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理論 ・ 11 / 16

三相交流とY-Δ

読み終えると、こうなる

三相動力盤の結線図を見たとき、Y結線かΔ結線かを見分けて、線間電圧・線電流と相電圧・相電流の関係をその場で計算できるようになる

  • Y結線・Δ結線それぞれで、線間電圧と相電圧、線電流と相電流の関係(どちらに√3がつくか)を使い分けて計算できる
  • 三相電力の公式P=√3×V(線間)×I(線)×cosθを使って、結線方式によらず三相負荷の消費電力を求められる
  • 三相誘導電動機のY-Δ始動が、なぜ始動電流を抑える効果を持つのかを結線の違いから説明できる
  • 二電力計法で三相電力を測定する原理を理解し、電力計の指針が逆振れした場合でも正しく全消費電力を計算できる
考えてみよう

三相200Vの動力回路で、電圧計を線と線の間(線間)に当てると200Vぴったり出る。だが机の上で「1相あたりの電圧×3相分」と単純計算すると、話が合わない。どこにも間違った数字を使っていないのに、なぜ√3(ルート3)という中途半端な係数が割り込んでくるのか。

このトピックを読み終えるころには、三相動力盤の結線図を見て、それがY結線かΔ結線かを判別し、線間電圧・線電流と相電圧・相電流の関係をその場で計算できるようになっている。

種明かしは、三相交流の3つの電圧(電流)が、120°ずつ位相がずれた状態で「同時に」流れている、という点にある。単純に3倍にならないのは、位相がずれたベクトルを合成しているからだ。

Y結線(スター結線)——電圧に√3がつく

Y結線は、3つの巻線(相)の一端をすべて1点(中性点)に集めた結線方式だ。相電圧 VpV_p は、各巻線の両端——つまり線と中性点の間——の電圧を指す。線間電圧 VlV_l は、120°位相がずれた2つの相電圧をベクトルで合成した値になる。

Vl=3Vp,Il=IpV_l = \sqrt{3}\,V_p, \qquad I_l = I_p

線と巻線が1本ずつそのままつながっているため、線電流と相電流は等しい。

例題

Y結線で、相電圧が200Vのとき、線間電圧を求めよ。

Vl=3×2001.732×200=346VV_l = \sqrt{3}\times200 \approx 1.732\times200 = 346\text{V}

Δ結線(三角結線)——電流に√3がつく

Δ結線は、3つの巻線を輪(三角形)につないだ結線方式で、中性点を持たない。各巻線はそのまま線と線の間に接続されるため、相電圧と線間電圧は等しい。線電流 IlI_l は、120°位相がずれた2つの相電流をベクトルで合成した値になる。

Vl=Vp,Il=3IpV_l = V_p, \qquad I_l = \sqrt{3}\,I_p

例題

Δ結線で、線電流が10Aのとき、相電流(各巻線を流れる電流)を求めよ。

Ip=Il3=101.7325.8AI_p = \frac{I_l}{\sqrt{3}} = \frac{10}{1.732} \approx 5.8\text{A}
「Yは電圧、Δは電流」に√3がつく、と型で覚えるのが最短だが、忘れたときは結線の形から思い出せる。Y結線には中性点があり、3本の相電圧を線として合成するから電圧側に√3がつく。Δ結線には中性点がなく、3つの相電流が接続点で合成されて線電流になるから電流側に√3がつく。図の形(Yは電圧が線として出てくる形、Δは電流がループで分かれる形)とセットで覚えておくと、試験本番でどちらか迷ったときの検算になる。

三相電力の公式——結線方式によらず同じ式で計算できる

三相の消費電力は、線間電圧と線電流を使えば、結線方式によらず同じ式で求められる。

P=3VlIlcosθP = \sqrt{3}\,V_l I_l \cos\theta

なぜY結線でもΔ結線でも同じ式になるのか。1相あたりの電力を3相分足し合わせて確認してみる。

Y結線:P=3VpIpcosθ=3×Vl3×Il×cosθ=3VlIlcosθP = 3 V_p I_p \cos\theta = 3\times\dfrac{V_l}{\sqrt{3}}\times I_l \times\cos\theta = \sqrt{3}V_l I_l\cos\theta

Δ結線:P=3VpIpcosθ=3×Vl×Il3×cosθ=3VlIlcosθP = 3 V_p I_p \cos\theta = 3\times V_l\times\dfrac{I_l}{\sqrt{3}}\times\cos\theta = \sqrt{3}V_l I_l\cos\theta

Y結線は電圧側の√3が、Δ結線は電流側の√3が、それぞれ式の中で同じように効いてきて、最終的にどちらも同じ3VlIlcosθ\sqrt{3}V_lI_l\cos\thetaという形に落ち着く。結線方式を意識せず、線間電圧と線電流さえ分かれば三相電力を計算できるのはこのためだ。

二電力計法——単相電力計2台だけで、三相電力を測る

三相電力を測るには専用の三相電力計を使うのが確実だが、中性線を持たない3線式の三相回路 なら、単相の電力計を2台だけ使う二電力計法でも全消費電力を測定できる。

2台の電力計 W1W_1W2W_2 を回路に正しく接続すると、それぞれが三相電力の一部を分担して 指示する。三相全体の消費電力 PP は、この2台の指示値の和に等しい。

P=W1+W2P = W_1 + W_2

ただし、負荷の力率が0.5(位相差60°)を下回るような場合、片方の電力計の指針が 逆振れ(マイナス方向に振り切れて指示できない状態)を起こすことがある。この場合は、 逆振れした電力計だけ電圧端子(または電流端子)の極性を反転させて指示値を読み取り、 その値はマイナスの指示として扱う。

P=W1W2(W2が逆振れし、極性反転後の値を使う場合)P = W_1 - W_2 \quad (W_2\text{が逆振れし、極性反転後の値を使う場合)}

例題

二電力計法で測定したところ、2台の電力計がともに正常に振れ、W1=800WW_1=800\text{W}W2=200WW_2=200\text{W} を示した。三相回路の全消費電力を求めよ。

P=W1+W2=800+200=1000WP = W_1 + W_2 = 800+200 = 1000\text{W}

別の例では、電力計 W2W_2 の指針が逆振れしたため、電圧端子の極性を反転して測定し直したところ 150W150\text{W} を示した。もう一方の W1W_1600W600\text{W} だった場合、全消費電力を求めよ。

P=W1W2=600150=450WP = W_1 - W_2 = 600-150 = 450\text{W}
二電力計法で一番の落とし穴は、逆振れした電力計の指示値を、そのまま普通にプラスとして 足してしまうことだ。逆振れは「その電力計の分担分がマイナスの値になっている」ことを 示すサインであり、極性を反転させて読み取った指示値は、最終的な合計計算では**引き算** として扱わなければならない。2台とも正常に振れていれば単純な足し算($W_1+W_2$)で よい、と「逆振れの有無」で計算方法を切り替える判断が必要になる。

実務との接点——Y-Δ始動と変圧器の結線

三相誘導電動機の始動方式の1つに、Y-Δ始動がある。始動の瞬間だけ巻線をY結線にして相電圧を下げ、始動電流を抑えてから、運転時にΔ結線へ切り替えて全電圧で運転する方式だ。同じ電源電圧でも、Y結線にすれば各巻線にかかる電圧が1/√3に下がり、それに応じて始動電流も抑えられる——ここまで読んだ今なら、なぜY結線に切り替えるだけで電流を抑えられるのか、式で説明できるはずだ。

また、三相変圧器では一次側・二次側の結線をY結線・Δ結線の組み合わせで選ぶ(Y-Δ、Δ-Yなど)。結線の組み合わせによって一次・二次間の位相の変位や、中性点接地の可否が変わってくるため、系統設計や機器選定の場面でも、Y結線とΔ結線の違いを正しく理解しておくことが欠かせない。

冒頭の「線間電圧200V」の謎——答え合わせは、理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. Y結線とΔ結線で、√3がつく対象(電圧か電流か)を逆にしてしまう

    なぜ引っかかる√3という係数がどちらかの結線に必ず出てくることは覚えていても、「電圧につくのがどちらか」を丸暗記しているだけだと、試験本番で不安になって逆に答えてしまいやすい。

    見破り方Y結線は中性点を介して3つの相電圧をベクトル合成して線間電圧を作る(電圧側に√3)、Δ結線は中性点がなく3つの相電流がループの接続点でベクトル合成されて線電流を作る(電流側に√3)、と結線の形そのものから毎回導き直す。

  2. 「相電圧」を「線と線の間の電圧」だと誤解する(あるいはその逆)

    なぜ引っかかる日常語感では「相」と言われても2本の線の間をイメージしやすく、Y結線の中性点を意識しないと相電圧=線間電圧だと混同しやすい。

    見破り方相電圧は「各巻線(各相)の両端の電圧」であり、Y結線では中性点との間の電圧を指す。線間電圧は文字通り「線と線の間」の電圧。図の中で中性点の有無を確認してから、どちらの電圧を聞かれているかを判断する。

  3. 三相電力の公式P=√3×V×I×cosθに、線間量ではなく相電圧・相電流を代入してしまう

    なぜ引っかかる三相電力の公式には√3がつくことだけを覚えていて、「線間電圧×線電流」が前提条件であることを忘れると、手元にある相電圧・相電流をそのまま代入してしまう。

    見破り方公式に代入する前に、使おうとしている電圧・電流が「線間(線)」の値か「相」の値かを必ず確認する。相の値しかない場合は、Y・Δの関係式で先に線間量に変換してから代入する。

  4. 二電力計法で電力計が逆振れした場合、その指示値をそのままプラスとして足してしまう

    なぜ引っかかる『2台の指示値を足せば三相電力になる』という基本形だけを覚えていると、逆振れが起きた場合に必要な『符号を反転させる』という一手間を忘れやすい。

    見破り方逆振れが起きた=その電力計の分担分がマイナスの値になっているサインだと捉え直す。極性を反転させて読み取った指示値は、最終的な合計計算では引き算(P=W1-W2)として扱う、と『逆振れの有無』で計算方法を切り替える判断を先に済ませる。

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. Y結線(スター結線):線間電圧=相電圧×√3、線電流=相電流(そのまま)
  2. Δ結線(三角結線):線間電圧=相電圧(そのまま)、線電流=相電流×√3
  3. √3(≒1.732)がつくのはY結線なら「電圧」、Δ結線なら「電流」——覚え方は「Yは電圧、Δは電流」
  4. 三相電力はP=√3×V(線間)×I(線)×cosθ。結線方式によらず、線間電圧と線電流を使えば同じ式で計算できる
  5. 二電力計法:中性線のない3線式の三相回路は、単相電力計2台だけで全消費電力を測定できる。2台の指示値の和が三相電力に等しい(P=W1+W2)。力率が0.5未満になると片方の電力計が逆振れするため、その電力計だけ極性を反転させて読み取り、その値をマイナスとして扱う(P=W1-W2)
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