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機械 ・ 1 / 16

変圧器の原理と等価回路

読み終えると、こうなる

受変電設備のキュービクルにある変圧器を見て、「一次側と二次側で何が変わり、何が変わらないか」を回路の中身から説明できるようになる

  • 巻数比から一次・二次の電圧比・電流比を正しい向きで計算でき、二次側のインピーダンスを一次側に換算する(巻数比の2乗をかける)計算もできる
  • 変圧器の等価回路にある励磁回路(鉄損・磁化電流)と漏れインピーダンスが、それぞれ何を表しているかを説明でき、鉄心のケイ素含有・積層構造や冷却方式(油入・乾式)といった変圧器の物理的な構造がその損失や絶縁とどう結びついているかも説明できる
  • 単巻変圧器の分路巻線・直列巻線の役割と、自己容量・負荷容量の違いを説明し、両者の比を計算できる
  • 短絡試験の測定値(電圧計・電流計・電力計の読み)から、一次側換算の等価インピーダンス・抵抗・漏れリアクタンスを求められ、大形変圧器の温度上昇試験で返還負荷法が使われる理由も説明できる
考えてみよう

キュービクル(受変電設備)の変圧器は、高圧側の6600Vを低圧側の200Vや100Vへと 変換している。コイルが2つ、鉄心を挟んで向き合っているだけの、動く部分のない機械だ。

なぜ、ただ巻線の巻数を変えるだけで電圧を自在に変えられるのか。そして電圧を下げると、 なぜ電流のほうは逆に増えるのか。この「変える力」の正体と、現実の変圧器が理想どおりに 動かない部分(漏れ・励磁)をどう回路図に描き加えるかが分かれば、変圧器の計算問題は ほとんど機械的に解けるようになる。

このトピックを読み終えるころには、変圧器の巻数比から電圧・電流・インピーダンスの 換算を迷わず計算し、等価回路の各要素が何を表しているかを説明できるようになっている。

種明かしは、電磁誘導の法則が生む理想変圧器の2つの比例式と、現実の巻線・鉄心が 持つ「ロス」を回路素子として描き足した等価回路にある。

理想変圧器 — 電圧は巻数比そのもの、電流はその逆比

一次巻線に交流電圧を加えると、鉄心の中に交番磁束が生まれる。この磁束は二次巻線も 貫くため、二次巻線にも電圧が誘導される。誘導される電圧の大きさは巻数に比例するので、 一次・二次の電圧比は巻数比と一致する。

V1V2=N1N2=a\frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2} = a

aa巻数比と呼ぶ。一次巻数 N1N_1 のほうが多ければ a>1a>1 となり、一次電圧のほうが 高い(降圧変圧器)。

一方、理想変圧器では鉄心での損失がないため、一次側が受け取る電力と二次側が送り出す 電力は等しい(V1I1=V2I2V_1 I_1 = V_2 I_2)。この電力保存の関係から、電流比は電圧比の逆比 になる。

I1I2=N2N1=1a\frac{I_1}{I_2} = \frac{N_2}{N_1} = \frac{1}{a}

電圧が上がった側は電流が下がり、電圧が下がった側は電流が上がる——「電力は保存される」 という一点から、この2つの式は自然に導かれる。

例題

一次巻数1000回、二次巻数100回の変圧器に6600Vを加えたとき、二次電圧は何Vか。

V2=V1×N2N1=6600×1001000=660VV_2 = V_1 \times \frac{N_2}{N_1} = 6600 \times \frac{100}{1000} = 660\text{V}
電圧比と電流比の向きで迷ったら、電力保存で検算する。V1×I1とV2×I2を計算して、 両者がほぼ一致していれば、電流比の向きは正しい。一致しなければ、電圧比の分子・分母を そのまま電流比に流用してしまっている可能性が高い。

二次側を一次側に「換算」する — インピーダンスは巻数比の2乗

変圧器の計算では、二次側にある抵抗やリアクタンスを一次側の値に置き換えて、 1つの回路として扱うことがよくある。このとき、電圧・電流の換算が巻数比の1乗であるのに 対し、インピーダンスの換算は巻数比の2乗になる。

Z1=a2×Z2Z_1' = a^2 \times Z_2

理由はオームの法則 V=IZV=IZ から追える。二次側の電圧を一次側に換算するとa倍、 二次側の電流を一次側に換算すると1/a倍——この2つが Z=V/IZ=V/I の分子・分母に入るため、 a×(1/a)1=a2a \times (1/a)^{-1} = a^2 という形で2乗が現れる。

例題

巻数比a=20の変圧器で、二次側の抵抗が0.02Ωであるとき、一次側に換算した値は何Ωか。

R1=a2×R2=202×0.02=400×0.02=8ΩR_1' = a^2 \times R_2 = 20^2 \times 0.02 = 400 \times 0.02 = 8\Omega
電圧・電流(1乗)とインピーダンス(2乗)を混同しないコツは、換算のたびに 「これは電圧か電流か、それともΩの値か」を自問すること。特にa=20のような 巻数比が大きい変圧器では、1乗と2乗の差が400倍にもなるため、取り違えると 致命的な桁違いの誤りになる。

変圧器の等価回路 — 漏れインピーダンスと励磁回路の2系統

現実の変圧器は、理想変圧器とは違って完全に理想的には動かない。巻線には抵抗があり、 鉄心を貫くはずの磁束の一部が漏れて空気中を通る(漏れ磁束)。さらに、鉄心を磁化するために 一次側からわずかな電流(励磁電流)を取り込む必要がある。これらを回路素子として 描き加えたものが、変圧器の等価回路だ。

等価回路は大きく2つの系統に分かれる。

  1. 漏れインピーダンス(直列枝) — 一次巻線の抵抗・漏れリアクタンス、 二次巻線の抵抗・漏れリアクタンス(一次側に換算したもの)を直列に並べたもの。 負荷電流はここを通って二次側へ渡される。
  2. 励磁回路(並列枝) — 鉄損(うず電流損・ヒステリシス損)を表す励磁コンダクタンスと、 磁化電流を表す励磁サセプタンスからなる並列回路。負荷の有無にかかわらず、 一次電圧が加わっている限り流れ続ける。

励磁電流は負荷電流に比べてかなり小さいため、実務上の計算では励磁回路を無視して 「一次巻線の抵抗・漏れリアクタンス+二次側換算の抵抗・漏れリアクタンス」だけの 直列回路として近似する簡易等価回路がよく使われる。

等価回路を見たら、まず「これは漏れインピーダンス(直列・負荷電流が通る)の話か、 励磁回路(並列・鉄損と磁化電流の話)か」を切り分ける。問題文に「無負荷電流」 「鉄損」とあれば励磁回路、「銅損」「電圧降下」とあれば漏れインピーダンスの話だと 判断できる。

短絡試験 — 巻線定数を、実測で求める

ここまでの等価回路の話は「漏れインピーダンスがある」という前提だったが、実際の値は どうやって求めるのか。その答えが短絡試験だ。変圧器の二次側を短絡し、一次側に 電流計・電圧計・電力計をつないで、一次電流が定格電流相当になるまで電圧を上げていく。 このとき電圧計・電力計が示す値から、簡易等価回路(励磁回路を無視した、漏れインピーダンス だけの直列回路)の定数を求められる。

Z=VI,R=PI2,X=Z2R2Z = \frac{V}{I}, \qquad R = \frac{P}{I^2}, \qquad X = \sqrt{Z^2-R^2}
  • ZZ(等価インピーダンス)は、電圧計の読みVVを電流計の読みIIで割るだけで求まる「大きさ」
  • RR(等価抵抗)は、電力計の読みPP(短絡試験では巻線の抵抗損=銅損に相当する有効電力) をI2I^2で割って求める「抵抗分」
  • XX(漏れリアクタンス)は、ZZRRを三平方の定理で組み合わせて初めて求まる「残りの成分」

二次側を短絡しているため一次電圧はごくわずかで済み、鉄心はほとんど磁化されない (励磁電流・鉄損は無視できるほど小さい)。だからこそ、この試験結果は 「一次側換算の漏れインピーダンスだけ」を切り出して測れる、という理屈になっている。

例題(自作の数値例)

単相変圧器の一次側で短絡試験を行ったところ、電流計は20A、電圧計は100V、 電力計は1200Wを示した。この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンスを求める。

Z=10020=5Ω,R=1200202=1200400=3ΩZ = \frac{100}{20} = 5\Omega, \qquad R = \frac{1200}{20^2} = \frac{1200}{400} = 3\Omega X=5232=259=16=4ΩX = \sqrt{5^2-3^2} = \sqrt{25-9} = \sqrt{16} = 4\Omega
短絡試験の3つの計器の役割を混同しないこと。電圧計と電流計の比が「大きさ(Z)」、 電力計の読みから求めた値が「抵抗分(R)」——ここまでは1段階の割り算で済むが、 リアクタンス分(X)だけは、ZとRをそれぞれ先に求めたあとで三平方の定理 $X=\sqrt{Z^2-R^2}$を使わないと出てこない。電力計の読みPを、うっかりそのまま インピーダンスZだと思い込まないこと。

温度上昇試験 — 大形変圧器では「返還負荷法」で電力を使い回す

短絡試験が「巻線の定数」を求める試験だったのに対し、変圧器を実際に定格負荷で 連続運転させたとき、内部(巻線・油・鉄心)の温度がどこまで上がるかを確認する試験が 温度上昇試験だ。試験のやり方は、変圧器の大きさによって大きく変わる。

小形変圧器では、実際に抵抗器などの負荷を接続し、定格電流を流し続ける実負荷法が 使われる。だが電力用の大形変圧器になると、定格容量(数百kV・A〜数万kV・A)を まるごと消費できるだけの試験用電源・負荷を用意するのは現実的ではない。

そこで大形変圧器の温度上昇試験には、返還負荷法という方法が使われる。同じ仕様の 変圧器を2台用意し、二次側どうしを電気的に結んで、外部電源からはこのループの中で 生じる損失(鉄損・銅損に相当する電力)だけを供給すればよいようにする。ループの中で 電力を循環させ、目減りした分だけを外部電源が「返す」というイメージだ。この方法なら、 試験用電源は定格容量よりはるかに小規模なもので済む。

「定格負荷での温度上昇を確認する試験」と聞くと、外部電源にも定格容量そのものが 必要だと考えたくなるが、それは実負荷法(小形変圧器向け)の発想だ。返還負荷法は、 2台の変圧器を結んで作った閉じたループの中で電力を行き来させ、外部電源はそこで 発生する損失分だけを補えばよい——「返還」という名前が、この発想をそのまま表している。

単巻変圧器 — 巻線を一部共有して、小型・低損失にする工夫

ここまで見てきた変圧器は、一次巻線と二次巻線が電気的に分かれている(絶縁されている) 構造を前提にしていた。これに対し単巻変圧器は、1つの巻線の一部を一次・二次で 共用する構造を持つ。

  • 分路巻線:一次・二次に共通する巻線部分
  • 直列巻線:共通でない巻線部分

分路巻線の端子を一次側に、直列巻線を含めた端子を二次側に接続すると、通常の変圧器と 同じように電圧を変換できる。ここで押さえておきたいのが、自己容量負荷容量の違いだ。

  • 負荷容量(通過容量):二次側に接続された負荷が実際に受け取る容量。V2×I2V_2 \times I_2 で計算する、ふつうの意味での「変圧器の容量」
  • 自己容量:直列巻線が実際にやり取りする(変圧器としての変換作用が働いている)容量
自己容量=負荷容量×V2V1V2\text{自己容量} = \text{負荷容量} \times \frac{V_2 - V_1}{V_2}

一次・二次の電圧差が小さいほど自己容量は負荷容量よりずっと小さくなる。つまり単巻変圧器は、 実際に流れる負荷容量のわりに、変圧器本体(巻線・鉄心)が小さくて済む——同じ容量の ふつうの変圧器と比べて、小型・軽量・低損失に作れるということだ。

例題

一次電圧100V、二次電圧110Vの単巻変圧器で、二次側の負荷容量が110kV・Aのとき、 自己容量はいくらか。

自己容量=110×110100110=110×10110=10kV・A\text{自己容量} = 110 \times \frac{110-100}{110} = 110 \times \frac{10}{110} = 10\text{kV・A}
「自己容量=負荷容量」だと思い込まないこと。単巻変圧器の負荷容量のうち、実際に 巻線を変圧器として通過している分(自己容量)はごく一部で、残りは分路巻線を そのまま素通りしている。一次・二次の電圧差が小さい(昇圧・降圧の幅が小さい) 用途ほど、この効果は大きくなる。

巻線を共用している分、単巻変圧器は漏れ磁束が少なく、電圧変動率も小さい。ただし、 一次側と二次側の巻線が直接つながっており電気的に絶縁されていないため、高圧側の 異常電圧がそのまま低圧側に及ぶおそれがある——始動補償器(始動時だけ電圧を落とす オートトランス)など、電圧差の小さい用途で単巻変圧器がよく使われる理由も、この 自己容量の小ささと表裏一体になっている。

変圧器の構造 — 巻線・鉄心・冷却方式という「中身」

ここまでは等価回路という電気的なふるまいの話だったが、変圧器の性能・寿命は、実際の 構造にも大きく左右される。

巻線には、加工しやすく電気抵抗の小さい軟銅線が使われる。鉄心に絶縁を施した上に 巻線を直接巻きつける方法や、あらかじめ円筒巻線・板状巻線として巻いておき、これを 鉄心にはめ込む方法などがある。

鉄心には、飽和磁束密度と比透磁率が大きい電磁鋼板(ケイ素鋼板)が使われる。ここで 押さえておきたいのが、鉄損の2つの成分(ヒステリシス損・渦電流損)それぞれへの対策が 別々の工夫で行われている点だ。

  • ケイ素を数%含有させる:鋼板の材質そのものを変える工夫で、ヒステリシス損を低減する
  • 薄い鋼板を積層し、表面を絶縁被膜で覆う:うず電流の通り道を構造的に断ち切る工夫で、 渦電流損を低減する
「ケイ素含有」と「積層・絶縁被膜」はどちらも鉄損対策という共通点があるため、どちらが ヒステリシス損対策でどちらが渦電流損対策かを逆に覚えやすい。『材質の工夫(ケイ素)= ヒステリシス損対策』『構造の工夫(積層・被膜)=渦電流損対策』と、工夫の種類(材質か 構造か)で対応づけて覚えると取り違えない。

冷却方式は、用いる冷媒によって、絶縁油を使う油入式、空気を使う乾式、ガスを 使うガス冷却式などに分かれる。変圧器油は、巻線を浸して絶縁耐力を高めるとともに、 冷却によって本体の温度上昇を防ぐために使われ、化学的に安定・引火点が高い・流動性に 富む・比熱が大きく冷却効果が大きい、といった性質が求められる。

大型の油入変圧器では、負荷変動に伴って油の温度が変動し、油が膨張・収縮を繰り返す。 これにともなって外気が変圧器内部に出入りを繰り返す現象を呼吸作用といい、外気中の 水分や不純物が油に混入することで油の劣化を招く。この劣化を防ぐため、本体の外部に コンサベータ(油の膨張・収縮を吸収する予備タンク)やブリーザ(出入りする空気を 乾燥剤で除湿する装置)を設けるのが一般的だ。

受変電設備の変圧器で、この等価回路が意味すること

キュービクルの変圧器銘板に書かれている「%インピーダンス」は、この等価回路の 漏れインピーダンスをパーセントで表したものだ。%インピーダンスが分かれば、 短絡電流の見積もりや、複数台の変圧器を並行運転させたときの負荷分担 (この続きは次のトピックで扱う)まで計算できるようになる。

鉄心を磁化するための励磁電流も、無視できる場面ばかりではない。変圧器を軽負荷や 無負荷のまま長時間通電すると、負荷電流はごくわずかでも励磁電流と鉄損は流れ続けている。 これが、変圧器の「無負荷損」が省エネルギー上の課題として扱われる理由でもある。

冒頭のキュービクルの変圧器で、電圧・電流・インピーダンスがそれぞれどう変換されているか ——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 電圧比と電流比を同じ向きの比だと思い込む

    なぜ引っかかる『巻数比=電圧比』は正しいが、電流比はその逆比になる。理想変圧器では電力(VA)が一次・二次で保存されるため、電圧が上がれば電流は下がらなければならない。この符号(分子分母)の向きを電圧比のまま流用すると、電流の計算だけ答えが逆数になってしまう。

    見破り方計算後に「電力保存」で検算する。V1×I1とV2×I2を計算して、両者がほぼ一致するか確認すればよい(理想変圧器では厳密に一致する)。一致しなければ電流比の向きを取り違えている。

  2. 二次側のインピーダンスを一次側に換算するとき、巻数比を1乗のままかけてしまう

    なぜ引っかかる電圧・電流の換算は巻数比の1乗でよいが、インピーダンス(抵抗・リアクタンス)はV=IZの関係上、電圧の換算(a倍)と電流の換算(1/a倍)が組み合わさるため、結果としてa^2倍になる。この2乗の理由を理解せず式だけ覚えると、a倍のまま計算して答えを10倍近く間違えることがある。

    見破り方換算前に「これは電圧・電流(1乗)か、インピーダンス(2乗)か」を毎回自問する。単位を確認するのも有効で、Ω(インピーダンス)を換算する式にaの1乗しか出てこなければ式を疑う。

  3. 励磁電流(無負荷電流)を、負荷電流と同列に扱って計算に混ぜてしまう

    なぜ引っかかる励磁電流は鉄心を磁化するための小さな電流で、負荷の有無にかかわらず流れ続ける。一方、負荷電流は接続された負荷の大きさに応じて変わる。両者は等価回路上で別の枝(励磁回路は並列、負荷側は直列の漏れインピーダンスの先)に位置しており、単純に足し算・引き算できる場面とできない場面がある。

    見破り方問題文に「無負荷電流」「励磁電流」「鉄損」という言葉が出てきたら励磁回路(並列枝)の話、「負荷電流」「銅損」という言葉が出てきたら漏れインピーダンス(直列枝)の話だと切り分けてから式を立てる。

  4. 単巻変圧器の自己容量を、負荷容量(二次側の定格容量:二次電圧×二次電流)と同じ値だと思い込む

    なぜ引っかかる『変圧器の容量』という言葉を1種類しかないものとして覚えていると、単巻変圧器特有の『自己容量(直列巻線が実際にやり取りする、より小さい容量)』という区別を見落としやすい。

    見破り方単巻変圧器では、二次側に接続した負荷が受け取る容量(負荷容量)の一部しか、直列巻線を通っていない(残りは分路巻線を素通りする)ことを思い出す。自己容量は負荷容量より必ず小さく、その比は一次・二次の電圧差が大きいほど1に近づく(=ふつうの変圧器に近づく)。

  5. 短絡試験の電力計の読みPを、そのままインピーダンスZや皮相電力だと思い込み、抵抗RとリアクタンスXを分けて求める手順を省略してしまう

    なぜ引っかかる短絡試験は抵抗分による損失(銅損に相当する有効電力)が支配的だが、リアクタンス分もインピーダンスの一部として存在する。電力計の読みPを見た時点で『これがそのままZだ』と早合点すると、実際にはPが与えているのは抵抗Rの情報だけだという点を見落とす。

    見破り方3つの計器の役割を先に切り分ける。電圧計と電流計の比Z=V/Iが「大きさ」、電力計の読みP(P=I²R)から求めたR=P/I²が「抵抗分」、その2つの差を三平方の定理で処理したX=√(Z²-R²)が「リアクタンス分」——ZとRを別々に求めてから、初めてXが計算できるという順序を崩さない。

  6. 電磁鋼板のケイ素含有と積層絶縁被膜が、それぞれどちらの損失(ヒステリシス損・渦電流損)を低減する対策なのかを逆に覚える

    なぜ引っかかるどちらも『鉄損を減らすための工夫』という共通点があるため、細部(ケイ素含有はヒステリシス損対策、積層・絶縁被膜は渦電流損対策)を逆に暗記しやすい。

    見破り方対策の種類で切り分ける。ケイ素含有は鋼板の材質そのものを変える工夫=材質のB-H特性に依存するヒステリシス損の対策。積層して薄い鋼板を絶縁被膜で覆うのは、渦電流の通り道を構造的に断ち切る工夫=渦電流損の対策。『材質の工夫=ヒステリシス損』『構造の工夫=渦電流損』という対で覚える。

  7. 電力用の大形変圧器の温度上昇試験(返還負荷法)を、定格容量そのものを供給できる大規模な試験用電源が必要な試験だと誤解する

    なぜ引っかかる『定格負荷時の温度上昇を確認する試験』という説明だけを見ると、実際に定格容量まるごとを流し込む必要があると考えやすい。だが返還負荷法は、2台の変圧器を電気的に結んで電力を内部で循環させ、外部電源は目減りする損失分(鉄損・銅損に相当する電力)だけを補えばよい、という発想の試験である。

    見破り方『返還』という名前の意味を思い出す。二次側どうしをつないで作った閉じたループの中で電力を行き来させ、そこで生じた損失分だけを外部電源から返して(補って)やればよい——だから試験用電源は定格容量よりはるかに小規模で済む。小形変圧器の実負荷法(実際に定格電流を流す)との違いを、対象の大きさ(試験電源の規模)で確認する。

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本6問・応用3問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電圧比は巻数比そのもの:V1/V2 = N1/N2 = a(一次巻数のほうが多ければ、一次電圧のほうが高い)
  2. 電流比は巻数比の逆比:I1/I2 = N2/N1 = 1/a(電圧が上がった側は、電流が下がる。電力は保存される)
  3. 二次側の抵抗・リアクタンスを一次側に換算するときは、巻数比の2乗(a^2)をかける。電圧・電流は1乗、インピーダンスは2乗という次元の違いに注意
  4. 等価回路には、負荷に電力を渡す漏れインピーダンス(一次・二次の抵抗と漏れリアクタンス)と、鉄心を磁化するための励磁回路(並列に入る)の2系統がある
  5. 励磁電流は負荷電流に比べて非常に小さく、簡易等価回路では励磁回路を無視して近似することが多い
  6. 単巻変圧器は、一次・二次で共通する巻線部分(分路巻線)と、共通でない巻線部分(直列巻線)からなる。自己容量(直列巻線が実際にやり取りする容量)は、負荷容量(二次側の定格容量)より小さく、その比は電圧差に応じて決まる
  7. 単巻変圧器は巻線が共通化されている分、漏れ磁束が少なく電圧変動率が小さい。ただし一次・二次が電気的に絶縁されていない(巻線が直接つながっている)点には注意が必要
  8. 短絡試験(二次側を短絡し、一次側に電流計・電圧計・電力計をつないで定格電流相当を流す試験)の読み(電圧V・電流I・電力P)から、一次側換算の等価インピーダンスZ=V/I、等価抵抗R=P/I²、漏れリアクタンスX=√(Z²-R²)を求められる。励磁回路は無視できるほど小さいため、簡易等価回路(直列のR・Xだけ)がそのまま使える
  9. 温度上昇試験は、小形変圧器では実際に定格電流を流し続ける実負荷法を使うが、電力用の大形変圧器では返還負荷法(同じ仕様の変圧器を2台用意して電気的に結び、外部電源からは鉄損・銅損に相当するわずかな電力だけを供給すればよい試験方法)を使う。定格容量そのものを供給できる試験用電源を用意しなくて済む点が返還負荷法の利点
  10. 変圧器の鉄心には、飽和磁束密度・比透磁率が大きい電磁鋼板(ケイ素鋼板)が使われる。ケイ素を数%含有させることでヒステリシス損を低減し、鋼板を薄く積層してその表面を絶縁被膜で覆うことで渦電流損を低減する——『ケイ素含有=ヒステリシス損対策』『積層・絶縁被膜=渦電流損対策』という対応で覚える
  11. 変圧器の冷却方式は、絶縁油を使う油入式、空気を使う乾式、ガスを使うガス冷却式などに分かれる。変圧器油は絶縁耐力を高め本体を冷却する役割を持ち、化学的に安定・引火点が高い・流動性に富む・比熱が大きく冷却効果が大きい、といった性質が求められる
  12. 大型の油入変圧器では負荷変動に伴う油の膨張・収縮で外気が出入りする呼吸作用が起こり、水分・不純物の混入による油の劣化の原因になる。これを防ぐため、本体外部にコンサベータやブリーザを設ける
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