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理論 ・ 12 / 17

三相交流とY-Δ

読み終えると、こうなる

三相動力盤の結線図を見たとき、Y結線かΔ結線かを見分けて、線間電圧・線電流と相電圧・相電流の関係をその場で計算できるようになる

  • Y結線・Δ結線それぞれで、線間電圧と相電圧、線電流と相電流の関係(どちらに√3がつくか)を使い分けて計算できる
  • 三相電力の公式P=√3×V(線間)×I(線)×cosθを使って、結線方式によらず三相負荷の消費電力を求められる
  • 三相誘導電動機のY-Δ始動が、なぜ始動電流を抑える効果を持つのかを結線の違いから説明でき、同じ線間電圧でY結線の線電流がΔ結線の1/3になることを式で導ける
  • 二電力計法で三相電力を測定する原理を理解し、電力計の指針が逆振れした場合でも正しく全消費電力を計算できる
考えてみよう

三相200Vの動力回路で、電圧計を線と線の間(線間)に当てると200Vぴったり出る。だが机の上で「1相あたりの電圧×3相分」と単純計算すると、話が合わない。どこにも間違った数字を使っていないのに、なぜ√3(ルート3)という中途半端な係数が割り込んでくるのか。

このトピックを読み終えるころには、三相動力盤の結線図を見て、それがY結線かΔ結線かを判別し、線間電圧・線電流と相電圧・相電流の関係をその場で計算できるようになっている。

種明かしは、三相交流の3つの電圧(電流)が、120°ずつ位相がずれた状態で「同時に」流れている、という点にある。単純に3倍にならないのは、位相がずれたベクトルを合成しているからだ。

Y結線(スター結線)——電圧に√3がつく

Y結線は、3つの巻線(相)の一端をすべて1点(中性点)に集めた結線方式だ。相電圧 VpV_p は、各巻線の両端——つまり線と中性点の間——の電圧を指す。線間電圧 VlV_l は、120°位相がずれた2つの相電圧をベクトルで合成した値になる。

Vl=3 Vp,Il=IpV_l = \sqrt{3}\,V_p, \qquad I_l = I_p

線と巻線が1本ずつそのままつながっているため、線電流と相電流は等しい。

例題

Y結線で、相電圧が200Vのとき、線間電圧を求めよ。

Vl=3×200≈1.732×200=346VV_l = \sqrt{3}\times200 \approx 1.732\times200 = 346\text{V}

Δ結線(三角結線)——電流に√3がつく

Δ結線は、3つの巻線を輪(三角形)につないだ結線方式で、中性点を持たない。各巻線はそのまま線と線の間に接続されるため、相電圧と線間電圧は等しい。線電流 IlI_l は、120°位相がずれた2つの相電流をベクトルで合成した値になる。

Vl=Vp,Il=3 IpV_l = V_p, \qquad I_l = \sqrt{3}\,I_p

例題

Δ結線で、線電流が10Aのとき、相電流(各巻線を流れる電流)を求めよ。

Ip=Il3=101.732≈5.8AI_p = \frac{I_l}{\sqrt{3}} = \frac{10}{1.732} \approx 5.8\text{A}
「Yは電圧、Δは電流」に√3がつく、と型で覚えるのが最短だが、忘れたときは結線の形から思い出せる。Y結線には中性点があり、3本の相電圧を線として合成するから電圧側に√3がつく。Δ結線には中性点がなく、3つの相電流が接続点で合成されて線電流になるから電流側に√3がつく。図の形(Yは電圧が線として出てくる形、Δは電流がループで分かれる形)とセットで覚えておくと、試験本番でどちらか迷ったときの検算になる。

三相電力の公式——結線方式によらず同じ式で計算できる

三相の消費電力は、線間電圧と線電流を使えば、結線方式によらず同じ式で求められる。

P=3 VlIlcos⁡θP = \sqrt{3}\,V_l I_l \cos\theta

なぜY結線でもΔ結線でも同じ式になるのか。1相あたりの電力を3相分足し合わせて確認してみる。

Y結線:P=3VpIpcos⁡θ=3×Vl3×Il×cos⁡θ=3VlIlcos⁡θP = 3 V_p I_p \cos\theta = 3\times\dfrac{V_l}{\sqrt{3}}\times I_l \times\cos\theta = \sqrt{3}V_l I_l\cos\theta

Δ結線:P=3VpIpcos⁡θ=3×Vl×Il3×cos⁡θ=3VlIlcos⁡θP = 3 V_p I_p \cos\theta = 3\times V_l\times\dfrac{I_l}{\sqrt{3}}\times\cos\theta = \sqrt{3}V_l I_l\cos\theta

Y結線は電圧側の√3が、Δ結線は電流側の√3が、それぞれ式の中で同じように効いてきて、最終的にどちらも同じ3VlIlcos⁡θ\sqrt{3}V_lI_l\cos\thetaという形に落ち着く。結線方式を意識せず、線間電圧と線電流さえ分かれば三相電力を計算できるのはこのためだ。

二電力計法——単相電力計2台だけで、三相電力を測る

三相電力を測るには専用の三相電力計を使うのが確実だが、中性線を持たない3線式の三相回路 なら、単相の電力計を2台だけ使う二電力計法でも全消費電力を測定できる。

2台の電力計 W1W_1、W2W_2 を回路に正しく接続すると、それぞれが三相電力の一部を分担して 指示する。三相全体の消費電力 PP は、この2台の指示値の和に等しい。

P=W1+W2P = W_1 + W_2

ただし、負荷の力率が0.5(位相差60°)を下回るような場合、片方の電力計の指針が 逆振れ(マイナス方向に振り切れて指示できない状態)を起こすことがある。この場合は、 逆振れした電力計だけ電圧端子(または電流端子)の極性を反転させて指示値を読み取り、 その値はマイナスの指示として扱う。

P=W1−∣W2∣(W2が逆振れし、極性反転後の値 ∣W2∣ を使う場合)P = W_1 - |W_2| \quad (W_2\text{が逆振れし、極性反転後の値}\,|W_2|\,\text{を使う場合)}

ここでは、W1W_1、W2W_2 を符号付きの指示値(逆振れ側の W2W_2 は負の値)とし、∣W2∣|W_2| を、極性を反転して読んだ正の指示値(大きさ)と書き分けている。符号付きの値で書けば、上の式は P=W1+W2P=W_1+W_2(W2W_2 は負)という足し算と同じ内容だ。問題文の「W2W_2」が「反転後に読んだ正の値」なのか「符号付きの値」なのかは問題ごとに異なるので、先に確かめてから、足すか引くかを決める。

例題

二電力計法で測定したところ、2台の電力計がともに正常に振れ、W1=800WW_1=800\text{W}、 W2=200WW_2=200\text{W} を示した。三相回路の全消費電力を求めよ。

P=W1+W2=800+200=1000WP = W_1 + W_2 = 800+200 = 1000\text{W}

別の例では、電力計 W2W_2 の指針が逆振れしたため、電圧端子の極性を反転して測定し直したところ 150W150\text{W}(∣W2∣=150W|W_2|=150\text{W}、符号付きの W2=−150WW_2=-150\text{W})を示した。もう一方の W1W_1 は 600W600\text{W} だった場合、全消費電力を求めよ。

P=W1−∣W2∣=600−150=450WP = W_1 - |W_2| = 600-150 = 450\text{W}

二電力計法で一番の落とし穴は、逆振れした電力計の指示値を、そのまま普通にプラスとして 足してしまうことだ。逆振れは「その電力計の分担分がマイナスの値になっている」ことを 示すサインであり、極性を反転させて読み取った指示値は、最終的な合計計算では引き算 として扱わなければならない。2台とも正常に振れていれば単純な足し算(W_1+W_2)で よい、と「逆振れの有無」で計算方法を切り替える判断が必要になる。

Δ負荷をY負荷に換算する——線電流が1/3になる導出

三相の問題では、「Δ接続の負荷を等価なY接続に直す」と「同じ負荷をΔからYへつなぎ替える」の2つが混ざって出てくる。この2つは別の操作なので、先に区別しておく。

①等価変換(電源から見た電流を変えない、見かけの置き換え)

線間電圧を VV とする。Δ接続の各相のインピーダンスを ZΔZ_\Delta とすると、各相にそのまま VV がかかるので相電流は V/ZΔV/Z_\Delta、線電流はその 3\sqrt{3} 倍になる。

IΔ=3 VZΔI_\Delta = \frac{\sqrt{3}\,V}{Z_\Delta}

これと同じ線電流を流すY接続を考える。Y接続の各相には相電圧 V/3V/\sqrt{3} がかかり、線電流は相電流に等しい。Y接続の各相のインピーダンスを ZYZ_Y とすると、

IY=V/3ZYI_Y = \frac{V/\sqrt{3}}{Z_Y}

IΔ=IYI_\Delta = I_Y とおいて整理する。

3 VZΔ=V3 ZY⟹ZY=ZΔ3\frac{\sqrt{3}\,V}{Z_\Delta} = \frac{V}{\sqrt{3}\,Z_Y} \quad\Longrightarrow\quad Z_Y = \frac{Z_\Delta}{3}

Δ接続の負荷は、各相のインピーダンスを1/3にしたY接続と等価になる。インピーダンスが3つとも同じでない一般の場合の変換式 Za=ZabZca/(Zab+Zbc+Zca)Z_a = Z_{ab}Z_{ca}/(Z_{ab}+Z_{bc}+Z_{ca}) に、3つとも ZΔZ_\Delta を代入しても同じ結果(ZΔ2/3ZΔ=ZΔ/3Z_\Delta^2/3Z_\Delta = Z_\Delta/3)になる。

②組替え(同じ部品をつなぎ替える。電流は変わる)

同じ3つのインピーダンス ZZ を、Δ接続からY接続につなぎ替える場合は、等価なY(Z/3Z/3)にはならず、ZZ のままのY接続になる。同じ線間電圧のもとで比べると、

IYIΔ=V/(3 Z)3 V/Z=13\frac{I_Y}{I_\Delta} = \frac{V/(\sqrt{3}\,Z)}{\sqrt{3}\,V/Z} = \frac{1}{3}

力率 cos⁡θ\cos\theta は結線を替えても変わらないので、P=3 VIcos⁡θP=\sqrt{3}\,V I\cos\theta も線電流に比例して1/3になる。この後の「実務との接点」で扱うY-Δ始動の「1/3」は、この組替えの特別な場合だ。

例題

各相が15Ωの抵抗である平衡三相負荷を、線間電圧200Vの電源につなぐ。

Δ接続のとき、相電流は 200/15≈13.3A200/15 \approx 13.3\text{A}、線電流は 3×13.3≈23.1A\sqrt{3}\times13.3 \approx 23.1\text{A}、消費電力は

PΔ=3×200215=8000WP_\Delta = 3\times\frac{200^2}{15} = 8000\text{W}

この負荷と等価なY接続の1相の抵抗は 15/3=5Ω15/3=5\Omega。確かめると、線電流は (200/3)/5≈23.1A(200/\sqrt{3})/5 \approx 23.1\text{A} で、Δ接続のときと一致する。

一方、同じ15Ωの抵抗3個をY接続につなぎ替えると、線電流は 200/(3×15)≈7.7A200/(\sqrt{3}\times15)\approx7.7\text{A}、消費電力は

PY=200215≈2667W=80003P_Y = \frac{200^2}{15} \approx 2667\text{W} = \frac{8000}{3}

「Δ→Y」と書いてあっても、読み方は2通りある。「等価なY負荷に置き換える」なら各相は Z/3Z/3 で電流は変わらない。「同じ負荷をΔからYに組み替える」なら各相は ZZ のままで電流・電力は1/3になる。問題文が前者か後者かを先に決めてから式を立てると、1/3を掛けるべきか、3を掛けるべきかで迷わない。

Δ接続コンデンサによる三相の力率改善——容量計算の例題

三相負荷の力率改善でも、考え方は単相(前のトピックの力率改善)と同じだ。コンデンサが出す進みの無効電力を、負荷の遅れ無効電力にそろえればよい。違うのは、コンデンサを3個使い、その結線(ΔかY)で1個あたりにかかる電圧が変わる点だけである。

コンデンサ1個の無効電力は、かかる電圧を VcV_c とすると ωCVc2\omega C V_c^2。線間電圧を VV とすると、

Δ接続: Vc=V ⇒ Qc=3 ωCV2,Y接続: Vc=V3 ⇒ Qc=3 ωCV23=ωCV2\text{Δ接続:}\ V_c = V \ \Rightarrow\ Q_c = 3\,\omega C V^2, \qquad \text{Y接続:}\ V_c = \frac{V}{\sqrt{3}} \ \Rightarrow\ Q_c = 3\,\omega C\frac{V^2}{3} = \omega C V^2

同じ無効電力を出すなら、Y接続のコンデンサはΔ接続の3倍の容量が必要になる(CY=3CΔC_Y = 3C_\Delta)。これは前の節の等価変換 ZY=ZΔ/3Z_Y = Z_\Delta/3(コンデンサのリアクタンスが1/3 = 容量が3倍)と同じ関係だ。

必要な無効電力は、力率改善の公式(改善前後の力率角を φ1\varphi_1、φ2\varphi_2 として)で求める。

Qc=P (tan⁡φ1−tan⁡φ2)Q_c = P\,(\tan\varphi_1 - \tan\varphi_2)

例題

線間電圧200V、周波数50Hzの平衡三相負荷が、有効電力9kW、力率0.6(遅れ)で運転している。1相あたり静電容量 CC のコンデンサ3個をΔ接続して負荷に並列に接続し、力率を1にしたい。CC を求めよ。

力率0.6なので tan⁡φ1=0.8/0.6=4/3\tan\varphi_1 = 0.8/0.6 = 4/3。力率1にするのだから tan⁡φ2=0\tan\varphi_2=0。

Qc=9000×43=12000varQ_c = 9000\times\frac{4}{3} = 12000\text{var}

Δ接続なので Qc=3ωCV2Q_c = 3\omega C V^2 より、

C=Qc3ωV2=120003×314.2×2002≈3.18×10−4F=318μFC = \frac{Q_c}{3\omega V^2} = \frac{12000}{3\times314.2\times200^2} \approx 3.18\times10^{-4}\text{F} = 318\mu\text{F}

確かめとして線電流を比べる。改善前は 9000/(3×200×0.6)≈43.3A9000/(\sqrt{3}\times200\times0.6)\approx43.3\text{A}、改善後は力率1なので 9000/(3×200)≈26.0A9000/(\sqrt{3}\times200)\approx26.0\text{A}。有効電力は変わらず、電源から見た電流だけが約40%減る。同じコンデンサ3個をY接続にした場合は C=12000/(ωV2)≈955μFC=12000/(\omega V^2)\approx955\mu\text{F} が必要で、Δ接続の3倍になる。

手順は「①負荷の無効電力 QQ を求める → ②コンデンサの無効電力を QQ に合わせる → ③結線に応じて Qc=3ωCV2Q_c=3\omega CV^2(Δ)か ωCV2\omega CV^2(Y)から CC を逆算する」の3段階。Δ接続で ωCV2\omega C V^2 のまま(3倍を忘れる)にすると、答えがちょうど3倍に出る。単相の例題の Qc=ωCV2Q_c=\omega CV^2 と見比べて、「個数が3個ある」ことを式に入れ忘れないようにする。

二電力計法の力率——tanφ=√3(W₁−W₂)/(W₁+W₂)

二電力計法は、2台の指示値の和が三相電力になるだけではない。負荷が平衡していれば、2台の指示値の差から無効電力も、力率の位相角も求められる。

平衡負荷の力率角を φ\varphi(遅れ)、線間電圧・線電流をそれぞれ VV・II とする。結線図どおりに2台を接続したとき、遅れ負荷では2台の指示値が次のように書ける(大きい方を W1W_1 とする)。

W1=VIcos⁡(30∘−φ),W2=VIcos⁡(30∘+φ)W_1 = VI\cos(30^\circ-\varphi), \qquad W_2 = VI\cos(30^\circ+\varphi)

加法定理で和と差を作る。

W1+W2=2VIcos⁡30∘cos⁡φ=3 VIcos⁡φ,W1−W2=2VIsin⁡30∘sin⁡φ=VIsin⁡φW_1+W_2 = 2VI\cos30^\circ\cos\varphi = \sqrt{3}\,VI\cos\varphi, \qquad W_1-W_2 = 2VI\sin30^\circ\sin\varphi = VI\sin\varphi

和は三相の有効電力 P=3VIcos⁡φP=\sqrt{3}VI\cos\varphi そのものだ。差に 3\sqrt{3} を掛けると三相の無効電力 Q=3VIsin⁡φQ=\sqrt{3}VI\sin\varphi になる。

P=W1+W2,Q=3 (W1−W2),tan⁡φ=QP=3 (W1−W2)W1+W2P = W_1+W_2, \qquad Q = \sqrt{3}\,(W_1-W_2), \qquad \tan\varphi = \frac{Q}{P} = \frac{\sqrt{3}\,(W_1-W_2)}{W_1+W_2}

P2+Q2=S2P^2+Q^2=S^2 から、力率を直接書くと cos⁡φ=(W1+W2)/{2W12+W22−W1W2}\cos\varphi = (W_1+W_2)/\{2\sqrt{W_1^2+W_2^2-W_1W_2}\} になる。これらの式は平衡負荷に限る。不平衡の回路では有効電力 P=W1+W2P=W_1+W_2 は成り立つが、無効電力の式は成り立たない。

例題

平衡三相の遅れ負荷を二電力計法で測定したところ、W1=2000WW_1=2000\text{W}、W2=1000WW_2=1000\text{W} を示した(ともに正常に振れた)。有効電力・無効電力・力率を求めよ。

P=3000W,Q=3×1000≈1732var,tan⁡φ=17323000≈0.577P = 3000\text{W}, \quad Q=\sqrt{3}\times1000\approx1732\text{var}, \quad \tan\varphi = \frac{1732}{3000}\approx0.577

tan⁡φ=1/3\tan\varphi=1/\sqrt{3} なので φ=30∘\varphi=30^\circ、力率は cos⁡30∘≈0.866\cos30^\circ\approx0.866。

力率が0.5(φ=60∘\varphi=60^\circ)を下回ると W2=VIcos⁡(30∘+φ)W_2=VI\cos(30^\circ+\varphi) が負になり、W2W_2 が逆振れする。このとき、極性を反転して読んだ値(正)が ∣W2∣|W_2| なら、符号付きの値は W2=−∣W2∣W_2=-|W_2| で、これを式にそのまま代入する。たとえば W1=1500WW_1=1500\text{W}、∣W2∣=500W|W_2|=500\text{W} なら、

P=1500−500=1000W,tan⁡φ=3 (1500−(−500))1500+(−500)=23≈3.46P = 1500-500 = 1000\text{W}, \qquad \tan\varphi = \frac{\sqrt{3}\,(1500-(-500))}{1500+(-500)} = 2\sqrt{3}\approx3.46

cos⁡φ=1/1+tan⁡2φ=1/13≈0.277\cos\varphi = 1/\sqrt{1+\tan^2\varphi} = 1/\sqrt{13}\approx0.277。

差の式でよくある間違いは、逆振れの ∣W2∣|W_2| をそのまま「差」に使って W1−∣W2∣W_1-|W_2| としてしまうことだ。和も差も、W2W_2 を符号付きの値(逆振れなら負)にして代入する。和は W1+W2=W1−∣W2∣W_1+W_2=W_1-|W_2|(小さくなる)、差は W1−W2=W1+∣W2∣W_1-W_2=W_1+|W_2|(大きくなる)。逆振れのときは「和が小さく、差が大きい」ので、tan⁡φ\tan\varphi が大きい(力率が悪い)側に出る、という検算もできる。

過去問の型で解く——結線の組替えと電流・電力

三相の計算問題には、出題された型の一つとして、「Y(またはΔ)接続した平衡負荷の線電流を求める → 結線を替える、または同じ負荷にΔ接続のコンデンサをつないで力率を1にする → 電流や容量を求める」という2段構えのものがある。前半が結線の関係、後半が電力と力率改善の公式だ。数値は自作の例で型を確認する。

例題

各相のインピーダンスが Z=8+j6 ΩZ=8+j6\ \Omega(抵抗8Ω、誘導性リアクタンス6Ω)の平衡三相負荷を、線間電圧200Vの対称三相電源に接続する。

(a) Δ接続のときの線電流を求めよ。(b) 消費電力を求めよ。(c) 同じ負荷をY接続につなぎ替えたときの消費電力を求めよ。

(a) 1相のインピーダンスの大きさは ∣Z∣=82+62=10Ω|Z|=\sqrt{8^2+6^2}=10\Omega。Δ接続では相電圧が線間電圧に等しいので、相電流は 200/10=20A200/10=20\text{A}、線電流は

Il=3×20≈34.6AI_l = \sqrt{3}\times20 \approx 34.6\text{A}

(b) 電力は各相の抵抗で消費される。

PΔ=3×Ip2R=3×202×8=9600WP_\Delta = 3\times I_p^2 R = 3\times20^2\times8 = 9600\text{W}

検算:力率 cos⁡θ=8/10=0.8\cos\theta=8/10=0.8 から P=3×200×34.6×0.8≈9600WP=\sqrt{3}\times200\times34.6\times0.8\approx9600\text{W}。

(c) Y接続では相電圧が 200/3≈115.5V200/\sqrt{3}\approx115.5\text{V}、相電流(=線電流)は 115.5/10≈11.55A115.5/10\approx11.55\text{A}。

PY=3×11.552×8≈3200WP_Y = 3\times11.55^2\times8 \approx 3200\text{W}

線電流は 34.6/3≈11.5A34.6/3\approx11.5\text{A}、電力は 9600/3=3200W9600/3=3200\text{W} で、どちらもΔ接続の1/3になっている。

解く前に3点だけ確認する。①与えられた電圧は線間か相か(問題文の「線間電圧」「相電圧」)。②結線を替えるのか、等価な負荷に置き換えるのか。③力率改善まで続くなら、電力 PP は結線を替えた後の値を使う。(a)→(b)→(c)の順に、1つ前の答えを検算に使えるのも、この型の特徴だ。

実務との接点——Y-Δ始動と変圧器の結線

三相誘導電動機の始動方式の1つに、Y-Δ始動がある。始動の瞬間だけ巻線をY結線にして相電圧を下げ、始動電流を抑えてから、運転時にΔ結線へ切り替えて全電圧で運転する方式だ。

なぜ線電流が減るのかを、式で確かめておく。電源の線間電圧を VV、電動機の1相あたりのインピーダンスを ZZ とし、始動時の ZZ は結線を替えても変わらないものとして比べる。

Δ結線では、各巻線に線間電圧 VV がそのままかかる。相電流は V/ZV/Z、線電流は相電流の√3倍になる。

IΔ=3×VZ=3 VZI_\Delta = \sqrt{3}\times\dfrac{V}{Z} = \dfrac{\sqrt{3}\,V}{Z}

Y結線では、各巻線にかかる相電圧が V/3V/\sqrt{3} に下がる。相電流は V/(3Z)V/(\sqrt{3}Z) で、Y結線は線電流と相電流が等しい。

IY=V3 ZI_Y = \dfrac{V}{\sqrt{3}\,Z}

両者の比をとると、

IYIΔ=V/(3 Z)3 V/Z=13\dfrac{I_Y}{I_\Delta} = \dfrac{V/(\sqrt{3}\,Z)}{\sqrt{3}\,V/Z} = \dfrac{1}{3}

となり、Y結線で始動すると、Δ結線のまま全電圧で始動した場合の線電流の1/3に抑えられる(巻線電圧が1/√3になる効果と、Y結線では線電流が相電流の√3倍にならない効果が、それぞれ1/√3として掛け合わさる)。たとえばΔ結線で全電圧始動すると線電流が60Aになる電動機なら、Y結線での始動電流は60/3=20Aだ。なお、始動トルクも巻線電圧の2乗にほぼ比例して減るため、同じく約1/3になる。だから負荷が軽い状態で始動する用途に向く。

また、三相変圧器では一次側・二次側の結線をY結線・Δ結線の組み合わせで選ぶ(Y-Δ、Δ-Yなど)。結線の組み合わせによって一次・二次間の位相の変位や、中性点接地の可否が変わってくるため、系統設計や機器選定の場面でも、Y結線とΔ結線の違いを正しく理解しておくことが欠かせない。

冒頭の「線間電圧200V」の謎——答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. Y結線とΔ結線で、√3がつく対象(電圧か電流か)を逆にしてしまう

    なぜ引っかかる√3という係数がどちらかの結線に必ず出てくることは覚えていても、「電圧につくのがどちらか」を丸暗記しているだけだと、試験本番で不安になって逆に答えてしまいやすい。

    見破り方Y結線は中性点を介して3つの相電圧をベクトル合成して線間電圧を作る(電圧側に√3)、Δ結線は中性点がなく3つの相電流がループの接続点でベクトル合成されて線電流を作る(電流側に√3)、と結線の形そのものから毎回導き直す。

  2. 「相電圧」を「線と線の間の電圧」だと誤解する(あるいはその逆)

    なぜ引っかかる日常語感では「相」と言われても2本の線の間をイメージしやすく、Y結線の中性点を意識しないと相電圧=線間電圧だと混同しやすい。

    見破り方相電圧は「各巻線(各相)の両端の電圧」であり、Y結線では中性点との間の電圧を指す。線間電圧は文字通り「線と線の間」の電圧。図の中で中性点の有無を確認してから、どちらの電圧を聞かれているかを判断する。

  3. 三相電力の公式P=√3×V×I×cosθに、線間量ではなく相電圧・相電流を代入してしまう

    なぜ引っかかる三相電力の公式には√3がつくことだけを覚えていて、「線間電圧×線電流」が前提条件であることを忘れると、手元にある相電圧・相電流をそのまま代入してしまう。

    見破り方公式に代入する前に、使おうとしている電圧・電流が「線間(線)」の値か「相」の値かを必ず確認する。相の値しかない場合は、Y・Δの関係式で先に線間量に変換してから代入する。

  4. 二電力計法で電力計が逆振れした場合、その指示値をそのままプラスとして足してしまう

    なぜ引っかかる『2台の指示値を足せば三相電力になる』という基本形だけを覚えていると、逆振れが起きた場合に必要な『符号を反転させる』という一手間を忘れやすい。

    見破り方逆振れが起きた=その電力計の分担分がマイナスの値になっているサインだと捉え直す。極性を反転させて読み取った指示値(正の値)は、最終的な合計計算では引き算(P=W1-|W2|)として扱う、と『逆振れの有無』で計算方法を切り替える判断を先に済ませる。

参考文献・出典

理解度チェック(15問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、15問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用8問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 15 問正解

覚えておきたいポイント

  1. Y結線(スター結線):線間電圧=相電圧×√3、線電流=相電流(そのまま)
  2. Δ結線(三角結線):線間電圧=相電圧(そのまま)、線電流=相電流×√3
  3. √3(≒1.732)がつくのはY結線なら「電圧」、Δ結線なら「電流」——覚え方は「Yは電圧、Δは電流」
  4. 三相電力はP=√3×V(線間)×I(線)×cosθ。結線方式によらず、線間電圧と線電流を使えば同じ式で計算できる
  5. 二電力計法:中性線のない3線式の三相回路は、単相電力計2台だけで全消費電力を測定できる。2台の指示値の和が三相電力に等しい(P=W1+W2)。力率が0.5未満になると片方の電力計が逆振れするため、その電力計だけ極性を反転させて読み取り、その値をマイナスとして扱う(P=W1-|W2|。|W2|は極性を反転して読んだ正の指示値で、W2を符号付きの値(負)とすればP=W1+W2のまま)
  6. Y-Δ始動:同じ線間電圧で、Y結線の線電流はΔ結線の1/3(I_Y/I_Δ=1/3)。巻線電圧が1/√3になって相電流が1/√3に、さらにΔでは線電流が相電流の√3倍になるのにYでは等しいため、1/√3×1/√3=1/3
  7. Δ負荷と等価なY負荷は、各相のインピーダンスを1/3にしたもの(Z_Y=Z_Δ/3)。これは電源から見た線電流を変えない『等価変換』。同じ部品をΔからYへつなぎ替える『組替え』は別の操作で、同じ線間電圧のもとで線電流も消費電力も1/3になる
  8. 三相の力率改善では、Δ接続したコンデンサ(1相あたりC)の無効電力はQc=3ωCV²(Vは線間電圧)。同じ無効電力をY接続で出すには、1相あたりの容量がΔの3倍(C_Y=3C_Δ)必要になる
  9. 平衡負荷の二電力計法では、無効電力Q=√3(W1−W2)、力率の位相角はtanφ=√3(W1−W2)/(W1+W2)(遅れ負荷でW1が大きい方)。逆振れしたW2は極性を反転して読んだ値にマイナスを付け、符号付きの値として代入する
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