制御盤の図面の電線表に、主回路はIV、操作回路はKIV、非常用の回路だけHIVと書き分けてある。どれも600Vのビニル絶縁電線で、2sqなら仕上り外径はどれも3.4mm前後。手に取っても、印字を読まなければ見分けにくい。
違いは中身にある。2sqの導体をほどくと、IVは直径0.6mmの素線が7本、KIVは直径0.26mmの素線が37本。では、同じ太さ・同じ外径なのに、なぜ盤の中ではKIV、建物の電線管にはIVという使い分けが生まれたのか。答えの半分は導体の構造に、残りの半分は法令の「配線」という言葉の定義にある。
3種は「導体の柔らかさ」と「絶縁体の耐熱」の2軸で分かれる
日本規格協会の規格概要によると、KIV(JIS C 3316)は600V以下の電気機器の配線に使う、導体が可とうよりの塩化ビニル絶縁電線。IV(JIS C 3307)は一般電気工作物や電気機器の配線に使う単心の絶縁電線、HIV(JIS C 3317)は耐熱性可塑剤を使ったビニルで絶縁した電線だ。KIVは柔らかさの軸、HIVは耐熱の軸で、IVから枝分かれしている。
| 種類 | 規格 | 規格の想定する用途 | 2sqの導体 | 導体最高許容温度 | 標準色(メーカー仕様) |
|---|---|---|---|---|---|
| KIV | JIS C 3316 | 電気機器の配線 | 可とうより 37/0.26 | 60℃ | 黒・白・赤・緑・黄・青 |
| IV | JIS C 3307 | 一般電気工作物・電気機器の配線 | より線 7/0.6(単線もあり) | 60℃ | 黒・白・赤・緑・黄・青 |
| HIV | JIS C 3317 | 一般電気工作物・電気機器の配線 | より線 7/0.6(単線もあり) | 75℃ | 原則黒、色分け時は上と同じ6色 |
出典:規格の想定用途は日本規格協会の規格概要、導体構成・温度・色はフジクラ・ダイヤケーブルのKIVカタログ・IV・HIVカタログと住電HSTケーブルの仕様書による。
これらは外装(シース)の無い絶縁電線なので、建物の配線では電線管やダクトに収めて使う。外装が要る場所はVVFやCVなどのケーブルの出番だ。
2sqの中身:素線7本と37本
同じ公称断面積で導体を比べると、柔らかさの差は素線の太さと本数に表れる。仕上り外径はほとんど変わらない。
| 公称断面積 | IV(より線) | KIV(可とうより) | 仕上り外径(IV/KIV) |
|---|---|---|---|
| 1.25sq | 7/0.45 | 50/0.18 | 3.0mm/3.1mm |
| 2sq | 7/0.6 | 37/0.26 | 3.4mm/3.4mm |
| 3.5sq | 7/0.8 | 45/0.32 | 4.0mm/4.1mm |
| 5.5sq | 7/1.0 | 70/0.32 | 5.0mm/5.1mm |
単位は 素線数/素線径mm。IVは住電HSTケーブル IV LF仕様書とフジクラ・ダイヤケーブルのカタログ、KIVはフジクラ・ダイヤケーブルのKIVカタログ。外径はメーカー・製品で違うので、端子や配線ダクトの選定ではそのメーカーの構造表で確かめる。
素線が細いほど、同じ半径で曲げたときに素線1本が受けるひずみは小さくなる。制御盤の扉に付けた押しボタンや表示灯への渡り線は、扉を開け閉めするたびにヒンジ部で曲げられる。フジクラ・ダイヤケーブルはKIVの特長に「可とう性に富む」を挙げている。その柔らかさが効くのは、こうした動く配線だ。
ただし、盤の中がすべてKIVである必要はない。同社のカタログはIVについても、電気機器用配線や盤内配線の配線材料として最も一般的だと書いている。曲げの少ない固定配線なら、図面の指定どおりIVでもよい。
一段深い理解:盤の中の電線は、法令上の「配線」ではない
電気設備に関する技術基準を定める省令の第1条第十八号は、「配線」を「電気使用場所において施設する電線(電気機械器具内の電線及び電線路の電線を除く。)」と定義している。制御盤や分電盤の中の電線は、この「電気機械器具内の電線」にあたる。KIVの規格が「電気機器の配線に用いる」電線として別に立てられているのも、この区分と重なる。
区分の違いは、使える太さに表れる。電気設備の技術基準の解釈 第146条第1項は、低圧配線を直径1.6mmの軟銅線またはこれと同等以上の強さ・太さのものとしている。例外は使用電圧300V以下の場合に限って設けられており、制御回路などでは、直径1.2mm以上の軟銅線を電線管工事などで施設する場合や、断面積0.75mm²以上の多心ケーブルを過電流遮断装置付きで使う場合が当たる。
フジクラ・ダイヤケーブルのIVカタログは、0.9sqや1.25sqの許容電流を括弧書きにして、配線に使う電線とは認められていないサイズなので参考値だ、と注記している。盤の中では当たり前に使う1.25sqのKIVやIVも、盤の外へ出て建物の配線になった途端、太さの規定がかかる。盤から現場の機器へ電線管で引き出す配線は、第146条の太さと例外の条件に当てはまるかを確かめてから拾う。
HIVの「約1.2倍」はどこから来るか
フジクラ・ダイヤケーブルのカタログは、HIVの許容電流をIVの約1.2倍としている。周囲温度30℃・気中1条で、2sqは27Aに対して33A、5.5sqは49Aに対して60A、14sqは88Aに対して107Aだ。
この倍率は、電技解釈146-3表の補正係数の式から読める。耐熱性の無いビニル混合物は √((60−θ)/30)、耐熱性を有するビニル混合物は √((75−θ)/30)(θは周囲温度、30℃以下なら30)。周囲30℃では1.00と√1.5≒1.22で、これが「約1.2倍」の正体だ。周囲40℃ではIVが0.82、HIVが1.08になり、差は約1.3倍に開く。暑い場所ほどHIVの価値は上がる。
熱で弱るのは絶縁体も同じだ。同じカタログの最小絶縁抵抗は、IVの2sqで20℃なら50MΩ・km、上限の60℃では0.15MΩ・kmと、300分の1ほどに下がる。HIVは75℃で0.05MΩ・kmが規定値だ。フジクラ・ダイヤケーブルの技術資料は、許容電流を、電線の温度上昇を一定限度に抑えて「電線の持っている特性を不当に損ずることなく、適正な年限の使用ができるように定められたもの」と説明している。
現場で間違いやすい点
柔らかさが欲しいだけでHIVを指定する
耐熱と柔らかさは別の軸なので、HIVを選んでも導体が柔らかくなるわけではない(2sqはIVと同じ7/0.6)。熱にも曲げにも対応したいなら、可とうより導体に耐熱ビニルを組み合わせたH-KIV(HKIV)のような製品がある。タツタ電線の資料は、KIVを60℃、HKIVを75℃として許容電流を分けて示している。
消防設備はHIVに替えれば終わり、ではない
消防法施行規則第12条は、屋内消火栓設備の非常電源回路の配線に「六百ボルト二種ビニル絶縁電線又はこれと同等以上の耐熱性を有する電線」を使い、耐火構造とした主要構造部に埋設するなどして保護することを求めている(MIケーブルや消防庁長官が定める基準に適合する電線を使う場合を除く)。操作回路は同じ電線を金属管工事などで施設する。電線の種類と施工方法がセットで決まっているので、HIVを指定するときは施工方法まで確かめる。耐火電線との違いは耐火ケーブルの解説を参照。
接地線の色を現場ごとに変える
機械の電気装置の規格JIS B 9960-1(IEC 60204-1)には「導体の識別」の節があり、その各国差異の注記から、保護導体は緑と黄の2色の組合せが基本で、米国・カナダでは緑単色も同等に扱うことが読み取れる。タツタ電線の仕様書も緑/黄を接地線用としている。それ以外の色の割当ては盤の設計基準・社内基準で決まるので、発注前に色別の数量を確定させる。
注文・見積で伝える項目
「種類+サイズ(sq)+色+長さ」で伝えれば聞き返しが減る。例:「KIV 1.25sq 黄 200m」「IV 5.5sq 緑 30m」。
- 長さ:巻(定尺)か必要なm数か。標準の条長と荷姿(箱・タバ・ドラム)はメーカーとサイズで違う
- 色:フジクラ・ダイヤケーブルと住電HSTケーブルの仕様では黒・白・赤・緑・黄・青の6色が標準。緑/黄などはメーカーの品ぞろえを確かめる
- 耐熱の要否:HIV・H-KIVを指定する理由(周囲温度か、消防設備か)を添える
- 価格:銅建値(銅の月次相場)で変わるので、見積は発注の直前に取り直す
同じ60℃のビニルでも、フジクラ・ダイヤケーブルのカタログの許容電流はKIV 2sqが22A、IV 2sq(より線)が27Aと違う。KIVの電流値はKIVの表で読む。
盤内でKIVと組み合わせる圧着端子の選び方は圧着端子の種類と選び方、許容電流の補正は許容電流と電流減少係数の解説にまとめている。
関連情報
- IV電線・KIV電線・H-KIVの品種ガイド(メーカー横断の型番一覧)
- KIV/H-KIVの製品詳細(古河電工メタルケーブル)
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