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電気工事の施工方法 ・ 9 / 10

電線の接続 — 5つの条件と絶縁の回復

読み終えると、こうなる

電線をつなぐ工程でわざと変形させることと、被覆の傷を許さないことが、なぜどちらも正しいのか言い当てられるようになる

  • 圧着接続を見て、電気抵抗の増加はゼロ許容・引張強さの低下は20%まで許容という非対称な基準を取り違えずに判定できる
  • ビニルテープの巻き数を見て、厚さ0.2mmを4層重ねて0.8mm相当に届いているか検算できる
  • 差込形コネクタで接続された箇所にテープが巻かれていなくても、絶縁処理として問題ないと判定できる
考えてみよう

技能試験の世界では、電線の被覆にわずかな傷をつけただけで欠陥になる。電線は傷つけてはならないもの——そう教わったそばから、接続の工程では、リングスリーブに通した心線を圧着工具で思い切り潰す。わざと変形させることが、正しい施工とされている。

しかも条文を読むと、接続部分は「引張強さを20%以上減少させないこと」とある。2割弱までなら弱くなってよい、と法令自身が認めているのだ。傷ひとつ許さない世界が、なぜ接続点にだけこんなに寛容なのか。そのくせ電気抵抗のほうは「増加させないこと」——1オームの猶予もない。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この非対称の理由から答えられるようになっている。

電線相互の接続の条件は、電技解釈第12条にまとまっている。学科試験で問われるのは次の5つだ。

  1. 電線の電気抵抗を増加させないように接続する
  2. 電線の引張強さを20%以上減少させない
  3. 接続部分には、接続管その他の器具を使用するか、ろう付けする
  4. 絶縁電線の接続部分は、絶縁物と同等以上の絶縁効力のある接続器を使用するか、同等以上の絶縁効力のあるもので十分に被覆する
  5. コード相互・キャブタイヤケーブル相互・ケーブル相互の接続には、コード接続器・接続箱その他の器具を使用する

1と2を並べて見ると、厳しさが揃っていない。抵抗はゼロ許容、強さは20%まで許容。試験ではこの2つの数字を入れ替えた選択肢が繰り返し出るが、入れ替えに気づけるかどうかは、暗記よりも「なぜ非対称なのか」を知っているかどうかで決まる。

接続点で電気抵抗が増えると、そこは小さな電熱器になる。電流が流れるたびにジュール熱が生まれ、熱で接触面が酸化してさらに抵抗が増え、また熱が増える——通電のたびに育っていく欠陥だ。だから抵抗の増加には許容量を設けられない。一方、引張強さの低下は「接続点を張力のかからない場所に置く」という別のルールが受け止めている。接続は必ず[ジョイントボックス](/terms/joint-box/)の中で行い、ケーブルはボックスの手前で固定される。引っ張られない場所でなら、2割弱の低下は危険に育たない。

つまり、圧着で心線を潰すことと被覆の傷が欠陥になることは矛盾していない。潰すのは、接触面を密着させて抵抗の増加をゼロに近づけるためであり、それによる強度低下は、張力の来ない場所という条件で引き受けている。条文の数字は、この役割分担をそのまま書き写したものだ。

残る仕事が、絶縁の回復だ。接続のために剥ぎ取った被覆を、元の絶縁物と「同等以上」に戻さなければならない。ここで内線規程が示すテープの巻き方が、試験の定番になっている。

絶縁処理の方法巻き方
ビニルテープ(厚さ約0.2mm)半幅以上重ねて2回(4層)以上
黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ(厚さ約0.5mm)半幅以上重ねて1回(2層)以上
自己融着性絶縁テープ半幅以上重ねて1回(2層)以上巻き、その上に保護テープを半幅以上重ねて1回(2層)以上
差込形コネクタ・絶縁カバー付き接続器テープ巻き不要(器具自体が絶縁効力を持つ)

「2回」や「1回」は暗記用の数字に見えるが、掛け算をしてみると種が割れる。1.6mmのIV電線の絶縁被覆は厚さ0.8mm。ビニルテープは0.2mm×4層=0.8mm、ポリエチレン絶縁テープは0.5mm×2層=1.0mm。どちらも「元の被覆の厚さに追いつくまで巻く」という同じ答えの、テープの厚さ違いの表現にすぎない。同等以上の絶縁効力、という条文の言葉が、巻き数の形に翻訳されている。

リフォームで壁を開けたとき、前の職人の仕事が読める

築年数の経った建物の改修では、天井裏や壁の中のジョイントボックスを開ける場面が必ずある。そこに残っているのは、何十年か前の誰かの接続だ。テープが規定どおり重ねて巻かれているか、ゆるんで垂れていないか、スリーブの圧着は潰れきっているか。この5条件を知って見ると、開けた瞬間に「引き継いでよい配線」と「やり直すべき配線」が仕分けられる。自己融着性絶縁テープは屋外の防水処理でも主役で、巻き方を誤ると水が入る(自己融着テープの施工不良と漏電)——テープの種類と巻き方の知識は、そのまま屋外工事の武器になる。

家一軒の配線には、ジョイントボックスの中の接続点が何十か所もある。電線そのものが原因の事故より、接続点の緩み・抵抗増による発熱のほうが、日常の点検で見つけて防げる異常として身近だ。今日できることを1つ挙げるなら、手元の延長コードやテーブルタップのプラグ付近を触ってみるといい。通電中にほんのり温かい接続部は、抵抗が増え始めた接続点の、いちばん小さな見本だ。太陽光のコネクタ嵌合ミスやEV充電設備の端子緩みなど、これから増える設備も、結局はこの第12条の世界——接続点をいかに発熱させないか——の延長線上にある。

冒頭の非対称——強さには寛容で、抵抗には一切妥協しない理由。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 「20%」という数字を、引張強さから電気抵抗のほうへ移す

    なぜ引っかかる接続の条件には、電気抵抗を増加させないことと、引張強さを20%以上減少させないことの2つが並ぶ。片方にだけ数字が付いているという非対称は、覚えているつもりでも混ざりやすい。選択肢では「引張強さが数%減少した」「電気抵抗が数%増加した」のように、どちらも小さな割合で書かれるため、数字の大小で判断しようとすると必ず外す。

    見破り方割合の大きさではなく、どちらの語に付いているかだけを見る。抵抗にはゼロ、強さには20%、と2語をセットで唱えておく。抵抗の増加は何%であっても不適切、と割り切れば、5%や10%という数字に迷わされない。

  2. 絶縁テープの種類はそのままに、巻く回数と層数だけを入れ替える

    なぜ引っかかる巻き数はテープの厚さから逆算されている。厚さ約0.2mmのビニルテープは半幅以上重ねて2回(4層)以上、厚さ約0.5mmの黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープは1回(2層)以上でよい。ところが選択肢では、テープの名前と厚さを正しく書いたうえで回数だけを取り違えて置いてくる。テープ名を読んで安心すると、そこで判断が止まる。

    見破り方テープの厚さを見て、合計の厚みを暗算する。薄いテープほど多く巻く、という向きさえ押さえていれば、0.2mmで1回2層(合計0.4mm)では足りないと気づける。名前ではなく厚さの数字を判断材料にする。

  3. テープを巻かなかったことを、そのまま不適切に見せる

    なぜ引っかかる絶縁処理といえばテープ巻き、という結びつきが強いため、「テープで巻かなかった」と書かれた選択肢が誤りに見える。しかし差込形コネクタやリングスリーブ用の絶縁キャップは、それ自体が絶縁物と同等以上の絶縁効力を持つ接続器・部材なので、上からテープを巻く必要はない。正しい選択肢が、いちばん誤りらしく書かれている。

    見破り方接続に使った器具が絶縁物で覆われているかどうかを先に判定する。覆われているならテープは不要、むき出しの金属スリーブならテープか絶縁キャップが必要。テープの有無ではなく、最終的に金属が露出していないかで判断する。

  4. リングスリーブの種類と圧着マーク(刻印)の組合せを、1つだけずらす

    なぜ引っかかる直径2.0mmを2本つなぐ場合は小スリーブで刻印は「小」だが、太い電線どうしという印象から中スリーブ「中」に見えてしまう。選択肢は、電線の直径・本数・スリーブの大小・刻印という4つの情報を毎回組み替えて並べるため、どこが動いたのかを追いにくい。

    見破り方スリーブの大小と刻印は別々に決まる、と分けて考える。まず電線の断面積の合計からスリーブの種類を決め、そのうえで刻印を選ぶ。小スリーブでも1.6mmを2本だけなら刻印は「○」になるなど、スリーブの名前と刻印の文字が一致しない組合せがあることを先に知っておく。

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 電線の電気抵抗を増加させないこと(「20%まで増加可」は誤り。増加はゼロ)
  2. 電線の引張強さを20%以上減少させないこと
  3. 接続部分には接続管その他の器具を使用するか、ろう付けすること。コード相互・ケーブル相互などはコード接続器・接続箱等の器具を使う
  4. 絶縁は元の絶縁物と同等以上に回復する。ビニルテープ(厚さ約0.2mm)なら半幅以上重ねて2回(4層)以上、自己融着性絶縁テープは1回(2層)以上巻いた上に保護テープを1回(2層)以上
  5. 差込形コネクタや絶縁カバー付きの接続器を使う場合は、器具自体が絶縁効力を持つためテープ巻きは不要
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