考えてみよう
抵抗を直列につなぐと合成抵抗は増え、並列につなぐと合成抵抗は減る——ここまでは
分圧・分流のトピックで確認した通りだ。
では、コンデンサを直列・並列につないだとき、合成静電容量はどちらに転ぶだろうか。
「直列だから増える」「並列だから減る」と、抵抗と同じ感覚で答えると、実は逆になる。
このトピックを読み終えるころには、コンデンサの直並列回路を見て、抵抗の直並列と
混同せずに、合成静電容量が増える向きか減る向きかを即座に見分けられるようになっている。
種明かしは、静電容量というものが「電極板にどれだけ電荷を貯め込めるか」という
容器の大きさを表す量であり、直列・並列でその容器の大きさの増減の仕方が
抵抗とは正反対になる、という点にある。
静電容量の定義 — Q = CV
コンデンサは、2枚の電極板の間に電荷を蓄える部品だ。加えた電圧 V と、蓄えられる
電荷 Q は比例し、その比例定数が静電容量 C になる。
Q=CV
C が大きいほど、同じ電圧でもたくさんの電荷を蓄えられる——つまり容器が大きい、
というイメージで捉えるとよい。
例題
静電容量4μFのコンデンサに、電圧100Vを加えた。蓄えられる電荷はいくらか。
Q=CV=4μF×100V=400μC
静電容量は「形」で決まる — 平行板コンデンサの公式
ここまでは静電容量Cを「与えられた値」として扱ってきたが、実はCの値そのものが、電極の
形と配置によって決まっている。平行板コンデンサ(面積Sの電極2枚を、間隔dで
向かい合わせたもの)の静電容量は、次の式で求まる。
C=dεS
ε は電極間を満たす物質の誘電率(真空なら ε0=8.85×10−12F/m、
誘電体を挟むと比誘電率 εr を掛けた ε=ε0εr になる)。
面積が広いほど、間隔が狭いほど、誘電率が高いほど、より多くの電荷を蓄えられる——という
直感がそのまま式に表れている。
なお、孤立した導体球(半径r)も一種のコンデンサとみなせ、静電容量は C=4πεr
という別の式で求まる。どちらも「電極の形状が静電容量を決める」という同じ発想の応用だ。
例題
電極面積0.02m²、電極間隔2mmの平行板コンデンサに、比誘電率3の誘電体を挟んだ。
この静電容量は何Fか。(ε0=8.85×10−12F/m)
C=dε0εrS=0.0028.85×10−12×3×0.02≒2.66×10−10F
誘電率の異なる層を電極間に**重ねて**挿入した平行板コンデンサは、1個のコンデンサに見えても
中身は「層ごとに静電容量の異なる、複数のコンデンサが電極間で直列につながっている」状態と同じだ。
各層についてC=εS/dを個別に計算し、直列合成の式 1/C=1/C1+1/C2+... で1つにまとめればよい。
全体の厚みをそのままdに代入して1回で計算しようとすると、誘電率が層ごとに違うという条件を
無視することになり、誤った値が出る。
並列接続 — 容器の面積が広がるので、合成容量は単純な足し算
コンデンサを並列に接続すると、合成静電容量は単純に足し合わさる。
C=C1+C2
これは電極板の面積が実質的に広がったのと同じ効果を持つためだ。板の面積が広いほど
たくさんの電荷を蓄えられるので、並列に増やすほど容量は大きくなる。抵抗の直列と
まったく同じ式の形になっている点に注意したい。
例題
静電容量2μFと3μFのコンデンサを並列に接続した。合成静電容量はいくらか。
C=2μF+3μF=5μF
直列接続 — 板の間隔が広がるので、合成容量は逆数の和の逆数
コンデンサを直列に接続すると、合成静電容量は逆数の和の逆数になる。
C1=C11+C21
2個だけの直列なら、次の簡易式でも計算できる。
C=C1+C2C1C2
電極板どうしの間隔が実質的に広がったのと同じ効果になるため、直列に増やすほど
合成容量はむしろ小さくなる。抵抗の並列とまったく同じ式の形だ。
例題
静電容量2μFと3μFのコンデンサを直列に接続した。合成静電容量はいくらか。
C=2+32×3=56=1.2μF
コンデンサの直並列は「抵抗とすべて逆」と丸暗記するのが最速の検算法だ。抵抗の直列=足し算、
並列=逆数の和の逆数。コンデンサの直列=逆数の和の逆数、並列=足し算。迷ったら「抵抗ならどっち
だったか」を思い出し、答えを入れ替えればよい。
直列コンデンサに共通するのは「電荷」であって「電圧」ではない
抵抗の直列回路では、共通するのは電流だった。コンデンサの直列回路で共通するのは、
各コンデンサに蓄えられる電荷Qだ。電圧の方は、静電容量に反比例して分かれる。
V1=C1Q,V2=C2Q
容量が小さいコンデンサほど、同じ電荷でも V=Q/C の値は大きくなる。つまり
容量の小さいコンデンサほど、電圧を多く受け持つ——ここも抵抗の分圧(抵抗が
大きい方が電圧を多く受け持つ)と対応関係がねじれている部分なので注意したい。
例題
静電容量4μFと6μFのコンデンサを直列に接続し、全体に電圧100Vを加えた。
それぞれのコンデンサにかかる電圧を求める。
まず合成静電容量とそこに蓄えられる電荷を求める。
C=4+64×6=2.4μF,Q=CV=2.4μF×100V=240μC
直列なので、このQは4μF側にも6μF側にも共通して蓄えられている。各コンデンサの電圧は、
V4=4240=60V,V6=6240=40V
容量の小さい4μF側の方が、より大きな電圧(60V)を受け持つ結果になった。
検算は電圧の合計で行う。V4+V6 = 60+40 = 100V となり、全体に加えた電圧と一致する。
これはKVL(電圧則)と同じ考え方で、直列コンデンサでも電圧の内訳は必ず全体の電圧に
一致していなければならない。
充電済みコンデンサをつなぐと何が起きるか — 電荷は保存されても、エネルギーは保存されない
ここまでは、最初から回路につながっているコンデンサの話だった。ここで少し場面を変えて、
すでに充電されたコンデンサを、まだ充電されていないコンデンサと接続したときに
何が起きるかを見る。
このとき成り立つのは、電流則(KCL)と同じ発想の電荷保存則だ。接続の瞬間に電荷が
外部へ逃げたり湧いて出たりしない限り、接続前の総電荷と接続後の総電荷は等しい。
Q前=Q後
並列接続なので、接続後は2つのコンデンサに共通の電圧がかかる状態で落ち着く。この
共通電圧は、接続後の合成静電容量(並列だから単純な足し算)で総電荷を割れば求まる。
例題
電圧90Vに充電された静電容量2μFのコンデンサと、全く充電されていない静電容量3μFの
コンデンサを並列に接続した。接続後の共通電圧はいくらか。
Q=2μF×90V=180μC,C合成=2+3=5μF,V=C合成Q=5180=36V
ここまでは、分圧・分流のトピックで見た「未知数と式の本数を数える」考え方の応用にすぎない。
だが、ここで見過ごしやすい落とし穴がある。電荷は保存されても、静電エネルギーは保存されない。
W前=21×2μF×902=8100μJ=8.1mJ
W後=21×5μF×362=3240μJ=3.24mJ
接続前は8.1mJあった静電エネルギーが、接続後は3.24mJに減っている。差の4.86mJは
どこにも「保存」されておらず、電圧の異なる2つのコンデンサを導線でつないだ瞬間に流れる
電荷移動そのものが、配線のごくわずかな抵抗で熱として、あるいは電磁波としてエネルギーを
消費してしまうために失われる。
「電荷保存則が成り立つ量は、エネルギーも含めて全部保存されるはずだ」という思い込みが、
この手の問題でいちばんの落とし穴になる。電荷Qは足し算・引き算だけで保存されるが、
静電エネルギーはQやVの2乗に比例する量であり、性質がまったく違う。接続前後の計算は
必ず「①電荷保存則で共通電圧を求める」「②その電圧で改めてエネルギーを計算し、
接続前の合計と比較する」の2段階に分けて進めるとよい。
コンデンサのΔ-Y変換 — 直並列だけでは解けない回路網に出会ったら
直列・並列の公式は、コンデンサが素直に直列か並列につながっている場合にしか使えない。
3つのコンデンサが三角形につながったΔ(デルタ)結線を含む回路網は、直並列の合成だけでは
解けないことがある。このとき使えるのが、Δ結線をY(星形)結線に変換するという考え方だ。
Δ結線の3つの容量を Cab、Cbc、Cca とすると、これと電気的に等価なY結線の
各アームの容量は、次の式で求まる(a点につながるアームの容量 Ca は、a点に接していない
辺 Cbc を分母に置く)。
Ca=CbcCabCbc+CbcCca+CcaCab
この式は、三相交流のトピックで見た抵抗のΔ-Y変換とよく似た形をしているが、分子・分母の
関係が入れ替わっている点に注意したい。抵抗のΔ-Y変換では「隣り合う2辺の積」を分子に、
「3辺の和」を分母に置いたが、コンデンサでは「3辺の積の和(ペアごとの積の合計)」を分子に、
「向かい合う1辺」を分母に置く。
3つとも同じ値 CΔ の対称な場合で確かめてみると、分かりやすい。
Ca=CΔ3CΔ2=3CΔ
対称なΔ結線をY結線に変換すると、容量は3倍になる。 抵抗の場合(対称なΔ結線をY結線に
変換すると1/3になる)とは、ちょうど逆向きの関係だ。
例題
静電容量が全て等しい(C=6μF)3つのコンデンサをΔ結線で接続した回路をY結線に変換すると、
Y結線の各アームの静電容量はいくらになるか。
Ca=3×6μF=18μF
「コンデンサは抵抗と直列・並列の効き方が逆」という、この単元の冒頭で見た注意点は、
Δ-Y変換にもそのまま引き継がれる。抵抗のΔ-Y変換の公式を覚えていても、それをそのまま
コンデンサに当てはめると符号や倍率を取り違える。対称な場合の「3倍になる」(抵抗なら
「1/3になる」)という一点を先に検算の道具として持っておくと、複雑な非対称の式を
立てる前に、桁の見当違いに気づける。
誘電体を「重ねる」と「並べる」で式がまったく違う
これまで見た誘電体入りコンデンサは、誘電率の異なる層を電極間に重ねて(電極と平行な断面で分割して)挿入したものだった。もう1つ、試験で問われるパターンが、誘電率の異なる誘電体を電極間に並べて(電極と垂直な断面で分割して、左右に)挿入したものだ。見た目は似ているが、電気的な振る舞いはまったく違う。
電極間隔d、電極面積2S(左右にSずつ二等分)の平行板コンデンサに、比誘電率εr1の誘電体1とεr2の誘電体2を左右に並べて挿入し、電圧Vを加えたとする。
- 誘電体1の領域も誘電体2の領域も、電極間隔dは共通で、加わる電圧Vも共通(同じ2枚の電極につながっているため)。したがって電界の強さE=V/dはどちらの領域でも同じ値になる。誘電率が違っても、Eは変わらない。
- 一方、電束密度D=εEは誘電率εに比例するため、誘電体1と誘電体2で電束密度は異なる(D1=ε0εr1E、D2=ε0εr2E)。
- 各領域は、面積S・間隔d・誘電率εr1(またはεr2)の独立したコンデンサとみなせ、電極全体には2つのコンデンサが並列に接続されているのと同じことになる。合成静電容量はC=C1+C2(単純な足し算)。
「重ねる(層状)」と「並べる(左右に分割)」は、どちらも誘電体が2種類あるという見た目は同じだが、回路的には正反対だ。重ねた場合は電極間隔が実質的に区切られるため直列(電荷Qが共通、電界は誘電率に反比例して分かれる)、並べた場合は電極面積が実質的に区切られるため並列(電圧Vと電界Eが共通、電束密度が誘電率に比例して分かれる)になる。「境界面が電極と平行か、垂直か」を最初に確認する習慣をつけると取り違えない。
例題
電極面積2S(左右にSずつ二等分)、電極間隔dの平行板コンデンサに、比誘電率3の誘電体1と比誘電率5の誘電体2を、左右に並べて挿入し、電圧Vを加えた。誘電体1・誘電体2それぞれの領域における電界の強さの比と、電束密度の比を求める。
電界の強さは、どちらの領域もE=V/dで共通。比は1:1。
電束密度はD=εE=ε0εrEなので、誘電率の比がそのまま反映される。
D1:D2=εr1:εr2=3:5
極板間の電界の強さと絶縁破壊電圧 — 間隔dが薄いほど、同じ電圧でも危険になる
先ほど見た電界の強さE=V/dは、誘電体を左右に並べたときの話に限らず、平行板コンデンサ全般に
共通する関係だ。電圧Vが同じでも、極板間隔dが狭いコンデンサほど、極板間の電界の強さEは
強くなる(dが分母にあるため反比例)。
誘電体には、電界の強さがある限度を超えると絶縁破壊を起こしてしまう、材質固有の絶縁破壊電界
Em[V/mmなど]がある。印加電圧を徐々に上げていき、E=V/dがEmに達した瞬間、それ以上は
電圧をかけられない。この限界の電圧(絶縁破壊電圧)は、次の式で求まる。
Em=dVmax⟹Vmax=Em×d
ここで注意したいのは、絶縁破壊電界Em(材質としての強さ)と、絶縁破壊電圧Vmax
(そのコンデンサとして実際にかけられる電圧)は別の量だという点だ。Emが大きい材質でも、
間隔dが薄ければ、Vmax=Em×dはかえって小さくなることがある。
例題
極板間隔が異なる3つの平行板コンデンサP・Q・Rがある(間隔はそれぞれP:4mm、Q:2mm、R:1mm)。
まず、3つに同じ電圧V0を加えたときの電界の強さを比べる。E=V0/dなので、間隔が狭いほど
電界は強い。
ER>EQ>EP(間隔の小さい順)
次に、絶縁破壊電界がそれぞれP:20kV/mm、Q:30kV/mm、R:50kV/mmだったとして、絶縁破壊電圧
Vmax=Em×dを計算する。
Vmax,P=20×4=80kV,Vmax,Q=30×2=60kV,Vmax,R=50×1=50kV
Vmax,P>Vmax,Q>Vmax,R
絶縁破壊電界(材質の強さ)はR>Q>Pの順で強いのに、絶縁破壊電圧(実際にかけられる電圧)は
逆順のP>Q>Rになる。
「絶縁破壊電界が強い材質を使ったコンデンサほど、より高い電圧までかけられるはずだ」という
直感は、間隔dの効果を忘れていると誤りにつながる。間隔が薄いコンデンサは、材質としての
絶縁耐力が高くても、E=V/dの分母dが小さい分、低い電圧でも電界がすぐにEmへ達してしまう。
「Emを比較したいのか、Vmaxを比較したいのか」を問題文で確認し、Vmaxを求める設問では
必ずdを掛け合わせる一手間を忘れないようにしたい。
なぜ制御盤の中で、コンデンサを直列に使うのか
制御盤の平滑回路や進相コンデンサ設備では、コンデンサを直列に接続する設計を見ることがある。
容量だけを見れば直列は不利(合成容量が小さくなる)だが、それでも直列にする理由は
耐圧にある。1個のコンデンサの耐圧を超える電圧を扱う必要がある場面では、複数のコンデンサを
直列にして、各コンデンサが受け持つ電圧を分散させることで、素子1個あたりの耐圧を超えずに
高い電圧の回路を構成できる。容量が小さくなるという代償と引き換えに、耐圧を確保しているわけだ。
冒頭の「直列と並列、どちらが容量が増えるか」の答え合わせは、理解度チェックの
最後の問題でしてみよう。