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理論 ・ 4 / 16

静電容量とコンデンサの直並列

読み終えると、こうなる

コンデンサが直列・並列に組まれた回路図を見たとき、抵抗の直並列と混同せず、合成静電容量が増える向きか減る向きかを式を書く前に見当づけられるようになる

  • 静電容量Cの定義式 Q=CV から、電荷・電圧・静電容量の関係を式変形で相互に求められ、コンデンサを並列・直列接続したときの合成静電容量(並列は足し算、直列は逆数の和の逆数)を、抵抗の直並列と効き方が逆になる理由とあわせて説明できる
  • 平行板コンデンサの静電容量を、電極面積・間隔・誘電率から計算できる。誘電体を電極間に『重ねる(層状)』場合は直列合成、『並べる(左右に分割)』場合は並列合成として扱う違いを区別でき、並べた場合は各領域の電界の強さEが共通(電圧・間隔が共通)で電束密度Dが誘電率に比例して分かれることを説明できる
  • 電圧の異なる充電済みコンデンサと未充電コンデンサを接続したとき、電荷保存則から接続後の共通電圧を求め、接続前後で静電エネルギーが減少する(電荷のように単純には保存されない)ことを計算でき、Δ結線されたコンデンサをY結線に変換する式を使って、直並列の組み合わせだけでは解けないブリッジ状のコンデンサ回路網の合成静電容量を求められる
  • 平行板コンデンサの極板間の電界の強さE=V/d(Vは印加電圧、dは極板間隔)を計算でき、誘電体の種類・厚さが異なる複数のコンデンサについて、同じ電圧を加えたときの電界の強さの大小や、絶縁破壊電界に達するまでの印加電圧(絶縁破壊電圧)の大小を比較できる
考えてみよう

抵抗を直列につなぐと合成抵抗は増え、並列につなぐと合成抵抗は減る——ここまでは 分圧・分流のトピックで確認した通りだ。

では、コンデンサを直列・並列につないだとき、合成静電容量はどちらに転ぶだろうか。 「直列だから増える」「並列だから減る」と、抵抗と同じ感覚で答えると、実は逆になる

このトピックを読み終えるころには、コンデンサの直並列回路を見て、抵抗の直並列と 混同せずに、合成静電容量が増える向きか減る向きかを即座に見分けられるようになっている。

種明かしは、静電容量というものが「電極板にどれだけ電荷を貯め込めるか」という 容器の大きさを表す量であり、直列・並列でその容器の大きさの増減の仕方が 抵抗とは正反対になる、という点にある。

静電容量の定義 — Q = CV

コンデンサは、2枚の電極板の間に電荷を蓄える部品だ。加えた電圧 VV と、蓄えられる 電荷 QQ は比例し、その比例定数が静電容量 CC になる。

Q=CVQ = CV

CC が大きいほど、同じ電圧でもたくさんの電荷を蓄えられる——つまり容器が大きい、 というイメージで捉えるとよい。

例題

静電容量4μFのコンデンサに、電圧100Vを加えた。蓄えられる電荷はいくらか。

Q=CV=4μF×100V=400μCQ = CV = 4\mu\text{F} \times 100\text{V} = 400\mu\text{C}

静電容量は「形」で決まる — 平行板コンデンサの公式

ここまでは静電容量Cを「与えられた値」として扱ってきたが、実はCの値そのものが、電極の 形と配置によって決まっている。平行板コンデンサ(面積SSの電極2枚を、間隔ddで 向かい合わせたもの)の静電容量は、次の式で求まる。

C=εSdC = \frac{\varepsilon S}{d}

ε\varepsilon は電極間を満たす物質の誘電率(真空なら ε0=8.85×1012F/m\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\text{F/m}、 誘電体を挟むと比誘電率 εr\varepsilon_r を掛けた ε=ε0εr\varepsilon=\varepsilon_0\varepsilon_r になる)。 面積が広いほど、間隔が狭いほど、誘電率が高いほど、より多くの電荷を蓄えられる——という 直感がそのまま式に表れている。

なお、孤立した導体球(半径rr)も一種のコンデンサとみなせ、静電容量は C=4πεrC=4\pi\varepsilon r という別の式で求まる。どちらも「電極の形状が静電容量を決める」という同じ発想の応用だ。

例題

電極面積0.02m²、電極間隔2mmの平行板コンデンサに、比誘電率3の誘電体を挟んだ。 この静電容量は何Fか。(ε0=8.85×1012F/m\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\text{F/m}

C=ε0εrSd=8.85×1012×3×0.020.0022.66×1010FC = \frac{\varepsilon_0\varepsilon_r S}{d} = \frac{8.85\times10^{-12}\times3\times0.02}{0.002} \fallingdotseq 2.66\times10^{-10}\text{F}
誘電率の異なる層を電極間に**重ねて**挿入した平行板コンデンサは、1個のコンデンサに見えても 中身は「層ごとに静電容量の異なる、複数のコンデンサが電極間で直列につながっている」状態と同じだ。 各層についてC=εS/dを個別に計算し、直列合成の式 1/C=1/C1+1/C2+... で1つにまとめればよい。 全体の厚みをそのままdに代入して1回で計算しようとすると、誘電率が層ごとに違うという条件を 無視することになり、誤った値が出る。

並列接続 — 容器の面積が広がるので、合成容量は単純な足し算

コンデンサを並列に接続すると、合成静電容量は単純に足し合わさる。

C=C1+C2C = C_1 + C_2

これは電極板の面積が実質的に広がったのと同じ効果を持つためだ。板の面積が広いほど たくさんの電荷を蓄えられるので、並列に増やすほど容量は大きくなる。抵抗の直列と まったく同じ式の形になっている点に注意したい。

例題

静電容量2μFと3μFのコンデンサを並列に接続した。合成静電容量はいくらか。

C=2μF+3μF=5μFC = 2\mu\text{F} + 3\mu\text{F} = 5\mu\text{F}

直列接続 — 板の間隔が広がるので、合成容量は逆数の和の逆数

コンデンサを直列に接続すると、合成静電容量は逆数の和の逆数になる。

1C=1C1+1C2\frac{1}{C} = \frac{1}{C_1} + \frac{1}{C_2}

2個だけの直列なら、次の簡易式でも計算できる。

C=C1C2C1+C2C = \frac{C_1 C_2}{C_1+C_2}

電極板どうしの間隔が実質的に広がったのと同じ効果になるため、直列に増やすほど 合成容量はむしろ小さくなる。抵抗の並列とまったく同じ式の形だ。

例題

静電容量2μFと3μFのコンデンサを直列に接続した。合成静電容量はいくらか。

C=2×32+3=65=1.2μFC = \frac{2 \times 3}{2+3} = \frac{6}{5} = 1.2\mu\text{F}
コンデンサの直並列は「抵抗とすべて逆」と丸暗記するのが最速の検算法だ。抵抗の直列=足し算、 並列=逆数の和の逆数。コンデンサの直列=逆数の和の逆数、並列=足し算。迷ったら「抵抗ならどっち だったか」を思い出し、答えを入れ替えればよい。

直列コンデンサに共通するのは「電荷」であって「電圧」ではない

抵抗の直列回路では、共通するのは電流だった。コンデンサの直列回路で共通するのは、 各コンデンサに蓄えられる電荷Qだ。電圧の方は、静電容量に反比例して分かれる。

V1=QC1,V2=QC2V_1 = \frac{Q}{C_1}, \quad V_2 = \frac{Q}{C_2}

容量が小さいコンデンサほど、同じ電荷でも V=Q/CV=Q/C の値は大きくなる。つまり 容量の小さいコンデンサほど、電圧を多く受け持つ——ここも抵抗の分圧(抵抗が 大きい方が電圧を多く受け持つ)と対応関係がねじれている部分なので注意したい。

例題

静電容量4μFと6μFのコンデンサを直列に接続し、全体に電圧100Vを加えた。 それぞれのコンデンサにかかる電圧を求める。

まず合成静電容量とそこに蓄えられる電荷を求める。

C=4×64+6=2.4μF,Q=CV=2.4μF×100V=240μCC = \frac{4 \times 6}{4+6} = 2.4\mu\text{F}, \quad Q = CV = 2.4\mu\text{F} \times 100\text{V} = 240\mu\text{C}

直列なので、このQは4μF側にも6μF側にも共通して蓄えられている。各コンデンサの電圧は、

V4=2404=60V,V6=2406=40VV_4 = \frac{240}{4} = 60\text{V}, \quad V_6 = \frac{240}{6} = 40\text{V}

容量の小さい4μF側の方が、より大きな電圧(60V)を受け持つ結果になった。

検算は電圧の合計で行う。V4+V6 = 60+40 = 100V となり、全体に加えた電圧と一致する。 これはKVL(電圧則)と同じ考え方で、直列コンデンサでも電圧の内訳は必ず全体の電圧に 一致していなければならない。

充電済みコンデンサをつなぐと何が起きるか — 電荷は保存されても、エネルギーは保存されない

ここまでは、最初から回路につながっているコンデンサの話だった。ここで少し場面を変えて、 すでに充電されたコンデンサを、まだ充電されていないコンデンサと接続したときに 何が起きるかを見る。

このとき成り立つのは、電流則(KCL)と同じ発想の電荷保存則だ。接続の瞬間に電荷が 外部へ逃げたり湧いて出たりしない限り、接続前の総電荷と接続後の総電荷は等しい。

Q=QQ_{\text{前}} = Q_{\text{後}}

並列接続なので、接続後は2つのコンデンサに共通の電圧がかかる状態で落ち着く。この 共通電圧は、接続後の合成静電容量(並列だから単純な足し算)で総電荷を割れば求まる。

例題

電圧90Vに充電された静電容量2μFのコンデンサと、全く充電されていない静電容量3μFの コンデンサを並列に接続した。接続後の共通電圧はいくらか。

Q=2μF×90V=180μC,C合成=2+3=5μF,V=QC合成=1805=36VQ = 2\mu\text{F}\times90\text{V} = 180\mu\text{C}, \qquad C_{\text{合成}} = 2+3 = 5\mu\text{F}, \qquad V = \frac{Q}{C_{\text{合成}}} = \frac{180}{5} = 36\text{V}

ここまでは、分圧・分流のトピックで見た「未知数と式の本数を数える」考え方の応用にすぎない。 だが、ここで見過ごしやすい落とし穴がある。電荷は保存されても、静電エネルギーは保存されない。

W=12×2μF×902=8100μJ=8.1mJW_{\text{前}} = \frac{1}{2}\times2\mu\text{F}\times90^2 = 8100\mu\text{J} = 8.1\text{mJ} W=12×5μF×362=3240μJ=3.24mJW_{\text{後}} = \frac{1}{2}\times5\mu\text{F}\times36^2 = 3240\mu\text{J} = 3.24\text{mJ}

接続前は8.1mJあった静電エネルギーが、接続後は3.24mJに減っている。差の4.86mJは どこにも「保存」されておらず、電圧の異なる2つのコンデンサを導線でつないだ瞬間に流れる 電荷移動そのものが、配線のごくわずかな抵抗で熱として、あるいは電磁波としてエネルギーを 消費してしまうために失われる。

「電荷保存則が成り立つ量は、エネルギーも含めて全部保存されるはずだ」という思い込みが、 この手の問題でいちばんの落とし穴になる。電荷Qは足し算・引き算だけで保存されるが、 静電エネルギーはQやVの2乗に比例する量であり、性質がまったく違う。接続前後の計算は 必ず「①電荷保存則で共通電圧を求める」「②その電圧で改めてエネルギーを計算し、 接続前の合計と比較する」の2段階に分けて進めるとよい。

コンデンサのΔ-Y変換 — 直並列だけでは解けない回路網に出会ったら

直列・並列の公式は、コンデンサが素直に直列か並列につながっている場合にしか使えない。 3つのコンデンサが三角形につながったΔ(デルタ)結線を含む回路網は、直並列の合成だけでは 解けないことがある。このとき使えるのが、Δ結線をY(星形)結線に変換するという考え方だ。

Δ結線の3つの容量を CabC_{ab}CbcC_{bc}CcaC_{ca} とすると、これと電気的に等価なY結線の 各アームの容量は、次の式で求まる(aa点につながるアームの容量 CaC_a は、aa点に接していない 辺 CbcC_{bc} を分母に置く)。

Ca=CabCbc+CbcCca+CcaCabCbcC_a = \frac{C_{ab}C_{bc}+C_{bc}C_{ca}+C_{ca}C_{ab}}{C_{bc}}

この式は、三相交流のトピックで見た抵抗のΔ-Y変換とよく似た形をしているが、分子・分母の 関係が入れ替わっている点に注意したい。抵抗のΔ-Y変換では「隣り合う2辺の積」を分子に、 「3辺の和」を分母に置いたが、コンデンサでは「3辺の積の和(ペアごとの積の合計)」を分子に、 「向かい合う1辺」を分母に置く。

3つとも同じ値 CΔC_\Delta の対称な場合で確かめてみると、分かりやすい。

Ca=3CΔ2CΔ=3CΔC_a = \frac{3C_\Delta^2}{C_\Delta} = 3C_\Delta

対称なΔ結線をY結線に変換すると、容量は3倍になる。 抵抗の場合(対称なΔ結線をY結線に 変換すると1/3になる)とは、ちょうど逆向きの関係だ。

例題

静電容量が全て等しい(C=6μF)3つのコンデンサをΔ結線で接続した回路をY結線に変換すると、 Y結線の各アームの静電容量はいくらになるか。

Ca=3×6μF=18μFC_a = 3\times6\mu\text{F} = 18\mu\text{F}
「コンデンサは抵抗と直列・並列の効き方が逆」という、この単元の冒頭で見た注意点は、 Δ-Y変換にもそのまま引き継がれる。抵抗のΔ-Y変換の公式を覚えていても、それをそのまま コンデンサに当てはめると符号や倍率を取り違える。対称な場合の「3倍になる」(抵抗なら 「1/3になる」)という一点を先に検算の道具として持っておくと、複雑な非対称の式を 立てる前に、桁の見当違いに気づける。

誘電体を「重ねる」と「並べる」で式がまったく違う

これまで見た誘電体入りコンデンサは、誘電率の異なる層を電極間に重ねて(電極と平行な断面で分割して)挿入したものだった。もう1つ、試験で問われるパターンが、誘電率の異なる誘電体を電極間に並べて(電極と垂直な断面で分割して、左右に)挿入したものだ。見た目は似ているが、電気的な振る舞いはまったく違う。

電極間隔dd、電極面積2S2S(左右にSSずつ二等分)の平行板コンデンサに、比誘電率εr1\varepsilon_{r1}の誘電体1とεr2\varepsilon_{r2}の誘電体2を左右に並べて挿入し、電圧VVを加えたとする。

  • 誘電体1の領域も誘電体2の領域も、電極間隔ddは共通で、加わる電圧VVも共通(同じ2枚の電極につながっているため)。したがって電界の強さE=V/dE=V/dはどちらの領域でも同じ値になる。誘電率が違っても、EEは変わらない。
  • 一方、電束密度D=εED=\varepsilon Eは誘電率ε\varepsilonに比例するため、誘電体1と誘電体2で電束密度は異なるD1=ε0εr1ED_1=\varepsilon_0\varepsilon_{r1}ED2=ε0εr2ED_2=\varepsilon_0\varepsilon_{r2}E)。
  • 各領域は、面積SS・間隔dd・誘電率εr1\varepsilon_{r1}(またはεr2\varepsilon_{r2})の独立したコンデンサとみなせ、電極全体には2つのコンデンサが並列に接続されているのと同じことになる。合成静電容量はC=C1+C2C=C_1+C_2(単純な足し算)。
「重ねる(層状)」と「並べる(左右に分割)」は、どちらも誘電体が2種類あるという見た目は同じだが、回路的には正反対だ。重ねた場合は電極間隔が実質的に区切られるため直列(電荷Qが共通、電界は誘電率に反比例して分かれる)、並べた場合は電極面積が実質的に区切られるため並列(電圧Vと電界Eが共通、電束密度が誘電率に比例して分かれる)になる。「境界面が電極と平行か、垂直か」を最初に確認する習慣をつけると取り違えない。

例題

電極面積2S2S(左右にSSずつ二等分)、電極間隔ddの平行板コンデンサに、比誘電率3の誘電体1と比誘電率5の誘電体2を、左右に並べて挿入し、電圧VVを加えた。誘電体1・誘電体2それぞれの領域における電界の強さの比と、電束密度の比を求める。

電界の強さは、どちらの領域もE=V/dE=V/dで共通。比は1:1。

電束密度はD=εE=ε0εrED=\varepsilon E=\varepsilon_0\varepsilon_r Eなので、誘電率の比がそのまま反映される。

D1:D2=εr1:εr2=3:5D_1:D_2=\varepsilon_{r1}:\varepsilon_{r2}=3:5

極板間の電界の強さと絶縁破壊電圧 — 間隔dが薄いほど、同じ電圧でも危険になる

先ほど見た電界の強さE=V/dE=V/dは、誘電体を左右に並べたときの話に限らず、平行板コンデンサ全般に 共通する関係だ。電圧VVが同じでも、極板間隔ddが狭いコンデンサほど、極板間の電界の強さEEは 強くなる(ddが分母にあるため反比例)。

誘電体には、電界の強さがある限度を超えると絶縁破壊を起こしてしまう、材質固有の絶縁破壊電界 EmE_m[V/mmなど]がある。印加電圧を徐々に上げていき、E=V/dE=V/dEmE_mに達した瞬間、それ以上は 電圧をかけられない。この限界の電圧(絶縁破壊電圧)は、次の式で求まる。

Em=VmaxdVmax=Em×dE_m = \frac{V_{max}}{d} \quad \Longrightarrow \quad V_{max} = E_m \times d

ここで注意したいのは、絶縁破壊電界EmE_m(材質としての強さ)と、絶縁破壊電圧VmaxV_{max} (そのコンデンサとして実際にかけられる電圧)は別の量だという点だ。EmE_mが大きい材質でも、 間隔ddが薄ければ、Vmax=Em×dV_{max}=E_m\times dはかえって小さくなることがある。

例題

極板間隔が異なる3つの平行板コンデンサP・Q・Rがある(間隔はそれぞれP:4mm、Q:2mm、R:1mm)。

まず、3つに同じ電圧V0V_0を加えたときの電界の強さを比べる。E=V0/dE=V_0/dなので、間隔が狭いほど 電界は強い。

ER>EQ>EP(間隔の小さい順)E_R > E_Q > E_P \quad(間隔の小さい順)

次に、絶縁破壊電界がそれぞれP:20kV/mm、Q:30kV/mm、R:50kV/mmだったとして、絶縁破壊電圧 Vmax=Em×dV_{max}=E_m\times dを計算する。

Vmax,P=20×4=80kV,Vmax,Q=30×2=60kV,Vmax,R=50×1=50kVV_{max,P}=20\times4=80\text{kV}, \quad V_{max,Q}=30\times2=60\text{kV}, \quad V_{max,R}=50\times1=50\text{kV} Vmax,P>Vmax,Q>Vmax,RV_{max,P} > V_{max,Q} > V_{max,R}

絶縁破壊電界(材質の強さ)はR>Q>Pの順で強いのに、絶縁破壊電圧(実際にかけられる電圧)は 逆順のP>Q>Rになる。

「絶縁破壊電界が強い材質を使ったコンデンサほど、より高い電圧までかけられるはずだ」という 直感は、間隔dの効果を忘れていると誤りにつながる。間隔が薄いコンデンサは、材質としての 絶縁耐力が高くても、E=V/dの分母dが小さい分、低い電圧でも電界がすぐにEmへ達してしまう。 「Emを比較したいのか、Vmaxを比較したいのか」を問題文で確認し、Vmaxを求める設問では 必ずdを掛け合わせる一手間を忘れないようにしたい。

なぜ制御盤の中で、コンデンサを直列に使うのか

制御盤の平滑回路や進相コンデンサ設備では、コンデンサを直列に接続する設計を見ることがある。 容量だけを見れば直列は不利(合成容量が小さくなる)だが、それでも直列にする理由は 耐圧にある。1個のコンデンサの耐圧を超える電圧を扱う必要がある場面では、複数のコンデンサを 直列にして、各コンデンサが受け持つ電圧を分散させることで、素子1個あたりの耐圧を超えずに 高い電圧の回路を構成できる。容量が小さくなるという代償と引き換えに、耐圧を確保しているわけだ。

冒頭の「直列と並列、どちらが容量が増えるか」の答え合わせは、理解度チェックの 最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. コンデンサの直列・並列の合成式を、抵抗の直列・並列の式とそのまま同じ形で覚えてしまう

    なぜ引っかかる抵抗は直列で単純な足し算、並列で逆数の和の逆数になる。コンデンサはこれが完全に入れ替わっており、直列で逆数の和の逆数、並列で単純な足し算になる。抵抗の感覚のまま式を立てると、直列・並列の答えが逆転する。

    見破り方『コンデンサは抵抗と直列・並列が逆』という一点だけを先に思い出す。並列接続は電極板の面積が実質的に広がるイメージ(面積が増えれば蓄えられる電荷も増える=容量は単純に足し算)と結びつけて覚えると混同しにくい。

  2. 直列接続のコンデンサで、各コンデンサにかかる電圧が等しいと思い込む

    なぜ引っかかる抵抗の直列では電流が共通で、電圧は抵抗値の比で分かれる。コンデンサの直列ではこれと対応関係が違い、共通なのは電圧ではなく『各コンデンサに蓄えられる電荷Q』であり、電圧はむしろ静電容量に反比例して分かれる(容量が小さいコンデンサほど電圧を多く受け持つ)。

    見破り方直列コンデンサでは『電荷Qが共通』をまず確認し、Q=CVからV=Q/Cで各コンデンサの電圧を個別に求める。容量が小さいコンデンサほどV=Q/Cの値が大きくなる(分母が小さいほど商が大きい)ことを、極端な値で検算する。

  3. 合成静電容量の式に、抵抗の並列合成のような『2つの値の積÷和』の簡易式をコンデンサの直列にそのまま当てはめて、符号や対象を間違える

    なぜ引っかかる抵抗の並列合成の簡易式 R=R1R2/(R1+R2) と、コンデンサの直列合成の簡易式 C=C1C2/(C1+C2) は形が同じだが、『どちらの接続方法に使う式か』が抵抗とコンデンサで逆になっている。抵抗の感覚のまま『直列だから足し算』と決めつけると、この簡易式を使うべき場面を誤る。

    見破り方2個のコンデンサだけの直列なら C=C1C2/(C1+C2) の簡易式が使えるが、これは『コンデンサの直列』専用であることを先に確認する。3個以上や並列が混ざる場合は、素直に 1/C = 1/C1 + 1/C2 + ... の逆数の和に戻って計算する。

  4. 誘電率の異なる層を電極間に重ねて挿入した平行板コンデンサを、1枚の板とみなしてC=εS/dに全体の厚みdをそのまま代入してしまう

    なぜ引っかかる『1個のコンデンサに見える』という外見に引きずられ、層ごとに誘電率が違うことを見落とすと、全体の厚みと単一の誘電率で計算してしまう。実際には層の境目で誘電率が不連続に変わっており、単純に1つのC=εS/dでは表せない。

    見破り方誘電率が変わる層が2つ以上あるかを先に確認する。層が複数あれば、各層を『同じ電極面積Sを共有する、独立したコンデンサ』とみなしてC=εS/dをそれぞれ計算し、電極間で直列に接続されているものとして1/C=1/C1+1/C2+...で合成する。

  5. 充電済みコンデンサを未充電コンデンサに接続する問題で、『電荷が保存されるなら、静電エネルギーも保存されるはずだ』と考えてしまう

    なぜ引っかかる分圧・分流や直並列合成の計算では電荷保存則(KCLの電荷版)を使う場面が多く、『保存則が成り立つ量は、エネルギーも含めてすべて保存される』と拡大解釈しやすい。しかし静電エネルギーは電圧の2乗に比例する量であり、電荷のような線形な保存則はそのままでは成り立たない。

    見破り方接続前後を必ず2段階に分けて計算する。①電荷保存則(Q1+Q2=一定)から接続後の共通電圧を求める、②その共通電圧を使って接続後の静電エネルギーを別途計算し、接続前の合計エネルギーと比較する。2つの値が一致しなくても計算ミスではなく、電圧差のある物体をつないだときに必然的に生じるエネルギー損失(配線のごくわずかな抵抗で熱として消費される)であると理解する。

  6. コンデンサのΔ-Y変換で、抵抗のΔ-Y変換の公式(Y結線はΔ結線の1/3)をそのまま当てはめてしまう

    なぜ引っかかるコンデンサの直列・並列がすでに抵抗と逆(直列で足し算ではなく逆数の和の逆数)であることに気を取られていても、Δ-Y変換については『同じ変換公式が使えるはず』と思い込みやすい。実際にはコンデンサの容量は抵抗の逆数(電流の通しやすさ)に近い性質を持つため、Δ-Y変換でも抵抗とは逆向きの関係になる。

    見破り方対称な場合(3つとも同じ値)で先に検算する。抵抗なら『Y結線はΔ結線の1/3』、コンデンサなら『Y結線はΔ結線の3倍』——直列・並列のときと同じく『コンデンサは抵抗と逆』という一点だけをまず思い出し、値が大きくなる向きか小さくなる向きかを先に見当づけてから計算する。

  7. 誘電体を電極間に『重ねた(層状の)』コンデンサと『並べた(左右に分割した)』コンデンサを、見た目が似ているという理由で同じ直列合成の式で計算してしまう

    なぜ引っかかるどちらも『誘電率の異なる誘電体が2種類ある』という点では共通しているため、境界面が電極と平行(層状)か垂直(左右分割)かという決定的な違いを見落とし、常に直列合成として扱ってしまいやすい。

    見破り方誘電体どうしの境界面が電極と平行か垂直かを最初に確認する。電極と平行(層状)なら電極間隔が実質的に区切られる直列、電極と垂直(左右分割)なら電極面積が実質的に区切られる並列、と境界面の向きで直列・並列を判断してから式を立てる。

  8. 絶縁破壊電界(材質固有の強さ)が大きい誘電体ほど、絶縁破壊電圧(実際に壊れるまでの印加電圧)も必ず大きいと思い込む

    なぜ引っかかる『絶縁破壊電界が強い=丈夫な材質』という直感から、その材質を使ったコンデンサは何ボルトまでかけても壊れにくいはずだと連想してしまう。しかし絶縁破壊電圧はVmax=Em×dであり、間隔dが薄ければ、材質としては強くても実際にかけられる電圧はかえって低くなる。

    見破り方絶縁破壊電界Em(材質固有、単位はV/mmなど『長さあたり』)と絶縁破壊電圧Vmax(そのコンデンサ全体で見た『実際の限界電圧』)を、別の量として区別する。比較したいのがEmなのかVmaxなのかを問題文で確認し、Vmaxを求める設問ではEmだけでなく間隔dも必ず掛け合わせる(Vmax=Em×d)。

参考文献・出典

理解度チェック(15問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、15問で確認しよう。 内訳は基本6問・応用4問・ひっかけ5問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 15 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 静電容量の定義:Q = CV(Cはコンデンサに蓄えられる電荷Qと、加えた電圧Vの比例定数)
  2. コンデンサを並列に接続すると、合成静電容量は単純な足し算になる:C = C1 + C2(抵抗の直列と同じ形)
  3. コンデンサを直列に接続すると、合成静電容量は逆数の和の逆数になる:1/C = 1/C1 + 1/C2(抵抗の並列と同じ形)
  4. 直列にすると合成静電容量は必ず小さくなり、並列にすると必ず大きくなる——抵抗とは直列・並列の効き方が逆
  5. 直列に接続したコンデンサには、各コンデンサに同じ大きさの電荷Qが蓄えられる(電流則が電荷の保存として現れる)
  6. 平行板コンデンサの静電容量は C = εS/d(εは誘電率、Sは電極面積、dは電極間隔)で決まる。孤立した導体球(半径r)の静電容量は C = 4πεr。誘電率の異なる層を電極間に重ねて挿入した場合は、層ごとに独立したコンデンサとみなし、直列合成する
  7. 誘電体を電極間に重ねる(層状)のではなく、並べる(左右に分割する)と、各領域は面積を分け合う並列接続になる。この場合、各領域の電圧Vと電極間隔dは共通なので電界の強さE=V/dはどの領域でも同じ値になるが、電束密度D=εEは誘電率εに比例して領域ごとに異なる値になる
  8. 充電済みのコンデンサと未充電のコンデンサを並列に接続すると、総電荷は接続前後で保存される(電荷保存則)が、総静電エネルギーは接続後に必ず減少する——電圧の異なる2つのコンデンサをつなぐ瞬間の電荷移動そのものが、配線のごくわずかな抵抗での熱や電磁放射としてエネルギーを消費するため
  9. 3つのコンデンサがΔ結線(三角形)で接続された回路網は、Y結線(星形)に変換できる。抵抗のΔ-Y変換とは分子・分母の関係が入れ替わり、対称な場合(3つとも同じ容量C_Δ)はY結線の各アームがC_Δの3倍になる——抵抗ではY結線がΔ結線の1/3になるのと、ちょうど逆向きの関係
  10. 平行板コンデンサの極板間の電界の強さはE=V/d(Vは電圧、dは極板間隔)で決まる。同じ電圧を加えるなら間隔dが狭いほど電界は強くなる(反比例)。誘電体には固有の絶縁破壊電界Em[V/mm]があり、印加電圧を上げていきE=V/dがEmに達すると絶縁破壊が起きる(絶縁破壊電圧はVmax=Em×d)。絶縁破壊電界が強い誘電体でも、間隔dが薄ければ絶縁破壊電圧はかえって低くなることがある
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