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受電設備キュービクルの結露防止ヒーター容量計算!盤内のサビ・絶縁破壊事故を防ぐ配置設計

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

冒頭の場面・会話は、内容の理解を助けるための例示です。特定の現場・企業・案件を指すものではありません。

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改修工事でスペースヒーターを新設したのに、翌年の冬もまた盤内が結露でびしょ濡れになっていた——設計担当者に話を聞くと、「とりあえず市販の100Wヒーターを1台つけておけば大丈夫だろう」という感覚で選定し、盤の大きさに対して必要な熱量を計算していなかったことが分かった。ヒーターは「付ければ効く」わけではなく、盤の表面積と目標温度差から必要なワット数を計算しないと、能力不足のまま結露を放置してしまう。本記事では、この容量計算の考え方と、配置・制御回路の設計まで具体的に解説する。

1. キュービクル・制御盤内に結露が発生する物理的メカニズム

屋外に設置された高圧受変電設備(キュービクル)や動力制御盤の内部で発生する結露は、電気設備の絶縁性能を低下させ、「トラッキング現象」「漏電火災」「高圧地絡ショート」などの重大事故を引き起こす主原因となります。

結露が発生する要因は、盤の内外で発生する「温度変化」と「湿度」の物理的な関係(露点温度)によるものです。

  1. 夜間の冷却で金属製外箱の温度が急低下する
  2. 日中の温暖化で外気が温まり湿気を含む
  3. 温かく湿った空気が冷たい金属壁に触れる
  4. 結露が発生する(空気中の水分が液化)
  • 夜間の温度低下: 夜間に外気温が急低下すると、金属製の外箱(鉄板)が急速に冷やされます。
  • 早朝の温度・湿度上昇: 朝方、太陽光で空気(外気)が温まると、その空気は多くの水蒸気(湿気)を含むようになります。この温かく湿った空気が、夜間の冷却によってまだ冷たいままの盤内金属面や高圧機器(CTやPT、高圧コンデンサ等)の表面に接触すると、空気が冷やされて露点温度に達し、表面に水滴(結露)として液化します。

2. 結露防止用スペースヒーターの必要容量(W数)計算式

盤内の結露を防ぐための一般的な手法は、「スペースヒーター(盤内ヒーター)」を配置し、盤内温度を外気温より高く保つことです。盤用ヒーターメーカーのオリムベクスタが整理しているとおり、空気が含める水分量には温度ごとの上限(飽和水蒸気量)があり、温度が下がると相対湿度が上がって、含みきれなくなった分が結露になります。「ヒーターで盤内の温度をコントロールする」ことは「ヒーターで盤内の相対湿度をコントロールする」ことになる、というのがヒーターで結露を防ぐ原理です。

ヒーターに必要な熱量(W数)は、盤の外箱面積、外箱材質の伝熱係数、および盤内設定温度と外気温の差から、以下の熱量計算式を用いて算出します。篠原電機の技術資料が示す算定式がそのまま使えます。

P=K×A×ΔTP = K \times A \times \Delta T

  • PP: 必要ヒーター容量(W)
  • KK: 伝熱係数(W/(m2K)\text{W} / (\text{m}^2 \cdot \text{K}))※篠原電機の技術資料では、鋼板 5.55.5、プラスチック 3.53.5 としています。
  • AA: 盤の表面積(m2\text{m}^2)※設置状態によって式が変わります。単独(自立)盤で周囲がフリーなら A=2×H×(W+D)+W×DA = 2 \times H \times (W + D) + W \times D、背面に壁がある場合は A=W×(H+D)+2×D×HA = W \times (H + D) + 2 \times D \times H など、同資料は6パターンの式を示しています。
  • ΔT\Delta T: 盤内(設定)温度 tit_i から盤外部(外気)温度 tut_u を引いた温度差(Kまたは℃)。「外気より何℃高くするか」を一律の定数で決めるのではなく、その現場の設計外気温と、保ちたい盤内温度から求めます。

【計算例】中型キュービクルの場合

  • 盤の寸法:幅 WW 1.0m、奥行 DD 1.0m、高さ HH 2.0m、鋼板製、単独自立で周囲フリー
  • 表面積 A=2×2.0×(1.0+1.0)+1.0×1.0=8.0+1.0=9.0 m2A = 2 \times 2.0 \times (1.0 + 1.0) + 1.0 \times 1.0 = 8.0 + 1.0 = 9.0 \text{ m}^2
  • 伝熱係数 K=5.5K = 5.5(鋼板)
  • 外気温 tu=5 Ct_u = 5\text{ }^\circ\text{C}、盤内設定温度 ti=15 Ct_i = 15\text{ }^\circ\text{C}ΔT=10 C\Delta T = 10\text{ }^\circ\text{C}

P=9.0×10×5.5=495 WP = 9.0 \times 10 \times 5.5 = 495 \text{ W}

篠原電機の資料の計算例(3.24 m2×10 C×5.5=178.2W3.24 \text{ m}^2 \times 10\text{ }^\circ\text{C} \times 5.5 = 178.2\text{W} → 出力200Wを選定)と同じ考え方で、算出値を上回る出力になるよう機種を組み合わせます。この例なら 100W×5台(計500W) といった構成になります。外気温と盤内設定温度の置き方で必要容量は比例して動くため、この2つを先に決めてから計算に入るのが順序です。


一段深い理解:容量計算で見落としやすい2つの落とし穴

K値を「鋼板一律」で計算してしまう誤り

篠原電機の資料が示す伝熱係数KKは、鋼板5.5 W/m²・K、プラスチック3.5 W/m²・Kという材質別の値だ。同じ寸法の盤でも材質が違えば必要容量は変わる、という前提が式に組み込まれている。逆に言えば、盤の材質を確かめずに「鋼板の5.5」を当てはめると、樹脂製キャビネットでは容量を過大に見積もることになる。断熱材を内張りした盤やステンレス製の盤のように、これら2区分に当てはまらない構成では、標準値をそのまま流用せず盤メーカーに確認するのが安全側だ。

ΔTを「外気+何℃」の固定値だと思い込む誤り

ΔTは「外気より何℃高くするか」という定数ではない。篠原電機の定義どおり、盤内(設定)温度 tit_i から外気温 tut_u を引いた差である。同社の計算例が外気5℃・盤内15℃でΔT=10℃を採っているように、冬季の設計外気温が低い現場ほどΔTは自然に大きくなる。「一律に外気+5℃」といった覚え方で計算に入ると、寒冷地では容量が足りず、温暖地では過大になる。

一方で、盤内設定温度を上げすぎることには別のリスクがある。盤内のPLC・保護継電器・パワーコンディショナといった電子機器を常時高い温度にさらせば、そちらの寿命を縮めかねない。決めるべきは「外気との差」ではなく「保ちたい盤内温度」で、そこから設計外気温を引いた値がΔTになる、という順序を守りたい。

3. スペースヒーターの効果的な配置設計と取付ルール

ヒーターは、その熱対流の性質(温かい空気は上へのぼる)を理解して、盤内の正しい位置に配置しなければ効果が半減します。

キュービクル内部の位置配置
上部高圧機器・継電器エリア
下部スペースヒーター配置(対流で熱が上へ昇り、上部の結露を防ぐ)

① 守りたい機器の「下」に置く

篠原電機の技術資料は、スペースヒーターについて「出来る限り、保護を要する部品の下部に取り付けてください」としています。温まった空気は上へ昇るため、結露から守りたい高圧機器や継電器の下側にヒーターがあってはじめて、その機器の周囲を暖気が通ることになります。逆に守りたい機器より上に付けると、下側の空気は温まらないまま残ります。

② メーカーが指定する離隔を確保する

ヒーター本体の周囲は高温になるため、同資料は次の離隔を求めています。

  • ヒーター上部に約50mm以上のスペースを設ける(盤内の対流をスムーズにするため)
  • 側面からは最小10mm
  • プラスチック部品からは50mm以上離す

樹脂ケースの保護継電器やシーケンサ、電線の被覆といった熱に弱い部材は、この「プラスチック部品から50mm以上」の対象になります。同資料は製品ごとの温度上昇値(取付姿勢別の実測例)も公開しているので、狭い盤に押し込まざるを得ない場合は、その数値と併せて配置を決めてください。


4. サーモスタット(温度調節器)を連動させた制御回路

無駄な電気代をカットし、機器の熱劣化を防ぐため、ヒーター回路には必ず「温度調節器(サーモスタット)」を組み込んで自動ON/OFF制御を行います。

標準的な接続配線図(シーケンス回路)

電源 (AC100V または AC200V)

   ├───────[ 制御用MCCB(ブレーカー) ]────────┐
   │                                          │
   ▼                                          ▼
[ サーモスタット接点 (常時閉/b接点) ]          [ スペースヒーター ]
   │(設定温度以下でON)                      ▲
   └──────────────────────────────────────────┘

制御動作

  • 設定の考え方: ON/OFFのしきい値は、容量計算で決めた盤内設定温度(前掲の例では15℃)を基準に置きます。「外気より何℃」ではなく「盤内を何℃に保つか」で設定する、という点は容量計算と同じです。
  • 動作メカニズム:
    1. 盤内温度が設定温度を下回ると、サーモスタットの接点が「閉(ON)」になり、ヒーターへ給電が開始されます。
    2. ヒーターが盤内空気を温め、設定温度に達すると接点が「開(OFF)」になり、通電を自動遮断します。
    3. ON/OFFの温度幅(動作すきま)は製品仕様で決まります。オリムベクスタの温度スイッチでは、設定温度でヒーターをOFFにし、そこから4℃下がると再びONにする、という動作が案内されています。
    4. これにより、湿度の高い季節や寒冷期の夜間・早朝など、結露の危険性がある温度帯のときだけヒーターが動き、不要な昼間や夏季は自動で停止します。

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よくある質問

スペースヒーターは1年中常時通電させておく必要がありますか?

常時通電(常時ON)させると、夏場など結露が発生しにくい季節において余計な電力を浪費し、盤内温度が上がりすぎて他の電子機器(シーケンサやパワーコンディショナなど)の寿命を縮める原因になります。そのため、盤内設定温度が一定以下(例: 10℃〜15℃以下)、または相対湿度が高くなった(例: 70%〜80%以上)ときに自動でヒーター回路をONにする「温度調節器(サーモスタット)」や「湿度調節器(ハイグロスタット)」を直列に接続して自動制御するのが標準的な設計です。

結露対策として、ヒーターを設置する以外に「盤の通気口(ファン)」を設けるのは有効ですか?

屋外設置のキュービクルや防雨型制御盤の場合、安易に通気口やファンを増設すると、屋外の湿った空気が余計に盤内に引き込まれ、夜間冷却時にかえって結露を悪化させるケースがあります。ファンを回して通気を行うのは、盤内部の発熱(トランスやインバータ熱)を逃がすための「熱対策」としては有効ですが、「結露・防湿対策」としては盤の密閉性を高め、スペースヒーターで盤内温度を設計した設定温度まで上げて相対湿度を下げる方が安定します。必要なヒーター容量は、盤内設定温度と設計外気温の差から計算して決めます。

参考文献・出典

  • 技術資料~スペースヒーター容量算定目安(篠原電機株式会社) (必要容量QH=A×⊿T×K。伝熱係数Kは鋼板5.5W/m²・K・プラスチック3.5W/m²・K。⊿T=ti(盤内設定温度)−tu(外気温)。表面積Aは設置状態A〜Fの6パターン別の式。計算例は外気5℃・盤内15℃(⊿T=10℃)。取付上の注意(ヒーター上部に約50mm以上、側面最小10mm、プラスチック部品から50mm以上、保護を要する部品の下部に取り付ける))
  • No.7 結露・湿度から守る!ヒーターの活用法(オリムベクスタ株式会社) (飽和水蒸気量と相対湿度の関係、温度低下で結露が生じる仕組み。「ヒーターで盤内の温度をコントロールする」ことは「ヒーターで盤内の相対湿度をコントロールする」ことになるという原理。温度スイッチは設定温度でヒーターOFF・4℃下がると再ON)
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