灯あたりの光束(lm)
- :灯数
- :照明率(光源が出した光束のうち、実際に作業面に到達する割合。部屋の形状・反射率で決まる)
- :保守率(時間経過による汚れ・ランプの光束減少を見込んだ安全側の係数、常に1未満)
- :床面積(m²)
例題
1灯あたりの光束2500lm、灯数20灯、照明率0.6、保守率0.7、床面積60m²の部屋の平均照度は何lxか。
光束発散度と輝度 — 「出ていく光」と「まぶしさ」を表す量
ここまで見てきた光度・光束・照度に加えて、照明計算にはもう2つの光の量が登場することがある。 どちらも面の明るさに関する量だが、意味も単位も異なる。
- 光束発散度(単位:lm/m²):物体の単位面積あたりから発散する光束の量。 照度が「その面が受け取る(入ってくる)光」を表すのに対し、光束発散度は「その面から 出ていく光(反射光や、自ら発する光)」を表す、いわば対になる概念だ。ある面から発散する 光束を、その面積をとすると、
- 輝度(単位:cd/m²):光源の発光面や、光を反射している面の輝き(まぶしさ)の 程度を表す量。ある方向から見たときの、その面の単位面積あたりの光度に相当する。 同じ光度の光源でも、発光している面積が小さいほど輝度は高くなり、まぶしく感じやすい。
例題(自作の数値例)
面積4m²の反射面全体から2400lmの光束が発散しているとき、この面の光束発散度は、
なぜ電材業界の実務でこれが効いてくるのか
工場・倉庫・事務所の照明改修提案では、「JIS等で定められた推奨照度を満たしているか」を 照度計算書として提出する場面がある。既存の蛍光灯をLED器具に置き換える提案でも、 1灯あたりの光束が変わればNとUとMの掛け算のバランスが変わり、必要灯数も変わる。 光束法の式を自分の手で組み立てられれば、カタログの光束値だけを頼りに「この灯数で 足りるか」を、現場で測定する前に見積もれるようになる。
冒頭で出した「照明器具の仕様と配置から、床面の明るさを計算で言い当てる」——答え合わせは 理解度チェックの最後の問題でしてみよう。