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理論 ・ 3 / 16

テブナンの定理

読み終えると、こうなる

複雑な回路網を見たとき、知りたい枝が1本だけなら、そこだけを切り離して単純な等価回路に置き換えるという発想が最初に浮かぶようになる

  • 回路網の中の1本の枝を外し、そこから見た開放電圧(テブナン電圧E0)と、電源を無力化した状態の合成抵抗(テブナン抵抗R0)を求められる
  • テブナンの等価回路(電源1個+抵抗1個の直列)に置き換えて、外した枝に流れる電流を計算できる
  • 同じ回路網で負荷(抵抗)の値だけを変えて何度も電流を求める必要がある場面で、キルヒホッフより効率的な解き方を選べる
  • 負荷抵抗を内部抵抗(テブナン抵抗)と等しくしたときに、負荷が受け取る電力が最大になるという最大電力供給の条件を導き、そのときの消費電力を計算できる
考えてみよう

制御盤の設計で、ある信号線につなぐ終端抵抗の値を、10Ω・22Ω・47Ωの3パターンで比較検討したいとする。 信号源側は電源と抵抗が複雑に組み合わさった回路網で、終端抵抗をつなぐ2つの端子だけが決まっている。

このとき、抵抗値を変えるたびに回路全体をキルヒホッフの連立方程式で解き直すのは、 あまりに非効率だ。もっと賢い方法はないのか。

このトピックを読み終えるころには、複雑な回路網を「見たい枝」から眺めたときに、 それを1個の電池と1個の抵抗にまで単純化してしまう発想が身についている。

種明かしは、回路網は、注目する2端子から見れば必ず1個の電池(起電力E0+内部抵抗R0) と等価になるというテブナンの定理にある。

テブナンの定理とは何か

どんなに複雑な回路網でも、その中の特定の2端子(今回なら終端抵抗をつなぐ端子)から見た 「外側の世界」は、次の1個の等価回路に置き換えられる。

回路網    E0(起電力)+R0(内部抵抗)の直列\text{回路網} \;\Longrightarrow\; E_0 \text{(起電力)} + R_0 \text{(内部抵抗)の直列}

負荷(今回の終端抵抗)を差し替えても、置き換わった後のE0とR0は変わらない。 これがテブナンの定理の核心で、負荷側の条件だけをいろいろ変えて検討したい場面で威力を発揮する。

テブナン電圧E0の求め方 — 負荷を外して「開放」する

まず、注目する枝(負荷)を回路から取り外し、その2端子を何もつながない「開放」状態にする。 このとき2端子間に現れる電圧が、テブナン電圧 E0E_0 だ。

負荷を外しているので、その枝には電流が流れない。回路網の中の電源と抵抗だけで、 残りの部分にどのような電圧が生じているかを、分圧の法則やキルヒホッフの法則を使って求める。

例題

電源12V、抵抗R1=4Ω・R2=8Ωが直列に接続された回路がある。R2の両端を負荷の接続点とみなし、 そこを開放したときの電圧(テブナン電圧)を求める。

負荷を外しているのでR2には電流が流れず、電圧降下も生じない——というのは誤りで、 この場合R2は回路の一部(電源からの電流経路)としてそのまま残っている点に注意する。 負荷を外すのは「R2の先につながる別の抵抗(負荷)」であり、R2自体は残ったままだ。 このとき回路にはR1とR2の直列に電流が流れ続けており、R2の両端電圧がそのままE0になる。

E0=12×84+8=12×23=8VE_0 = 12 \times \frac{8}{4+8} = 12 \times \frac{2}{3} = 8\text{V}
「負荷を外して開放する」の対象は、あくまで検討したい負荷(この例では別途接続する終端抵抗) であって、回路網を構成する抵抗そのものではない。どこまでが「回路網(等価回路に変換する側)」 で、どこからが「負荷(差し替えて検討する側)」かを最初に線引きしてから式を立てる。

テブナン抵抗R0の求め方 — 電源を「無力化」して2端子から見る

次に、テブナン抵抗 R0R_0 を求める。ここでの操作は「電源を無力化する」ことだ。

  • 起電力源(電圧源)は、内部抵抗0の理想的な電池とみなし、両端子を導線でつないで短絡する
  • (電流源が含まれる場合は、逆に両端子を切り離して開放する。ただしこのトピックでは起電力源のみを扱う)

電源を無力化した状態で、負荷を外した2端子から回路網を見たときの合成抵抗が R0R_0 になる。

例題

先ほどの回路(電源12V、R1=4Ω・R2=8Ωの直列)で、電源を短絡した状態を考える。 電源を短絡すると、電源があった位置は単なる導線になる。この状態でR2の両端から回路網を見ると、 R1とR2は並列の関係になる。

R0=R1×R2R1+R2=4×84+8=32122.67ΩR_0 = \frac{R_1 \times R_2}{R_1+R_2} = \frac{4 \times 8}{4+8} = \frac{32}{12} \approx 2.67\Omega
電源を短絡すると、それまで直列に見えていた抵抗どうしが、実は並列の関係に変わることがある。 これは「電源を取り除いて回路の形が変わる」のではなく、「電源があった場所が単なる導線になった ことで、抵抗どうしのつながり方の見え方が変わる」だけだ。合成抵抗を求める前に、電源を短絡した後の 回路図を実際に描き直すと、直列・並列の関係を見誤りにくい。

等価回路を組み立てて、負荷の電流を求める

E0E_0R0R_0 が求まったら、あとは単純だ。負荷抵抗 RR をつなぎ直し、E0E_0R0R_0RR の 直列回路として電流を求める。

I=E0R0+RI = \frac{E_0}{R_0+R}

先ほどの例で、負荷抵抗として R=8ΩR=8\Omega の終端抵抗を接続すると、

I=82.67+80.75AI = \frac{8}{2.67+8} \approx 0.75\text{A}

負荷を10Ω、22Ω、47Ωと差し替えて比較したい場合も、この式の RR に代入するだけでよい。 回路網(E0E_0R0R_0)を求め直す必要は一切ない。

負荷抵抗Rをどう選べば、負荷が受け取る電力は最大になるか

テブナン等価回路(E0E_0R0R_0の直列)に負荷RRをつないだとき、負荷RRで消費される 電力PRP_Rは、RRの値によって変化する。

PR=I2R=(E0R0+R)2RP_R = I^2 R = \left(\frac{E_0}{R_0+R}\right)^2 R

RRを0に近づけると電流は増えるが、P=I2RP=I^2RRRそのものが0に近づくため電力は小さくなる。 逆にRRを大きくすると、今度は電流が下がりすぎて電力は小さくなる。この間のどこかに、 PRP_Rが最大になるRRの値が存在する。実際に微分して求めると、R=R0R=R_0のときにPRP_Rが 最大になることが分かる(結果だけ覚えておけば実務でも十分使える)。

このときの最大電力は、次の式で求まる。

Pmax=E024R0P_{max} = \frac{E_0^2}{4R_0}

例題

E0=12E_0=12V、R0=4ΩR_0=4\Omegaのテブナン等価回路がある。負荷RRを変化させたとき、負荷が 受け取る電力が最大になるRRの値と、そのときの電力を求める。

R=R0=4Ω,Pmax=1224×4=14416=9WR = R_0 = 4\Omega, \qquad P_{max} = \frac{12^2}{4\times4} = \frac{144}{16} = 9\text{W}
「最大電力供給の定理」という名前は仰々しいが、実質は「テブナン等価回路に、テブナン抵抗と 同じ値の負荷をつなぐと、負荷が受け取る電力が最大になる」という1点だけを覚えればよい。 負荷を大きくしても小さくしても電力はむしろ下がる、という一見直感に反する結果になる点が、 この単元が試験でも狙われやすい理由だ。

なぜ制御盤の設計・検討でテブナンの定理が使われるのか

制御盤や配電回路の設計・保守の現場では、「この信号源に、負荷側の抵抗値を変えたらどうなるか」 「終端抵抗の候補を何パターンか比較したい」という検討が頻繁に発生する。信号源側の回路が 複雑であるほど、毎回キルヒホッフの連立方程式を立て直すのは非効率だ。

テブナンの定理を使えば、信号源側を1回だけ等価回路(E0E_0R0R_0)に変換してしまえば、 負荷側の条件をいくら変えても I=E0/(R0+R)I = E_0/(R_0+R) の一本道の式で済む。実務で「まず負荷側を 外して電圧を測る」「電源を無力化した状態の抵抗を測る」という発想が使われるのは、 この定理の考え方そのものだ。

冒頭の終端抵抗の比較検討、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. テブナン抵抗R0を求めるとき、電源を『取り除く』のではなく『短絡する』ことを忘れる

    なぜ引っかかる電源を無力化する操作を、電源そのものを配線ごと取り除くと勘違いしやすい。起電力源(電圧源)は内部抵抗0とみなして短絡(導線でつなぐ)するのが正しい操作で、配線を切ってしまうと合成抵抗の経路そのものが失われる。

    見破り方『電源を無力化する』は、起電力源なら両端子を導線で結ぶ(0Vの電池に置き換える)ことだと覚える。配線が切れていないか、短絡後の回路図を実際に描いて確認する。

  2. テブナン電圧E0を、負荷を接続したままの状態の電圧だと誤解する

    なぜ引っかかるE0は『負荷を外して開放した』ときの電圧であり、負荷を接続した状態での電圧(分圧された後の電圧)とは異なる。回路の途中経過をそのままE0だと思い込むと、開放という条件を見落とす。

    見破り方E0を求める式を立てる前に『注目する枝を回路から外し、そこには何も電流が流れない状態』を明確にイメージする。外した枝に電流が流れていないなら、その電流経路上の抵抗には電圧降下が生じない点も手がかりになる。

  3. テブナン等価回路を作った後、外した抵抗Rを内部抵抗R0に足すのではなく、間違って並列に扱ってしまう

    なぜ引っかかるテブナンの等価回路は『E0とR0の直列』に、外した抵抗Rを直列につなぎ直した単純な回路になる。並列合成の公式に慣れていると、うっかり並列で計算してしまう。

    見破り方テブナン等価回路は必ず『電池1個+抵抗2個(R0とR)の直列ループ』という形になることを図でイメージしてから式を立てる。電流は I = E0/(R0+R) の一本道の式で求まる。

  4. 負荷抵抗を小さくすればするほど、負荷が受け取る電力も増え続けると誤解する

    なぜ引っかかる電力はP=I²Rで、Rを小さくすると電流Iは増えるが、Rそのものが小さくなる効果も同時に働く。電流が増える効果とRが小さくなる効果がせめぎ合い、実際にはR=R0のところで電力が最大になり、そこからさらにRを小さくすると電力はむしろ減っていく。『電流が大きいほど電力も大きい』という一面的な直感だけで判断すると、この折り返し点を見落とす。

    見破り方負荷抵抗を0(短絡)にしたときの電力を検算してみる。P=I²RでR=0を代入すれば必ずP=0になり、『Rを小さくするほど電力が増え続ける』という直感が誤りだとその場で確認できる。最大点はR=R0の1点だけであり、そこから離れるほど(大きくても小さくても)電力は下がる、という山型のグラフをイメージするとよい。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. テブナンの定理:どんなに複雑な回路網も、注目する2端子から見れば「起電力E0(開放電圧)+内部抵抗R0の直列」という1個の電池に置き換えられる
  2. E0(テブナン電圧)は、注目する枝を外して回路を開放(未接続)にしたときの、その2端子間の電圧
  3. R0(テブナン抵抗)は、回路内のすべての電源を無力化(起電力源は短絡、電流源は開放)した状態で、2端子から見た合成抵抗
  4. 等価回路ができたら、外した枝の抵抗Rをつなぎ直し、I = E0/(R0+R) という単純な直列回路の式で電流が求まる
  5. 負荷抵抗の値だけを変えて何度も計算し直す場面(可変抵抗・複数の負荷パターンの比較)で真価を発揮する
  6. 負荷抵抗Rを、テブナン抵抗R0と等しい値にしたとき、負荷が受け取る電力は最大になる(最大電力供給の定理)。このときの最大電力はP_max = E0²/(4R0)
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