キュービクルの中には、単相変圧器を2台だけ使って三相を作る配線を見かけることがある。 3台使えば済むところを、あえて2台にしている。しかもその2台の出力容量は、単純に 「2台分」にはならないという。
さらに、大きな負荷に対応するために変圧器を2台以上並べて同時に運転する現場もある。 このとき、条件がそろっていないと、片方の変圧器だけが過負荷になって焼けてしまう ことがあるという。変圧器の「効率」「V結線」「並行運転」——このどれもが、 等価回路のどの値が一致しているか・していないかで結果が決まる。
このトピックを読み終えるころには、変圧器の効率が最大になる負荷点を計算し、 V結線の出力容量を求め、並行運転の条件が崩れたときに何が起きるかを説明できるように なっている。
種明かしは、鉄損と銅損という性質の違う2つの損失、そして電圧比と%インピーダンスという 2つの一致条件にある。
効率 — 鉄損と銅損が釣り合う負荷率で最大になる
変圧器の損失は大きく2種類に分けられる。
- 鉄損(無負荷損) — 鉄心を磁化することで生じる損失(ヒステリシス損・うず電流損)。 一次電圧が一定であれば、負荷の大小に関係なくほぼ一定の値で発生し続ける。
- 銅損(負荷損) — 巻線の抵抗によるジュール熱。負荷電流の2乗に比例して増減する。
効率は「出力÷(出力+損失の合計)」で求まる。
ここで は鉄損、 は銅損。銅損は負荷率 (定格に対する負荷の割合)の2乗に 比例して変化するため、 と表せる。
例題
出力4000W、鉄損100W、銅損100Wで運転している変圧器の効率は何%か。
定格負荷時の鉄損が 、定格負荷時の銅損が であるとき、 効率が最大になる負荷率 は、 を解いて求まる。
鉄損100W、定格負荷時の銅損400Wの変圧器なら、、 つまり定格の50%の負荷で運転しているときに効率が最大になる。
力率が変わると、効率も変わる — 損失は一定、出力だけが力率に応じて動く
ここまでは「負荷率(定格に対する電流の割合)が変わると効率がどう動くか」を見てきた。 では、負荷率(電流の大きさ)は変えずに、力率だけが変わったらどうなるか。
同じ電流が流れている限り、鉄損も銅損もほぼ変わらない——損失は電流の大きさで決まり、 力率にはほぼ関係しないからだ。一方で、変圧器が実際に送り出す出力(有効電力)は 皮相電力に力率をかけた値であり、力率が下がれば出力もそのまま比例して 下がる。つまり効率の式のうち、 分母(損失)は据え置きのまま、分子(出力)だけが力率に応じて小さくなるため、 力率が下がると効率も下がる。
例題(自作の数値例)
ある変圧器の全負荷力率100%における全負荷効率は96%である。全負荷力率75%における 全負荷効率を求める。
全負荷力率100%のとき、出力を基準値100とすると、
全負荷力率75%でも、流れる電流の大きさ(=全負荷)は変わらないため損失は同じ4.17の まま。出力だけが力率に比例して75に変わる。
巻線抵抗の温度換算 — 規約効率を「同じ土俵」で比較するために
変圧器の巻線抵抗は、測定した瞬間の温度によって値が変わる。抵抗体(銅)は温度が上がるほど抵抗値が大きくなる性質を持つため、真夏に測った抵抗値と真冬に測った抵抗値は、同じ変圧器でも異なる値になってしまう。これでは異なる変圧器どうしの効率を公平に比較できないため、規約効率を計算する際は、巻線抵抗の値を基準温度(銅巻線の場合は75℃)に補正してから使うと定められている。
温度[℃]における抵抗値と、温度[℃]における抵抗値の比は、次の式で表される(銅導体の場合)。
例題(自作の数値例)
ある変圧器の巻線の温度と抵抗値を測ったところ、20℃のとき2.0Ωであった。この巻線を規約効率計算の基準温度である75℃に補正した抵抗値を求める。
補正の向き(分子・分母のどちらに75、どちらに20を置くか)を迷ったら、「温度が上がれば抵抗値も大きくなるはず」という不等号の向きで検算する。20℃から75℃(高温側)へ補正するのだから、答えは元の2.0Ωより大きくなっていなければならない。
電圧変動率 — 無負荷時と全負荷時で、電圧はどれだけ変わるか
変圧器に負荷をかけると、巻線の抵抗・漏れリアクタンスによる電圧降下のぶんだけ、二次側の 端子電圧は無負荷時よりわずかに低下する(力率によっては上昇することもある)。この 変化の割合を電圧変動率という。
厳密な計算には等価回路の抵抗・リアクタンスと負荷電流の位相関係を追う必要があるが、 実務では次の近似式で済ませることが多い。
- :百分率抵抗降下。定格電流を流したときの巻線抵抗による電圧降下を、定格電圧に対する 割合[%]で表したもの。全負荷時の銅損と定格容量から で求まる
- :百分率リアクタンス降下。漏れリアクタンスによる電圧降下を、同じく定格電圧に 対する割合[%]で表したもの
- :負荷の力率角(力率に対応する角度)
例題(自作の数値例)
定格容量300kV・Aの単相変圧器があり、力率1.0の全負荷における全負荷銅損が4.5kWだった。
力率1.0なので、電圧変動率は。
力率が1.0でない場合は、の項も足し合わせる必要がある。百分率抵抗降下 、百分率リアクタンス降下の変圧器に、力率0.8(遅れ、、 )の定格負荷を接続したときは、
V結線 — 単相変圧器2台で三相を作ると、出力は「2台分」にはならない
単相変圧器を3台使ってΔ(デルタ)結線にすれば、三相の出力容量は単純に「1台の容量×3」 になる。ところが、Δ結線の1台が故障・保守などで使えないとき、残った2台をV字型に つなぐだけで、電圧・位相が正しい三相電源を作り続けることができる——これがV結線だ。
ただしV結線の出力容量は、2台の合計容量(1台の容量×2)にはならない。電圧・電流の 位相関係から、実際に取り出せる三相出力は次の式になる。
は単相変圧器1台の容量。2台の合計容量 に対する比率(利用率)は 、つまり2台の設備を持ちながら、その86.6%しか 実際には使い切れない。
例題
定格容量50kVAの単相変圧器2台をV結線したときの三相出力容量は何kVAか。
三相三巻線変圧器 — 三次巻線で無効電力を肩代わりする
これまで見てきた変圧器は一次・二次の2つの巻線だけを持つ構造だったが、三相三巻線変圧器は これに加えて三次巻線(多くは△結線)を持つ。三次巻線には、調相設備(進相コンデンサや 分路リアクトル)や所内の低圧負荷などを接続できる。
三次巻線に進相コンデンサを接続すると、二次側の誘導性負荷が必要とする遅れ無効電力の 一部を、三次側のコンデンサが供給する進み無効電力で肩代わりできる。二次側と三次側の 無効電力が打ち消し合う結果、一次側から見た無効電力・電流が小さくなる——これは、 前のトピックで見た「同期調相機(過励磁の同期電動機)」が力率改善に使われるのと同じ発想が、 変圧器の三次巻線という形で実現されているものだ。
漏れインピーダンス・励磁電流・損失を無視できる場合、一次電流は次の手順で求める。
- 二次側の負荷から、有効電力と無効電力を求める
- 三次側のコンデンサが供給する無効電力を、から差し引く(三次側は進み=符号が逆)
- 一次側の皮相電力 (損失がないので有効電力はP1=P2のまま)
- 一次電流 (三相・線間電圧の場合)
例題(自作の数値例)
一次線間電圧66kVの三相三巻線変圧器の二次巻線に、力率0.6(遅れ)、5000kV・Aの三相誘導性 負荷を接続し、三次巻線に2000kvarの三相コンデンサ(進み無効電力を供給)を接続した。 漏れインピーダンス・励磁電流・損失を無視できるとき、一次電流を求める。
三次側のコンデンサが遅れ無効電力の一部を肩代わりした分、一次側の無効電力(したがって 一次電流)が小さく抑えられていることが、この計算からも確認できる。
並行運転 — 4つの条件がそろわないと、片方だけが過負荷になる
変圧器の容量が足りないとき、複数台を並列につないで容量を増やす(並行運転)ことがある。 ただし、どんな変圧器同士でも並べればよいわけではなく、次の条件がそろっている必要がある。
- 極性が一致していること — 逆に接続すると、大きな循環電流(横流)が流れてしまう
- 巻数比(電圧比)が等しいこと — 一致していないと、電圧差によって循環電流が流れる
- %インピーダンスが等しいこと — 一致していないと、負荷が容量に比例した形で分担されない
- (三相の場合)相回転と位相が一致していること
このうち特に見落とされやすいのが3番目だ。電圧比が完全に一致していても、 %インピーダンスが異なると、%インピーダンスの小さい変圧器のほうに電流が集中しやすく、 その変圧器だけが先に過負荷になってしまう。容量の異なる変圧器同士を並行運転させる場合は、 「容量比」ではなく「%インピーダンスが等しいこと」を優先して確認する必要がある。
巻数比のわずかな差が生む循環電流 — 無負荷でも流れ続ける横流を計算する
条件2(巻数比の一致)が「崩れたときに何が起きるか」を、実際に計算できるところまで 掘り下げておこう。2台の変圧器の巻数比が完全に一致していれば、二次側を無負荷にした とき、両者の起電力は等しく、電位差はゼロになる。だが実際の変圧器には製造上のわずかな 誤差があり、巻数比がほんの少しだけ違うことがある。
このとき、二次側を無負荷にしても、2台の変圧器の起電力には差ΔEが生まれる。2台の 二次巻線どうしをつなぐと、このΔEを打ち消す向きに、2台の巻線間を貫く閉じたループの 中を電流が流れ続ける。これが循環電流(横流)だ。ΔEは、2台の変圧器の二次側換算 インピーダンス・が直列に並んだ、この閉じたループ全体に加わっている。
例題(自作の数値例)
巻数比がわずかに異なる単相変圧器A・Bを並列接続し、二次側を無負荷として一次側に 定格電圧を加えたところ、二次側換算で0.60Vの起電力差が生じた。変圧器A・Bの二次側換算 インピーダンスがそれぞれ0.04Ω、0.02Ωのとき、二次巻線間を循環して流れる電流は、
受変電設備での実務的な意味
小規模な需要家では単相変圧器1台の運用が基本だが、負荷が大きい設備や、故障時にも 三相電源を止められない設備では、V結線での応急運転や、複数台の並行運転が実際に 検討される。このとき「容量が足りるか」だけでなく、「V結線なら容量は√3倍にしかならない」 「並行運転させるなら%インピーダンスの銘板値を確認する」という、このトピックで見た 数字の裏付けが必要になる。
冒頭のキュービクルで見た2台構成の変圧器——答え合わせは理解度チェックの最後の問題で してみよう。