着工から9日が経った時点の点検。出来高の累計は、予定が56%、実績が58%だった。予定より2ポイント進んでいる。実績の点は、予定の許される幅を示す帯の中にも入っている。ところが、この工事の完成日は1日延びる。
予定より進んでいるのに、なぜ遅れるのか。遅れが見つかったら、何を動かして取り戻せばよいのか。人を増やせば足りるのか。工期を縮めると、費用はどう動くのか。このトピックを読み終えるころには、曲線を見て安心してよい場合とそうでない場合を言い分け、取り戻す手段と費用を数字で選べるようになっている。
まず一言で
工程管理は、計画→実施→検討→処置を繰り返す管理だ。進み具合は、出来高の累計を描いた工程曲線で大づかみに見る。予定の許される幅は、最早・最遅の累計で作る帯(バナナ曲線。作り方は当サイトの整理)で見る。ただし曲線は全体の合計なので、どの作業が遅れているかは、バーチャートやネットワーク工程表で作業別に確かめる。
遅れを取り戻す手は、作業日数=数量÷1日の施工量の式から、増やす・上げる・並べ替えるの3つに分かれる。標準的には、速くすれば直接費が増える一方、工期が短くなれば、工期に連動する間接費は減る。合計が最小になる工期を、ここでは最適工期と呼ぶ。縮めるほど得とは限らない。
工程管理は「回す」もの
農林水産省の「土木工事施工管理基準の手引き」第2章(土木工事向け)は、工程管理の手順を、計画(Plan)→実施(Do)→検討(Check)→処置(Action)としている。
- 計画: 施工法と順序の基本方針から、各作業の日程と手順を決めて工程表をつくる。労務・資材・機械の必要量を均し、過度の集中や待ち時間が出ないようにする
- 実施: 工程表どおりに手配・段取りをし、指示・監督する
- 検討: 進捗を把握し、計画工程と実績工程を比べて進度を管理する
- 処置: 差があれば作業改善などの是正処置をとり、工程促進を図る。場合によっては工程表を組み替え、計画を見直す
計画と実績に大きな差(計画に対し±10%程度)が出たら、計画か実施体制に問題があるとして、見直して処置をとる、と手引きは書く。中部地方整備局の資料(平成25年度。土木向け)にも、10%程度の遅れが生じたら工程の見直しが望ましい、とある。ただし、どちらも、10%を何に対する割合とするか(計画値の10%か、10ポイントか)までは書いていない。
手引きは、工程管理が重要な理由として、工事の品質と原価が、工程速度に大きく影響されることを挙げる。費用は、最後の節で数字で見る。
工程曲線をつくる — 出来高を足していく
出来高は、工事がどこまで出来上がったかを表す量で、ここでは金額で数える。工程曲線は、各作業の出来高を日ごとに足し、累計を総額に対する%で描いた曲線だ。ここでは進捗率を「累計出来高÷総額」とする。完了した作業の数や、経過した日数の割合ではない。作業の大きさは違うからだ。
例題で追う。ネットワーク工程表の2つのトピックと同じ網(A〜G、15日)に、出来高を付ける(空調機まわりの更新工事を単純にした架空の例。金額は仮の値)。
| 作業 | 出来高(万円)/日数 | 最早/最遅の着手 |
|---|---|---|
| A | 60 / 3日 | 0 / 0 |
| B | 150 / 5日 | 3 / 5 |
| C | 120 / 4日 | 3 / 3 |
| D | 90 / 3日 | 8 / 10 |
| E | 240 / 6日 | 7 / 7 |
| F | 100 / 2日 | 13 / 13 |
| G | 240 / 8日 | 3 / 5 |
最早の着手は、先行作業が最短で終わって始められる時点、最遅の着手は、完成日を延ばさずに始められる最後の時点だ。
各作業の出来高は、作業日数のあいだ均等に積み上がるとする(Aなら1日20万円)。計算を簡単にするための仮定で、実際の積み上がり方は作業ごとに違う。
着工から9日の時点の累計を、全作業を最早で進めた場合に出す。Aが60、Bが150(完了)、Cが120(完了)、Eは7日の時点で着手して2日分の80、Dは8日の時点で着手して1日分の30、Gは3日の時点で着手して6日分の180。合計は620万円で、総額の62%だ。
やってみよう①:全作業を最遅で進めたら、9日の時点の累計は?
Aが60、Bは5日の時点で着手して4日分の120、Cが120、Eが80。Dは10日の時点で着手なので0。Gは5日の時点で着手して4日分の120。合計は500万円で、50%。最早の62%と最遅の50%の間が、次の節の帯になる。
曲線の形も見ておく。序盤はAだけで1日20万円とゆっくり、中盤は作業が重なって1日90〜100万円と急に積み上がり、終盤はEとFだけで1日40〜50万円と緩やかになる。S字になる理由は、この例では、中盤に作業が重なるからだ(当サイトの説明。ほかの工事も同じとは、資料では確認していない)。
中部地方整備局の資料は、工程曲線による進度管理を、予定出来高曲線と実績出来高曲線の対比で行うもので、工事の進捗を大局的にとらえられる、と書く。
バナナ曲線 — 予定の許される幅
農林水産省の手引きは、曲線式工程表(バナナ曲線)を、工程表の4種類の一つに挙げる。手引きの図は、横軸を時間経過、縦軸を工程(ともに%)とし、上方許容限界曲線と下方許容限界曲線の間に帯を描く(図は画像で確認)。2本の作り方は書かれていない。ここでは、次の作り方で追う(当サイトの整理)。
- 上方限界: 全作業を最早開始で進めたときの累計
- 下方限界: 全作業を最遅開始で進めたときの累計
なぜこの2本が限界になるのか。作業の累計は、着手が早いほど大きい。だから最早開始がいちばん大きく、最遅開始がいちばん小さい。余裕の範囲で着手を動かした日程の累計は、どの時点でも、この2本の間に入る。例題の網では、余裕の範囲で動かせる開始日のすべての組合せで計算して確かめた。
実績が帯のどこに出るかで、次のように読める(当サイトの読み。所要日数と前後関係は計画どおりとする)。
- 下方限界を下回る: 少なくとも一つの作業が、完成日を守れる最遅の進み方より遅れている。その作業が計画の速さのままなら、完成日が延びる
- 上方限界を上回る: 計画どおりの所要日数と前後関係では起こらない。計画の前提が実際と合っていないか、出来高の計上に誤りがないかを疑う
- 帯の中: 予定の幅の中。ただし、次の節の限界がある
曲線に出ない遅れ — 予定より進んでいるのに、なぜ遅れるのか
冒頭の問いに答える。例題の工事の予定は、BとGの着手を最早より1日遅らせて4日の時点とし、Dは9日の時点とした日程だ。9日の時点の予定累計は56%になる。
実績は次のとおりだった。Cは4日の予定が5日かかり、7日の時点で終わらず、8日の時点で終わった。EはCを待ち、予定の7日の時点より1日遅れて、8日の時点で着手した。いっぽうBとGは予定より1日早い3日の時点で、Dは予定より1日早い8日の時点で着手した。
9日の時点の累計は、Aが60、Bが150、Cが120、Eが1日分の40、Dが1日分の30、Gが180で、合計580万円、58%。予定の56%より2ポイント進み、下方限界の50%と上方限界の62%の間にもある。
それでも完成日は延びる。Cはクリティカルパス上の作業で、遅れた分だけ、E、Fの着手が後ろへずれる。完成は16日の時点で、当初の15日より1日延びる。曲線が下方限界を下回るのは13日の時点(実績86%、下方限界90%)で、Cの遅れが見えた7日の時点から、6日あとになる。
先行して進んだBやDやGの出来高が、Cの遅れを合計の中に隠した。手引きは、曲線式の短所に、作業の手順が不明確なこと、工期に影響する作業がつかみにくいことを挙げ、バーチャートと併用すれば、欠点はある程度解消できる、と書く。
縦の差と横の差 — ポイントを日数に直す
曲線で遅れを読むには、縦(%)と横(日数)の2通りがある。遅れの日数は、横に読む。 実績の値に、予定は何日の時点で達していたか。その日と今の日との差が遅れだ。
縦の差と横の差の関係は、曲線の傾きで決まる。例題の予定曲線では、実績が予定より10ポイント低いとき、遅れは中盤(6〜12日の時点)で約1日、14日の時点で約2日になる。終盤は傾きが緩く(1日に4〜5ポイント)、同じ10ポイントが、日数では重い。
やってみよう②:予定の曲線を、横に読む
予定は、11日の時点で76%、12日で86%、13日で90%、14日で95%、15日で100%とする。14日の時点で実績が85%のとき、遅れは何日か。
85%は、11日と12日の間で予定が達する値だ。11日で76%、12日で86%なので、11日から(85−76)÷(86−76)=0.9日あとの、11.9日の時点になる。14−11.9=約2.1日で、約2日の遅れ。ポイントの差は10だが、日数では約2日になる。
遅れたら、何を動かすか
作業日数は、作業の数量を1日の施工量で割ったものだ。1日の施工量は、班の数×1班の能力。この式から、取り戻す手が3つに分かれる(当サイトの整理)。
- 班を増やす(増員、機械の増設): 1日の施工量が増え、日数が縮む
- 1班の能力を上げる(工法や機械の変更、残業、交替制): 同じく日数が縮む
- 並べ方を変える(先行作業の完了を待たず、区画を分けて並行させる。順序を入れ替える): 経路の日数が縮む
どれも、まず手を打つのはクリティカルパスの上だ。兵庫県の基準は、工程短縮の手段は、この経路に着目しなければならない、と書く。余裕のある作業だけを速くしても、完成日は縮まない。
令和7年度の2級管工事の第二次検定には、増員した割合に応じて作業日数が縮むという仮定を置いて、短縮日数を求める設問があった。仮定を明記するのは、実際には、作業場所の広さや先行作業の完了待ちで、増員した割合どおりに日数が縮むとは限らないからだと読める(当サイトの読み)。
遅れの原因で、取る手続きも変わる。公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)の1.1.10は、設計図書の訂正・変更、一時中止、著しい悪天候や気象状況による作業不能日、資機材・労務の需給環境の変化、関連工事等の調整への協力、その他受注者の責めに帰すことができない事由で、全体工程に影響を及ぼす場合は、監督職員に報告する、と定める。契約書に基づく工期の変更を協議するときは、変更日数の算出根拠や変更工程表などを、あらかじめ監督職員に提出する。
中部地方整備局の資料(土木向け)は、制約条件の調達条件に、資材の納入時期と特殊機械等の納入時期を挙げる。電気側の資機材の納期も、工程の制約になりうる。標準仕様書も、概成工期が特記された場合は、実施工程表に受電日と総合試運転調整に要する工程を明記するとしている(1.2.1)。受注生産の盤類の納期が年度末に延びる可能性がある点は、サイト内の電気工事の年度末繁忙期と資材の発注時期のガイドにまとめてある(当サイトの記事で、一次資料ではない)。
山積み・山崩し — 人の山をならす
日程どおりに進めると、ある日に人が集中することがある。日ごとの必要人数を並べたものが山積みで、その凹凸をならす手順が山崩しだ。兵庫県の基準(付録1。土木向け)は、山崩しを、日程計算で分かっている余裕日数を使い、いくつかの作業の開始を遅らせて平均化するもの、と説明する。順序関係と人員の制限は守る。最早開始の山積みから始め、手持ちの制限を超えるところで、余裕の範囲内で開始を遅らせる。トータルフロートの小さい作業ほど、先に着手する。
例題(独立した簡単な例。日数・人数は仮の値で、記号は前のA〜Gと別)。日ごとの人数は、着工日を1日目として数える。墨出し・支持金物(a)は3日・4人。そのあと、ダクト工事(D)8日・4人、配管の系統1(P1)4日・4人、系統2(P2)3日・3人、機器据付(K)3日・3人が並行し、すべて終わってから試運転(t)2日・3人を行う。Dがいちばん長く、余裕は0。余裕は、P1が4日、P2とKが5日。手持ちは10人までとする。
すべて最早で進めると、4〜6日目にD・P1・P2・Kが重なり、4+4+3+3=14人になる。余裕の小さい順に、DとP1を4日目から始める(8人)。P2を4日目から始めると11人、Kも始めると14人になり、10人の制限を超える。そこで、P2とKを、P1が終わった次の8日目まで遅らせる(余裕の5日以内)。8〜10日目は、4+3+3=10人。最大は14人から10人に下がった。
延べ人数の合計は、どちらも84人日で変わらない。山をならすだけで、仕事の量は減らない。この例では、余裕の範囲で開始日を動かすすべての組合せを調べても、最大は10人より下がらない(当サイトの検算)。手持ちが10人を下回るなら、開始日の調整では足りず、完成日や人の手配なども動かす。
やってみよう③:余裕を使い切ったら
上の例で、P2とKを4日目から、P1を余裕いっぱいの8日目から始めたとする。最大の人数と、P1の余裕は?
4〜6日目はD+P2+K=10人、7日目はDだけの4人、8〜11日目はD+P1=8人。最大は10人で、上の結果と同じ。ただしP1は11日目に終わり、試運転の12日目まで余裕が残らない。P1の余裕は0で、クリティカルパスが増える。山崩しで余裕を使い切ると、その作業が新しいクリティカルパスになる。
工期と費用 — 縮めるほど得とは限らない
言葉をそろえる。公共建築工事の積算では、直接工事費に共通仮設費を足したものが純工事費、これに現場管理費を足したものが工事原価、さらに一般管理費等を足したものが工事価格になる(『営繕積算方式』活用マニュアルの工事費の構成)。共通仮設費・現場管理費・一般管理費等が共通費だ。試験の直接費・間接費は、おおよそ直接工事費と共通費にあたる(当サイトの対応づけ)。以下の間接費は、共通仮設費と現場管理費の合計(一般管理費等は除く)とする。
間接費は、工期に連動する。 公共建築工事共通費積算基準(令和8年改定)で、共通仮設費と現場管理費を率で算定するとき、新営機械設備工事の率は、工期T(か月)を変数に持つ式で決まる。Tの項の係数は、共通仮設費率が0.481、現場管理費率が0.428で、どちらも正。工期が長いほど率が大きくなる。昇降機設備工事の率の式にはTの項がない。『営繕積算方式』活用マニュアルは、工期の影響を受ける主な項目に、仮設建物費、動力用水光熱費、現場従業員等の給与、法定福利費を挙げ、工期延長に応じて共通費を増額する方式を紹介する。
式に当てはめると、直接工事費1億円の新営機械設備工事で、工期を10か月から9か月に縮めたとき、共通仮設費と現場管理費の合計は、積算上、約93万円減る。積算の式であって、個別の工事の実費ではない。
標準的には、直接費は縮めると増える。 縮めるには、増員、残業、交替制、機械の増設などが要る。ネットワーク工程表の「フロートと工期短縮」のトピックで見た費用勾配が、この増え方だ。国土交通省の指針(直轄土木工事向け)は、適正な工期を、標準的な施工方法(コスト)で施工する際に必要となる工期と定義する。標準より短い工期には、標準的でない方法が要る、と読める(当サイトの読み)。
合計を比べる。直接工事費1億円、標準工期10か月の新営機械設備工事(架空)で、縮めるための追加の直接費は仮の値、間接費の減少は上の式で出した値とする。
| 工期 | 直接費の増加/間接費の減少 | 差引 |
|---|---|---|
| 10か月 | 0 / 0 | 0 |
| 9か月 | 30 / 93 | +63 |
| 8か月 | 100 / 193 | +93 |
| 7か月 | 250 / 300 | +50 |
| 6か月 | 500 / 416 | -84 |
差引が最大なのは8か月だ。1か月縮めるごとの直接費の増え方(30、70、150、250)が、間接費の減り方(93、100、106、116)を超える手前までが、得になる。
直接費と間接費の合計が最小になる工期を、ここでは最適工期と呼ぶ(今回確認した資料に定義はない)。フロートと工期短縮のトピックでは、間接費が工期に応じて減る点を例題の仮定としたが、積算基準の式は、その向きを裏づけている。
試験での出方とワナ
出題の型
主題と形式だけを挙げる(問題文は転載していない)。
- 令和8年度 問題B No.23(応用能力、適当でないものを二つ): クリティカルパスが通る結合点、フリーフロートの定義、全体工期の短縮を検討する範囲、施工速度と費用の関係が並んだ。公式の正答肢で適当でないとされたのは、短縮を検討する範囲と、施工速度と費用の関係。前の3つは、ネットワーク工程表の2つのトピックで扱った。このトピックの範囲は、費用の記述だ
- 令和7年度 2級管工事 第二次検定(問題2): 作業ごとの工事比率(%)が与えられ、バーチャートを作って、全体工期、ある日の累積比率、累積比率がある値を超える日が聞かれた(設問1)。増員による工期の短縮日数と、作業の順序を入れ替えた場合の着手日も聞かれた(設問2)。出来高は作業日数内で均等とみなし、増員に応じて作業日数が縮むものとする仮定つき。1級での出題は確認していない
解く手順
- 出来高は、作業ごとに「経過日数÷作業日数×出来高」を足し、総額で割る
- 遅れの日数は、実績の値に予定が達した日を横に読み、今の日との差を取る
- 帯の中か外かを見たら、クリティカルパス上の作業を作業別に確かめる
- 費用は、直接費と間接費に分け、縮める日数ごとの増減を並べて、合計が最小の工期を選ぶ
冒頭の問いの答え合わせ
- 予定より進んでいるのに遅れる理由: 累計は全作業の合計で、先行した作業の出来高が、クリティカルパス上のCの遅れを隠したから
- 取り戻す手: 班を増やす、1班の能力を上げる、並べ方を変える。まず手を打つのはクリティカルパスの上。遅れの原因が標準仕様書の挙げる事由(悪天候、設計変更、一時中止など)に当たり、全体工程に影響するなら、報告と工期変更の協議の手続きがある
- 工期を縮めたときの費用: 標準的には、直接費は増え、間接費は減る。例題の仮の値では、8か月が最も得になった
答え合わせは、理解度チェックの問3・問7・問10・問11(計算)と、問5・問6(帯の読み)でしてみよう。
次の問い
概成工期が特記された場合に実施工程表へ明記する、総合試運転調整の工程では、何を、どの順で確かめるのか。次のトピックで扱う。