PR 本記事で紹介する商品リンクにはAmazonアソシエイト・プログラム等のアフィリエイトリンクが含まれます。詳細は広告についてをご覧ください。
制御盤の改修で、絶縁付の丸形端子を、手元にあった裸端子用の圧着工具でかしめたとする。端子は電線に付いても、ビニルのスリーブが裂けて金属がのぞく。端子メーカーのニチフが、資料「圧着作業の基本」で「よくある事故」として挙げている組合せだ。裂け目から露出した金属は、隣の端子とのショートの原因になる。
端子のサイズを電線に合わせても、工具を取り違えれば台無しになる。圧着端子の選び方は、電線・端子・工具の3つを同時に合わせる作業だ。どれか1つがずれると、接続部は「電線抜け」か「電線切れ」のどちらかへ向かう。では、何と何を、どう合わせればいいのか。
電線サイズ・ねじ径から端子の呼びとダイスの位置を確かめたいときは、圧着端子 呼び名・ダイスサイズ早見ツールも使える。
圧着端子の種類:JIS C 2805が定めるのは裸端子と絶縁付端子
JIS C 2805:2010「銅線用圧着端子」は1969年に制定され、6回の改正を経た規格で、原案は日本電機工業会(JEMA)が作成した。対応する国際規格は無い。適用範囲は、主として電力用機器の内部や機器相互の配線に使う軟銅のより線・単線の端末に圧着する端子で、対象は2種類だけだ。電線の端末に圧着する裸圧着端子(裸端子)と、絶縁体の上から圧着する絶縁被覆付圧着端子(絶縁付端子)。注記で、絶縁付端子は制御回路などの配線に使うとしている。
| 種類 | JIS C 2805での扱い | 圧着工具の歯口(ニチフ) | 圧着後の絶縁 | 単線に使うか(ニチフ) |
|---|---|---|---|---|
| 裸圧着端子(R形・Y形・棒形など) | 対象。電線の端末に圧着 | 歯口1枚。凹凸の歯口で1か所をかしめる | 絶縁キャップ・熱収縮チューブ等が別に要る | 使う |
| 絶縁被覆付圧着端子 | 対象。絶縁体の上から圧着 | 歯口2枚。心線部と被覆部の2か所を同時にかしめる | 不要(スリーブ一体) | 使わない(より線向け) |
| 棒端子(フェルール端子) | 適用範囲の条文に記載なし | 端子台・棒端子のメーカーが指定 | 絶縁スリーブ付きは不要 | 端子台メーカーの仕様による |
出典:JIS C 2805:2010 プレビューの1 適用範囲、ニチフ「圧着作業の基本」。
圧着に使う工具も規格の前提に入っている。JIS C 2805は、JIS C 9711に規定する接続工具か、端子の製造業者が指定する工具で圧着する端子について規定している。メーカーのカタログには、このほかに裸圧着スリーブ・差込形接続端子・圧着銅管端子・連鎖形圧着端子といった別区分の製品も並ぶ(ニチフ公式 製品カテゴリ)。「圧着端子だからJIS C 2805」とひとまとめにせず、製品ごとの仕様書で確かめる。
端末の形:丸形(R形)・先開形(Y形)・棒形
裸端子は、ねじに留める端末の形で呼び分ける。ニチフの製品分類では丸形(R形)・先開形(Y形)・棒形(TC形)などに分かれる。丸形はねじを外さないと端子を外せず、先開形はねじを緩めれば抜き差しできる。どちらを使うかは、端子台や機器の取扱説明書の指定と、点検で抜き差しするかどうかで決める。
電線と端子は「電線抱合範囲」で合わせる
端子のサイズの呼び(1.25、2、5.5など)は、そのまま電線の太さの指定ではない。合わせるのは、端子ごとに決まった電線抱合範囲だ。ニチフの資料では、R 1.25-4形が0.25〜1.65mm²、R 2-4形が1.04〜2.63mm²で、1.25mm²の電線はどちらの範囲にも入る。範囲より細い電線は「電線抜け」、範囲より太い電線は「電線切れ」などの事故の原因になる、と同資料は注意している。
| 電線断面積(mm²) | 裸端子の品番例(ニチフ R形/Y形) | 裸端子用絶縁キャップ(ニチフ TIC) |
|---|---|---|
| 0.75mm² | R 0.75-□ / 0.75Y-□ | TIC 0.75 |
| 1.25mm² | R 1.25-□ / 1.25Y-□ | TIC 1.25 |
| 2mm² | R 2-□ / 2Y-□ | TIC 2 |
| 3.5mm² | R 3.5-□ / 3.5Y-□ | TIC 3.5 |
| 5.5mm² | R 5.5-□ / 5.5Y-□ | TIC 5.5 |
| 8mm² | R 8-□ / 8Y-□ | TIC 8 |
| 14mm² | R 14-□ / 14Y-□ | TIC 14 |
□は使うねじの呼び径(例:R 1.25-3.5はM3.5用)。品番末尾にN・Sなどが付く派生品もあるので、寸法はメーカーの製品情報で確かめる。
絶縁付端子は、スリーブの色で適合範囲の目安を見分けられる製品が多い。ただし色は規格で一律に決まった値ではない。ニチフの絶縁被覆付圧着端子TMEX形(丸形)の例は次のとおり。
| スリーブ色 | 品番の例(ニチフ TMEX形) | 電線抱合範囲 |
|---|---|---|
| 赤 | TMEX 1.25-□ | 0.3〜1.65mm²(AWG 22-16) |
| 青 | TMEX 2-□ | 1.04〜2.63mm²(AWG 16-14) |
| 黄 | TMEX 5.5-□ | 2.63〜6.64mm²(AWG 12-10) |
同じTMEX形でも、TMEX 0.3(0.2〜0.5mm²)は黄色。色だけで断面積を決めず、品番と電線抱合範囲で確かめる。
輸入機器の電線がAWG表記のときは、電線抱合範囲のAWG欄で合わせる。
| AWG | おおよそのmm² | 電線抱合範囲に含むニチフ裸端子の例 |
|---|---|---|
| AWG 22 | 0.33mm² | R 0.75(AWG 22-18)・R 1.25(AWG 22-16) |
| AWG 18 | 0.82mm² | R 0.75・R 1.25 |
| AWG 16 | 1.31mm² | R 1.25(AWG 22-16)・R 2(AWG 16-14) |
| AWG 14 | 2.08mm² | R 2(AWG 16-14) |
| AWG 12 | 3.31mm² | R 3.5(AWG 12)・R 5.5(AWG 12-10) |
| AWG 10 | 5.26mm² | R 5.5(AWG 12-10) |
AWG→mm²換算は参考値。詳しくはAWG・sq換算表。輸入電線や機器付属の電線は、メーカー仕様書の外径も確かめる。
この「束ねる電線の太さに合った圧着具を選ぶ」という原則は、第二種電気工事士の技能試験でも形を変えて出てくる。試験で使うのは端子ではなくリングスリーブで、電線の太さと本数の合計からスリーブの呼び(小・中・大)を決め、対応する歯口で圧着マーク(○・小・中・大)を刻む。詳しくはリングスリーブの選定と圧着マークにまとめている。
工具は端子の種類で選び、歯口は端子のサイズで選ぶ
ニチフの資料は、端子の種類ごとに適正な工具を分けている。裸圧着端子は裸端子用工具で、凹凸の歯口1枚で1か所をかしめる。絶縁付圧着端子は絶縁付端子用工具で、歯口2枚で電線の心線部と被覆部の2か所を同時にかしめる。閉端接続子には閉端接続子用工具を使う。同社の工具の例では、裸端子・スリーブ用のNH1が1.25〜8mm²、絶縁付端子用のNH32が0.3/0.5〜2mm²に対応する。
同じ工具の中でも、端子サイズごとにかしめる歯口が決まっている。R 1.25-4の端子なら、工具の「1.25mm²」の歯口にセットする。複数のサイズを扱う盤では、端子と工具の対応を一覧にしておくと取り違えが減る。
ラチェット付きの工具は、規定の位置まで握り込むまで歯口が開かない。ニチフの資料は「ラチェットは圧着不足を防止する目的で取り付けられています」として、外さないよう注意している。棒端子は、端子台や棒端子のメーカーが指定する専用工具と組み合わせる。
圧着ペンチ ラチェット式(Amazon) — 確実な圧着ができるラチェット機構付き圧着工具を確認できます
圧着の手順と、やり直しが要る仕上がり
ニチフの資料から、手順の要点を抜き出すと次のようになる。
- 被覆をむく:心線が圧着部を貫通して約1mm出る長さにし、被覆を圧着部に入れない。寸法は端子ごとの取扱説明書に合わせる。
- 歯口を選ぶ:端子サイズに対応する歯口にセットする。
- 向きを合わせる:裸端子は筒の継ぎ目(銀ロー付部)を上にして、凸側のオスダイスでかしめる。絶縁付端子は、心線部用の薄い歯と被覆部用の厚い歯の向きを逆にしない。
- 位置を合わせる:筒(電線挿入部)の中心をかしめる。
- 握り切る:ラチェットが解除されるまで握る。
| 仕上がり | 判定 | 起きること(ニチフの資料による) |
|---|---|---|
| 筒の中心を圧着、心線が約1mm出ている | 良 | 正しい圧着 |
| 筒の後端(電線側)を圧着 | 不良 | 電線切れの原因 |
| 筒の前端(ねじ側)を圧着 | 不良 | 電線抜けの原因 |
| 被覆が筒に入っている、心線が届いていない | 不良 | 被覆ムキ寸法不良・電線挿入不良 |
| 絶縁付端子で歯口の向きが逆 | 不良 | 心線が十分圧着できず電線抜けの原因 |
現場で間違いやすい点
単線に絶縁付端子を使う
ニチフは、単線には裸圧着端子・裸圧着スリーブを使い、絶縁キャップや絶縁チューブ、テーピングで絶縁するよう案内している。絶縁付端子・絶縁付スリーブはより線と組み合わせる前提だ。IVの単線やVVFの芯線に端子を付けるときは、裸端子と絶縁キャップ(ニチフならTIC)の組合せを選ぶ。
素線を切って細い端子に押し込む
太い電線が小さい端子に入らないからと素線を間引くと、電線の断面積を自分で減らすことになる。電線抱合範囲は電線の公称断面積で決まっているので、間引いた電線はどの端子の範囲にも正しく収まらない。手元に合う端子が無いなら、範囲に合う端子を取り寄せる。電線を間引いて圧着してはいけないことは、第二種電気工事士の試験でも電線の接続の条件として問われる。
「入った」を「合っている」と思う
差し込めたことは適合の証明にならない。1.25mm²の電線はR 1.25にもR 2にも入るが、0.75mm²の電線もR 2の筒には入ってしまう(R 2の範囲は1.04mm²から)。品番の電線抱合範囲と電線の公称断面積を照らしてから圧着する。
一段深い理解:最初の圧着端子は「輪の付いた小さな金属管」だった
TE Connectivityは、自社ブランドAMPの始まりを1941年9月15日としている。ニュージャージー州の小さなギリシャ料理店の上の部屋で、技術者のアンカス・A・ホイテカーが、はんだ付けに代わる「圧着接続」を考え出した。片側に輪の付いた小さな金属管と、それをかしめる専用工具の組合せで、はんだを使わずに速く着脱できる接続を作れた。今の丸形(R形)裸端子と同じ姿だ。
彼が興した会社の名は Aircraft Marine Products、略してAMP。航空機と船舶のための製品、という名前どおり、圧着接続は第二次世界大戦中に開発された、より高い高度を飛び、衝撃と振動がはるかに大きい航空機で使われた、と同社は説明している。
振動への強さは、今の規格でも試験項目になっている。JIS C 2805の性能項目には、圧着接続性・温度上昇・ヒートサイクル・引張強さに並んで「振動疲労」があり、塩水噴霧や過電流耐力、低温圧着接続性まで試験する。引用規格には銀ろうとりん銅ろうも並ぶ。ニチフの裸端子の筒にも銀ロー付けの継ぎ目があり、同社はこの「銀ロー付部」を上にしてオスダイスでかしめるよう指示している。
日本では、ニチフが1955年に圧着端子の国内初の製造を実現したと説明している。同社の創業は、AMPの物語が始まったのと同じ1941年だ。JIS C 2805が制定されたのは、国内初の製造から14年後の1969年だ。
主要メーカー
- ニチフ:裸圧着端子・絶縁被覆付圧着端子・圧着スリーブ・閉端接続子と、それぞれの圧着工具を扱う(ニチフのメーカーページ、ニチフ圧着端子の型番の読み方)。
- TE Connectivity:AMPブランドの端子・コネクタを扱う。輸入機器の改修では、機器側の指定品として出てくることがある(TE Connectivityのメーカーページ)。
圧着端子セット 各種(Amazon) — 裸端子・絶縁端子・棒端子の各種セットを確認できます
関連情報
関連する圧着端子・選び方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。