在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
照明設計電気設計

非常用照明の電源別置形はなぜ配線長に制約があるのか|電圧降下計算と配線サイズ選定の実務

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

竣工検査の当日、非常用照明の一斉点灯試験が行われている。廊下の途中まではどの器具も同じように白く光っているのに、いちばん奥の器具だけが心なしか頼りない。型番も配線工事も他の器具と変わらないはずなのに、床に置いた照度計の針は基準ぎりぎりのところで止まっている。器具の不良を疑いたくなるところだが、原因はそこまで電気を届けた配線の側にあるかもしれない。

電源別置形の非常用照明は、1台の電源装置(蓄電池設備)から専用回路を伸ばし、複数の器具へ電力を配る方式だ。電池を1台ずつ抱える電池内蔵形とは違い、電気は電源装置から配線を伝って器具まで旅をする。この記事では、その「旅の途中で何が起きるのか」——電圧降下という現象が、なぜ電源別置形特有の設計上の制約になるのかを、一次資料に基づいて整理する。電池内蔵形と電源別置形の使い分け自体は既に別記事で扱っているため、ここでは電源別置形を採用したあとの配線設計に絞って進めたい。

なぜ配線の話になるのか——電源別置形だけが背負う防火措置

まず押さえておきたいのは、この「配線が長くなる問題」が電源別置形固有のものだという法的な裏付けだ。

建設省告示第1830号(非常用の照明装置の構造方法を定める件)第二「電気配線」は、電気配線について耐火構造の主要構造部に埋設するか、不燃材料の天井裏に鋼製電線管で配線するか、あるいは裸導体バスダクト・耐火バスダクト・MIケーブルを用いるといった防火措置を講じることを求めている。電線そのものも、600Vの二種ビニル絶縁電線と同等以上の耐熱性を持つものに限定されている。停電や火災の最中でも配線が焼き切れて機能を失わないようにする、という趣旨からすれば当然の要求だろう。

ところが同告示の五号には、こう書かれている。「照明器具内に予備電源を有する場合は、電気配線の途中にスイッチを設けてはならない。この場合において、前各号の規定は適用しない」。つまり電池内蔵形——器具の中に電池を持つタイプ——には、この防火措置の各規定がそもそも及ばない。理由は単純で、内蔵形は電池から光源までの配線が器具の内部で完結しており、守るべき「途中の配線区間」自体が存在しないからだ。

電源別置形が配線設計という一段面倒な工程を背負うのは、まさにこの「途中の配線区間」を持つ構造そのものに起因する。防火措置を講じた配線を、電源装置から離れた場所にある器具まで確実に届ける必要がある。そしてその配線が長くなればなるほど、次に説明する電圧降下という別の問題が顔を出す。

電圧降下という物理現象——電気は「伝わるほど痩せる」

電線には抵抗がある。電流がその抵抗を通過するとき、電圧の一部が熱として失われ、電線の終端に届く電圧は送り出した電圧よりも低くなる。この目減り分が電圧降下で、配線が長いほど、また電線が細いほど大きくなる。

非常用照明の器具は、決まった定格電圧で決まった明るさが出るように設計されている。電源装置から送り出した電圧が、廊下の突き当たりの器具に届くころには目減りしているとすれば、その器具は本来の照度を出せていない可能性がある。しかも、これがいちばん困る場面は停電時、つまり避難者の足元を照らすことが最も必要とされる瞬間だ。平常時の外観検査では見抜けない性質の弱点であることも、厄介さに拍車をかける。

電圧の「取り分」は、蓄電池と配線で奪い合っている

ここでもう一つ押さえておきたいのが、電圧降下の発生源は配線だけではないという点だ。パナソニックの公式FAQは、予備電源別置形器具を使用する場合の照度計算について、こう案内している。「30分間非常点灯後の予備電源(蓄電池)の電圧降下、および配線による電圧降下の総和を考慮した器具端子電圧により照度を計算してください」。

つまり器具に最終的に届く電圧は、蓄電池自体が放電にともなって電圧を落とす分と、配線区間で目減りする分の、両方が差し引かれた残りだということになる。定格電圧に対して許容できる目減りの総量には限りがあり、蓄電池側の降下が大きければ配線側に残された余裕は小さくなるし、配線を長く引けば蓄電池側にしわ寄せが行くわけではないにせよ、器具端子で確保すべき電圧の水準そのものは動かない。配線設計者が電線の太さや長さを検討するとき、蓄電池の放電特性と無関係に配線だけを見ていては、この総和という発想を見落とすことになる。

わずかな電圧低下が、明るさでは大きな損失になる

では、その「わずかな目減り」がどの程度の影響を持つのか。岩崎電気の照明設計資料は、非常灯の配置間隔を算出するにあたって、電源別置形器具の場合は器具端子電圧90V(光束換算係数0.7)を前提に計算していると明記している。定格100Vに対して1割の電圧降下を見込み、そのときの光束(明るさ)は定格の7割相当まで落ちる、という設計上の想定だ。

電圧の1割の低下が、明るさでは3割の損失として跳ね返ってくる。電圧と光束の関係は単純な比例ではなく、電圧が下がるほど光束の落ち込みが加速する非線形な関係にあるためで、「配線がちょっと長いだけ」という感覚的な判断が、実際の照度不足に直結しかねない理由がここにある。

もっとも、この0.7という係数をそのままLED器具に当てはめるのは早計だ。日本照明工業会のJIL5501附属書8(2017年改正、LED光源を用いた非常用照明器具の技術基準)では、電源別置形の光束換算係数について「製造者が公表する光束値で、光束換算係数は1.0とする」と定めている。白熱灯・ハロゲン灯を前提にした一律の換算係数から、LED光源では製造者が実測した公表値をそのまま使う方式へと、設計の考え方自体が切り替わっているわけだ。言い換えれば、電圧降下をどこまで見込んで大丈夫かという判断の責任は、汎用的な係数ではなく、採用する器具・電源装置の実際の性能値に委ねられている。

電線サイズと配線長は、セットで管理すべき数値

この「性能値に委ねられている」という構造は、配線設計の実務にもそのまま反映されている。JIL5501附属書8は、電源別置形の電源装置(コントロールユニット・分離形ユニット)の仕様図に記載すべき事項として、「蓄電池に接続する電線の導体断面積及びその長さ(必要ある場合に限る)」を挙げている。電線の太さと配線の長さが、単なる施工上の選択肢ではなく、その電源装置の性能を保証するために明記すべき設計条件として扱われているということだ。

一般に、低圧配線の電圧降下を抑えるための考え方としては、配線こう長に応じた許容値の目安がある。岩崎電気の配線設計資料によれば、電気事業者から低圧供給を受ける場合の電圧降下の許容値は、配線こう長60m以下で2%、120m以下で4%、200m以下で5%、200mを超えると6%とされ、単相2線式であれば「電圧降下(V)=35.6×こう長(m)×電流(A)÷(1000×断面積(mm²))」という簡略式で見積もることができる。ただし、これは低圧配線全般に適用される一般的な設計手法であって、非常用照明の電源別置形に固有の許容値を定めたものではない。実際にどこまでの配線こう長・電線サイズが許容されるかは、採用する電源装置の機種ごとに異なり、その機種の施工要領書・仕様図で個別に確認するほかない。

「だいたいこれくらいの太さの電線を、だいたいこれくらいの距離まで引けば大丈夫」という感覚での配線設計が通用しにくいのは、このためだ。電源装置の型式が決まれば、その型式が保証する電線サイズと配線こう長の組み合わせも決まる。改修工事で既存の電源装置に器具を増設する場合や、配線ルートの都合で当初の想定より配線が長くなる場合は、その組み合わせが崩れていないかを、あらためて仕様図で確認する作業が欠かせない。

一般的な照明回路の電線サイズ選定であれば、負荷電流に対する許容電流と、分岐回路としての電圧降下許容値を満たせばそれで足りる。ところが電源別置形の非常用照明では、その電線1本の太さと長さが、非常時に器具がどれだけの光束を出せるかという性能そのものに直結している。電線サイズの選定が「壊れないための計算」で終わらず、「非常時に規定の照度を確保するための計算」にまで踏み込む点が、この設備特有の重さだと言える。

現場で確認しておきたいこと

  • 採用する電源装置(蓄電池設備)の施工要領書・仕様図に、許容される電線サイズと配線こう長、接続可能な器具台数が明記されているか
  • 既存回路に器具を増設する場合、配線こう長・器具台数の増加が、当初設計の余裕を超えていないか
  • 電源別置形の配線区間には、建設省告示第1830号に基づく防火措置(耐火構造への埋設、鋼製電線管、耐火バスダクト、MIケーブル等)と耐熱電線の使用が求められること
  • LED器具については、白熱灯時代の換算係数をそのまま流用せず、製造者が公表する実測の光束値・許容配線条件に基づいて設計されているか

配線こう長が伸びるほど、電圧降下という見えにくいコストが積み上がっていく。図面上は正しく配線されているように見えても、その配線が電源装置の想定した条件の中に収まっているかどうかは、別の確認事項として残る。

見積もり依頼をする →

あわせて読みたい

関連する非常用照明・電源別置形・電圧降下・配線設計の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。

対象の電材・品種を検索する →

参考文献・出典

QUOTATION SIGNAL

電設資材・FA部品の無料見積もり

仕入れコスト削減、廃盤代替品の選定、お急ぎの在庫確認まで。型番や数量を送っていただくだけです。 手書きメモや型番リストの写真・PDFでも依頼できます。

SPONSOR / AD

Google AdSense 広告配信エリア

(AdSense管理画面で広告ユニットを作成し、実際のslot値に差し替えるとここに本番広告が挿入されます)

AIと状況を整理してから相談する

普段お使いのChatGPT・Gemini・Perplexity等に貼り付けられる質問文をコピーできます。 自分の状況を伝えて相談すると、最後に電材サーチへの見積依頼文もまとめてもらえます。