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制御盤・分電盤の塗装仕様と鋼板厚みの規格|焼付塗装・粉体塗装・カチオン電着塗装はなぜ使い分けられるのか

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

発注書に「塗装:標準仕様」とだけ書かれてくることがある。据え付け先が屋内の制御室なのか、海から300mの倉庫の外壁なのか、その一行だけでは判断できない。標準仕様のまま手配してよいのか、それとも一本電話を入れて確認すべきか——迷った経験のある担当者は少なくないはずだ。

実のところ、「塗装」という言葉の中には、鋼板の厚み、塗装の工程、そして設置環境ごとの防食レベルという、少なくとも3つの独立した仕様が隠れている。同じ「標準仕様」という指示でも、屋内用と屋外用では要求される耐塩水噴霧性能の試験時間が倍近く違う、という事実を知っているかどうかで、確認すべきことの数が変わってくる。

鋼板の厚みにも、実は規格がある

まず盤という「箱」そのものから見ていく。制御盤・分電盤の外郭を構成する鋼板は、何となく頑丈そうな厚みが選ばれているわけではない。

一般社団法人キャビネット工業会が定めるキャビネット工業会規格CA100「金属製汎用キャビネット」は、ボデー・前面枠・ドアに用いる鋼板の呼び厚さを、正面の表面積によって規定している。正面の表面積が0.1㎡以下なら1.0mm(補強がある場合0.8mm)、0.1㎡を超え0.2㎡以下なら1.2mm(同1.0mm)、0.2㎡を超えるものは1.6mm(同1.2mm)以上——という具合に、面積が大きくなるほど厚い鋼板を使うことが定められている。折り曲げやリブ加工で補強したもの、あるいはステンレス鋼などを用いたものは、括弧内のより薄い値を適用してよいとされる。

この規格には、河村電器産業・日東工業・テンパール工業・内外電機・パナソニックスイッチギアシステムズという名前が会員会社として名を連ねる。業界で広く流通している盤の多くが、この共通の板厚基準の上に成り立っているということになる。

なぜ面積によって厚みを変えるのか、と考えると、答えは単純だ。鋼板は面積が広くなるほど、自重や外力でたわみやすくなる。扉の開閉、機器の取付け、風圧といった力に耐えられるだけの剛性を、面積に応じて確保しておく必要がある——という、素材力学としては当たり前の話が、規格という形で数値に落とし込まれている。同じCA100は、保護等級についても屋内用でIP2X以上、屋外用でIP23以上という基準を定めており、板厚と保護等級の両方が、屋内・屋外という同じ区分に沿って段階分けされていることが分かる。

より大型の配電盤・制御盤の構造・寸法については、日本電機工業会(JEMA)のJEM 1459「配電盤・制御盤の構造及び寸法」が、盤の一般構造・外観構造・構成材料の鋼板仕様までを規定している。個別の板厚数値がCA100ほど広く公開されているわけではないが、盤の「箱」としての強度が、メーカーの勘や経験則だけでなく、規格という共通のものさしで担保されているという構図は変わらない。

塗装の三つの顔——焼付・粉体・カチオン電着は何が違うのか

鋼板そのものの規格が分かったところで、その鋼板を守る塗装の話に移る。

「焼付塗装」という言葉自体は、特定の一つの塗料や工法を指すのではなく、樹脂を熱で硬化させるという工程全般を指す、やや広い括りの用語だ。これから見ていく粉体塗装もカチオン電着塗装も、塗料を鋼板に付着させたあと熱を加えて硬化させる工程を経ており、いずれも焼付塗装の一種として扱われることが多い。

粉体塗装は、粉末状の塗料を静電気で鋼板に付着させ、200℃程度で焼き付けて硬化させる方法だ。水も有機溶剤も使わずに塗装できるため環境負荷が小さく、耐食性・耐候性に優れる。膜厚は50〜70μm程度が基本だが、一度で100μm程度まで厚膜化することもできる。制御盤の筐体で幅広く採用されているのも、この耐候性・耐食性の高さゆえだ。ただし色替えや調色が難しく、一度形成した塗膜の上への再塗装がしにくいという制約も持つ。

一方のカチオン電着塗装は、通電を利用して水性塗料を鋼板の表面に析出させ、前処理・電着・水洗のあとに焼き付け硬化させる方法だ。大洋産業の工程例では約200℃の熱風で30分程度としているが、実際の条件は塗料・対象製品・設備ごとに確認する。析出という現象を利用するため、ドアの裏側や折り曲げの内側といった複雑な形状の隅々まで、均一な膜厚で塗膜を回り込ませられる。防錆力・密着性にも優れ、全自動での連続生産に向く。半面、通電性のある素材にしか使えず設備投資も大きい。そして色は基本的に黒に限られる。

この2つが「対立する選択肢」ではなく「組み合わせる工程」として使われているのが、配電盤・制御盤の塗装の実態だ。下塗りには防錆力と均一な膜厚を得意とするカチオン電着塗装、上塗りには耐候性・意匠性に優れる粉体塗装——という2層構成が、筐体設計の解説記事でも一般的な工程として紹介されている。電着塗装が鋼板の隅々まで防錆の下地を作り、その上を粉体塗装が紫外線や汚れから守る。役割の違う2つの塗装を重ねることで、単独では埋めきれない弱点を補い合っているというわけだ。

設置環境が変える塗装仕様——「標準」の中身は一つではない

鋼板の厚みも塗装の工程も分かった。残るのは、それをどの水準まで仕上げるか、という設置環境ごとの選択だ。

一般社団法人キャビネット工業会と盤標準化協議会が共同で定めた技術資料「設置環境から選ぶ盤の塗装性能」は、この選択を6段階に整理している。一般環境は屋内仕様と屋外仕様の2つ、特殊環境は海岸地帯向けの耐塩仕様・重耐塩仕様、そして酸性ガス・アルカリ性ガスが発生する環境向けの耐酸仕様・耐アルカリ仕様の4つだ。

この6段階を分けているのは、見た目の厚塗り感ではなく、JIS規格に基づく試験時間の違いである。塗膜に素地まで達する切れ込みを入れた試験片を、5%の塩化ナトリウム溶液で噴霧し続け、さびや膨れ・はがれが出ないかを確認する耐塩水噴霧性試験(JIS K 5600-7-1に準拠)で、屋内仕様は120時間、屋外仕様は240時間、耐塩仕様は500時間、重耐塩仕様に至っては1000時間の耐久が求められる。屋内から重耐塩まで、要求される耐久時間はおよそ8倍まで開く。酸性ガス・アルカリ性ガスが発生する化学工場や食品工場向けの耐酸仕様・耐アルカリ仕様も、それぞれ5%の硫酸・水酸化ナトリウム溶液に浸せきする試験で120時間の耐久が基準になる。

海岸からの距離という目安(耐塩仕様はおおむね300mを超え1km以内、重耐塩仕様は300m以内)そのものは、電材サーチの別記事「沿岸部・塩害地域での電気設備の選び方」で扱った。ここで押さえておきたいのは、その距離の先にあるのが単なる「厚塗り」ではなく、時間で定量化された耐久試験の合格ラインだという点だ。屋外用として仕入れた盤が、実は屋内仕様相当の耐久性能しか担保されていなかった、という食い違いは、この試験基準を知らないまま「屋外対応」という言葉だけを鵜呑みにすると起こり得る。

塗膜が語る劣化のサイン、そして再塗装の目安

塗装は、貼ったら終わりの部材ではない。CA100が屋外用キャビネットに求める促進耐候性の基準は、光沢保持率70%以上・色差(⊿E*ab)4以下というものだ。裏を返せば、光沢を失い、色が明らかに変わって見える状態は、規格が想定する耐久の範囲をすでに超えつつあるサインだと読み替えられる。

現場で目視できる劣化のサインとしてよく挙げられるのが、鋼板表面に白い粉が浮くチョーキング(白亜化)現象だ。紫外線によって塗膜の樹脂成分が分解され、顔料が表面に露出することで起きるとされる。この段階ではまだ塗膜そのものは残っているが、さらに劣化が進めば塗膜の浮き・はがれ、そして地肌の鋼板が露出しての発錆へと進む。塗装業者向けの解説では、標準的な塗装の耐用年数の目安として5〜8年、上塗りにフッ素系塗料を使った高耐久仕様で15〜20年という数字が挙げられている。ただしこれはあくまで使用環境や塗料の組み合わせによって変わる目安であり、海沿いや腐食性ガスの環境では、この年数がそのまま当てはまるとは限らない点には注意が要る。

チョーキングや小さな錆点が出た段階であれば、まだ部分補修や再塗装で延命できる余地がある。だが、この兆候を見た目だけの問題として先送りにすると、塗膜という一次防御が崩れたあとの鋼板は、防食機能を持たないただの鉄板と変わらない。塗装の劣化は、盤内部の腐食トラブルに先立って現れる、最も早い警告サインだと捉えておいたほうがいい。

まとめ

冒頭の「塗装:標準仕様」という一行に戻ろう。この一行の裏には、正面の表面積で決まる鋼板の呼び厚さ、電着と粉体を重ねる2層の塗装工程、そして屋内から重耐塩まで8倍の開きがある耐久試験基準という、少なくとも3つの仕様が隠れている。据え付け場所を確認せずに標準仕様のまま手配することは、このうちどれか一つを、確かめないまま賭けに出すことに近い。設置環境を一言添えるだけで防げる食い違いは、思っているより多い。

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よくある質問

焼付塗装・粉体塗装・カチオン電着塗装は、結局どれが一番優れているのですか?

優劣で単純に並べられるものではない。「焼付塗装」は樹脂を熱で硬化させる工程全般を指すやや広い括りの用語で、粉体塗装もカチオン電着塗装も、いずれも塗料を鋼板に付着させたあと熱で硬化させる工程(焼き付け)を経ている。粉体塗装は耐候性・意匠性に優れ屋外の上塗りに向き、カチオン電着塗装は複雑な形状にも均一な膜厚で回り込み防錆力に優れるが色は黒に限られる。制御盤・分電盤では、この2つを対立する選択肢としてではなく、下塗り(電着)と上塗り(粉体)を重ねる工程として組み合わせるのが一般的だ。

鋼板の厚みは、薄ければ薄いほどコストダウンになって良いのですか?

一律に薄くしてよいわけではない。キャビネット工業会規格CA100は、ボデー・前面枠・ドアに使う鋼板の呼び厚さを、正面の表面積によって0.1㎡以下は1.0mm、0.1〜0.2㎡は1.2mm、0.2㎡超は1.6mm以上と規定している。面積が広い盤ほど自重や外力でたわみやすいため、それに見合う剛性を鋼板の厚みで確保する必要があるという考え方だ。折り曲げ加工やステンレス材を使う場合はより薄い値を適用できる余地もあるが、面積相応の厚みという基準そのものを無視してよいわけではない。

標準仕様(一般仕様)の盤を、知らずに海沿いに設置してしまった場合はどうすればいいですか?

すぐに交換が必須というわけではないが、放置してよい話でもない。一般環境向けの屋外仕様は耐塩水噴霧性試験で240時間の耐久が基準になっているのに対し、海岸から300m以内の重耐塩仕様では1000時間が基準になる。この差は、潮風にさらされ続ける環境では想定より早く塗膜の防食性能が尽きる可能性を意味する。まずは扉のヒンジ・パッキン・端子まわりに変色や錆点が出ていないかを点検し、劣化が見られる場合は次回更新のタイミングで耐塩・重耐塩仕様への切り替えを検討するのが現実的だ。

塗装の劣化は、どのタイミングで再塗装を検討すればいいですか?

鋼板表面に白い粉が浮くチョーキング(白亜化)現象や、光沢の低下・色あせが目に見える段階が、検討を始める目安になる。塗装業者の解説では、標準的な塗装の耐用年数はおおむね5〜8年、上塗りにフッ素系塗料を使った高耐久仕様では15〜20年とされているが、これはあくまで使用環境によって変わる目安であり、海岸沿いや腐食性ガスが発生する環境ではこれより短くなり得る。チョーキングや小さな錆点が出た早い段階であれば部分補修や再塗装で延命できるが、塗膜が破れて鋼板が露出したあとでは、防食という一次防御そのものが失われている状態だと考えたほうがいい。

参考文献・出典

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