本番の学科試験、配線図問題の終盤にこんな設問があった。「⑨で示すボックス内の接続をすべて圧着接続とした場合、リングスリーブの種類と最少個数の組合せで正しいものは。」
ある受験者は、図面の⑨のジョイントボックスに出入りするケーブルを数えた。電源からの1本、照明への1本、スイッチへの1本、コンセントへの1本——合わせて4本。だから「スリーブ4個」を含む選択肢を選んだ。数え間違いはしていない。ケーブルは確かに4本だ。それでも、この問題は落とした。
正しく数えたのに、なぜ答えが違うのか。見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、この形式の問題を最初の1分で正確に解けるようになっている。
箱の中で、ケーブルは姿を変える
ジョイントボックスの中で起きていることを想像してみよう。ボックスに入ってきたケーブルは、外装をはぎ取られて2本(2心なら)の心線に分かれる。4本の2心ケーブルなら、箱の中にあるのは心線8本だ。この8本が、役割の同じもの同士でまとまって「束」を作る。電源の白と照明の白、電源の黒とスイッチの黒——そして束1つにつき、リングスリーブを1個使って圧着する。
つまりスリーブの個数を決めているのは、ケーブルの本数でも心線の総本数でもない。
ケーブル数と束数がずれる犯人は、たいていコンセントと送り配線だ。コンセントのケーブルは、白の束と黒の束に1本ずつ合流するだけで、自分の束を新しく作らない。だから「ケーブルが1本増えたのにスリーブの数は変わらない」ということが普通に起きる。冒頭の受験者が落としたのは、まさにこの構造だった。
紙の上の4ステップ:図を見るのは、最初の1回だけ
この形式で手が止まる場所は、だいたい決まっている。図の上で1本の線を目で追っていて、その線が他の配線と交差した瞬間だ。どれがどこへ行く線だったのか分からなくなり、残り時間を思い出して、そこで諦める。図面が混んでいるほど、この瞬間が早く来る。
だから、数える作業を図から切り離す。図を見るのは最初の1回だけにして、以後は自分が紙に書いた一覧を見て数える。書く順序まで決めておけば、図面がどれだけ混んでいても、手を動かす量は変わらない。
ステップ0 ただし書きを読む。確認するのは3点だけだ。太さの指定はあるか(「ただし,使用する電線はすべてVVF1.6とする」と書いてあれば混在なし。書いていなければ、図面のケーブル表記から太さを読む)。接地線を含むか。心線数を最少とする指定があるか。この3行を読み飛ばすと、表を完璧に覚えていても答えが合わない。
ステップ1 そのボックスに接続する電線を、1行1ケーブルで全部書き出す。1行に書くのは、行き先・心線数・太さ・回路符号の4つ。図を見るのはこの作業のあいだだけで、書き終わったら図から目を離す。ここではまだ何も数えない。写すだけだ。
ステップ2 各行の右端に、この箱での役割を書き足す。電源・負荷・スイッチ・コンセント・送り・接地線のどれか。回路符号が2つ以上あるなら、符号ごとに行をまとめ直す。どの電線とどの電線を接続するかは、色の習慣ではなく問題の側が決めている——学科なら図面の回路符号と注意書き、技能なら施工条件だ。
ステップ3 心線を、4つの箱に配る。白の束、黒の束、戻りの束、接地線の束。一覧の上から順に、1本ずつどれかに入れていく。
ステップ4 束ごとに本数を書き、検算してから表を引く。各束の本数を足した合計が、ステップ1で書き出した心線の合計と一致するか。合わなければ、どこかで1本落としているか、二重に数えている。一致してから初めて、束の数を個数として答え、束の中身を表に当てて種類と刻印を出す。
この手順の効きどころは、ステップ1とステップ4にある。ステップ1で図から離れるから線を見失わなくなり、ステップ4に検算があるから「たぶん全部数えた」で終われなくなる。
配る箱は4つ——白・黒・戻り・接地線
ステップ3の中身を、もう少し決めておく。
- 白の束=電源の白+すべての負荷とコンセントの白
- 黒の束=電源の黒+すべてのスイッチとコンセントの黒
- 戻りの束=スイッチの帰り+そのスイッチが担当する負荷。担当が分かれていれば、その数だけ束が増える
- 接地線の束=接地線どうし。ほかの色の心線とは混ぜない
4つ目が独立している理由は、役割が違うからだ。白(接地側電線)は電気を電源へ帰す通り道で、ふだんから電流が流れている。接地線は器具の金属部分と大地をつなぐ逃げ道で、ふだんは電流が流れない。同じ「接地」の字が付いていても、つないでいる先も、期待している働きも別のものだ。学科試験でも「ただし,接地線の配線も含まれるものとする。」というただし書きの付いた出題があり、その場合は接地線どうしで独立した束を作ることになる。技能試験のほうは施工条件で「接地線には,緑色を使用する。」と指定されるので、色で見分けがつく。ただし課題によっては、接地端子から接地極付コンセントへ接地線が直行してジョイントボックスを経由しないので、箱の中で接地線を圧着しないこともある。
そして、この4分類の外に出るものが2つある。しかも、外れ方が違う。
1つ目は3路・4路スイッチの渡り線だ。これは白・黒・戻り・接地線のどれにも属さない独立した束を作る。しかも渡り線の2本は別々の経路なので、3路1組(3路スイッチ2個)につき束が2つ増える。間に4路スイッチが挟まれば、その両側でさらに組が増える。ここは束の数=個数が動く。
2つ目はパイロットランプで、同時点滅・常時点灯でつなぐと接地側(白)がスイッチ位置まで下りてくる。ただしこの白は新しい束を作らず、白の束に合流するだけだ。束の数は変わらず、変わるのは白の束の本数——つまり刻印のほうになる。
「渡り線は束を増やす、パイロットの白は刻印を上げる」と分けて覚える。どちらもこのあとの例題でそのまま出てくるので、分類の暗記だけでは足りなくなる。
この例ではケーブル3本・束3つと、たまたま数が一致している。だがそれは偶然にすぎない。ここにコンセントのケーブルを1本足しても、白と黒の束が1本ずつ太るだけで、束は3つのままだ——太った束は電線3本になるので、刻印だけが○から「小」に変わる。個数は束の数に、種類は束の中身に、それぞれ別の理由でつながっている。ケーブルの本数は、どちらにも直接つながっていない。
種類と刻印は、束の中身で決まる
束の数が出たら、あとは各束の電線の太さと本数を、JIS C 2806の付表4に当てはめる。太さが1種類だけの束——本番でいちばん多い形——なら、全数でもこれだけしかない。
| 刻印 | 束の中身(太さが1種類の場合・全数) | 使うスリーブ | 最大使用電流 |
|---|---|---|---|
| ○ | φ1.6mm(2.0mm²)×2本 | 小 | 20A |
| 小 | φ1.6mm(2.0mm²)×3〜4本/φ2.0mm(3.5mm²)×2本 | 小 | 20A |
| 中 | φ1.6mm(2.0mm²)×5〜6本/φ2.0mm(3.5mm²)×3〜4本/φ2.6mm(5.5mm²)×2本 | 中 | 30A |
| 大 | φ1.6mm(2.0mm²)×7本/φ2.0mm(3.5mm²)×5本/φ2.6mm(5.5mm²)×3本 | 大 | 30A |
かっこの中の数字は、より線の断面積だ。付表4は単線の直径とより線の断面積を同じ欄に置いていて、φ1.6mmと2.0mm²、φ2.0mmと3.5mm²、φ2.6mmと5.5mm²が、それぞれ同じ扱いになる。配線図問題はVVFの単線ばかりが出てくるように見えるが、CV5.5-3Cのようなより線のケーブルが集まるボックスも出題される。そのときも引く表は同じで、5.5mm²が3本の束なら大スリーブ・刻印「大」だ。より線だから別の表、ということはない。
太さが混ざる束は、付表4では「異なる場合」として別に定められている。全数は後半の表にまとめるので、ここではよく出る組合せだけ先に挙げておく——2.0mm1本+1.6mm1〜2本は小スリーブ「小」、2.0mm1本+1.6mm3〜5本と2.0mm2本+1.6mm1〜3本は中スリーブ「中」になる。
この表で先に呑み込んでおきたいのは、刻印が○・小・中・大の4種類なのに、スリーブは小・中・大の3種類しかない、という食い違いだ。小スリーブだけが「○」と「小」の2つの刻印を持つ——この非対称が表の急所で、選定の詳しい理屈と欠陥基準はリングスリーブの選定と圧着マークで扱っている。学科の配線図問題では「小スリーブ3個(刻印は○1・小2)」のような選択肢の形で、個数と刻印の両方を同時に問うてくる。
差込形コネクタは、口数で呼ぶ
差込形コネクタで接続する指定の場合も、個数の数え方はまったく同じで束1つにつき1個。違うのは種類の表し方だけで、刻印の代わりに差込口の数——2本用・3本用・4本用……——で呼ぶ。
ここで、学科と技能で扱う範囲が違うことに注意がいる。技能試験で支給されるのは2本用・3本用・4本用までで、それ以上の口数は出てこない。ところが学科試験は写真の選択肢で口数を問うので、5本用まで登場する。技能の材料表だけを見て「試験に出るのは4本用まで」と思い込んでいると、学科で見慣れない色の写真に出くわすことになる。
その色というのが、実は目印になる。市販の差込形コネクタ(JIS C 2813適合品)は口数ごとに本体の色が決まっていて、2極が赤、3極が青、4極が黄(製品によっては黄緑に見える)、5極が橙だ。ただし色は製品の系列によって割り当てが変わることがあるので、最後は差込口の数を数えて確かめる。色は当たりを付けるための手がかりにとどめておきたい。本体はタテ20.5mm・タカサ9.1mmが口数によらず共通で、ヨコだけが伸びる(2極11.6mm、3極16.2mm、4極20.8mm、5極25.4mm)。口数が増えると横に長くなる、という見え方も色と一緒に覚えておくといい。なおカタログ上の適用電線は銅の単線φ1.6mm・φ2.0mmで、より線は対象外になっている。
どの口数を使うかを決めているのは、実は電気的な決まりではなく出題の形式だ。学科は「最少個数」を問う形式なので、束の心線数ちょうどの口数を選ぶことになる。心線が12本集まる箱を3つの束で処理するなら、3本用1個・4本用1個・5本用1個といった組合せが答えになる。技能は材料表で口数と個数が指定されるので、支給されたものをその通りに使う。「未使用の差込口を残してはいけない」という規定があるわけではない——欠陥の判断基準が差込形コネクタについて挙げているのは、先端部分を真横から目視して心線が見えないものと、下端部分を真横から目視して心線が見えるものの2つだけだ。
実戦:電源から最後の1本まで数え切る
束の理屈が分かっても、本番の図面はもっと混んでいる。ケーブルが5本、8本と増え、パイロットランプや3路スイッチや接地線が同居するボックスでは、「途中まで数えて、あとは雰囲気で」が一番危ない。1本の見落としは、その束の刻印を変え、ときには束の数そのものを変えて、選択肢の組合せを丸ごとズラすからだ。ここでは4つのボックスを、最初から最後まで数え切ってみる。
例題1:電源+照明2+2連スイッチ+コンセント
ジョイントボックスに5本のケーブルが入る。電源(VVF1.6mm-2心)、照明イへ(1.6-2心)、照明ロへ(1.6-2心)、コンセントへ(1.6-2心)、そしてイ・ロの2連スイッチへ(1.6-3心。中身は行きの黒+イの戻り+ロの戻り)。心線は全部で11本ある。手順どおり、ケーブル1本ずつ心線を束に割り振っていく。
- 白の束:電源の白+照明イの白+照明ロの白+コンセントの白=4本。1.6mm×4本なので小スリーブ・刻印「小」
- 黒の束:電源の黒+スイッチへの行き(黒)+コンセントの黒=3本。小スリーブ・刻印「小」
- イの戻りの束:スイッチからのイの戻り+照明イの黒=2本。小スリーブ・刻印「○」
- ロの戻りの束:ロの戻り+照明ロの黒=2本。小スリーブ・刻印「○」
11本の心線が全部どこかの束に入ったことを確かめて、答えは小スリーブ4個(刻印は小2・○2)。ケーブルは5本、心線は11本、束は4つ——3つの数字はどれも一致しない。
例題2:パイロットランプが白を連れてくる
今度は電源が2.0mmになり、パイロットランプが加わる。ボックスに入るケーブルは4本。電源(VVF2.0mm-2心)、照明イへ(1.6-2心)、コンセントへ(1.6-2心)、そしてイのスイッチ+パイロットランプ(同時点滅)の位置へ(1.6-3心)。
鍵は3心ケーブルの中身だ。同時点滅のパイロットランプは照明と並列につなぐため、スイッチ位置まで接地側(白)を下ろす必要がある。つまり3心の内訳は、行きの黒+イの戻り+パイロット用の白。この白の1本が、ボックス内の白の束に合流してくる。
- 白の束:電源の白(2.0)+照明イの白+コンセントの白+スイッチ位置への白=4本。2.0mm×1本+1.6mm×3本なので、中スリーブ・刻印「中」
- 黒の束:電源の黒(2.0)+行きの黒+コンセントの黒=3本。2.0mm×1本+1.6mm×2本で小スリーブ・刻印「小」
- 戻りの束:イの戻り+照明イの黒=2本。小スリーブ・刻印「○」
答えは3個(中1・小1・○1)。ここでパイロット用の白を1本見落とすとどうなるか。白の束を2.0×1+1.6×2の3本と数えてしまい、刻印は「小」——個数は3個で合っているのに、組合せが「小2・○1」に化けて選択肢を外す。逆に例題1でケーブル数の5をそのまま個数にすれば、今度は個数の側で外す。個数と刻印は別々の理由でズレるから、途中でやめず、心線が全部束に入るまで数え切るしかない。
例題3:回路符号が2つ集まる、共用部のボックス
住宅1軒の図面と、集合住宅の共用部の図面とでは、混み方の質が違う。共用部の配線図は1枚に電灯回路と動力回路が同居し、制御用の破線まで走っている。配線回路番号は囲みの形で電圧種別まで書き分けられていて、学科試験で使われた集合住宅共用部の図面には、菱形が幹線、四角が三相200V、二重丸が単相200V、一重丸が単相100Vという4区分の凡例が付いている。ボックスの記号も、1枚の図の中に3種類が混ざる。
そういう図面の中の1つのボックスを指されて「ここをすべて圧着接続とした場合、リングスリーブの最少個数は」と問われたとき、束の理屈を知っていても手が止まる。止まる場所は、さきほどの通りだ——3路スイッチの渡り線を図の上で目で追い始めて、線が他の配線と交差した瞬間。
だからここでこそ4ステップが効く。ステップ1で一覧を作って図から目を離し、ステップ2で回路符号ごとに仕分ける。この2つを先に済ませてしまえば、あとは図面の混み具合と無関係に、自分の紙の上だけで作業が進む。
では、架空の共用部ボックスで実際にやってみる(実在の過去問の図面ではなく、この記事のために組んだ例だ)。集合住宅の共用廊下の天井にジョイントボックスが1つある。回路ⓐは共用廊下灯の回路(単相100V)で、電源・廊下灯①・廊下灯②・掃除用コンセント、そして廊下の両端に置いた3路スイッチA・Bの1組。この3路1組が2灯をまとめて点滅させる。
灯を①②と番号で呼んだのには理由がある。配線図の傍記(イ・ロ・ハ)は「どのスイッチがどの負荷を受け持つか」を表す記号なので、1組の3路が同時に点滅させる2灯は、図面上ではどちらも同じ傍記になる。ここを「イ」と「ロ」に分けて書くと、別々のスイッチ回路という意味になり、戻りは1束ではなく2束に増えてしまう。傍記の対応づけは複線図でのスイッチの扱いで扱っている。
回路ⓑは階段灯の別回路で、このボックスでは送り——入ってきた2心を、階段室へ向かう2心へつなぐだけだ。電源だけがVVF2.0mmで、あとはすべて1.6mm。
まず一覧を作る。
| ケーブルの行き先 | 心線数・太さ | 回路 | この箱での役割 |
|---|---|---|---|
| 電源(分電盤から) | 2心・2.0mm | ⓐ | 電源 |
| 廊下灯①へ | 2心・1.6mm | ⓐ | 負荷 |
| 廊下灯②へ | 2心・1.6mm | ⓐ | 負荷 |
| 掃除用コンセントへ | 2心・1.6mm | ⓐ | コンセント |
| 3路スイッチAへ | 3心・1.6mm | ⓐ | 電源側の3路 |
| 3路スイッチBへ | 3心・1.6mm | ⓐ | 負荷側の3路 |
| 階段灯の送り(入) | 2心・1.6mm | ⓑ | 送り |
| 階段灯の送り(出) | 2心・1.6mm | ⓑ | 送り |
ケーブルは8本、心線は合計18本。この時点ではまだ何も数えていない。図から書き写しただけだ。それでいい。
次に符号で仕分ける。ⓐが6本、ⓑが2本。ⓑは送りなので、この箱ではⓑの白どうし・黒どうしがつながる。ⓐの束とは混ざらない。
そのうえでⓐの中の束を作る。3路スイッチは、記号「0」の端子に電源側または負荷側の電線を結線する(学科試験でも、この一文が図面の注意書きに置かれることがある)。だからAの「0」には電源からの黒が入り、Bの「0」からは廊下灯への戻りが出る。AとBの残り2端子どうしを結ぶのが渡り線だ。
- 束1 白の束:電源白(2.0)+廊下灯①白+廊下灯②白+コンセント白=4本。2.0mm1本+1.6mm3本で中スリーブ・刻印「中」
- 束2 電源黒の束:電源黒(2.0)+3路Aの「0」へ行く黒+コンセント黒=3本。2.0mm1本+1.6mm2本で小スリーブ・刻印「小」
- 束3 渡り線①:3路Aから3路Bへ=2本。小スリーブ・刻印「○」
- 束4 渡り線②:3路Aから3路Bへ=2本。小スリーブ・刻印「○」
- 束5 戻りの束:3路Bの「0」からの戻り+廊下灯①黒+廊下灯②黒=3本。1.6mm×3本で小スリーブ・刻印「小」
- 束6 ⓑ黒の束:送りの入と出の黒=2本。小スリーブ・刻印「○」
- 束7 ⓑ白の束:送りの入と出の白=2本。小スリーブ・刻印「○」
束の中身を足すと4+3+2+2+3+2+2=18。書き出した心線18本が全部どこかに入った。ここで初めて答えが出る——中スリーブ1個と小スリーブ6個の合計7個、刻印は中1・小2・○4。ケーブル8本、心線18本、束7つ。3つの数字はどれも一致しない。
渡り線が2束に分かれるところだけ、理屈を押さえておく。3路スイッチ間の渡り線2本は、それぞれ別の経路だ。片方が閉じているときもう片方が開いている、という切り替えを作っているのがこの2本の独立性で、4本まとめて1つのスリーブに入れれば2つの経路がつながり、スイッチを操作しても何も切り替わらなくなる。だから渡り線は必ず2束、スリーブも2個いる。
この形式で最後まで行けなかった人が落ちるのは、決まって次の2箇所だ。
1つはⓑの扱い。ⓑの白2本をⓐの白の束に合流させると、白の束は2.0mm1本+1.6mm5本になる。スリーブは中のままだが、束が1つ消えて個数は6個に減る。黒も同じように合流させれば5個で、しかも黒の束は2.0mm1本+1.6mm4本になって「小」から「中」へ上がる。個数と刻印が同時に壊れるので、選択肢の組合せは丸ごと外れる。
もう1つは渡り線。①と②を1つの束にまとめると束は6つになり、そのスリーブは1.6mm×4本で刻印「小」。○が2つ減って小が1つ増える、という形で刻印だけが静かにずれる。
どちらも「途中で追うのをやめた」ときに起きる。一覧を先に作り、符号で仕分け、心線の合計で検算する——この3つを踏めば、図の上で線が何本交差していても関係がなくなる。図面の複雑さと、数える作業の複雑さは、別のものだ。
例題4:接地線は、4つ目の束になる
もう1つ、接地極付コンセントが並ぶ事務室のボックスを数えてみる(これも実在の過去問の図面ではなく、この記事のために組んだ例だ)。電線はすべて直径1.6mm、そして「接地線の配線も含まれるものとする」という条件が付いている。まずステップ1の一覧を作る。
| ケーブルの行き先 | 心線数 | 内訳 | この箱での役割 |
|---|---|---|---|
| 電源(分電盤から) | 3心 | 黒・白・接地線 | 電源 |
| 接地極付コンセント①へ | 3心 | 黒・白・接地線 | コンセント |
| 接地極付コンセント②へ | 3心 | 黒・白・接地線 | コンセント |
| 接地極付コンセント③へ | 3心 | 黒・白・接地線 | コンセント |
| 事務室灯イへ | 2心 | 白・黒 | 負荷 |
| 事務室灯ロへ | 2心 | 白・黒 | 負荷 |
| イ・ロの2連スイッチへ | 3心 | 行きの黒+イの戻り+ロの戻り | スイッチ |
ケーブルは7本、心線は3+3+3+3+2+2+3=19本。ここまでは写しただけだ。ステップ3で、4つの箱に配る。
- 束1 白の束:電源の白+コンセント①②③の白(3本)+灯イの白+灯ロの白=6本。1.6mm×6本で中スリーブ・刻印「中」
- 束2 黒の束:電源の黒+コンセント①②③の黒(3本)+スイッチへの行きの黒=5本。1.6mm×5本で中スリーブ・刻印「中」
- 束3 接地線の束:電源の接地線+コンセント①②③の接地線=4本。1.6mm×4本で小スリーブ・刻印「小」
- 束4 イの戻りの束:スイッチからのイの戻り+灯イの黒=2本。小スリーブ・刻印「○」
- 束5 ロの戻りの束:ロの戻り+灯ロの黒=2本。小スリーブ・刻印「○」
ステップ4の検算。6+5+4+2+2=19で、一覧の心線数と合う。答えは中スリーブ2個と小スリーブ3個の合計5個、刻印は中2・小1・○2だ。
この例題には仕掛けが2つ入っている。
1つ目は、1.6mmしか使っていないのに中スリーブが2個も出てくることだ。「太さが混ざらないなら小で済む」と思い込んでいると、ここで外す。同じ太さだけの束でも、5本になった時点で小のままではいられない。コンセントが3か所並べば白も黒も5〜6本に届くので、これは特殊な構成ではない。学科試験でも「ただし,使用する電線はすべてVVF1.6とする」という条件の下で、中スリーブが答えに混じる出題がある。太さの指定を読んで安心した瞬間が、いちばん危ない。
2つ目が接地線だ。この4本を「接地側だから」と白の束に流し込むと、白は6+4=10本になる。ここで付表4を引いてみてほしい——同じ太さだけの束は、最大でも7本(大スリーブ)までしか載っていない。10本という欄は、そもそも存在しない。つまりこの数え方は、選択肢を見るより前に、表の上で行き止まりになる。表は答えを出す道具であると同時に、自分の数え方が壊れていることを教えてくれる道具でもある。
白(接地側電線)と接地線は、字が似ているだけで別のものだ。白は電気を電源へ帰す通り道で、ふだんから電流が流れている。接地線は器具の金属部分と大地をつなぐ逃げ道で、ふだんは電流が流れない。だから箱の中でも、混ぜずに接地線どうしで束を作る。3心のケーブルを見たら、3本目が何か——パイロット用の白か、2つ目の戻りか、接地線か——を先に決めてしまえば、配る箱を間違えなくなる。
時間が足りないときの、降り方
ここまで4つの例題を数え切ってきたが、本番でこの丁寧さを毎回貫けるわけではない。配線図は学科試験の最後にまとまって出てくるうえ、ボックス内接続は1回の試験で2〜3問。1つの箱に5分を使えば、その先が崩れる。だから、降り方も先に決めておく。
まず、束の数だけ確定して先へ進む。選択肢は「種類と個数」または「種類・個数・刻印」の組で並んでいるので、個数が決まった時点で、その個数を含まない選択肢は全部消える。1つしか残らなければそれが答えだし、複数残っても二択・三択になる。刻印を詰めるのは、そのあとでいい。逆に、刻印から手を付けて個数を宙に浮かせたままにすると、絞り込みが1つも進まない。
次に、刻印は○から数える。○が付くのは、太さが1種類ならφ1.6mm(より線なら2.0mm²)が2本の束だけで、これはたいていスイッチと負荷を結ぶ戻りの束だ。戻りの束はスイッチと担当の負荷というペアを見るだけで数えられるので、白や黒の束のように箱じゅうの心線を集めてこなくていい。いちばん安く手に入る情報から使う。
そして、検算が合わないまま先に進まない。合計が合わないときに落としている1本は、たいてい3心ケーブルの3本目だ——パイロットランプ用の白か、接地線か、2つ目の戻り。当たりが付いているので、一覧に戻れば数秒で見つかる。合わないと分かっていながら答えを選ぶと、個数と刻印が同時にずれて、その1問はまず当たらない。数え直すか、印を付けて飛ばすか。中途半端に選ぶのがいちばん損だ。
太さが混ざった束は、境目の組合せだけを覚える
例題3の白の束のように、2.0mmと1.6mmが1つのスリーブに入る組合せは、JIS C 2806の付表4では「異なる場合」としてまとめられている。そこに載る単線どうしの組合せを、漏らさず書き出すとこうなる。
| 使うスリーブ | 太さが混ざる組合せ(JIS C 2806 付表4「異なる場合」の単線どうし・全数) | 刻印 |
|---|---|---|
| 小 | 2.0mm1本+1.6mm1〜2本 | 小 |
| 中 | 2.0mm1本+1.6mm3〜5本/2.0mm2本+1.6mm1〜3本/2.0mm3本+1.6mm1本/2.6mm1本+1.6mm1〜3本/2.6mm1本+2.0mm1〜2本/2.6mm2本+1.6mm1本/2.6mm1本+2.0mm1本+1.6mm1〜2本 | 中 |
| 大 | 2.0mm1本+1.6mm6本/2.0mm2本+1.6mm4本/2.0mm3本+1.6mm2本/2.0mm4本+1.6mm1本/2.6mm1本+2.0mm3本/2.6mm2本+1.6mm2本/2.6mm2本+2.0mm1本/2.6mm1本+2.0mm2本+1.6mm1本 | 大 |
各行の最後にある3種類混合——中の「2.6mm1本+2.0mm1本+1.6mm1〜2本」と、大の「2.6mm1本+2.0mm2本+1.6mm1本」——も、想像で足した行ではなく付表4にそのまま載っている欄だ。表を丸ごと持っておく意味は、こういう見慣れない組合せが出たときに「表にないから当てずっぽう」にならないところにある。
この表で確かめておきたいのは、混ざっても刻印が特別扱いにならないという一点だ。太さの違う電線が入っていても、圧着マークは最終的に選んだスリーブの記号そのもの——小なら「小」、中なら「中」、大なら「大」になる。「混在だから別の刻印」という段は存在しない。例外は相変わらず「○」だけで、○が付くのは、太さが1種類ならφ1.6mm(より線なら2.0mm²)が2本のときに限られる(付表4の「異なる場合」にはφ1.6mmと0.75mm²のより線を組み合わせる欄にも○があるが、配線図問題で当たるのは1.6mm×2本のほうだ)。
ここで、多くの受験者が持ち込む便法にも触れておく。1.6mmを1点、2.0mmを2点と数えて合計で判定する、という数え方だ。速いが、JIS本体にも圧着工具の取扱説明書にも載っていない目安であって、表と突き合わせると合わない組合せが実在する。1.6mm×7本は合計7点で大スリーブだが、2.0mm1本+1.6mm5本は同じ7点相当なのに中スリーブだ。そもそも点数が決まっているのは1.6mmと2.0mmだけで、2.6mmが混じる組合せは点数では扱えない。断面積で足し算する変種(1.6mmを2mm²、2.0mmを3.5mm²、2.6mmを5.5mm²と置く)も同じ弱点を持っていて、たとえば2.6mm1本+1.6mm1本は合計7.5mm²と小さいのに、上の表のとおり中スリーブだ。便法は当たりを付けるためだけに使い、境目にあたる組合せは表で確かめる。
なお付表4は、この組合せ表と一緒に最大使用電流も定めている。小は20A、中と大は30Aだ。スリーブの大小は「電線が入るかどうか」だけの話ではなく、その接続に流してよい電流の枠でもある。付表4が単線の直径とより線の断面積を同じ欄に並べていること(1.6mmと2mm²、2.0mmと3.5mm²、2.6mmと5.5mm²)も、決めているのが導体の量だからだと考えれば筋が通る。
リングスリーブの守備範囲を超える太さがある
ここまで見てきた小・中・大の刻印は、住宅で使う太さ(1.6mm・2.0mm・2.6mm、5.5mm²あたりまで)を前提にしている。ところが幹線に近い部分では、14mm²のようにもっと太い電線がボックス内でつながることがある。
太い電線どうしをボックス内で接続するときは、裸圧着スリーブ(B形など)を使い、締め付けには手動油圧式圧着器のような、大きな力を出せる工具を使う。人の握力で締めるリングスリーブ用工具では、必要な圧縮力が出ない。
出題は「14mm²の電線をジョイントボックス内で接続する。使用する工具として不適切なものはどれか」という形で来る。選択肢にリングスリーブ用圧着工具(黄色の柄)が混じっていたら、それが答えだ。
工具が分かれる理由は、圧着という接続の仕組みそのものにある。圧着は、スリーブを塑性変形させて電線を機械的に一体化する接続だ。電線が太くなれば、変形させるのに必要な力も跳ね上がる。力が足りなければ「潰したつもりで潰れていない」接続ができあがり、接触抵抗が残って、そこが発熱点になる。工具の指定は、その失敗を道具の側で防ぐための線引きだ。
技能試験で使うのはリングスリーブの範囲だけなので普段は意識しないが、学科では「その工具はどこまで使えるか」という守備範囲の側が問われる。刻印の表を覚えるとき、表の外側があることも一緒に持っておきたい。
ボックスのフタを開けると、前の職人の複線図が見える
束を数える力は、試験問題の外でそのまま「箱の中を読む力」になる。天井の点検口からジョイントボックスを覗いたとき、スリーブの数と刻印だけで、その先に照明が何系統、スイッチが何個ぶら下がっているかの見当がつく。図面が残っていない古い建物の改修では、この読み取りが実質的な調査になる。フタの裏に見えているのは、何年も前に誰かが頭の中で描いた複線図の、いわば実物大の写しだ。
今日試せることとして、候補問題でも過去問でもいいので単線図を1枚選び、ジョイントボックス1個分だけ、紙にステップ1の一覧を書いてから束を数えてみるといい。複線図全体を描き切る練習より短時間で済み、5分あれば2〜3箇所は数えられる。図から目を離しても数え続けられる、という手応えは、1回やれば分かる。「コンセントは束を増やさない」という感覚のほうも、数回繰り返すだけで手に馴染む。
この形式が繰り返し出題されるのは、束の数え間違いが現場では材料の過不足と接続のやり直しに直結するからだ。スリーブ1個の単価はわずかでも、束を読み違えた接続は圧着のやり直し、最悪は天井裏での結線ミスになる。そして住宅の回路が太陽光・蓄電池・EV充電と増える側に動いている以上、ボックスの中の束は今後も太り続ける。2.0mmの幹線が合流した瞬間に○が「小」に、小が「中」に変わり、接地極付のコンセントが1か所増えれば接地線の束も1本太る——増設の見積が変わる理由は、この表の境目にある。
数え切る力は、読むだけでは身につかない。手を動かす場を用意した。ボックス内の接続を数え切るドリルは、やさしい形から本番規模まで8題。1題ごとに束の作り方が全部表示されるので、どこで数がずれたのかがその場で分かる。
冒頭の受験者が選ぶべきだった組合せは何だったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。