新設のエアコン専用回路(単相200V2線式)にブレーカーを取り付ける工事があった。手元にちょうど余っていた「2P1E」のブレーカーを使って配線を済ませ、試運転でも問題なく動作した。ところが後日の点検で、このブレーカーの選び方について指摘を受けることになる。
動いているのだから問題ないのでは、と思うかもしれない。しかし配線図に描かれた分電盤の図記号には、極数と素子数の組み合わせがきちんと傍記されていたはずだった。
このトピックを読み終えるころには、なぜ「動いている」ことと「正しい」ことが同じではないのか分かるようになっている。
分電盤・配電盤の図記号は、長方形がベースになっている。ここで注意したいのは、配電盤と分電盤が「大きさ」で描き分けられているわけではないことだ。JIS C 0303が与える図記号は「配電盤,分電盤及び制御盤」という1つだけで、図記号欄はどれも同じ大きさの長方形。種類は枠の中の描き分けで示され、配電盤は枠内に×、分電盤は枠内を斜めに2分割して片側を黒く塗る。制御盤などもこの同じ枠に、それぞれ別の塗り分けで並んでいる。直流用の場合はその旨が傍記され、防災電源回路用の盤は枠を二重にして表す。「大きい方が配電盤」という覚え方が広まっているが、これでは実際の図面で見分けられない。
遮断器そのものの図記号は、JIS C 0303では2つだ。四角にBが配線用遮断器、四角にEが漏電遮断器。そのうえで漏電遮断器の摘要が「過負荷保護付は,〔四角にBE〕を用いてもよい」としていて、BEと描いてあれば過電流と地絡電流の両方を受け持つ過負荷保護付漏電遮断器を指す。ただしBEは任意の代替表記なので、逆は言えない——過負荷保護付をEのまま描くこともできる。規格が過負荷保護の有無を書き分けているのは記号ではなく傍記のほうで、過負荷保護付にはフレームの大きさ(30AFなど)が加わる。
その図記号に、極数と素子数が傍記される。極数(P=Pole)は遮断器が接続できる電線の端子数、素子数(E=Element)は過電流を検知して実際に遮断できる端子の数だ。この2つは必ずしも一致しない(傍記のEは素子数の意味で、図記号としてのE=漏電遮断器とは別物なので、あわせて区別しておきたい)。
単相100V2線式の一般的な家庭用回路には、片側にのみ過電流素子を持つ2P1Eが標準として使われる。一方、単相200V2線式(エアコンなど)の回路は、2本の電線がどちらも対地電圧を持つため、両方に過電流素子がある2P2Eを使うのが基本だ。2P1Eを200V回路に使ってしまうと、素子のない側の電線で過電流が起きても検知・遮断できないおそれがある。見た目の動作確認だけでは、この違いに気づけない。
2P1Eと2P2Eの読み分けが、200V回路増設の入口になる
極数と素子数の傍記が読めるようになると、分電盤が「電気の入り口」から「これから何を増やせるかの一覧表」に見え方が変わる。エアコン、IHクッキングヒーター、EV充電器——200Vを必要とする機器は住宅でも増え続けており、そのたびに問われるのは「空き回路はあるか」「その回路に正しい遮断器が入るか」だ。図記号が読めれば、この判断を図面と現物の両方から突き合わせられる。
今日できることとして、自宅の分電盤を開けて、並んでいるブレーカーの表示を読んでみるといい。定格電流のほかに、2P1E・2P2Eといった表記が本体に印字されていることが多い。100V用の分岐と、エアコンなど200V用の分岐で、表記が違っているのが見つかるはずだ。教科書の中の記号が、自分の家の壁の中で実際に使い分けられていることが確かめられる。
この論点が試験に出るのは、2P1Eを200V回路に使っても「普通に動いてしまう」からだ。動作確認では見抜けず、素子のない側で過電流が起きたときに初めて差が出る。動いていることと正しいことは違う——という判断を、図面の傍記だけで下せるようにするための出題といえる。分電盤の構成そのものについては分電盤の解説も参考になる。
冒頭のエアコン回路で何が指摘されたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。