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理論 ・ 5 / 16

電界とクーロンの法則

読み終えると、こうなる

『距離を2倍にすると力はどう変わるか』を問われたとき、比例・反比例の感覚だけでなく『2乗に反比例』という電気特有の急激な変化のスケール感で答えられるようになる

  • クーロンの法則の式から、2つの点電荷の間に働く力の大きさを計算でき、距離を2倍・3倍にしたときクーロン力が何分の1になるかを暗算に近い速さで判断できる。電界(電界の強さ)が単位電荷あたりに働く力として定義されていることも説明でき、その距離依存性(距離の2乗に反比例)が静電容量やコンデンサの絶縁設計・孤立導体に帯電できる電荷の上限値の計算にどうつながるかを説明できる
  • 孤立した帯電導体を誘電体で満たしたとき、電荷は変化しないまま電位・電界が弱まり静電容量が増えること、2つの点電荷を誘電体中に置くと働くクーロン力が比誘電率分の1に弱まること、また同じ大きさの導体どうしを接触させると電荷が均等に分配されることを説明できる。帯電した物体にはたらく力を、クーロン力単体だけでなく重力・糸の張力とのつり合いや、一様な電界中で電子が受ける力による等加速度運動、電界と磁界を同時に受ける荷電粒子が等速直線運動する条件(速度選別器の原理)まで含めて扱える
  • 一様な電界中で電荷をゆっくり移動させたときに外力がする仕事W=qE×d∥(d∥は電界方向の変位成分のみ)を計算でき、この仕事が経路によらず始点・終点間の電位差ΔV=W/qと一致することを、電界と垂直な方向の変位が仕事に寄与しない理由とあわせて説明できる
  • 接地導体面の近くに置いた点電荷が導体面に及ぼす静電誘導を、面電荷そのものではなく導体面に対して鏡のように対称な位置に置いた影像電荷(大きさが同じで符号が逆の仮想の点電荷)に置き換えて考えることができ、点電荷を導体面から遠ざけるのに必要な仕事を、距離とともに変化する吸引力を実際の移動距離で積分することで計算できる(影像電荷は実電荷の動きに追従して動く仮想の電荷であるため、2つの固定電荷の間の仕事の式をそのまま距離2倍で置き換えるだけでは係数を誤る点も説明できる)
考えてみよう

受変電設備の絶縁設計では、電極(導体)どうしの距離をわずかに詰めただけで、 絶縁破壊のリスクが急激に跳ね上がることがある。距離を半分にしただけなのに、 危険性は単純な2倍ではなく、もっと急激に高まる——なぜそんなことが起きるのか。

このトピックを読み終えるころには、「距離を半分にすると、電気の世界では何倍危険になるか」 という問いに、比例・反比例とは違うスケール感で即座に答えられるようになっている。

種明かしは、電荷どうしに働く力が距離の2乗に反比例するというクーロンの法則にある。

クーロンの法則 — 力は電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する

2つの点電荷 Q1Q_1Q2Q_2 が距離 rr だけ離れて存在するとき、両者の間に働く力 FF は 次の式で表される。

F=kQ1Q2r2F = k \frac{Q_1 Q_2}{r^2}

kk はクーロンの定数と呼ばれる比例定数)

ここで重要なのは、分母が「距離」ではなく「距離の2乗」になっている点だ。オームの法則の ような単純な比例・反比例の感覚のまま扱うと、この2乗を見落としやすい。

例題

2つの点電荷の距離を3倍にすると、働く力は元の何倍になるか。

F=kQ1Q2(3r)2=19×kQ1Q2r2=19FF' = k \frac{Q_1 Q_2}{(3r)^2} = \frac{1}{9} \times k\frac{Q_1Q_2}{r^2} = \frac{1}{9}F

距離を3倍にしただけで、力は1/9まで急激に弱まる。

「距離が2倍→力は1/4」「距離が3倍→力は1/9」「距離が半分→力は4倍」という2乗のペアを 先に押さえておくと、本番で分数の計算に迷わずに済む。距離の逆数を先に2乗してから掛ける、 という手順を固定しておくとよい。

力の向き — 同符号は反発、異符号は吸引

クーロンの法則の式は力の大きさを表すもので、力の向きは別途、電荷の符号で判断する。

  • 同符号(+と+、-と-):互いに反発する力(斥力)
  • 異符号(+と-):互いに引き合う力(吸引力)

大きさの計算と向きの判断は分けて考えると混乱しにくい。

電界 — 「その場所に単位電荷を置いたら、どれだけの力を受けるか」

もう1つ重要な概念が、電界(電界の強さ)だ。ある点における電界の強さ EE は、 その場所に+1Cの電荷(単位電荷)を置いたときに働く力として定義される。

E=FQE = \frac{F}{Q}

逆にいえば、電界の強さが分かっている場所に、大きさ QQ の電荷を置いたときに働く力は、 次の式で求まる。

F=QEF = QE

例題

ある点における電界の強さが E=500V/mE=500\text{V/m} だった。この点に電荷 Q=2×106CQ=2\times10^{-6}\text{C} (2μC)を置いたとき、働く力の大きさはいくらか。

F=QE=2×106C×500V/m=1×103NF = QE = 2\times10^{-6}\text{C} \times 500\text{V/m} = 1\times10^{-3}\text{N}
電界の強さEと、実際に働く力Fは別の量だ。Eは「単位電荷あたり」の力であり、実際の電荷Qに 働く力を求めるにはF=QEの掛け算が必要になる。単位を見て区別する習慣をつけるとよい—— Eの単位はN/C(またはV/m)、Fの単位はN。設問が「電界の強さ」を聞いているのか「力」を 聞いているのかを、まず単位から確認する。

電気力線 — 目に見えない電界を、線で描いて可視化する

電界そのものは目に見えないが、その様子を線で描いて可視化したものが電気力線だ。 電気力線には、いくつかの決まった性質がある。

  • 正電荷から出て、負電荷に入る(あるいは無限遠まで伸びる)
  • 電気力線どうしは、途中で交差しない(もし交差したら、その交点で電界の向きが2つ 存在することになり矛盾する)
  • 電気力線は、等電位面と直交する
  • ある点における電気力線の密度(単位面積を貫く本数)が、その点の電界の強さを表す

さらに、誘電率 ε\varepsilon の媒質中に置かれた電荷 QQ から出る電気力線の総本数 NN は、 次の式で求まる。

N=QεN = \frac{Q}{\varepsilon}

電荷が大きいほど本数は増え(比例)、媒質の誘電率が大きいほど本数は減る(反比例)。 これは、静電容量の式 C=Q/VC=Q/V と同じく、電荷を分母・分子のどちらに置くかを図の意味から 導けるようにしておきたい関係だ。

例題

真空中(誘電率 ε0=8.85×1012F/m\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}\text{F/m})に、+4×106C+4\times10^{-6}\text{C} の点電荷がある。この電荷から出る電気力線の総本数はいくらか。

N=Qε0=4×1068.85×10124.5×105N = \frac{Q}{\varepsilon_0} = \frac{4\times10^{-6}}{8.85\times10^{-12}} \fallingdotseq 4.5\times10^{5}\text{本}
電気力線の性質の中で、特に引っかかりやすいのが「導体内部の電界」だ。導体に電荷を与えて 放置すると、自由電子が移動して表面に電荷が並び(静電誘導)、**導体内部の電界は常に0になる。** 導体表面には0でない電界が生じうるから、「導体内部の電界=導体表面の電界」という主張は誤り。 電気力線で考えれば、導体内部には電気力線が1本も入り込まない(本数=電界の強さが0)、と イメージすると覚えやすい。

孤立した帯電導体の性質 — 電荷が一定でも、電位・電界・容量は連動して動く

ここまでは「2つの点電荷の間」に働く力や電界を見てきた。ここで少し視点を変えて、 1つの帯電した導体そのものが持つ性質を見ておく。

導体に電荷 QQ を与えて絶縁したまま置いておく(電荷の出入りがない)とき、導体表面の 電位 VV と電界の強さ EE は、静電容量とコンデンサのトピックで見た球の静電容量の式 C=4πεrC=4\pi\varepsilon r とあわせて、次のように整理できる。

V=Q4πεr,E=Q4πεr2,C=QV=4πεrV = \frac{Q}{4\pi\varepsilon r}, \qquad E = \frac{Q}{4\pi\varepsilon r^2}, \qquad C = \frac{Q}{V} = 4\pi\varepsilon r

この導体の周囲を、比誘電率 εr\varepsilon_r の絶縁体(油など)で満たすとどうなるか。 導体は絶縁されているので、電荷 QQ 自体はいっさい変化しない。しかし式の中の ε\varepsilon=ε0εr=\varepsilon_0\varepsilon_r)が大きくなるため、電位・電界の強さ・ 静電容量は連動してそれぞれ違う向きに変化する。

  • VVEE はどちらも式の分母ε\varepsilon があるので、εr\varepsilon_r 倍だけ弱まる
  • CC は式の分子ε\varepsilon があるので、εr\varepsilon_r増える

例題

真空中に電荷QQ[C]をもつ、孤立した帯電球状導体(半径rr[m])がある。この導体の周囲を 比誘電率4の絶縁油で満たした。電位・電界の強さ・静電容量はそれぞれ何倍になるか。

電荷QQは変化しない。VVEEは分母のε\varepsilonが4倍になるため1/41/4倍、CCは分子の ε\varepsilonが4倍になるため4倍になる。

「誘電率が大きくなれば、電気に関する量はすべて増えるはずだ」という思い込みが、この手の 問題での落とし穴になる。式のどこに$\varepsilon$があるか(分子か分母か)で、増えるか 弱まるかは量ごとに逆転する。電荷Qが変化しないことをまず確定させ、$V=Q/(4\pi\varepsilon r)$・ $E=Q/(4\pi\varepsilon r^2)$(分母=弱まる)と$C=4\pi\varepsilon r$(分子=増える)を 区別して覚えるとよい。

もう1つ、孤立した導体の性質として押さえておきたいのが、大きさの等しい導体どうしを 接触させたときの電荷の分配だ。大きさが等しい導体は静電容量 CC も等しいため、接触して 同じ電位で落ち着いた状態では、接触前の総電荷を頭数で均等に分け合う。

例題

大きさが等しい、絶縁された2つの導体球A・Bがある。導体球Aは+12μC、導体球Bは-4μCに 帯電している。この2つを導線で短時間接触させてから離した。接触後のそれぞれの電荷はいくらか。

接触前の総電荷は +12+(4)=+8μC+12+(-4)=+8\mu\text{C}。大きさが等しく静電容量も等しいので、 接触後はこの総電荷を均等に分ける。

+8μC2=+4μC(A・Bとも)\frac{+8\mu\text{C}}{2} = +4\mu\text{C}\text{(A・Bとも)}
接触による電荷の均等配分は、符号(プラス・マイナス)を含めた**総和**をまず計算してから 頭数で割る、という手順を徹底したい。プラスの電荷とマイナスの電荷は接触した瞬間に 打ち消し合いながら移動するため、大きさだけを見て単純平均すると符号を取り違える。

絶縁耐力が決める、孤立導体に帯電できる電荷の上限

孤立した導体球(半径aa)に電荷QQを与えていくと、球の表面の電界の強さEEE=Q/(4πε0a2)E=Q/(4\pi\varepsilon_0 a^2)(真空・空気中の場合)の式に従って大きくなっていく。

球を取り巻く空気(絶縁物)には、それ以上の電界を加えると絶縁破壊を起こしてしまう限界値—— 絶縁耐力EmE_m[V/m]——がある。表面の電界がこのEmE_mに達した瞬間、それ以上電荷を 増やすことはできない(放電が始まる)。

したがって、帯電できる電荷の最大値QmaxQ_{max}は、E=EmE=E_mとなる条件から逆算できる。

Em=Qmax4πε0a2Qmax=4πε0a2EmE_m = \frac{Q_{max}}{4\pi\varepsilon_0 a^2} \quad \Longrightarrow \quad Q_{max} = 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m

球が大きいほど(表面積が大きいほど)、より多くの電荷を安全に蓄えられる——という直感とも一致する。

例題

半径0.1mの孤立した導体球が空気中に置かれている。空気の絶縁耐力を3×1063\times10^6V/m、 真空の誘電率をε0=8.85×1012\varepsilon_0=8.85\times10^{-12}F/mとするとき、帯電できる最大電荷を求める。

Qmax=4πε0a2Em1.11×1010×0.01×3×1063.3×106C=3.3μCQ_{max} = 4\pi\varepsilon_0 a^2 E_m \fallingdotseq 1.11\times10^{-10}\times0.01\times3\times10^6 \fallingdotseq 3.3\times10^{-6}\text{C} = 3.3\mu\text{C}
この式は、これまで見てきた$E=Q/(4\pi\varepsilon_0 a^2)$を「$Q$について解いた」だけのものにすぎない。 新しい公式として丸暗記するのではなく、「表面電界が絶縁耐力に達した瞬間が限界」という条件を、 これまでの式にそのまま当てはめればよい、と理解しておくと本番でも導出し直せる。

誘電体で満たした空間では、2つの点電荷に働く力はどう変わるか

先ほど見た「孤立した帯電導体を誘電体で満たす」話は、導体1個の電位・電界・静電容量がどう変わるかという話だった。ここで少し場面を変え、2つの点電荷の間に働くクーロン力そのものが、誘電体で満たすとどう変わるかを見ておく。

クーロンの法則の式F=kQ1Q2r2F=k\dfrac{Q_1Q_2}{r^2}の比例定数kkには、真空の誘電率ε0\varepsilon_0k=1/(4πε0)k=1/(4\pi\varepsilon_0)という形で入っている。真空中ではなく、比誘電率εr\varepsilon_rの誘電体(絶縁油など)で満たされた空間に2つの点電荷を置くと、この式のε0\varepsilon_0ε=ε0εr\varepsilon=\varepsilon_0\varepsilon_rに置き換わる。

F=Q1Q24πε0εrr2=1εr×Q1Q24πε0r2F=\frac{Q_1Q_2}{4\pi\varepsilon_0\varepsilon_r r^2}=\frac{1}{\varepsilon_r}\times\frac{Q_1Q_2}{4\pi\varepsilon_0 r^2}

真空中に比べて、力の大きさは比誘電率εr\varepsilon_r分の1に弱まる。力の向き(引力・斥力)や、距離の2乗に反比例するという関係はそのまま変わらない。

例題

真空中で距離rr離れた2つの点電荷に働くクーロン力がF0F_0だった。この空間を比誘電率3の絶縁体の液体で満たすと、働く力の大きさはF0F_0の何倍になるか。

真空の誘電率が3倍の誘電率に置き換わるだけなので、力は13\dfrac{1}{3}倍になる。

「誘電体で満たすと静電容量が増える」という感覚から、力も増えると早合点しやすいが、2つの点電荷に働く力そのものは弱まる(1/εr倍)。孤立導体の静電容量が増えるのと、点電荷間の力が弱まるのは矛盾しない——どちらも同じ式の中の誘電率εが分母に来るか分子に来るかの違いにすぎない、と式の形から確認するとよい。

帯電した物体の力のつり合い — クーロン力・重力・張力の三角形

ここまではクーロン力や電界の「大きさ」を単体で計算してきた。実際の試験では、帯電した 小球を絶縁糸でつるし、重力・糸の張力とのつり合いの中でクーロン力の大きさを問う問題も 出題される。ここで効いてくるのは、クーロンの法則そのものというより、力のつり合いを 幾何学的な形から読み解くという発想だ。

絶縁糸でつるされた帯電小球には、次の3つの力が働く。

  • 静電気力 FF(水平方向、他の帯電体との間に働く)
  • 重力 mgmg(鉛直方向)
  • 糸の張力 TT(糸の傾きに沿った方向)

小球が静止している以上、この3力はベクトルとしてつり合っている。しかも、この力の三角形は 「糸の長さ・小球間の分離距離・鉛直方向」がつくる幾何学的な三角形と相似になる。 つまり、角度 θ\theta(糸が鉛直となす角)を挟んで、

Fmg=tanθ\frac{F}{mg} = \tan\theta

という関係が成り立つ。分離距離 dd が糸の長さ ll に比べて十分小さければ、 tanθsinθd/2l\tan\theta \approx \sin\theta \approx \dfrac{d/2}{l} と近似できる。

例題

質量2.0gの帯電した小球を、絶縁性の糸(長さ25cm)で1点からつるした。もう1つの、 同じ質量・同じ大きさの電荷を持つ小球も同じ点から同じ長さの糸でつるし、互いの静電気力で 反発させたところ、2つの小球は5.0cm離れて静止した(ddllに比べて十分小さいとする)。 重力加速度を9.8m/s²とするとき、働いている静電気力 FF の大きさを求める。

mg=2.0×103×9.8=1.96×102N,d/2l=0.05/20.25=0.1mg = 2.0\times10^{-3}\times9.8 = 1.96\times10^{-2}\text{N}, \qquad \frac{d/2}{l} = \frac{0.05/2}{0.25} = 0.1 F=mg×d/2l=1.96×102×0.12.0×103NF = mg\times\frac{d/2}{l} = 1.96\times10^{-2}\times0.1 \fallingdotseq 2.0\times10^{-3}\text{N}
この手の問題の核心は「クーロンの法則をどう計算するか」ではなく、「力のつり合いを幾何学の 相似な三角形として捉えられるか」にある。静電気力の大きさそのものを求めたいだけなら、 糸の長さ・分離距離・重力さえ分かれば、クーロンの法則の距離rや電荷Qを経由せずに、 $F=mg\tan\theta$ の形で直接求められる。電荷の値を先に求めようとして計算量を増やす前に、 まず「何が問われているか」を確認する習慣をつけたい。

電界中の電子の運動 — 一定の力は、等加速度運動を生む

電界の強さ EE と電荷 QQ から力 F=QEF=QE を求める式は既に見た。この力が時間的に一定で あれば、力学の基本に立ち返り、電荷を持った粒子(電子など)の運動そのものを扱える。

一様な電界 EE[V/m]の中に、電荷の大きさ ee[C]、質量 m0m_0[kg]の電子を静かに置くと、 電子には常に大きさ eEeE の力が働く。ニュートンの運動方程式は

m0a=eEm_0 a = eE

力・質量がどちらも一定であれば、加速度 aa も時間によらず一定になる——つまり電子は 等加速度運動をする。初速度を0とすると、

v=at,x=12at2v = at, \qquad x = \frac{1}{2}at^2

速さ vv は時間 tt1次関数(直線)、走行距離 xxtt2次関数(放物線)になる。 ここまでは力学の等加速度運動の公式そのものだ。

運動エネルギーはどうか。KE=12m0v2KE=\dfrac{1}{2}m_0v^2v=atv=at を代入すると、

KE=12m0(at)2=12m0a2t2KE = \frac{1}{2}m_0(at)^2 = \frac{1}{2}m_0a^2t^2

速さがtの1次関数であっても、運動エネルギーはvの2乗で効いてくるため、tt2乗 (2次関数)で増加する。

「速さがtの1次関数だから、運動エネルギーもtの1次関数のはず」という連想は誤り。運動エネルギーの 式KE=(1/2)mv²にv=atを代入してみるという1手間を惜しまなければ、tの2乗で増えることは 式の上からすぐに確認できる。速さと運動エネルギーで増え方の次数がずれる、という感覚を 持っておくと、この手の空欄補充問題で迷わない。

電界と磁界を同時に受ける荷電粒子 — 力がつり合えば、まっすぐ進む

電界中の電子の運動の節では、電界だけが働く場合の等加速度運動を見た。ここに磁界を組み合わせると、また違う振る舞いが生まれる。

xx方向の一様な電界EEyy方向の一様な磁界(磁束密度BB)が存在する空間に、電荷e-e、質量mmの電子がzz方向の初速度vvで放出されたとする。電子には、電界による力(大きさeEeE)と、磁界中を運動することで生じるローレンツ力(大きさevBevB)の、2つの力が働く。

この2つの力が逆向きで大きさが等しいとき、電子に働く力は差し引きゼロになり、電子は初速度vvのまま等速直線運動を続ける。

eE=evBv=EBeE=evB \quad\Longrightarrow\quad v=\frac{E}{B}

この原理は速度選別器と呼ばれ、決まった速さvvの粒子だけをまっすぐ通過させるフィルタとして、質量分析計などに応用されている。

例題

速度選別器で、磁束密度B=2×103B=2\times10^{-3}T、通過させたい荷電粒子の速さv=1×105v=1\times10^5m/sとするとき、必要な電界の強さEEを求める。

E=vB=1×105×2×103=2×102V/m=200V/mE=vB=1\times10^5\times2\times10^{-3}=2\times10^2\text{V/m}=200\text{V/m}
等速直線運動という結果だけを見ると特殊な現象に思えるが、正体は「2つの力がつり合っている」という、力のつり合いの一種にすぎない。帯電小球を糸でつるした力のつり合いの節と同じ発想で、電界による力eEと磁界による力evBを別々に書き出し、それらが等しいと置くだけで速度の式が導ける。EとBは単位が異なる(V/mとT)ため、数値そのものを比較することに意味はない、という点も確認しておきたい。

一様な電界中で電荷を動かす仕事 — 効くのは「電界方向の変位」だけ

ここまでは、ある1点における電界の強さや、そこに置いた電荷に働く力を見てきた。ここで視点を変え、 その電荷を電界の中で動かすときに必要な仕事を考える。

一様な電界 EE 中で、電荷 qq をゆっくりと(準静的に、加速させずに)移動させるとき、外力がする 仕事 WW は、力学の基本公式 W=F×d×cosθW=F\times d\times\cos\thetaθ\thetaは力と変位のなす角)から導ける。 電界中の力は F=qEF=qE なので、

W=qE×dW = qE \times d_\parallel

dd_\parallelは、移動した変位のうち電界と平行な方向の成分だけを指す。電界と垂直な方向に どれだけ動いても、力と変位が直角(cos90°=0\cos 90°=0)になるため、仕事はいっさい発生しない。

例題

一様な電界E=40E=40V/mがx軸の正の向きに存在する平面内で、電荷q=5q=5Cの点電荷を、電界と逆向き (x軸の負の向き)に0.3m、電界と垂直な向き(y軸の向き)に0.4mだけ、ゆっくりと移動させた。 外力がした仕事WWを求める。

W=qE×d=5×40×0.3=60JW = qE \times d_\parallel = 5\times40\times0.3 = 60\text{J}

垂直方向に動いた0.4mは、仕事にはいっさい寄与しない。

移動経路が斜めだったり、複数の区間に分かれていたりすると、つい移動距離の合計をそのまま使いたく なるが、効くのは常に「電界方向の成分」だけだ。変位ベクトルを電界と平行な成分・垂直な成分に 分解してから式に入れる、という一手間を先に済ませておくと取り違えない。

この仕事WWには、もう1つ重要な意味がある。電荷を準静的に動かす間、運動エネルギーは変化しない ため、外力がした仕事は、そのまま電荷の位置エネルギーの増加分になる。これは電位差の定義そのもので、 移動の始点・終点間の電位差 ΔV\Delta V と、次の関係で結びつく。

ΔV=Wq\Delta V = \frac{W}{q}

先ほどの例題では、ΔV=60/5=12\Delta V = 60/5 = 12Vとなる。この式には電荷qqが分母・分子の両方に 現れる。もし電荷を10Cに変えて同じ経路を移動させれば、仕事WWも2倍(120J)になるが、 ΔV=W/q\Delta V=W/qを計算すると比の値は変わらず12Vのままになる。電位差は「その場所固有の量」であり、 そこに置く電荷の大小によって値が変わってしまっては定義として成り立たない、という点からも この結果は裏付けられる。

「仕事Wを求めてから、電荷qで割って電位差ΔVを出す」という2段階の手順を踏めば、途中の計算で qが約分されて消えることも自然に確認できる。逆に、電位差ΔVを先に求める設問(あるいは電位差から 仕事を逆算する設問)でも、$W=q\Delta V$という同じ関係を、掛け算・割り算のどちらの向きで 使うべきかを式の形から毎回確認するとよい。

接地導体面に近づけた点電荷 — 影像電荷という「置き換え」で解く

ここまでは、電荷どうしの間に働く力を直接計算してきた。ここで少し毛色の違う場面を見ておく。 接地された広く平らな導体の床の近くに正の点電荷 QQ を置くと、床の表面には静電誘導 によって負の電荷(面電荷)が現れ、QQ は床に引き寄せられる力を受ける。

この面電荷の分布を直接計算するのは面倒だが、実は驚くほど単純な方法で同じ結果が得られる。 床を鏡だと思って、床を挟んで QQ と対称な位置に、大きさが同じで符号が逆の仮想の点電荷 (影像電荷、Q-Q)を置いたとみなす。 この QQ と影像電荷 Q-Q の間に働くクーロン力・ 電界は、実際の面電荷が作る力・電界とぴったり一致する。これを影像法(鏡像法)と呼ぶ。

床からの高さが xx[m]のとき、QQ と影像電荷の距離は、床を挟んで反対側にあるぶん 高さの2倍(2x2x になる。

F(x)=kQ2(2x)2=kQ24x2(k=14πε0)F(x) = \frac{kQ^2}{(2x)^2} = \frac{kQ^2}{4x^2} \qquad \left(k=\frac{1}{4\pi\varepsilon_0}\right)
影像電荷は実在の電荷ではなく、あくまで「床がある場合と同じ電界を再現するための、計算上の 仮想の電荷」だという点を忘れないようにしたい。床の下側に本当に電荷があるわけではなく、 床より上側の電界・力を求めるための便宜的な置き換えにすぎない。

点電荷を床から引き離す仕事 — 力が距離とともに変わるので、積分が必要になる

一様な電界中の仕事はW=qEdという単純な掛け算で済んだが、この吸引力F(x)F(x)は高さxxが 変わるたびに大きさも変わる。距離とともに変化する力に逆らって電荷を動かす仕事は、 力を距離で積分して求める。

点電荷を、床からの高さh1h_1からh2h_2h2>h1h_2>h_1)まで、ゆっくりと引き上げるのに必要な 仕事WWは、

W=h1h2F(x)dx=h1h2kQ24x2dx=kQ24(1h11h2)W = \int_{h_1}^{h_2} F(x)\,dx = \int_{h_1}^{h_2} \frac{kQ^2}{4x^2}\,dx = \frac{kQ^2}{4}\left(\frac{1}{h_1}-\frac{1}{h_2}\right)

ここで注意したいのは、影像電荷が実電荷の動きに合わせて位置も一緒に動く「仮想の」電荷だと いう点だ。もし「2つの固定された点電荷の間の仕事」の式 W=kQq(1/r11/r2)W=kQq(1/r_1-1/r_2) に、影像電荷 までの距離をそのまま r1=2h1r_1=2h_1r2=2h2r_2=2h_2 として代入してしまうと、係数が本来の2倍 (kQ2/2×(1/h11/h2)kQ^2/2\times(1/h_1-1/h_2))になってしまい、誤った答えが出る。影像電荷は「もう片方の 電荷が静止している」という前提を満たさないため、必ず実際に電荷が動く高さxxについて 積分し直す必要がある。

例題

真空中、接地された広い導体の床から高さh1=0.2h_1=0.2mの位置に電荷Q=3×106Q=3\times10^{-6}Cの 点電荷がある。この電荷を、床に垂直な方向に高さh2=0.6h_2=0.6mまでゆっくりと引き上げるのに 必要な仕事WWを求める(k=1/4πε09×109N・m2/C2k=1/4\pi\varepsilon_0\fallingdotseq9\times10^9\text{N・m}^2/\text{C}^2)。

W=kQ24(1h11h2)=9×109×(3×106)24×(10.210.6)0.02025×3.3330.068JW = \frac{kQ^2}{4}\left(\frac{1}{h_1}-\frac{1}{h_2}\right) = \frac{9\times10^9\times(3\times10^{-6})^2}{4}\times\left(\frac{1}{0.2}-\frac{1}{0.6}\right) \fallingdotseq 0.02025\times3.333 \fallingdotseq 0.068\text{J}
影像法の問題は「力の式を作るところ」までは他のクーロン力の問題と同じだが、「その力に 逆らう仕事を求めるところ」で、距離2倍の罠にはまりやすい。$F(x)=kQ^2/(2x)^2$という 式をまず高さ$x$の関数として書き下し、それを実際の高さの変化分($h_1$から$h_2$)で 積分するという手順を、途中で近道せずに毎回踏むことが確実な対策になる。

なぜ受変電設備の絶縁設計に、この2乗の関係が効いてくるのか

電極(導体)間の距離が近いほど、その間に生じる電界の強さは強くなる。しかもその関係は クーロンの法則と同じく、距離の2乗に反比例する形になる。つまり距離を半分にすると、 電界の強さは単純な2倍ではなく4倍になる。

電界の強さが一定の限度を超えると、空気などの絶縁物が絶縁破壊を起こし、放電(アーク)が 発生する。受変電設備で導体間の絶縁距離(離隔距離)が厳密に規定されているのは、 「距離を少し詰めただけで危険性が急激に高まる」というこの2乗の関係が背景にあるためだ。 静電容量とコンデンサのトピックで扱った電極板の面積・間隔の話も、根っこにはこの クーロンの法則と電界の考え方がある。

冒頭の「距離を半分にすると電界はどう変化するか」の答え合わせは、理解度チェックの 最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 距離が2倍になったとき、力も『距離に反比例』して1/2になると考えてしまう

    なぜ引っかかるクーロンの法則の分母は距離の『2乗』であり、単純な反比例(1/r)ではない。オームの法則など『距離に反比例』のイメージが強いと、2乗を見落として1/2倍と誤答しやすい。

    見破り方距離rが出てきたら、必ず式の中でrが2乗されているかを確認する。距離が2倍→力は(1/2)²=1/4倍、距離が3倍→力は(1/3)²=1/9倍、という『2乗のペア』で覚えておくと取り違えにくい。

  2. 電荷の符号(同符号か異符号か)を見落とし、力の向き(引力か斥力か)を逆に判断する

    なぜ引っかかるクーロンの法則の大きさの式だけを見ていると、力の向きの条件(同符号なら反発、異符号なら吸引)を忘れやすい。特に符号付きの電荷の掛け算をそのまま公式に当てはめようとして混乱するケースがある。

    見破り方力の大きさはクーロンの法則の式でそのまま計算し、力の向き(引力か斥力か)は別途『符号が同じか違うか』だけを見て判断する、と手順を分けて考える。同符号(+と+、-と-)は反発、異符号(+と-)は吸引、と機械的に確認する。

  3. 電界の強さEを、力Fそのものだと混同してしまう

    なぜ引っかかる電界の強さEは『単位電荷1Cあたり』に働く力であり、実際の電荷Qに働く力FはF=QEという別の式で求める必要がある。EとFを同じものとして扱うと、実際の電荷量を掛け忘れて桁を間違える。

    見破り方電界の強さEの単位はN/C(またはV/m)であり、力Fの単位はNである点を確認する。問題文で『電界の強さを求めよ』なのか『働く力を求めよ』なのかを区別し、力を求める設問ではF=QEの掛け算を忘れずに行う。

  4. 孤立した帯電導体を誘電体で満たしたとき、電位・電界の強さ・静電容量がすべて同じ向き(例えば全部増える)に変化すると思い込む

    なぜ引っかかる『誘電率が大きくなる=電気がたまりやすくなる』という漠然としたイメージだけで考えると、電位や電界の強さまで誘電率と同じ向きに増えると誤解しやすい。実際には、電荷Qを一定に保ったまま誘電率を大きくすると、電位・電界は弱まり、静電容量だけが大きくなるという、量によって向きが逆転する変化が起きる。

    見破り方変化しない量(電荷Q)をまず確定させる。電位V=Q/(4πεr)と電界E=Q/(4πεr²)はどちらも分母にεがあるので、εrが大きくなると1/εr倍に『弱まる』。一方、静電容量C=Q/V=4πεrは分子にεがあるので、εr倍に『増える』。分母にあるか分子にあるかで、変化の向きを式から機械的に判断する。

  5. 孤立導体球に帯電できる電荷の上限を求める問題で、新しい公式を丸暗記しようとして混乱する

    なぜ引っかかる『最大帯電電荷』という聞き慣れない言葉に身構えてしまい、これまで見てきた表面電界E=Q/(4πε0a²)の式との関係に気づかず、別ルートの公式を探そうとしてしまう。

    見破り方『表面電界が絶縁耐力Emに達した瞬間が限界』という条件を、E=Q/(4πε0a²)のEにEmを代入し、Qについて解くだけだと捉え直す。Qmax=4πε0a²Emは新しい知識ではなく、既知の式をQについて逆算しただけだと確認する。

  6. 電界中の電子の運動エネルギーが、速さvと同じように時間tに比例して(1次関数で)増えると思い込んでしまう

    なぜ引っかかる速さvが時間tの1次関数(v=at)になることは、等加速度運動の基本として覚えやすい。しかし運動エネルギーKE=(1/2)mv²は速さvの2乗に比例するため、vがtの1次関数でもKEはtの2乗に比例して増える。『速さと同じ増え方をするはず』という連想で、KEもtに比例すると誤答しやすい。

    見破り方運動エネルギーの式KE=(1/2)mv²に、v=atをそのまま代入してtの何次式になるか確認する癖をつける。KE=(1/2)m(at)²=(1/2)ma²t²となり、tの2乗(2次)で増加することが式の上からも確認できる。

  7. 『導体内部にも表面と同じ強さの電界があるはず』と考えてしまう

    なぜ引っかかる電気力線の密度=電界の強さという対応を覚えていても、導体という特殊な物体の内部では静電誘導によって電気力線が1本も入り込まず、電界が常に0になるという例外を見落としやすい。導体表面には0でない電界が観測されるため、内部も同じくらいの強さがあると連想してしまう。

    見破り方『導体』という言葉が出てきたら、まず静電誘導(自由電子が移動して表面に電荷が並ぶ現象)を思い出す。表面の電荷が内部の電界をちょうど打ち消すため、導体内部の電界は常に0——表面の電界の値がいくつであっても、内部は必ず0になる、と例外扱いで覚えておく。

  8. 誘電体で満たすと、孤立導体の静電容量が増えるのと同じ感覚で、2つの点電荷に働くクーロン力も増えると誤解する

    なぜ引っかかる『誘電率が大きくなる=電気をためやすくなる=力も強まるはず』という漠然としたイメージで考えると、静電容量が誘電率に比例して増えるのと、点電荷間の力が誘電率に反比例して弱まるのを混同しやすい。

    見破り方力の式F=Q1Q2/(4πεr²)では誘電率εが分母にあるため、εが大きくなれば力は必ず弱まる(1/εr倍)。静電容量C=4πεr(孤立導体球の場合)では誘電率εが分子にあるため増える——同じ『誘電体で満たす』という操作でも、着目する量によって式の中のεの位置(分母か分子か)が違う、と毎回確認する。

  9. 速度選別器の等速直線運動の条件を、電界の強さEと磁束密度Bの大きさが等しい(E=B)ことだと誤解する

    なぜ引っかかる力のつり合いの式eE=evBを、単位を意識せず数字だけの対応で捉えると、『EとBが同じ大きさなら力もつり合うはず』という短絡的な解釈をしてしまいやすい。

    見破り方eE=evBの式を毎回自分で書き出し、両辺をeで割ってE=vB、さらにvについて解いてv=E/Bと導く手順を踏む。電界Eの単位はV/m、磁束密度Bの単位はT(=Wb/m²)であり、そもそも単位が異なるため、EとBの数値をそのまま比較すること自体に意味がないと確認する。

  10. 電界に対して斜めに移動させたとき、移動距離全体(直線距離)をそのままd∥として使い、W=qE×(移動距離全体)と計算してしまう

    なぜ引っかかる『距離が長いほど仕事も大きくなるはず』という直感で移動距離をそのまま使うと、電界と垂直な方向の変位まで仕事に含めてしまう。力Fと変位が直角なら仕事はゼロになる、という力学の基本を電界中の仕事でも見落としやすい。

    見破り方変位ベクトルを、電界と平行な成分・垂直な成分の2つに分解してから式に入れる癖をつける。垂直な成分は必ずゼロとして扱い、平行な成分だけをdとしてW=qEdに代入する。

  11. 距離とともに変わる力(クーロン力)に逆らって電荷を動かす仕事も、一様な電界のときと同じW=F×dの掛け算で計算できると思い込んでしまう

    なぜ引っかかる一様な電界中の仕事W=qEdでは力Fが移動中ずっと一定だったため、この『力×距離』という掛け算のイメージのまま、距離によって力そのものが変化するクーロン力の仕事にも同じ式を当てはめてしまいやすい。

    見破り方力が移動中に変化するかどうかを最初に確認する。一様な電界中の力は常に一定なのでW=Fdでよいが、点電荷どうしのクーロン力の仕事は距離の2乗に反比例して変化する力を積分する必要がある。位置が固定された2点間の仕事はW=kQq(1/r1-1/r2)という積分済みの結果の式を使い、r1・r2にどちらが近い方の距離か遠い方の距離かを取り違えないようにする。

  12. 接地導体面から点電荷を遠ざける仕事を、2つの固定された点電荷の式W=kQq(1/r1-1/r2)に、影像電荷までの距離(実際の高さの2倍)をそのままr1・r2として代入して計算してしまう

    なぜ引っかかる影像電荷は実在せず、実電荷が動くのに合わせて位置も一緒に動く『仮想の』電荷だ。2つの固定された点電荷の式は、片方の電荷だけが動き、もう片方は静止しているという前提で距離を積分して導かれているため、影像電荷のように相手も一緒に動く(実電荷の変位の2倍だけ、両者の間の距離が変化する)状況にそのまま流用すると、積分の変数と実際の変位の対応がずれて係数を2倍に誤ってしまう。

    見破り方力の大きさF(x)=kQ²/(2x)²をまず実際の高さxの関数として書き下し、その力を実際に電荷が動く高さxについて積分する、という手順を飛ばさない。結果はW=(kQ²/4)(1/h1-1/h2)=Q²/(16πε0)(1/h1-1/h2)となり、2つの固定電荷の式にr→2rを代入した場合(kQ²/2×(1/h1-1/h2))のちょうど半分になる。『影像電荷までの距離を2倍にしただけ』という近道は使えない、と覚えておく。

参考文献・出典

理解度チェック(22問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、22問で確認しよう。 内訳は基本8問・応用9問・ひっかけ5問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 22 問正解

覚えておきたいポイント

  1. クーロンの法則:2つの点電荷の間に働く力は、電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する(F = k×Q1×Q2/r²)
  2. 同符号の電荷どうしは反発力、異符号の電荷どうしは吸引力が働く
  3. 電界(電界の強さ)E は、その場所に単位電荷(+1C)を置いたときに働く力として定義される:E = F/Q
  4. 距離rが2倍になると力は1/4に、3倍になると1/9になる——『距離に反比例』ではなく『距離の2乗に反比例』という急激な変化
  5. 電界の強さが強い(電荷が近い、または電荷量が大きい)場所ほど、絶縁破壊のリスクが高まる——絶縁設計の基礎になる考え方
  6. 孤立した帯電導体(電荷Qを与えたまま絶縁された状態)を比誘電率εrの絶縁物で満たしても、電荷Qそのものは変化しない。電位Vと電界の強さEはどちらも1/εr倍に弱まるが、静電容量C=Q/Vはεr倍に増える。また、大きさの等しい導体どうしを導線で接触させると、静電容量が等しいため電荷は接触前の総和を頭数で均等に分配する
  7. 孤立した導体球(半径a)に電荷Qを与えると表面電界E=Q/(4πε0a²)が生じる。周囲の空気の絶縁耐力Emに達すると放電するため、帯電できる最大電荷はQmax=4πε0a²Em——球が大きいほど、より多くの電荷を安全に蓄えられる
  8. 帯電した小球を絶縁糸でつるして静止させると、静電気力F・重力mg・糸の張力Tの3つの力がつり合う。この3力は幾何学的な直角三角形(糸の長さ・分離距離・鉛直方向)と相似な力の三角形をなすため、F/mg=tanθという関係を、電荷や距離を求めずに『形』だけから導ける
  9. 一様な電界E中に置かれた電荷(大きさq)には常に一定の力F=qEが働くため、静止状態から動き出すと等加速度運動になる。速さvは時間tの1次関数(v=at)、走行距離xはtの2次関数(x=(1/2)at²)、運動エネルギーはtの2乗に比例して増加する(KE=(1/2)mv²=(1/2)ma²t²)
  10. 電気力線は正電荷から出て負電荷に入り、途中で交差せず、等電位面と直交する。ある点の電気力線の密度がその点の電界の強さを表し、誘電率εの媒質中に置かれた電荷Qから出る総本数はN=Q/ε(電荷に比例、誘電率に反比例)。導体は静電誘導によって内部の電界が常に0になるため、『導体内部の電界=導体表面の電界』という主張は誤り
  11. 真空中のクーロンの法則の式F=Q1Q2/(4πε0r²)を、比誘電率εrの誘電体(絶縁油など)で満たした空間に適用すると、ε0がε0εrに置き換わり、力の大きさは1/εr倍に弱まる(力の向きや、距離の2乗に反比例する関係は変わらない)
  12. x方向の電界E・y方向の磁界(磁束密度B)を同時に受けるz方向の荷電粒子は、電界による力(大きさeE)と磁界による力(大きさevB、ローレンツ力)がつり合う速さv=E/Bのときだけ、力が差し引きゼロになって等速直線運動を続ける(速度選別器の原理)
  13. 一様な電界E中で電荷qをゆっくり(準静的に)移動させるとき、外力がする仕事はW=qE×d∥(d∥は変位のうち電界方向の成分だけ)で決まる。電界と垂直な方向にどれだけ動いても仕事はゼロ——力と変位が直角なら仕事をしないという力学の原則がそのまま当てはまる。この仕事は移動経路によらず、始点・終点間の電位差ΔV=W/qそのものを表す
  14. 接地された広い導体面の近くに正電荷Qを置くと、導体面には負の面電荷が静電誘導によって現れ、電荷Qは面に引き寄せられる力を受ける。この力・電界は、導体面をはさんでQと対称な位置(面からの距離が等しい反対側)に、大きさQ・符号が逆の仮想の点電荷(影像電荷)を置いたときにできるクーロン力・電界と完全に一致する——これを影像法(鏡像法)という。電荷Qと影像電荷の距離は、Qの導体面からの高さhの2倍(2h)になる
  15. 一様でない(距離とともに変わる)力に逆らって電荷を動かす仕事は、一様な電界中のW=qEdとは違い、力を距離で積分して求める。位置が固定された2つの点電荷Q・qの一方を、もう一方から見た距離r1からr2(r2>r1)まで遠ざける仕事はW=kQq(1/r1-1/r2)(k=1/4πε0)
  16. 接地導体面から高さx(0<h1<h2として、高さh1からh2まで)の位置にある点電荷Qを面から遠ざける仕事は、影像電荷(大きさQ、距離は常に実際の高さの2倍2x)との間に働く力F(x)=kQ²/(2x)²=kQ²/(4x²)を、実際に電荷が動く高さxについてh1からh2まで積分して求める:W=(kQ²/4)(1/h1-1/h2)=Q²/(16πε0)×(1/h1-1/h2)。影像電荷は実電荷の動きに合わせて位置も動く仮想の電荷であるため、2つの固定電荷の式W=kQq(1/r1-1/r2)にそのままr→2rを代入すると係数を2倍に誤ってしまう点に注意する
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