考えてみよう
受変電設備に力率改善用の進相コンデンサを増設したところ、電源の電圧や周波数は何も変わっていないのに、特定の条件でコンデンサやリアクトルの電圧・電流が異常に跳ね上がることがある。まるで回路が電源のある周波数だけを「狙い撃ち」しているかのようだ。
これは偶然でも故障でもない。RLC回路には、XL(コイルのリアクタンス)とXC(コンデンサのリアクタンス)がぴったり打ち消し合う、特別な周波数が存在する。
このトピックを読み終えるころには、LとCの値から共振が起きる周波数を計算し、共振が回路に何をもたらすかを説明できるようになっている。
種明かしは、前のトピックで見た「XL−XCという正味のリアクタンス」が、ある周波数でちょうど0になる、という一点にある。
共振条件——XLとXCがつり合う周波数
XL=XC となる周波数を、共振周波数(共振角周波数)と呼ぶ。
2πf0L=2πf0C1⟹ω0=LC1,f0=2πLC1
例題
L=0.1H、C=10μFの直列回路の共振角周波数・共振周波数を求めよ。
ω0=0.1×10×10−61=1×10−61=1×10−31=1000 rad/s
f0=2π1000≈159Hz
このときXL=ω0L=1000×0.1=100Ω、XC=1/(ω0C)=1/(1000×10×10⁻⁶)=100Ωとなり、確かにXL=XCが成り立っている。
直列共振で何が起きるか——インピーダンス最小、電流最大
共振時は正味のリアクタンス(XL−XC)が0になるため、インピーダンスは抵抗分Rだけになる。
Z=R2+(XL−XC)2=R (共振時)
Zが最小になるということは、電流I=V/Zは共振周波数でちょうど最大になるということだ。
共振周波数から離れるほど|XL−XC|が大きくなり、Zは大きくなる(電流は減る)。共振周波数だけがZを最小にする特別な点であり、周波数を横軸、電流を縦軸にとると、共振周波数を頂点にした山型のグラフになる——これがフィルタ回路などで「特定の周波数だけを選び出す」性質の正体だ。
この山の裾が両側で下がっていく理由も、前のトピックで見た「極端な周波数でのコイル・コンデンサの近似」から説明できる。周波数がうんと低い側ではXC(コンデンサのリアクタンス)が支配的になって回路を事実上の開放に近づけ、周波数がうんと高い側では逆にXL(コイルのリアクタンス)が支配的になって開放に近づける。どちらの端でも回路が電流を通しにくくなるからこそ、電流は共振周波数を頂点にした山型を描く。
Q(尖鋭度)——電源電圧より大きな電圧が現れる理由
共振時のコイル(またはコンデンサ)のリアクタンスと抵抗の比を、Q(尖鋭度)と呼ぶ。
Q=RXL=Rω0L=R1CL
共振時、コイル・コンデンサ単体の両端電圧は、電源電圧のQ倍に達する。
例題
R=5Ω、共振時のXL=XC=100Ωである直列共振回路に、電源電圧10Vを加えた。コイルの両端電圧を求めよ。
Q=5100=20,I=RV=510=2A,VL=I×XL=2×100=200V
電源電圧はわずか10Vなのに、コイル単体には200V(電源電圧の20倍)もの電圧がかかる。
不安になる数字だが、破綻はしていない。VLとVCは大きさが等しく(ともに200V)位相が正反対なので、ベクトル的にはVL−VC=0となり、電源側から見た電圧は結局V=I×R=2×5=10Vだけで説明がつく。共振時はコイルとコンデンサの間だけで大きなエネルギーがやり取りされ、電源側の帳尻はきちんと合っている。
コイルの直列等価回路と並列等価回路——抵抗rをRpに置き換える
ここまで見てきた共振回路は、コイルを理想的な素子(抵抗成分ゼロ)として扱ってきた。だが
実際のコイルは巻線に必ずわずかな抵抗rを持っており、コイル単体はインダクタンスLと抵抗rの
直列回路として表される。
このrがωL(誘導性リアクタンス)に比べて十分小さいとき、直列のL・rを、電気的にほぼ等価な
「Lと抵抗Rpの並列回路」に置き換えることができる。この等価抵抗Rpは、次の式で求まる。
Rp=r(ωL)2
rが小さいほど、Rpは大きな値になる——「損失の小さいコイル(rが小さい)ほど、並列等価回路で
見たときの抵抗Rpは大きくなる」という、一見遠回りな対応関係になっている。
例題
インダクタンスL=0.2H、巻線抵抗r=2Ωのコイルがある。角周波数ω=500rad/sで使うとき、
並列等価回路の等価抵抗Rpを求める。
ωL=500×0.2=100Ω,Rp=21002=210000=5000Ω=5kΩ
直列と並列で「抵抗が小さいほど良いコイル」という感覚が入れ替わる点に注意したい。直列等価
回路ではrが小さいほど損失が少ない良いコイルだが、並列等価回路に変換すると、同じ「良いコイル」が
Rpの大きい(電流を通しにくい)並列抵抗として表される。どちらの回路で見ているかによって、
抵抗の大小の意味が逆になることを、式Rp=(ωL)²/rの分母にrがある(rが小さいほどRpは大きい)
という形から確認するとよい。
並列共振(反共振)——直列とは逆に、インピーダンスが最大・電流が最小になる
ここまで見てきた共振はすべて、抵抗・コイル・コンデンサを直列に接続した回路だった。コイルとコンデンサを並列に接続した回路にも、同じXL=XCの条件で起きる共振現象があり、こちらは並列共振(反共振)と呼ばれる。
直列共振では「インピーダンス最小・電流最大」だったが、並列共振ではこれが正反対になる。
- 並列共振時、コイルの枝とコンデンサの枝には、それぞれ独立に電流が流れ続けている(電流が0になるわけではない)
- しかし、コイルの枝を流れる電流とコンデンサの枝を流れる電流は、大きさが等しく位相が逆になるため、電源から見ると2つの電流が打ち消し合い、外部(電源)から流れ込む電流は最小になる
- 電源から見た合成インピーダンスは、逆に最大になる
直列共振と並列共振は、名前が似ているだけで結果は正反対だ。「直列は電流の通り道が抵抗だけになって通りやすくなる(電流最大)」「並列はLとCに流れる電流どうしが打ち消し合って、外部からは電流が流れ込みにくくなる(電流最小)」とイメージで対比させて覚えると、混同しにくい。また『LとCに電流が流れない』という誤解にも注意したい——LとCの各枝には電流がしっかり流れており、打ち消し合っているのは電源から見た合成電流だけである。
例題
抵抗を無視できるコイルとコンデンサを並列に接続し、共振周波数で電源につないだ。このときの回路の状態を確認する。
電源から見たインピーダンスは最大になり、電源から供給される電流は最小になる。ただし、コイル・コンデンサの各枝には、大きさが等しく位相が逆の電流が流れ続けている。
共振点からずれた周波数での電流の比較——R∥L∥C回路をアドミタンスで見る
ここまでの並列共振は、抵抗Rを無視できる理想的なコイル・コンデンサの並列回路だった。
実際にはRも並列に加わったR∥L∥C回路で、しかも共振周波数ぴったりではない複数の周波数
での電流を比べさせる問題もよく出る。ここでは、インピーダンスの逆数であるアドミタンスY
を使うと見通しがよくなる。
Y=R1+j(ωC−ωL1)
実部(コンダクタンス 1/R)は周波数によらず一定だが、虚部(サセプタンス
ωC−1/(ωL))は、共振角周波数 ω0=1/LC でちょうど0になり、
そこから離れるほど(周波数が高くても低くても)絶対値が大きくなる。電源から流れ込む電流は
I=∣Y∣×V なので、サセプタンスが0になる共振周波数で電流は最小、そこから離れるほど
電流は大きくなる。
複数の周波数での電流の大小を比べたいときは、周波数の数値そのものが共振周波数からどれだけ
離れているかではなく、サセプタンス ∣ωC−1/(ωL)∣ を実際に計算して比較する
のが確実だ。ωC(周波数に比例して増える)と 1/(ωL)(周波数に反比例して
減る)は非対称な曲線を描くため、共振周波数から見て同じ幅だけ離れていても、高い側と低い側で
サセプタンスの大きさが違うことがある。
例題
抵抗R=50kΩ、コンデンサC=2μF、コイルL=5mHを並列に
接続した回路に、実効値1Vの電源をつなぐ。共振角周波数は
ω0=LC1=5×10−3×2×10−61=10000 rad/s
ここでω1=4000 rad/s、ω2=10000 rad/s(共振)、
ω3=30000 rad/sの3通りでの電流I1、I2、I3を比べる。コンダクタンス
1/R=2×10−5Sは3つとも共通でごく小さいため、サセプタンスの大きさで
ほぼ決まる。
ω1:4000×2×10−6−4000×5×10−31=∣0.008−0.05∣=0.042S
ω2:∣0.02−0.02∣=0S(コンダクタンスの2×10⁻⁵Sだけが残り最小)
ω3:0.06−1501=∣0.06−0.00667∣=0.0533S
サセプタンスが小さいほど電流も小さいので、I2(共振、最小)<I1<I3という順になる。
「共振角周波数からの数値の差($|\omega-\omega_0|$)」で電流の大小を決めようとするのは
危険だ。$\omega C$は周波数に比例して増え、$1/(\omega L)$は周波数に反比例して減るという、
形の違う2つの曲線の差を見ているため、共振点からの周波数の離れ方が同じでも、高い側と低い側で
サセプタンスの増え方はまったく違う。この例のように$\omega_1$の方が$\omega_0$に近い数値
であっても、サセプタンスを実際に計算するまでは、$\omega_3$より電流が小さいと決めつけない
——毎回$|\omega C-1/(\omega L)|$を計算して比較する、という手順を飛ばさないことが大切だ。
実務との接点——進相コンデンサとリアクトルの共振リスク
力率改善のために進相コンデンサを盤に増設すると、そのコンデンサのキャパシタンスと、系統・変圧器側が持つインダクタンス成分が、意図せずLC回路を形作ることがある。この回路の共振周波数が、電源に含まれる高調波(インバータや整流器から発生する第5次・第7次高調波など)の周波数と近づくと、共振によって電圧・電流が異常に増幅されてしまう。
このリスクへの一般的な対策が、コンデンサに直列にリアクトルを接続する方法だ。リアクトルを追加してLの値を調整することで、回路全体の共振周波数を高調波の周波数からずらし、共振を避ける。「コンデンサを増やしただけなのに回路が暴れ出す」という現象も、単に容量を増設しただけでなく、共振点をどこに置くかまで考えて設計しなければならない、という共振回路の性質そのものが原因になっている。
冒頭で見た「コンデンサを増やしただけなのに暴れ出す」現象——答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。