現場を歩くと、電気機器はどれも「電気を機械的な仕事や別の電気に変える箱」に見えて、違いが分かりにくい。しかし変電室に据え付けられた変圧器の中には、絶縁油を満たしたものと、樹脂で固めただけのものがある。モーターの始動盤には、運転中の何倍もの電流に耐える大きなブレーカーが選ばれている。非常用発電機の銘板には「1500min⁻¹」のような回転数が刻まれている。
なぜ変圧器には燃えやすいものと燃えにくいものがあるのか。なぜモーターは動き出す瞬間だけ電流計の針が大きく跳ねるのか。そして、発電機の銘板に書かれた回転数は、何によって決まっているのか。
このトピックを読み終えるころには、据え付けられた変圧器・誘導電動機・同期発電機を見て、それぞれが何の原理で動いているか、現場でどんな注意が必要かをその場で説明できるようになっている。
施工管理技士がこの3つの機器に求められるのは、電験三種のような詳細な等価回路計算ではない。据え付け・検収・保守の判断に必要な「構造と特性」のレベルで、それぞれの機器が何によって動き、何に気をつけるべきかを押さえることだ。
変圧器 — 鉄心と巻線で電圧を変える
変圧器は、共通の鉄心に1次側コイルと2次側コイルを巻き付けた構造をしている。1次側コイルに交流電圧を加えると交流電流が流れて磁束が発生し、その磁束が鉄心の中を通って2次側コイルを貫くことで、2次側に電圧が誘導される。この電磁誘導の原理そのものは、機械的に動く部分を持たない変圧器の最大の特徴でもある。
鉄心には、短冊状の電磁鋼板を薄く積み重ねた積層鉄心が使われる。1枚の厚い鉄の塊ではなく薄い板を積層するのは、鉄心内部に発生する「うず電流」の経路を細かく分断し、うず電流損を抑えるためだ。
変圧器の損失と効率 — 鉄損と銅損の綱引き
変圧器の損失は、大きく2種類に分かれる。
- 無負荷損(鉄損):負荷の有無にかかわらず、電圧をかけている限り鉄心に発生する損失。ヒステリシス損とうず電流損が主体で、周波数が一定であれば1次電圧の2乗に比例する。つまり負荷が軽くても重くても、電圧が変わらなければほぼ一定の大きさで発生し続ける。
- 負荷損(銅損):巻線に負荷電流が流れることで発生する抵抗損。負荷電流の2乗に比例するため、負荷が大きくなるほど急激に増える。
この2種類の損失は負荷に対する増え方が違うため、効率が最も高くなる負荷点が存在する。鉄損と銅損が等しくなる負荷のときに、変圧器の効率は最大になる。軽負荷では銅損が小さく鉄損の割合が相対的に大きくなり、逆に過負荷に近づくほど銅損が急増して効率が下がっていく。
油入変圧器とモールド変圧器 — 現場での使い分け
変圧器は絶縁・冷却の方式によって、大きく2種類に分かれる。
油入変圧器は、内部に絶縁油を満たして絶縁と冷却を行う。自冷却方式で屋外の高温環境にも強く、過負荷耐量が高いことに加えて騒音・振動も比較的小さい。一方で絶縁油は可燃性のため火災リスクがあり、大容量機では消火設備が必要になることがある。重量・寸法も大きくなりやすく、絶縁油の劣化診断など保守の手間もかかる。
モールド変圧器は、巻線を自己消火性のエポキシ樹脂でモールド(含浸・固化)したもので、絶縁油を使わない。万一の事故でアークが発生しても発火しにくく、地下街やビル内など不燃化が求められる屋内設置に向いている。耐湿性・耐じん性にも優れ、長期間の休止後でも簡単な点検で運転を再開しやすい。寸法・重量が小さく搬入しやすい一方、機器単体のコストは油入より割高になりやすく、コイルが露出しているぶん屋外設置や感電対策には向かない。
変圧器の並行運転 — 条件を満たさないと負荷が偏る
工場やビルの受電容量を増やすとき、変圧器を1台丸ごと大きなものに交換せず、既設の変圧器にもう1台を追加して並行運転させることがある。ただし、どんな変圧器どうしでも自由に並行運転できるわけではなく、次のような条件を満たす必要がある。
- 1次側・2次側の定格電圧が等しく、巻数比が一致していること
- 極性(結線の向き)が一致していること
- 各変圧器の%インピーダンス(基準容量をそろえたときの値)が等しいこと、または近いこと
この条件がそろっていれば、2台以上の変圧器を1つの負荷に対して並行に接続し、負荷を分担させられる。
負荷分担の計算 — 均等に半分ずつではない
並行運転させた変圧器どうしの負荷分担は、直感的には「2台あるから半分ずつ」と思いがちだが、実際には%インピーダンスに反比例して分担される。%インピーダンスが等しい条件であれば、負荷は各変圧器の定格容量の比のとおりに分かれる。
例題
定格容量が100kV・Aと300kV・Aの変圧器を並行運転し、200kV・Aの負荷に供給する。2台とも並行運転の条件(%インピーダンスが等しいこと等)を満たしているとき、それぞれの負荷分担を求める。
容量比は100:300=1:3なので、200kV・Aを1:3で分ければ、100kV・A変圧器が50kV・A、300kV・A変圧器が150kV・Aを受け持つ。
変圧器の騒音 — 通電騒音と励磁騒音
変電所やキュービクル内の変圧器からは、常に「ブーン」という低い音が聞こえる。この騒音の発生源は、大きく2つに分けられる。
- 通電騒音:負荷電流が流れることで、巻線間(または巻線とほかの導体間)に働く電磁力によって生じる振動が音になったもの。負荷電流の大きさに依存する。
- 励磁騒音(磁歪音):鉄心が交流磁界で磁化されるとき、けい素鋼板がわずかに伸び縮みする「磁気ひずみ(磁歪)」によって生じる振動が音になったもの。変圧器騒音の主要な発生源とされ、鉄心の磁束密度に依存する。
励磁騒音を抑える対策としては、磁気ひずみの小さい高配向性けい素鋼板を鉄心に使うことや、鉄心の磁束密度を低くすることが有効だ。逆に、磁束密度を高くすると鉄心を小型化できる一方で、励磁騒音はかえって大きくなってしまう。「小型化」と「低騒音化」がトレードオフの関係にある点は、変圧器の効率(鉄損=銅損で最大)の話と同じく、一つの数値を動かすと別の特性が犠牲になる典型例といえる。
Δ結線の第3調波電流 — なぜY-Y結線と結果が変わるか
単相変圧器3台をΔ結線(Δ-Δ結線)して三相変圧器として使う構成は、V結線と同じく現場でよく見かける。Δ結線には、V結線にはないもう1つの利点がある。励磁電流に含まれる第3調波電流が、外部の送電線・通信線に流出しないという点だ。
変圧器の励磁電流には、鉄心の磁気飽和特性により第3調波(基本波の3倍の周波数を持つ成分)がわずかに含まれる。Δ結線は3つの巻線がそのまま1つの閉回路を構成しているため、この第3調波電流は閉回路の中をぐるぐる環流するだけで、外部の線路には現れない。
これに対し、閉回路を持たないY-Y結線(スター-スター結線)では、第3調波電流の逃げ場がないため電圧・電流のひずみとなって外部に現れやすく、近くの通信線に誘導障害を与える原因になることがある。実務でY-Y結線を使う必要がある場合は、三次巻線にΔ結線を追加したY-Y-Δ結線とすることで、この問題を回避するのが一般的だ。
誘導電動機 — すべりがなければ回らない
現場で最も多く使われているモーターが、三相誘導電動機だ。固定子(電機子巻線)に三相交流を流すと、回転する磁界(回転磁界)が発生する。回転子はこの回転磁界を横切ることで電流が誘導され、その誘導電流と磁束の相互作用でトルクが生まれて回転する。
回転子の構造には主に2種類がある。
- かご形:回転子の導体を両端で直接短絡した、単純で丈夫な構造。保守がほとんど不要で、現場で最も多く使われる。
- 巻線形:回転子巻線をY結線し、一方をスリップリングを通じて外部の調整抵抗に接続できる構造。始動特性を調整できるが、かご形より構造が複雑になる。
すべり — 回転磁界より少し遅れて回る
回転磁界の速度(同期速度)を、回転子の実際の回転速度をとすると、両者の差の割合を表すすべりは次の式で定義される。
誘導電動機がトルクを生むには、回転子が回転磁界よりわずかに遅れて回っている(すべりが生じている)ことが必須だ。回転子が回転磁界とまったく同じ速度(すべりゼロ)で回ってしまうと、回転子と磁界の間に相対速度がなくなり、回転子に電流が誘導されなくなってトルクも発生しなくなる。定格運転付近のすべりは数%程度であることが多いが、負荷や摩擦がある限り、完全にゼロになることはない。
同期速度は、周波数と極数から次の式で求まる。
例題
4極、周波数50Hzの三相誘導電動機の同期速度を求める。
この電動機が負荷をかけた状態で1440min⁻¹で回転していたとすると、すべりは次のようになる。
同期発電機 — 誘導電動機とは逆に、すべりなく回る
同期発電機は、回転子の界磁巻線に直流電流を流して磁界を作りながら回転させることで、固定子の電機子巻線に交流を誘導する発電機だ。構造上は、界磁を回転子側に置く回転界磁形が主流で、電機子を回転子側に置く回転電機子形は小容量機に限られる。回転界磁形は、大電流が流れる電機子巻線を固定子側に置けるため、外部への電力の取り出しが容易になるという実務上の利点がある。
同期発電機の回転速度にも、誘導電動機と同じ同期速度の式が使われる。
ただし誘導電動機と違うのは、同期発電機(および同期電動機)の回転子はすべりを持たず、常にこの同期速度そのもので回転する点だ。名前の通り、電源の周波数と「同期」して回るのが同期機であり、負荷に応じて回転磁界より遅れて回る誘導機とは、この点で挙動が異なる。
例題
6極、周波数60Hzの地域で運転する非常用発電機の同期速度を求める。
50Hz地域であれば同じ6極機でもになる。プレートに書かれた回転数を見たとき、それが極数と周波数だけで決まる値であり、負荷の大小には左右されないことを知っていれば、据え付け先の周波数(50Hz地域か60Hz地域か)を取り違えていないかの検算にも使える。
同期発電機の並行運転条件 — 変圧器とは違う5つの条件
非常用発電機を増設したり、複数台の発電機を1つの母線に接続して運転したりする場合にも、変圧器と同じく並行運転の条件を満たす必要がある。ただし、同期発電機の並行運転条件は、変圧器の並行運転条件(定格電圧・巻数比・極性・%インピーダンスの一致)とは中身が異なる、別物の条件だ。
同期発電機を並行運転させるには、次の5つが一致している必要がある。
- 起電力の大きさが等しいこと
- 起電力の周波数が等しいこと
- 起電力の位相が一致していること
- 起電力の波形(正弦波)が等しいこと
- 相回転方向が一致していること
これらの条件がそろっていないまま接続すると、2台の発電機の間に大きな循環電流(横流)が流れ、遮断器が動作したり発電機に衝撃を与えたりする恐れがある。
変圧器の電圧比・電流比 — 巻数比が決める2つの関係
変圧器の並行運転を扱う前に、そもそも1台の変圧器の中で1次側と2次側の電圧・電流がどう対応しているかを押さえておく。理想変圧器(損失を無視した変圧器)では、1次・2次の電圧比は巻数比に等しい。
ここで見落としやすいのが電流の比だ。理想変圧器では入力電力と出力電力が等しくなる()ため、電流比は電圧比(巻数比)の逆数になる。
つまり、電圧が高くなる側(巻数が多い側)は電流が小さくなり、電圧が低くなる側(巻数が少ない側)は電流が大きくなる。
例題 — 2次側の情報から1次側電圧を逆算する
理想変圧器の1次側に電流Aが流れているとき、2次側は電流A、抵抗Rでの消費電力kWだった。1次側電圧を求める。
まず2次側の抵抗値を消費電力の式から求める。
次に2次側電圧を求める。
理想変圧器では電流比が電圧比の逆数になるので、。よって、
二次電池 — 非常用電源として現場で使われる2つのタイプ
変圧器・誘導電動機・同期発電機が「電気を変換・利用する」機器であるのに対し、二次電池(蓄電池)は「電気を蓄えて必要なときに使う」機器だ。非常用照明・自動火災報知設備・UPS(無停電電源装置)など、施工管理者が現場で接する設備の多くに組み込まれている。代表的な2種類の特性を対比しておく。
据置鉛蓄電池は、非常用電源設備として古くから使われてきた蓄電池だ。放電すると電解液の濃度(比重)が下がり、この比重の変化が残容量の目安にもなる。近年主流の制御弁式鉛蓄電池は、充電時に発生するガスを内部の触媒栓で水に戻す仕組みを持つため、補水(電解液の水の補充)が不要という保守上の利点がある。温度特性としては、温度が高いほど内部の化学反応が活発になり、自己放電(使っていなくても自然に容量が減っていく現象)は大きくなる。逆に低温では自己放電は抑えられるが、出力できる容量自体は下がる傾向がある。
リチウムイオン二次電池は、鉛蓄電池等の他の二次電池と比べて小型・軽量化がしやすく、急速充電にも対応できるという長所を持つ。この長所が、スマートフォン・ノートPC・EV(電気自動車)など幅広い携帯・移動機器に採用されている理由になっている。一方で、内部圧力が上昇すると膨張・破裂・発火する危険性があり、鉛蓄電池以上に温度管理や過充電防止の保護回路が重要になる。繰り返し充放電できる回数(サイクル寿命)は比較的多く、この長寿命性もリチウムイオン電池が広く普及している理由の1つだ。
パワーコンディショナ(PCS) — 直流を交流に変え、系統を守る
太陽光発電設備や蓄電池を電力系統と接続する現場で必ず登場するのがパワーコンディショナ(PCS、パワコン)だ。太陽電池・蓄電池が生み出す電気は直流だが、家庭や工場の設備、電力系統は交流で動いているため、その間をつなぐPCSには大きく2つの基本機能がある。
- 直流交流変換(インバータ)機能:太陽電池・蓄電池から出力される直流電力を、系統・負荷側で使える交流電力に変換する。あわせて、太陽電池の発電量が日射や温度で刻々と変化しても常に最大の電力を取り出せるよう電圧・電流の動作点を自動調整する最大電力点追従制御(MPPT制御)も、多くのPCSに組み込まれている。
- 系統連系保護機能:電力系統側で停電や電圧・周波数の異常が発生した際に、PCSを系統から自動的に切り離す(解列する)機能。特に重要なのが単独運転検出で、系統が停電しているにもかかわらず、太陽光発電設備側だけで発電を続けて系統の一部に電気を送り続けてしまう状態(単独運転)を検出し、系統から切り離す。単独運転を放置すると、停電作業中の電力会社の作業員が、本来電気が流れていないはずの電線に感電する重大な事故につながりかねないため、系統連系する太陽光発電設備には必須の保護機能とされている。
単相誘導電動機の始動法 — 単相交流だけでは自力で始動できない
三相誘導電動機は、3本の巻線に三相交流を流すだけで自然に回転磁界が生まれ、そのまま始動できる。ところが単相誘導電動機は、単相交流を主巻線に流しただけでは、磁界の向きが単純に往復するだけで回転磁界が生じず、自力では始動できない。給水ポンプや換気扇など、家庭用・小型動力用の機器に単相誘導電動機が使われる場面は多く、始動のために補助的な仕組みを追加した、いくつかの始動方式が使い分けられている。
- 分相始動形:主巻線とは別に、位相を90°近くずらした補助巻線を設け、主巻線との位相差によって回転磁界に近い状態をつくって始動する。
- コンデンサ始動形:分相始動形と同様に補助巻線を使うが、その回路にコンデンサを直列に挿入することで位相差をより適切に調整する。分相始動形より小さな始動電流で大きな始動トルクを得られる。
- 反発始動形:反発形交流整流子電動機として始動し、回転数が上がったところで整流子短絡装置により整流子を短絡して、誘導電動機として運転を続ける。
- くま取りコイル形:固定子の磁極の一部に「くま取りコイル(短絡環)」を設け、その部分の磁束にわずかな時間遅れを生じさせることで、疑似的な回転磁界をつくって始動する。構造が単純で保守が容易な反面、始動トルクは小さい。
三相誘導電動機の始動法 — 単相の始動法とは別の分類
三相誘導電動機は、単相機と違って3本の巻線に三相交流を流すだけで自然に回転磁界が生じるため、単相機のような補助巻線・コンデンサは不要だ。ただし小容量機を除けば、始動する瞬間に定格電流の5〜8倍程度という大きな始動電流が流れる点は変わらない。この始動電流をどう抑えるかによって、いくつかの始動法が使い分けられている。
- 全電圧始動法(直入れ):定格電圧をそのまま加えて始動する、最もシンプルな方式。始動電流が大きいため、小容量機や、系統側に余裕がある場合に使われる。
- スターデルタ(Y-Δ)始動法:始動の瞬間だけ巻線をY結線にして、1相あたりの電圧をΔ結線時の倍に下げる。この結果、始動電流・始動トルクとも全電圧始動の1/3に抑えられる。回転が上がったところでΔ結線に切り替えて運転を続ける。
- リアクトル始動法:電動機と直列にリアクトルを接続し、印加電圧を倍に下げて始動する。始動電流は倍、始動トルクは倍になる。リアクトルにタップを設けて、下げ幅を調整できる機種もある。
- 二次抵抗始動法:回転子巻線をスリップリング経由で外部抵抗に接続できる巻線形誘導電動機だけで使える方式。始動抵抗を調整することで、始動電流を抑えながら比較的大きな始動トルクを得られる。導体を短絡しただけのかご形にはこの方式は使えない。
例題
全電圧始動での始動電流が90Aの三相誘導電動機を、スターデルタ始動法で始動する場合の始動電流を求める。
直流発電機 — 自励式と他励式、界磁電流はどこから来るか
同期発電機と並んで、非常用電源や特殊用途で使われるのが直流発電機だ。直流発電機を理解するポイントは、界磁巻線に流す界磁電流をどこから得るかにある。
- 他励式:界磁電流を、バッテリーなど外部の別電源から供給する方式。
- 自励式:発電機自身が発生させた起電力を使って界磁電流を作る方式。電機子巻線と界磁巻線の接続方法によって、さらに3種類に分かれる。
- 直巻発電機:電機子巻線と界磁巻線を直列に接続する。
- 分巻発電機:電機子巻線と界磁巻線を並列に接続する。
- 複巻発電機:直列・並列を組み合わせた接続。
直巻・分巻・複巻はいずれも自励式の仲間であり、他励式ではない。「界磁巻線が電機子と別回路に見える」という見た目から分巻発電機を他励式と誤解しやすいが、電源はあくまで発電機自身の端子電圧だと押さえておく。
残留電圧 — 界磁電流ゼロからでも電圧が立ち上がる理由
自励式の直流発電機は、界磁電流がまだゼロの起動直後でも、わずかながら電圧を発生させることができる。これは、磁極に残っている残留磁気による残留電圧があるためだ。この残留電圧が呼び水となってわずかな界磁電流を流し、それが磁束を増やしてさらに起電力を高める——という正のフィードバックによって、電圧が徐々に確立していく。
変圧器油に求められる特性 — 「粘度は低いほうがよい」という逆説
油入変圧器の絶縁・冷却を担う変圧器油(絶縁油)には、次の4つの特性が求められる。
- 絶縁耐力が大きいこと
- 冷却作用が大きいこと
- 粘度が低いこと
- 引火点が高いこと
このうち紛らわしいのが粘度の向きだ。潤滑油のイメージから「粘度は高いほうが良さそうだ」と直感的に考えてしまいやすいが、変圧器油の役割には巻線・鉄心で発生した熱を対流によって運び去る冷却も含まれる。粘度が高い(ドロドロしている)と油が循環しにくくなり、冷却効果がかえって下がってしまう。そのため変圧器油では、粘度は低いことが求められる特性になる。
電気加熱の方式 — 熱をどうやって生み出すかで名前が変わる
現場で目にする電気加熱設備には、熱を発生させる原理が異なる複数の方式がある。名前が似ていても発熱の仕組みはそれぞれ別物だ。
- 抵抗加熱:通電した際に発生するジュール熱を利用する。
- 誘導加熱:交番磁界の中に置いた導電性の被加熱物に、電磁誘導で発生する渦電流のジュール熱を利用する。
- 誘電加熱:電気絶縁物質である誘電体に高周波の交番電界を加え、物体内部に発生する誘電体損による発熱を利用する。
- アーク加熱:電極間または電極と被加熱物との間に生じるアーク放電の熱を利用する。非常に高温(数千K)を得られる。
- 赤外線加熱:赤外線電球などの発熱体からの放射熱(赤外放射)を被加熱物に吸収させて加熱する。
他励発電機の回転速度と起電力 — 界磁電流一定なら比例関係
直流機の誘導起電力は、磁束と回転速度の両方に比例する(、は機械の構造で決まる定数)。他励発電機は界磁電流を外部電源から供給するため、界磁電流を一定に保てば磁束も一定になり、起電力は回転速度だけに正比例して変化する。
非常用発電機の試運転で回転速度を変えながら電圧を確認する場面や、原動機側の回転数が変動したときに出力電圧がどう動くかを見当づける場面で使う関係式だ。
例題
回転速度1200min⁻¹のときの起電力が160Vの直流他励発電機を、界磁電流を一定に保ったまま回転速度900min⁻¹で運転したときの起電力を求める。
変圧器の並行運転 — 結線の組み合わせにも条件がある
これまでの並行運転条件(定格電圧・巻数比・極性・%インピーダンスの一致)は、同じ結線方式どうしを前提にした話だった。実際には、結線方式そのものの組み合わせにも並行運転できる・できないの区別がある。
三相変圧器の結線(Δ結線・Y結線)は、1次側と2次側の電圧の位相関係(角変位)を決める。Δ-Δ結線やY-Y結線は角変位0°、Δ-Y結線は角変位30°になる。並行運転できるのは、角変位が一致する結線どうしの組み合わせだけだ。
- 並行運転できる組み合わせ:Δ-Δ結線とΔ-Δ結線、Y-Y結線とY-Y結線、Δ-Δ結線とY-Y結線(いずれも角変位0°どうし)
- 並行運転できない組み合わせ:Δ-Δ結線とΔ-Y結線、Y-Y結線とΔ-Y結線(角変位が0°と30°でずれる)
角変位が異なる変圧器を無理に並行運転させると、2次側の電圧に位相差が生じ、その差分が大きな循環電流となって巻線を焼損させるおそれがある。
変圧器の冷却方式 — 油と空気、それぞれどう循環させるか
油入変圧器の冷却方式は、絶縁油と冷却器表面の空気それぞれを「自然対流に任せるか」「ポンプ・送風機で強制的に循環させるか」の組み合わせで、次の4種類に分かれる。
- 油入自冷式:絶縁油・空気ともに自然対流だけで冷却する、最も基本的な方式。構造が簡素で保守しやすい。
- 油入風冷式:油入自冷式に送風機を追加し、冷却器表面の空気だけを強制冷却する方式。
- 送油自冷式:送油ポンプで絶縁油を冷却器へ強制的に循環させる一方、空気側は自然対流に任せる方式。
- 送油風冷式:送油ポンプによる絶縁油の強制循環と、送風機による空気の強制冷却を組み合わせた方式。冷却能力が最も高く、大容量の変圧器で採用されやすい。
この資格を取ったあと、現場で何が変わるか
合格した次の現場では、キュービクルや動力盤の検収に、あなた自身が立ち会う側に回る。搬入されたモールド変圧器の銘板を見て「この容量なら鉄損と銅損のバランスはこの負荷率で合っているか」を電気工事士の説明を聞きながら自分で検算し、始動盤に取り付けられたブレーカーの容量を見て「この誘導電動機の始動電流に対して余裕があるか」をその場で判断する。今まで「言われた通りに施工する」側だった人が、「その施工が妥当かどうかを判断し、サインする」側に回る。
これは責任の重さがまるで違う。据え付けたモールド変圧器が実は地下街の防火要求に合っていなかった、非常用発電機のプレートの回転数を50Hz地域用と60Hz地域用で取り違えていた——こうした見落としは、検収印を押した施工管理者の判断ミスとして跡に残る。電気工事士が結線という「点」の正確さに責任を持つのに対し、施工管理者はその機器選定・据付計画という「線」全体の妥当性に責任を持つ立場になる。
電材商社との関係も変わる。「この容量の変圧器はありますか」という単純な発注ではなく、「この設置場所なら油入とモールドのどちらが適切か」「この負荷率で本当に効率が出るか」という、機器選定の理由まで問われる相手として見られるようになる。取引先の技術者から、単なる注文の受け手ではなく、選定根拠を一緒に詰められる相手として扱われるかどうかは、ここで説明した基礎知識をその場で使いこなせるかにかかっている。
冒頭の、燃えやすい変圧器と燃えにくい変圧器の違い、モーター始動時に電流計が跳ね上がる理由、発電機のプレートの回転数の意味——それぞれの答え合わせは、理解度チェックの問題でしてみよう。