たとえば、冬の朝、20℃に暖めた事務所で、外壁が2面接する部屋の隅と、窓ガラスのふちだけが濡れている。壁の真ん中は乾いたままだ。同じ空気に触れているのに、なぜ場所で違うのか。
もう一つ。室温20℃・相対湿度60%、外気0℃のとき、厚さ150mmのコンクリートの外壁の室内側の表面は何℃か。結露するか。外側に断熱材を30mm足すと、何℃になるか。
先に直感で決めておいてほしい。読み終えるころには、この温度を計算で出し、「どこが濡れやすいか」を理由つきで当てられるようになる。
まず一言で
結露は、面の温度が、その面に触れる空気の露点より低いときに起きる。壁の室内側の表面温度は、室温と外気温のあいだで、熱の通りにくさ(熱抵抗)の比で決まる。断熱を強めるほど室温に近づき、空気がよどむ所や断熱が途切れた所では下がる。壁の中では、冬は水蒸気も室内側から入り込み、冷えた所で水になる(内部結露)。結露を防ぐこと(防露)は、面を温かくする、水蒸気を減らす、水蒸気を冷たい所へ入れない、の3方向で考える。
結露が起きる場所 — 表面と内部
前のトピック「湿り空気と空気線図」は、窓ガラスの表面温度は何で決まるのか、という問いを残した。ここでは、建物のどこに「冷たい面」ができるかを追う。熊本県立大学の2024年の講義資料は、結露を起きる場所で2つに分ける。
- 表面結露:目に見える面に生じる。仕組みは「湿り空気と空気線図」と同じで、見えるので手を打ちやすい
- 内部結露:壁体や材料の内部の、見えないところに生じる。断熱性も落ち(水の熱伝導率は大きい)、断熱材の中の結露は特に注意が要る
仕組み① — 表面の温度は、何で決まるのか
なぜ、壁の表面は、外気温より高く、室温より低くなるのか。
壁をはさんで温度差があると、熱は室内から屋外へ流れる。時間がたって落ち着いた状態(定常)では、空気から壁の面へ、壁の中、壁の外の面から外気へと、どこでも同じ量の熱が流れる。同じ量を流すのに要る温度差は、通りにくい所ほど大きい。電気回路で、直列の抵抗に同じ電流が流れ、電圧の降下が抵抗に比例するのと同じ形だ(たとえ)。熱の伝わり方そのもの(伝導・対流・放射)は、「熱の移動」で扱う。
熱の通りにくさを、熱抵抗 (m²·K/W)で表す。建築研究所の住宅版算定方法(第三節)は、次のように扱う。
- 固体の層:熱抵抗=厚さ÷熱伝導率(式(5))
- 空気と壁の面のあいだにも通りにくさがあり、表面熱伝達抵抗という。外壁では、室内側が0.11、外気に直接接する外気側が0.04 m²·K/W
- 熱貫流率 (「熱の移動」の にあたる)は、表面熱伝達抵抗も含めて全部足した熱抵抗の逆数(式(4))。小さいほど熱が通りにくい。表面熱伝達抵抗は、総合熱伝達率 の逆数にあたる。試験では「熱通過率」と書かれることがある。空調の用語集(Weblio経由の二次資料)は熱貫流率を熱通過率ともいい、TECTAのガイドラインも表面2か所と固体内部を合成した値を熱通過率と呼ぶ(出典は「熱の移動」の出典欄)。同じ量として扱う(当サイトの読み。JIS・空衛学会の定義は確認できていない)
全体の温度差を熱抵抗の比で配ると、室内側の表面温度 が出る。
は室温、 は外気温、 は室内側の表面熱伝達抵抗、 は全体の熱抵抗()。北海道立林産試験場の技術相談(2004年)は、窓の表面温度を ( は窓の熱貫流率、 は室内側表面の熱伝達率)と書く。 なら同じ式だ(本文の形は、定常の熱の流れから筆者が導いた標準的な式で、出典資料にはない)。
例題1 室温20℃、外気0℃、コンクリート150mmの外壁(「熱の移動」の壁Aと同じ)の室内側の表面温度。
- 熱抵抗: m²·K/W(コンクリートの熱伝導率は1.6 W/(m·K))
- 表面温度: ℃、約11.0℃
- 室内の露点:水蒸気圧は hPa。「湿り空気と空気線図」の表5-1(気象庁)で14.02 hPa に当たるのは12℃、露点12.0℃
- 11.0℃ < 12.0℃ なので、結露する
例題2 外側に、押出法ポリスチレンフォーム保温板3種(熱伝導率0.028 W/(m·K))を30mm足す(「熱の移動」の壁Bとは別の断熱材)。
- 断熱材の熱抵抗は 、全体 ( W/(m²·K)。断熱なしは4.1)
- ℃ > 12.0℃ なので、結露しない
温度降下(20 K)の内訳は、断熱材の中で約16.3 K、コンクリートの中で約1.4 K、空気と面のあいだの2か所で合わせて約2.3 K。断熱材は、壁を冷たくするのではなく、温度の降下を自分の中で引き受ける。0.11などは、建築研究所が住宅の外皮の計算のために定めた値だ。例題1のコンクリート壁は住宅とは限らず、実際の値そのものとも限らない(当サイトの注意)。
やってみよう ①:窓は、外気が何℃で結露し始めるか
林産試の例の値(熱貫流率2.33 W/(m²·K)、室内側表面の熱伝達率8.7 W/(m²·K))で、室温20℃・相対湿度60%(露点12.0℃)とする。外気0℃なら、 ℃ > 12.0℃ で、結露しない。表面温度が12.0℃になる外気温は、 を解いて、 は約−10℃。これより低いと結露する。
窓の表面温度は全面で同じではない。同じ記事は、スペーサに熱を伝えやすい材料があると、ガラスの外周が他より低温になる例を示す。
これで、室温・外気温・熱貫流率・表面熱伝達抵抗から表面温度を計算し、露点と比べて、結露するかを決められる。
表面温度を下げるもの — 隅、よどみ、冷橋、低温の室
式 は、表面温度が下がる道筋を3つ教える。
① が局所的に大きい:熱が余計に逃げる所。 柱や梁には断熱材が入りにくく、熱が通りやすい弱点(冷橋)がしばしば生じる。表面が低温になれば、表面結露の危険が高まる(大澤、空衛2012)。隅(隅角部)も、熊本県立大学の2002年の資料が、冷橋とともに、表面温度が他の部位より低い所の例に挙げる。外壁が2面接する隅は、外気に冷やされる面が2つ集まる一方、室内側の面は小さい(当サイトの説明)。東京都の資料は、部屋の隅の原因に、熱橋(冷橋と同じ弱点と読める。当サイトの読み)の存在も挙げる。
② が大きい:空気が動かない所。 空気が動かないと、室内の空気から壁の面へ熱が渡りにくい(当サイトの説明)。東京都の資料は、部屋の隅は空気がよどみ、温度は低く、湿度は高くなりがちで、家具を置くと空気の流れがますます悪くなると書き、家具は後ろの壁と5cm以上あけるよう勧める。仮に が0.11から0.20になったとする(図1の破線の棒。仮定の値)。 が変わると も変わるので、全体の熱抵抗から計算し直す。例題1の壁は ( は4.1から3.0 W/(m²·K) へ)で、 ℃(11.0℃から下がる)。断熱材を足した壁は ( は0.76から0.71)で、17.2℃(18.3℃から下がる)。 が小さくなっても、 の割合が増えるので表面は冷える。
③ が低い:部屋の中でも温度の低い所。 日本建築学会の2015年の資料は、大学の教室の暖房時の測定例で、天井から温風が吹き出されるため、床と天井の間の温度差が10℃にも達したことを示す。水蒸気の量が部屋のどこでも同じだと仮定すると、温度の低い所ほど相対湿度が高い。たとえば、20℃・60%(水蒸気圧14.02 hPa)の空気が、天井付近24℃、床付近14℃になれば、相対湿度は 14.02÷29.83=47% と 14.02÷15.98=88%(仮の温度。表5-1)。また、暖房室の水蒸気は、つながった非暖房室の冷たい面で結露しうる(当サイトの説明)。熊本県立大学の2002年の資料は、暖房室につながる北側の非暖房室を、表面結露の生じやすい場所に挙げる。
仕組み② — 壁の中で何が起きるのか(内部結露)
水蒸気も、壁の中を移動する。材料の両側に水蒸気圧の差があると、高い方から低い方へ、材料の中を水蒸気が動く(透湿)。この移動のしにくさが透湿抵抗 で、水蒸気圧差 、面積 、透過した水蒸気量 から と測る(日本建築総合試験所)。層を重ねると、透湿抵抗は加わる(宮野の合板の例)。
なぜ、水蒸気圧は層ごとに下がるのか。定常なら、水蒸気の流量 はどの層でも同じだ。同じ流量を通すのに要る水蒸気圧の差は、通りにくい層ほど大きい。だから、層ごとの水蒸気圧の降下は、透湿抵抗に比例する。熱の場合と同じ形だ(標準的な導出で、出典資料にはなく、筆者が書いた)。
一方、場所ごとの温度は熱抵抗の比で決まり、屋外側ほど低い。その温度の飽和水蒸気圧が、その場所の水蒸気圧の上限だ。どの場所でも水蒸気圧が飽和水蒸気圧以下なら無事、超えた所で結露する。(飽和の定義からの当サイトの説明) 国土交通省の事務連絡は、住宅性能表示の評価で、防湿層や通気層に代わる措置を確かめる方法として、層構成と内外の温湿度による一次元の定常計算で、層の内部に結露域が生じないことを確かめる、とする。
例題3 (仮の例。条件の形は事務連絡の令和4年10月1日以降のもの。表面の湿気伝達は無視)室内15℃・相対湿度60%(水蒸気圧10.22 hPa)、外気0℃(仮)・相対湿度70%(4.28 hPa)。室内側から、せっこうボード12.5mm、グラスウール16K 100mm、合板9mm。熱抵抗は0.052、2.222、0.056 m²·K/W で、表面の0.11と0.04を足した全体は2.48 m²·K/W。
- 断熱材の屋外側の境界の温度は約0.6℃、飽和水蒸気圧は約6.4 hPa
- 透湿抵抗は仮の相対値で、せっこうボード1、グラスウール1、合板5(実在の材料の値ではない。せっこうボードとグラスウールを同じにしたのは、計算を簡単にするための仮)
- 防湿層なし:合計7。境界の水蒸気圧は hPa > 6.4 hPa で、結露する
- 防湿層あり(断熱材の室内側に、仮に50):合計57。 hPa < 6.4 hPa で、無事
防湿層なしでは、水蒸気圧がほとんど下がらないまま、冷たい断熱材の外側へ届く。この仮の値では、断熱材の室内側から約66%の位置から、合板の中まで、飽和を超える(図2の黄色。位置は仮の透湿抵抗で決まる)。防湿層を室内側に置くと、水蒸気圧は防湿層で一気に下がり、冷たい所へ水蒸気がほとんど来ない。
宮野は、結露を防ぐ基本を、十分な断熱措置、室内側での防湿、屋外側での放湿とし、室内側に最も湿気を通しにくい材料を施工して、屋外側へ通しやすい順に並べるとよい、と書く。大澤(空衛2012)は、一方で、防湿性のある材を二重に使うと、一度水になったあと透湿では逃がせず、水分が滞留する不具合があること(配管の防露も同様)を書く。
やってみよう ②:この境界は、結露するか
断熱材の屋外側の境界が、水蒸気圧7.0 hPa、温度3℃だった。3℃の飽和水蒸気圧は7.57 hPa(表5-1)。7.0 < 7.57 なので、結露しない。境界の温度が1.9℃まで下がると、飽和水蒸気圧が7.0 hPa(表5-1)になり、結露の限界に達する。
これで、水蒸気圧と飽和水蒸気圧を比べて内部結露を判定し、防湿層を室内側に置く理由を言える。
防露の方法を、原因と対にして整理する
| 原因 | 向き | 具体策 |
|---|---|---|
| 面の温度が低い | 面を温かく | 断熱の強化、冷橋の解消、暖房のムラをなくす、気流で表面を温める |
| 水蒸気が多い | 水蒸気を減らす | 発生を抑える、換気する、除湿する |
| 水蒸気が壁の中へ入る | 入れない・逃がす | 室内側に防湿層、屋外側は通しやすく(通気層) |
換気は、向きに気をつける。冬の外気(0℃・相対湿度70%)の絶対湿度は約0.0026 kg/kg(DA)、室内(20℃・60%)は約0.0087で、外気は約3割だ。この例では、外気は水蒸気が少なく、換気で室内の水蒸気を薄められる。一方、東京都の資料は、梅雨から盛夏に、高温多湿の外気が入り、冷房で冷えた壁などに触れて水滴ができる夏型の結露を挙げる。
現場とつなぐ
冷水管の防露では、保温の連続性(隙間と継目、フィルム)が効く。 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)は、保温材に保冷材と防露材を含める(3.1.2)。冷水・冷温水管の種別(表2.3.2のA・B・C1・D・E)の構成(表2.3.3)には、すべてポリエチレンフィルムが入る(蒸気管・温水管用の種別A〜Cは、フィルムを除く。注1)。施工では、保温材相互の間隙をできる限り少なくし、重ね部の継目を同一線上に置かず、ポリエチレンフィルムの重なりは、原則として1/2重ね以上とする(3.1.3)。標準仕様書は、これらの理由を書いていない。当サイトの読みでは、フィルムは保温材の中へ湿った空気が入るのを抑える層で、間隙や継目の切れは、冷たい管の面へ湿った空気が届く道になる。図2の防湿層と同じ考え方だ。
電気設備との接点。 電気設備の技術基準の解釈(令和7年11月20日施行の改正までの版)の第1条は、水気のある場所を「水を扱う場所若しくは雨露にさらされる場所その他水滴が飛散する場所、又は常時水が漏出し若しくは結露する場所」と定める。冬に窓がときどき濡れる程度が、これに当たるかは、定義だけでは決まらない(当サイトの読み)。場所の区分で低圧屋内配線の工事の種類が変わる点は、別のトピック「低圧屋内配線」で扱う。盤やキュービクルの中も、外板の内面が冷たい面になりうる(当サイトの説明。盤メーカーの資料は確認していない)。結露の判断は内面の温度と露点の比べ合いで、水蒸気の量が同じなら、中の空気を温めて相対湿度が下がっても、露点は変わらない(「湿り空気と空気線図」)。結露を防ぐには、内面の温度を露点より高く保つか、水蒸気を減らす(当サイトの説明)。
試験での出方とワナ
令和8年度 問題A No.9(必須):冬季の外壁に接する室の、室内側壁面の表面結露について、4つの記述から「適当でないもの」を選ぶ形だった。公式の正答は、断熱と結露の関係を逆に書いた記述だった。
決め手は、各記述で、面の温度が下がるのか、上がるのか(または、空気の温度が低いのか)を見ることだ。
| 状況 | 面・空気の温度 | 表面結露 |
|---|---|---|
| 外壁が集まる隅 | 面の温度が低い | しやすい |
| 空気の流動が少ない | 面の温度が下がる | しやすい |
| 温度の低い室・場所 | 空気が低温 | しやすい |
| 断熱を強める | 室温に近づく | しにくい |
冒頭の問いの答え合わせ
- 隅と窓ガラスのふちだけが濡れるのは、そこで面の温度が低いから。外壁が2面接する隅は、外気に冷やされる面が集まり(当サイトの説明)、空気がよどむ(東京都)。窓ガラスは外周が他より低くなる例がある(林産試)。例題2の断熱した壁(外気0℃)の真ん中は、同じ空気に触れていても、面が露点より高い
- コンクリート150mmの外壁の室内側の表面は、約11.0℃。露点12.0℃より低いので、結露する
- 外側に断熱材を30mm足すと、約18.3℃で、露点を上回り、結露しない
理解度チェックで、確かめてみよう。
次の問い
ここまでは、外気温と室温の差だけで、壁の熱の流れを見てきた。夏の昼、日が当たる壁や窓は、外気温のままでは扱えない。日射は、壁の面の温度と、室内へ入る熱を、どう変えるのか。次のトピック「日射と外皮の熱負荷」で追う。