1級管工事施工管理技士とは — 設備工事の現場を「管理する」国家資格
管工事とは、国土交通省の業種区分で「冷暖房、冷凍冷蔵、空気調和、給排水、衛生等のための設備を設置し、又は金属製等の管を使用して水、油、ガス、水蒸気等を送配するための設備を設置する工事」と定義される建設業の一種だ。例示には冷暖房設備工事、空気調和設備工事、給排水・給湯設備工事、衛生設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事などが並ぶ。建築物の中に設置する通常の空調機器の設置も管工事に当たる。
1級管工事施工管理技士は、この管工事の施工計画・工程管理・品質管理・安全管理を担う資格だ。建設業法に基づく技術検定で、国土交通大臣指定試験機関の全国建設研修センターが実施する。第一次検定に合格すると「1級管工事施工管理技士補」、第二次検定に合格すると「1級管工事施工管理技士」を名乗れる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施団体 | 全国建設研修センター(国土交通大臣指定試験機関) |
| 試験の構成 | 第一次検定(マークシート)→ 第二次検定(記述式) |
| 令和8年度の実施日 | 第一次検定 9月6日(日)、第二次検定 12月6日(日) |
| 合格発表 | 第一次検定 10月8日、第二次検定 令和9年3月3日 |
| 受検手数料 | 第一次・第二次とも12,700円(非課税)。インターネット申込は別に事務手続手数料250円 |
| 第一次検定の合格率 | 37.5〜52.3%(令和5〜8年度) |
| 第二次検定の合格率 | 63.3〜76.2%(令和6・7年度) |
電材・電気の仕事とどうつながるか
管工事と電気工事は、建設業法では別の業種だ。ただし、どちらも同じ「指定建設業」に入っている。建設業法施行令第5条の二が挙げる指定建設業は、土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業の7つで、後述のとおり、この7業種は技術者の要件が特に厳しい。
| 1級電気工事 | 1級管工事 | |
|---|---|---|
| 設備 | 照明・配電・変電・発電など | 空調・給排水・衛生・ガス・ダクト |
| 実施団体 | 建設業振興基金 | 全国建設研修センター |
| 令和7年度 第一次の合格者 | 10,290人 | 9,224人 |
| 令和7年度 第二次の合格者 | 6,607人 | 4,360人 |
| 建設業法上の業種 | 電気工事業(指定建設業) | 管工事業(指定建設業) |
管工事の第一次検定の出題範囲には、機械工学・衛生工学のほかに電気工学・電気通信工学も含まれる。電気側の施工管理を知りたい人は2級電気工事施工管理技士のページも参照してほしい。
営業・内勤の経験は、実務経験に入らない
電材・設備資材の商社で働く人が最初に知っておくべき点がある。全国建設研修センターの受検の手引は、管工事の施工に直接関わらない業務として、「現場事務、営業等の業務」を実務経験に認めていない。調査・点検・保守、設計のみの業務、入社後の研修期間も同様だ。
認められるのは、①工事請負者の従業員として請負工事の施工を管理した経験、②工事発注者の従業員として発注工事の施工を指導・監督した経験、③工事監理業務等の受託者の従業員として対象工事の工事監理を行った経験の3つ(いずれも補助者を含む)。管工事以外の工事の経験は、電気工事であっても管工事の実務経験にはならない。
つまり、商社の営業としての経験だけでは、第二次検定の受検資格は満たせない。第一次検定は年齢要件だけなので受検できるが、第二次検定には管工事の施工管理の実務経験が別に要る。
取ると何が変わるか — 監理技術者・営業所の技術者・技士補
監理技術者になれる
建設業法第26条第2項は、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の請負代金の総額が政令の金額以上になる場合、現場に主任技術者ではなく監理技術者を置くよう定めている。この金額は建設業法施行令第2条で5,000万円(建築工事業は8,000万円)。令和7年2月1日の施行で、4,500万円(建築一式工事は7,000万円)から引き上げられた。
管工事は指定建設業なので、監理技術者になれるのは、1級の技術検定の合格者など法第15条第2号イに当たる者か、国土交通大臣がそれと同等以上と認定した者に限られる。国土交通省の資料でも、監理技術者の要件のうち「実務経験者」は指定建設業を除くと明記されている。2級の技士がなれるのは主任技術者だ。
なお、専任で現場に置く監理技術者には、監理技術者資格者証の交付を受け、登録講習を受講していることも要る。資格を取っただけで現場に配置できるわけではない。
営業所の技術者として、特定建設業の許可の前提になる
特定建設業の許可(下請に出す金額が5,000万円以上になる工事を、元請として施工する会社が受ける許可)には、営業所ごとに専任の特定営業所技術者を置く要件がある。指定建設業である管工事では、この専任の者も1級の資格者等に限られる。管工事で特定建設業を営む会社にとって、1級施工管理技士などの有資格者は許可の前提になる。
第一次検定に合格すると技士補になる
第一次検定の合格者は「技士補」を名乗れる。国土交通省は、1級の技士補(主任技術者の要件を有する者に限る)は、監理技術者の職務を補佐する者になれるとしている。令和6年度からは、第一次検定の合格後に監理技術者補佐として1年以上の実務経験を積む道も、第二次検定の受検資格に加わった。
技術者が足りない背景
国土交通省の資料は、65歳以上の監理技術者の割合がこの10年で2倍以上になったと示している。建設技術者全体では55歳以上が34.4%、15〜29歳が12.9%で、民間の推計(ヒューマンリソシア)を引いて、2030年に約4.5万人の不足が見込まれるとしている。これらは建設業全体の数字で、管工事に限った統計は今回確認できなかった。
求人データで見る待遇 — 出典ごとに数字が違う
待遇は、公的な統計ではなく、民間の求人データと転職支援会社の自社データでしか確認できなかった。母集団も条件も違うので、数字どうしを並べて平均を取ることはできない。
| 出典 | 何の数字か | 内容 |
|---|---|---|
| ジョブリー建設の求人データ調査(レクリー、2026年9月1日時点、正社員の施工管理求人5,993件) | 求人票の提示年収(下限)の中央値 | 職種区分別では建築・土木・管工事とも450万円。下限500万円以上の求人の割合は、管工事施工管理が44.3%で最も高い(建築37.3%、土木37.0%、内装19.7%)。1級施工管理技士(建築・土木・管工事・電気工事・電気通信工事・造園のいずれか。技士補を含む)が必須の求人は中央値500万円で、必須資格なしの440万円より60万円高い |
| プレックスジョブの記事(自社の転職支援実績、2025年4月〜2026年3月に転職した1級管工事施工管理技士) | 転職後の初年度年収 | 平均626.6万円、最高1,000万円。500〜700万円が66.7%。対象人数の記載はなく、割合が12分の1刻み(8.3%)になっていることから、少人数の集計とみられる |
| 建職バンクのコラム(求人情報をもとにした独自調査) | 1級管工事の求人の年収 | 平均507万円(下限の平均427万円、上限の平均589万円) |
同じ1級管工事でも、平均は507万〜626.6万円と開く。ジョブリー建設の数字は求人票の「提示条件」で、実際の支給額ではない。資格手当はプレックスジョブの記事(自社の求人データ)で、1級が月1.5〜3.0万円、2級が月0.5〜1.5万円。サブコンやゼネコンの設備部門など一部の企業では、1級の取得時に10万円以上の一時金が出るとも書かれている。
資格を取れば年収がいくら上がる、とは言えない。確かなのは、管工事施工管理の求人で下限500万円以上の割合が職種区分の中で最も高いという事実と、1級必須の求人のほうが提示額が高いという傾向までだ。
試験の中身 — 受検資格・科目・合格基準
受検資格(令和6年度からの新受検資格)
| 検定 | 受検資格 |
|---|---|
| 第一次検定 | 受検年度末時点で19歳以上。学歴・実務経験は問われない |
| 第二次検定 | 1級第一次検定の合格後に、①実務経験5年以上、②特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上、③監理技術者補佐としての実務経験1年以上、のいずれか |
| 2級合格者の場合 | 2級第二次検定の合格後に、実務経験5年以上、または特定実務経験1年以上を含む実務経験3年以上。第一次検定と第二次検定を同じ年度に同時に申し込める。この場合も1級第一次検定の合格が条件 |
特定実務経験とは、建設業法の適用を受ける請負金額4,500万円(税込)以上の工事で、監理技術者・主任技術者の指導の下で、または自らその立場で行った管工事施工管理の経験をいう。指導する技術者は、その工事の種類の監理技術者資格者証を持つ者に限られ、発注者側や工事監理受託者側の経験、国外の工事や請負によらない工事は含まれない。この4,500万円は受検資格の表記で、監理技術者の配置にかかる5,000万円とは別の基準だ。
令和10年度までは経過措置として、制度改正前の旧受検資格でも第二次検定を受検できる。どの区分に当たるかは、申込時に実務経験の登録と証明者による証明が要るため、必ず公式の受検の手引で確認してほしい。登録した実務経験は、申込の完了後に修正・追加できない。
検定科目と合格基準(第一次検定)
| 科目 | 検定基準(受検の手引の要旨) |
|---|---|
| 機械工学等 | 管工事の施工管理に必要な機械工学・衛生工学・電気工学・電気通信工学・建築学の一般知識。冷暖房・空気調和・給排水・衛生等の設備に関する一般知識。設計図書に関する一般知識 |
| 施工管理法 | 監理技術者補佐として、施工計画の作成方法と工程管理・品質管理・安全管理等の知識、および応用能力 |
| 法規 | 建設工事の施工の管理に必要な法令に関する一般的な知識 |
令和8年度は、出題73問のうち、必須問題38問に加えて、選択問題35問から22問を選び、合計60問に解答する形式だった。合格基準は、全体で60%以上(36問以上)、かつ施工管理法(応用能力)8問のうち50%以上(4問以上)。全体で6割以上あっても、応用能力問題で4問に届かなければ不合格になる。
令和6年度の見直し — 経験記述は廃止された
全国建設研修センターは令和6年度以降の試験問題について、第一次検定では管工事施工管理に必要な工学基礎知識を確認できるようにし、第二次検定では工程管理・安全管理の設問を必須にすると公表した。あわせて、受検者自身の経験に基づかない解答を防ぐ観点から、経験に基づく解答を求める設問をとりやめ、空調・衛生の施工に関する選択問題で、経験で得られた知識・知見を幅広い視点から確認する形に改めた。
合格率と受検者数の推移
第一次検定
| 年度 | 受検者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | 14,990人 | 5,628人 | 37.5% |
| 令和6年度 | 23,240人 | 12,147人 | 52.3% |
| 令和7年度 | 23,826人 | 9,224人 | 38.7% |
| 令和8年度 | 27,740人 | 10,979人 | 39.6% |
第二次検定
| 年度 | 受検者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和5年度 | — | 4,471人 | — |
| 令和6年度 | 8,736人 | 6,661人 | 76.2% |
| 令和7年度 | 6,886人 | 4,360人 | 63.3% |
令和5年度の第二次検定は、合格者数だけが国土交通省の発表で確認でき、受検者数と合格率は公式の資料が見つからなかった。令和8年度の第二次検定は12月6日に実施され、結果は令和9年3月3日に発表される。
第一次検定の受検者は令和5年度から令和8年度で約1.85倍に増えた。令和6年度は、受検資格の見直しと試験問題の見直しが始まった最初の年度で、第一次・第二次とも合格率が高かった。令和7年度以降は第一次検定の合格率が38〜40%程度に戻っている。この数字だけから原因までは断定できない。
令和8年度の第一次検定で、「第一次検定のみ」の区分で新規に受検した合格者のうち、勤務先が大臣許可の管工事業の人が43.1%、知事許可の管工事業の人が24.0%、建設業許可なしの人が3.1%だった。合格者の約3分の2は、管工事業者に勤める人だ。
勉強時間の目安と、古い情報への注意
必要な勉強時間に、公式の統計はない。書き手の立場や経験で、数字は大きく違う。
| 出典 | 目安 |
|---|---|
| 建築設備の設計系ブログ(本人の記録。一級建築士・建築設備士の受験経験あり。一次は独学、二次は講習会) | 第一次検定で約30時間(本人の記憶による) |
| アガルート(講座会社) | 第一次50〜120時間、第二次70〜120時間。合計で120〜200時間 |
| セコカン | 第一次50〜100時間、第二次80〜150時間。合計で150〜300時間 |
| 設備エンジニアを名乗る書き手のサイト(独学で取得したと自己紹介。講座を比較する記事) | 第一次と第二次の合計で300〜500時間(独学・6か月想定) |
いちばん短い約30時間は、建築設備の資格試験に慣れた人が第一次検定だけにかけた時間の記録なので、初めて受ける人の目安にはならない。実務経験が少ない初学者について、アガルートは第一次検定に100〜120時間としている。
もう一つの注意は、令和5年度までの受験記や講習は、経験記述が出題される前提で書かれていることだ。第二次検定の経験記述は令和6年度に取りやめられたため、「経験記述を4題書いて添削を受ける」といった古い対策は、今の試験には当てはまらない。参考にする教材や記事が、どの年度の形式を前提にしているかを必ず確かめてほしい。
向いている人
受検の手引が実務経験として認める立場に、そのまま当てはまる人だ。
- 設備工事会社やサブコンで、空調・給排水・衛生の現場を管理している人
- 発注者側で、管工事の施工を指導・監督している人
- 設計事務所などで、管工事の工事監理を担当している人
反対に、営業・内勤が中心の人は、第一次検定は受けられても、第二次検定の実務経験を別に積む必要がある。取引先の設備工事会社の技術者が何を学んで資格を取っているかを知りたい、という目的なら、第一次検定の出題範囲(機械工学等・施工管理法・法規)が、その共通言語の目安になる。
よくある質問
学歴や実務経験がなくても受検できますか
第一次検定は、受検年度末時点で19歳以上であれば、学歴・実務経験を問わず受検できます(令和6年度から)。第二次検定には、第一次検定の合格後の実務経験などが要ります。
第一次検定だけ合格するとどうなりますか
「1級管工事施工管理技士補」を名乗れます。合格通知書に同封された交付申請書を国土交通省に申請すると、第一次検定合格証明書(1級管工事施工管理技士補)が交付されます。
第二次検定の経験記述は今も出ますか
令和6年度の見直しで、経験に基づく解答を求める設問は取りやめられました。現在は工程管理・安全管理の設問が必須で、空調・衛生の施工に関する選択問題があります。最新の問題形式は、受検の手引と最近の過去問で確認してください。
2級を取ってからでないと、1級は受けられませんか
受けられます。第一次検定は年齢要件だけなので、2級を持っていなくても1級から受検できます。2級の第二次検定に合格している人は、第二次検定の実務経験の区分が別に用意されています。
令和9年度の日程はいつ分かりますか
このページを書いた時点では、令和8年度の実績(申込 5月7日〜21日、第一次検定 9月6日、第二次検定 12月6日)が公式に出ています。次年度の日程は、公開され次第、全国建設研修センターの公式サイトで確認してください。
取ると年収はどれくらい上がりますか
公的な統計はありません。本ページの「求人データで見る待遇」のとおり、求人票や転職支援会社のデータでは、出典によって平均が507万〜626.6万円と開きます。数字は目安として扱ってください。