学科試験の配線図問題は、後半に写真のページを持っている。「⑬で示す図記号の機器は。」——選択肢は文章ではなく、4枚の写真だ。そこには灰色がかった箱形の器具が4つ並んでいる。どれも盤に取り付けるタイプで、正面につまみが付いていて、大きさもほとんど同じに見える。
図記号は覚えたはずだった。⑬の記号が漏電遮断器を指していることまでは読めている。それなのに、4つの箱のどれがそれなのかが選べない——写真鑑別の失点は、いつもこの形で起きる。
一方で、合格していく受験者はこのページを数秒で通過する。彼らは4枚の写真を「見比べて」はいない。1枚ごとに、決まった順序で決まった場所を読んでいる。どこを、どの順に読んでいるのか。読み終えるころには、同じ読み方ができるようになっている。
鑑別は「形当てクイズ」ではない
写真鑑別が苦手になる原因ははっきりしている。器具を「全体の形」で覚えようとするからだ。箱形の器具は、写真になるとどれも同じ箱に見える。メーカーが変われば輪郭も色も変わるから、形の記憶は本番で裏切られる。
だが、メーカーが違ってもモデルが変わっても消えない部品が、それぞれの器具に1つずつある。その器具の機能上なくせない部品だから、どの製品にも必ず付いていて、どの写真にも必ず写る。鑑別の勉強とは、この「消えない1点」を器具ごとに言葉にしておく作業だ。
このトピックが扱うのは、ボックス・遮断器・スイッチ・コンセントという鑑別の土台になる4系統だ。リモコン配線の機器・低圧進相コンデンサ・可とう電線管の附属品・点滅器の取付材料・三相200Vコンセント・圧着工具と手動油圧式工具の見分けは、写真から機器・材料を1枚に絞るが受け持っている。
| 器具(図記号) | 消えない1点(見分けの決め手) |
|---|---|
| 配線用遮断器(四角にB) | 定格電流(A)の表示。感度電流のmA表示はない。ボタンが付く機種もあるが、それは押して引き外すトリップボタン |
| 漏電遮断器(四角にE。過負荷保護付は四角にBEを用いてもよい) | 「テスト」または「T」と記した動作確認用のテストボタン。一体形は定格感度電流(30mAなど)の表示も必ずある(JIS C 8201-2-2:2011 箇条5 a)) |
| タイムスイッチ(四角にTS) | 時刻目盛が刻まれた文字盤(ダイヤル)や時刻表示 |
| リモコンリレー(黒い三角) | 小さな箱。集合形は同じ箱が列に並ぶ(リレー数を傍記) |
| 自動点滅器(黒丸にAと容量) | 周囲の明るさを感じる受光窓(半透明の窓) |
| 熱線式自動スイッチ(黒丸にRAS) | 人の熱を検知するセンサーの丸い窓・レンズ |
| ルームエアコン(四角にRC) | 傍記が実物を指す。I=室内機、O=室外機 |
ルームエアコン(RC)は、この「記号と実物をつなぐ」構造がそのまま出題になる例だ。1台のエアコンは実物としては室内機と室外機の2つの箱に分かれており、図面でも2つのRCに、I(Indoor=屋内ユニット)とO(Outdoor=屋外ユニット)の傍記を付けて描き分ける。「Oが傍記されたRCの実物は」と問われたら、選ぶべきはファンとフィンを備えた室外機の写真になる。
「ボタンがあれば漏電遮断器」が通じなかった写真
決め手の1点を覚えるやり方には、1つだけ注意がいる。遮断器の見分けを「ボタンの有無」で止めてしまうと、そこを正面から突かれる年がある。
その前に、図面の側を整理しておきたい。JIS C 0303が遮断器に与えている図記号は、四角にBが配線用遮断器、四角にEが漏電遮断器の2つだ。BEは3つ目の独立した記号ではなく、漏電遮断器の摘要が「過負荷保護付は,〔四角にBE〕を用いてもよい」としている任意の代替表記にすぎない。だからBEと描いてあれば過負荷保護付=過電流と地絡電流の両方を遮断する器具だと読んでよいが、逆は言えない——過負荷保護付をEのまま描くこともできる。規格が過負荷保護の有無を書き分けているのは、記号ではなく傍記のほうだ。摘要は「過負荷保護付は,極数,フレームの大きさ,定格電流,定格感度電流など,過負荷保護なしは,極数,定格電流,定格感度電流などを傍記する。」としていて、フレームの大きさ(30AFなど)が入っているかどうかが分かれ目になる。BEを見て「地絡電流だけを遮断する器具」と答えると、用途を問う設問でそのまま失点する。2P1E・2P2Eといった極数と素子数の傍記の読み方は分電盤・配線用遮断器の図記号で扱っている。
出題の形はいたって素直だ。「写真に示す器具の名称は。」——選択肢には遮断器の仲間が並び、写真の器具の正面右下には、赤い丸ボタンがはっきり写っている。ボタンの有無で決めるなら、迷わず漏電遮断器を選ぶ場面である。
ところが、その赤いボタンは配線用遮断器にも付く。
赤いボタンの正体は、その脇に印字されている——「PUSH TO TRIP」。押して引き外す、と書いてあるのだ。メーカーの説明でもこれはトリップボタン(引外しボタン)と呼ばれる。三菱電機は「遮断器を外部から機械的にトリップさせるボタン」「遮断器正面にある赤色のボタン」と定義し、PTT(Push To Trip)とも呼ぶと説明している。富士電機も「ブレーカを外部から機械的にトリップさせる押ボタン」「カバー表面に付いている赤色のボタン」だとし、主回路に電源が供給されていなくても動作すると書いている。定期点検で開閉機構が正しく動くかを確かめるためのボタンであって、漏電を模擬する装置ではない。そして三菱の総合カタログを開くと、ノーヒューズ遮断器(配線用遮断器)の仕様表だけでなく、漏電遮断器の仕様表にも「トリップボタン 有」の行が並んでいる。赤いボタンは、どちらの器具にも付きうる部品なのだ。
決着をつけるのは、銘板のmA
では何を見れば決まるのか。答えは銘板の表示にある。
漏電遮断器の規格 JIS C 8201-2-2 は、一体形の漏電遮断器について「定格感度電流IΔn」と、テスト装置の操作手段であること(「テストボタン」の語句や記号「T」など)を表示し、取付位置で明確に見えるようにしなければならないと定めている。テスト装置そのものも、「漏電遮断器の動作能力を定期的に試験するために,漏電電流を模擬した電流を検出装置に通電させる」ものとして備えることが求められた必須要素だ(いずれも2011年版で確認)。
つまり、本物の漏電遮断器なら、30mAのような定格感度電流の表示が必ず正面から読める。裏返せば、mAの表示がどこにも見当たらない器具は漏電遮断器ではない。配線用遮断器の銘板をいくら拡大しても、電圧・電流・遮断容量は並んでいるのに、mA単位の表示は1つも出てこない。配線用遮断器はそもそも漏電を検出する仕組みを持たないから、漏電試験用のテストボタンも感度電流の表示も持ちようがない——ここが両者を分ける本当の境目になる。
ボタンの色も補助になる。JIS C 8201-2-2:2011は、テスト装置の操作手段の色について「赤又は緑であってはならず,また,明るい色を用いることが望ましい」としている。富士電機がテストボタンを「漏電遮断器のカバー表面についている灰色のボタン」と説明しているのは、この規定と合う。赤いボタンは引外し用、テストボタンは赤でも緑でもない色——そう対応づけておけば、色そのものが読みの手がかりになる。
ただし色は、いつでも効く手がかりではない。パナソニックは、2001年4月のJIS規格改正以前は漏電テストボタンの色で過負荷保護の有無を区別していた(赤色=OC付き、緑色=OCなし)と説明し、改正後は「OC付き、OCなしともにグレー色」になったとしている。つまり「テストボタンは赤・緑ではない」が言えるのは改正後の製品についてで、古い盤の写真ではそのまま当てはまらない。色は補助、決め手はあくまでmA表示——この順番は動かさないほうがいい。漏電表示の側にも決まりがあり、表示の色は黄または白とされ、人が操作する取っ手などにはその色を使ってはならない。三菱の資料は、漏電トリップと過電流トリップを区別するために「漏電トリップの時だけ漏電表示ボタンが突出します」と説明している。
もう1つ、銘板に規格番号が印字されていれば決着は一瞬だ。JIS C 8201-2-1は「低圧開閉装置及び制御装置-第2-1部:回路遮断器(配線用遮断器及びその他の遮断器)」、JIS C 8201-2-2は「第2-2部:漏電遮断器」。2-1の適用範囲には「漏電遮断器に対する要求事項は,JIS C 8201-2-2に規定する。」とはっきり書かれていて、2つの器具は別番号で分けられている。銘板に「JIS C 8201-2-1」とあれば配線用遮断器の側、「JIS C 8201-2-2」とあれば漏電遮断器の側だ。
「2.2kW相当」も、それだけでは決め手にならない
写真の銘板に「200V 2.2kW相当」のような表示があり、その下に空欄の記入欄が続いていることがある。つないでよい電動機の容量を書いた表示だ。この系統の器具は、電路の過負荷・短絡保護と、接続した誘導電動機の過負荷保護を兼ねている。JIS C 8201-2-1の附属書JAが「誘導電動機保護兼用回路遮断器」として規定していて、回路遮断器の表面に誘導電動機保護兼用である旨を、語句または製造業者の指定する記号で表示しなければならないとしている。動作特性も専用で、定格電流の600%の電流に対して2秒以上30秒以下で自動動作すること、と定められている(パナソニックは自社のモーターブレーカについて「600%の通電時6〜10秒程度で動作するように設定」しており、過負荷保護専用で欠相保護はできないと説明している)。
ただし、「kW表示があれば配線用遮断器」を新しい簡易ルールにしてはいけない。漏電遮断器の規格 JIS C 8201-2-2 にも同名の附属書JA「誘導電動機保護兼用漏電遮断器」があり、こちらも表面に誘導電動機保護兼用である旨の表示を求めている。電動機保護兼用は配線用遮断器だけの属性ではないのだ。メーカー側の事情も加わる——三菱の総合カタログは「モータブレーカには,適用電動機定格容量は記載してありません。」と明記していて、kW表示の有無は機種によって分かれる。
結局、遮断器の写真で確実に効く順序は1つに落ち着く。
| 見るところ | 配線用遮断器(四角にB) | 漏電遮断器(四角にE。過負荷保護付はBEを用いてもよい) |
|---|---|---|
| 定格感度電流(30mAなど) | 表示なし | 一体形は必ず表示される(JIS C 8201-2-2:2011 箇条5 a)) |
| テストボタン | ない(漏電を検出する仕組みを持たない) | 必ずある。「テスト」「T」等の表示付き(JIS C 8201-2-2:2011は操作手段の色を赤・緑以外としている) |
| トリップボタン(引外し用) | 付く機種がある。赤・「PUSH TO TRIP」 | 付く機種がある。赤 |
| 漏電表示 | なし | 漏電トリップのときだけ表示ボタンが突出する機種がある(表示の色は黄または白) |
| 電動機容量(○kW相当) | 電動機保護兼用形に付くことがある | 誘導電動機保護兼用形の規定が2-2側にもある |
| 銘板の規格番号 | JIS C 8201-2-1 | JIS C 8201-2-2 |
ボタンがあるかを見る(第一の手がかり)。あったら脇の語句を読む(「テスト」「T」か、「トリップ」「PUSH TO TRIP」か)。そのうえでmA単位の感度電流表示を探す——あれば漏電遮断器、なければ配線用遮断器。銘板の規格番号まで読めれば、そこで確定する。1点で決めるのではなく、「第一の手がかり→決め手」の2段で見るのが、写真に何が出ても崩れない読み方だ。そもそも2つの遮断器が何を測っているのか(電流の大きさか、行きと帰りの差か)は配線用遮断器と漏電遮断器の違いで扱っている。
箱は「穴」と「材質」で見分ける
配線の途中に置く箱も、写真鑑別の常連だ。これも決め手は1点ずつある。
アウトレットボックスは金属製で、側面や底にあらかじめ打ち抜き穴(ノックアウト)が用意されている。必要な場所だけ打ち抜いて、ケーブルや電線管を通す。コンクリートボックスはこれによく似ているが、コンクリートに埋め込んで使うため側面に固定用の突起が付いている。VVF用ジョイントボックスは樹脂製で、ふたが透明——中の接続部を外から確認できるようになっている。そしてプルボックス(図記号は四角に×)は、打ち抜き穴のない鋼板の箱だ。多くの電線管が集まる場所で使うため、現場に合わせて必要な位置に穴を開ける。
箱の図記号は、印象で覚えると逆に落ちる
この箱たち、写真の見分けと同じくらい失点が出るのが、図面側——図記号との対応だ。JIS C 0303が配線の途中に置く箱に与えている図記号は3つしかない。無地の四角がジョイントボックス、四角に対角線の×を入れたものがプルボックス、丸に斜線のハッチングを入れたものがVVF用ジョイントボックスだ。コンクリートボックスには専用の図記号がなく、写真鑑別の側だけに登場する。
ここに、記号を印象で覚えた人を狙い撃ちにする罠がある。斜線のハッチングが入った丸は、いかにも中身の詰まった頑丈な箱——金属のアウトレットボックスに見える。ところが対応はほぼ逆だ。ハッチング付きの丸の実物は、樹脂製で透明ふたのVVF用ジョイントボックス。そして無地の四角「ジョイントボックス」の写真として選ぶべきなのが、金属製のアウトレットボックスになる。JIS上の名称と実物の商品名がずれているせいで、この2つは取り違えたまま定着しやすく、配線図問題では図記号から写真を選ぶ問題と、写真から名称を答える問題の2問分の失点として跳ね返ってくる。
覚えるなら、印象ではなく記号の構造に寄せるのが確実だ。3つの記号のうち四角は2つ(無地とX入り)、丸は1つだけ。仲間はずれの丸が、箱の中でも毛色の違うVVF専用の樹脂箱——ハッチング付きの丸=VVF用ジョイントボックス、とまず固定する。残った四角2つは、×が入っている方がプルボックス。打ち抜き穴のない箱に現場で穴を開けて使う箱だから、「既製の中身がなく、記号も枠と×だけ」と結びつけられる。図面上のプルボックスに「200×200×150」のような材料・寸法の傍記が付くのも見分けの助けになる(JISが傍記を求めている)。最後に残る無地の四角がジョイントボックス=写真ではアウトレットボックス、で確定する。
ねじの頭が「飛んでいる」のが正しい施工
金属管まわりの金具では、ねじなしボックスコネクタが鑑別の定番だ。ねじなし電線管(管の表面にねじを切らずに使う電線管)をボックスに接続する金具で、「ねじなし」という名前なのに止めねじが付いているのが引っかけどころになる——ねじが切っていないのは管の側で、固定はコネクタの止めねじで行うからだ。
この止めねじは、頭がねじ切れるまで締め付けるのが正しい施工とされている。規定の力まで締めるとねじの頭が折れて飛ぶ設計になっていて、頭が残ったままのものは技能試験で欠陥として扱われる。写真では、コネクタの上に突き出た止めねじと、管の端で電線の被覆を守る絶縁ブッシングの樹脂リングが決め手になる。「ねじの頭がないこと」が手抜きではなく完了の証拠だという逆転は、鑑別問題の中でもとりわけ覚えやすい1点だ。
「自動で点く」は2種類ある——明るさの窓か、人の熱のレンズか
もう1つ混同が起きやすいのが、「自動で照明を入り切りするスイッチ」の仲間だ。自動点滅器(図記号は黒丸にAと容量。例:A(3A))は、周囲の明るさを受光窓で感じて、暗くなったら門灯や防犯灯を点ける。検知しているのは「暗さ」であって人ではない。だから誰も通らなくても、夜のあいだ点きっぱなしになる。屋外で使う器具で、写真では半透明の受光窓が決め手になる。
一方、熱線式自動スイッチ(黒丸にRAS)は、人の体から出る熱(赤外線)を検知して点ける。反応しているのは「人」であって暗さではない。実物は壁の点滅器と同じ埋込形で、スイッチプレートに丸いドーム状のレンズ窓が付いた姿をしている。玄関ポーチや廊下で、人が近づいたときだけ照明を点けたい場所に使う。「自動」という言葉でひとくくりにせず、暗さに反応する屋外の受光窓か、人に反応する壁埋込のレンズか——検知対象で分ければ、図記号(A/RAS)と写真は1対1でつながる。
遅延スイッチ(黒丸にD)には、この「消えない1点」方式が効きにくいという事情がある。切り操作のあと換気扇をしばらく回してから止める、という機能の中身が、外観にはほとんど現れない——写真では普通の埋込スイッチとよく似ているからだ。そのぶん出題は「この配線図で、遅延スイッチは使われているか」という形を取る。解き方は写真の見比べではなく、図面の全数チェックだ。図中の黒丸をひとつずつ見て、傍記D(洗面所やトイレの換気扇まわりに描かれることが多い)が付いたものがあるかを確かめる。1つも無ければ「使われていない」が答えになる。写真から入る問題と、図面から入る問題——鑑別のページには両方が混ざっていて、どちらの入口かを見極めることも解き方のうちに入る。
刃受の形は、傍記で出した答えを照合する側にある
コンセントの写真鑑別には、箱やスイッチとは別の読み方の体系がある。プラグを受ける差込口——刃受の形が、定格と対応しているからだ。ただし順序を逆にしてはいけない。定格を確定させているのは図記号の傍記のほうで(JIS C 0303 4.2 f):20A以上は定格電流を、250V以上は定格電圧を傍記する)、刃受は、その答えを写真の上で確かめる側に置く。
写真の側で確実に言えるのは、次の範囲までだ。横スリット2本が左右同じ長さで一直線に並んでいれば15A250V。その一方が横棒の端から折れてL字状になっていれば、20Aのプラグまで受けられる。そして接地極付(傍記E)なら、電源用の刃受とは別に、頭が半円で下が直線的なD形の接地極穴が下に加わる。
逆向きの推論——「横向きの要素があれば200V」——には広げないこと。20A125V接地極付(JIS C 8303:2007 図A.15)の刃受はT字状のスリットと縦スリットの組合せで、横に伸びる腕をもっている。向きだけを物差しにすると、この1枚で崩れる。
この照合の型が効くのが、エアコンの200V専用回路でよく問われる20A250V接地極付コンセントだ。図記号の側で「20A」「250V」「E」の傍記を読み取り、写真の側で「一直線・片側がL形・D形の接地極穴」の3条件を確かめる。よく似た写真に15A250V接地極付——一直線だが刃受は横棒2本のまま——が並んでいても、L形の有無で切り分けられる。あくまで傍記が答えを出し、刃受がそれを裏づける、という順序を崩さない。
図面を先に読んでから、写真を見る
「この配線図の施工に使用する材料の組合せ」を問う形式は、写真の知識だけでは解けない。 その図面に何が描かれているかが前提になるからだ。
手順は逆から入る。写真を見る前に、図面から使う工事を確定させる。
- 図面の線種と傍記を拾う — 実線なら天井隠ぺい、傍記が
E19ならねじなし電線管、VE16ならVE管、数字だけなら薄鋼電線管 - その工事に要る材料を、頭の中で並べる — 金属管ならカップリング・ボックスコネクタ・ロックナット・ブッシング
- そのうえで写真を見て、並べた材料に無いものを探す
木造住宅のVVFケーブル工事なら、使うのはこのあたりに限られる。
| 使う | 使わない |
|---|---|
| リングスリーブ・差込形コネクタ、圧着工具(黄)、ステープル、埋込ボックス、VVFストリッパ | 金属管の附属品(カップリング・ボックスコネクタ・ブッシング)、パイプベンダ、リーマ、ねじ切り器 |
図面に金属管の傍記が1つも無ければ、金属管の材料はすべて「使わない」側に落ちる。 写真の名前が分からなくても、「これは管を扱う道具だ」と分かれば消せる。
「組合せとして誤っているもの」は、相性で切る
「この施工で使用するものの組合せとして誤っているものは」という形式もある。 写真が2枚ずつ組になって並び、噛み合わない1組を選ぶ。
判定の物差しは「その2つは、同じ工事で一緒に使うか」だ。部材には相方が決まっている。
| 部材 | 正しい相方 |
|---|---|
| ねじなし電線管(E管) | ねじなし用カップリング・ねじなしボックスコネクタ(止めねじの頭を切るタイプ) |
| 薄鋼電線管(C管) | ねじ付きカップリング・ロックナット・ブッシング |
| 合成樹脂製可とう電線管(PF管) | PF管用カップリング・ボックスコネクタ |
| 硬質塩化ビニル電線管(VE管) | TSカップリング(接着接続) |
| リングスリーブ | リングスリーブ用圧着工具(握り黄色・JIS C 9711適合) |
| 裸圧着端子 | 圧着端子用の圧着工具(握りは黄色ではない) |
もう1つが圧着工具の取り違え。リングスリーブ用(黄色)と圧着端子用は別物で、 リングスリーブを圧着端子用の工具で潰すと、JISの圧着マークが刻印されず欠陥になる。 色が違うので写真でも見分けられる。
「誤っているもの」を選ぶ形式では、3組は自然に噛み合っているはずだ。 1組だけ「これ一緒に使わないな」と感じるものがあれば、それが答えになる。
配線図の終盤に、「この配線図の施工で一般的に使用されることのないものはどれか」という 形式が出る。写真4枚のうち3枚は使い、1枚だけ使わない。
名前を1つずつ当てにいくと時間が足りない。その住宅がどの工事で配線されているかを先に決める のが速い。
木造2階建住宅の配線図なら、ほぼ VVFケーブル工事が主役だ。すると使う道具・材料は自然に決まる。
| 主な工事 | 使うもの | 使わないもの |
|---|---|---|
| VVFケーブル工事(木造住宅の標準) | VVFストリッパ、リングスリーブ、圧着工具、差込形コネクタ、ステープル、埋込ボックス | 金属管工事の道具(パイプベンダ、リーマ、ねじ切り器、金属管用ボックスコネクタ)、金属可とう電線管の付属品 |
| 金属管工事(鉄骨・工場等) | パイプベンダ、リーマ、ウォーターポンププライヤ | — |
- 図面全体を見て、主たる工事の種類を1つに決める(住宅ならVVFケーブル工事)
- その工事で出番のない道具・材料を探す
2階部分だけを指定された場合も同じで、その範囲に金属管の記号が無ければ、 金属管用の工具は使わない。写真の名前が分からなくても、 「これは管を曲げる道具だ」「これは管にねじを切る道具だ」と用途が管系だと分かれば消せる。
分電盤の中に、写真問題の答えが並んでいる
決め手を覚える一番の近道は、実物を1回見ることだ。そして最初の実物は、自宅の分電盤の中にある。ふたを開けると、細長い配線用遮断器(図記号はB)が列に並び、その手前に一回り大きな主幹の漏電遮断器が座っている。図面では四角にE、過負荷保護付ならBEと描かれることもある器具だ。今日試すなら、この主幹の表示を読んでみてほしい。「30mA」のような定格感度電流と、「テスト」と書かれた小さなボタンが、正面から読める位置にあるはずだ——JISが一体形の漏電遮断器に、取付位置で明確に見えるよう表示を求めているからだ。列に並ぶ配線用遮断器の側には、Aの数字はあってもmAの表示はない。試験問題の写真で読み取るべきものが、そのまま自宅の壁の中にある。
そのテストボタンは、押せば漏電遮断器が生きているかを確かめられる。三菱電機は取扱資料で「漏電遮断器は,月に1回程度テストボタンを押して動作確認を行ってください」と指示している。年に一度も押されないまま10年動き続けている盤は珍しくないから、これは知った人だけができる点検になる。
この照合の力は、試験が終わっても腐らない。現場で器具を発注するとき、古い器具の取り替えで品番が消えているとき、頼りになるのは「この表示があるからこれだ」という見分けの言葉だ。街を歩けば、電柱の根元の箱、店舗のバックヤードの盤、駅の通路の点検口——箱の見分けがつくようになると、いままで風景だったものが器具の名前で見えてくる。そして器具がどれだけスマート化しても、漏電遮断器の感度電流表示や自動点滅器の受光窓のような「機能と規格が要求する表示」は消えない。むしろ、赤いボタン1つで判断が揺れるあの出題型が教えているのは、外形の印象ではなく銘板に刻まれた根拠を読む癖のほうが長持ちする、ということだ。決め手を言語化して覚えるという方法自体が、新しい器具が出るたびに使い回せる道具になる。
冒頭の4枚の写真で、合格していく受験者が1枚ごとに読んでいた場所は、どこの何だったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。