技能試験の世界では、電線の被覆にわずかな傷をつけただけで欠陥になる。電線は傷つけてはならないもの——そう教わったそばから、接続の工程では、リングスリーブに通した心線を圧着工具で思い切り潰す。わざと変形させることが、正しい施工とされている。
しかも条文を読むと、接続部分は「引張強さを20%以上減少させないこと」とある。2割弱までなら弱くなってよい、と法令自身が認めているのだ。傷ひとつ許さない世界が、なぜ接続点にだけこんなに寛容なのか。そのくせ電気抵抗のほうは「増加させないこと」——1オームの猶予もない。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この非対称の理由から答えられるようになっている。
電線相互の接続の条件は、電技解釈第12条にまとまっている。学科試験で問われるのは次の5つだ。
- 電線の電気抵抗を増加させないように接続する
- 電線の引張強さを20%以上減少させない
- 接続部分には、接続管その他の器具を使用するか、ろう付けする
- 絶縁電線の接続部分は、絶縁物と同等以上の絶縁効力のある接続器を使用するか、同等以上の絶縁効力のあるもので十分に被覆する
- コード相互・キャブタイヤケーブル相互・ケーブル相互の接続には、コード接続器・接続箱その他の器具を使用する
1と2を並べて見ると、厳しさが揃っていない。抵抗はゼロ許容、強さは20%まで許容。試験ではこの2つの数字を入れ替えた選択肢が繰り返し出るが、入れ替えに気づけるかどうかは、暗記よりも「なぜ非対称なのか」を知っているかどうかで決まる。
つまり、圧着で心線を潰すことと被覆の傷が欠陥になることは矛盾していない。潰すのは、接触面を密着させて抵抗の増加をゼロに近づけるためであり、それによる強度低下は、張力の来ない場所という条件で引き受けている。条文の数字は、この役割分担をそのまま書き写したものだ。
残る仕事が、絶縁の回復だ。接続のために剥ぎ取った被覆を、元の絶縁物と「同等以上」に戻さなければならない。ここで内線規程が示すテープの巻き方が、試験の定番になっている。
| 絶縁処理の方法 | 巻き方 |
|---|---|
| ビニルテープ(厚さ約0.2mm) | 半幅以上重ねて2回(4層)以上 |
| 黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ(厚さ約0.5mm) | 半幅以上重ねて1回(2層)以上 |
| 自己融着性絶縁テープ | 半幅以上重ねて1回(2層)以上巻き、その上に保護テープを半幅以上重ねて1回(2層)以上 |
| 差込形コネクタ・絶縁カバー付き接続器 | テープ巻き不要(器具自体が絶縁効力を持つ) |
「2回」や「1回」は暗記用の数字に見えるが、掛け算をしてみると種が割れる。1.6mmのIV電線の絶縁被覆は厚さ0.8mm。ビニルテープは0.2mm×4層=0.8mm、ポリエチレン絶縁テープは0.5mm×2層=1.0mm。どちらも「元の被覆の厚さに追いつくまで巻く」という同じ答えの、テープの厚さ違いの表現にすぎない。同等以上の絶縁効力、という条文の言葉が、巻き数の形に翻訳されている。
リフォームで壁を開けたとき、前の職人の仕事が読める
築年数の経った建物の改修では、天井裏や壁の中のジョイントボックスを開ける場面が必ずある。そこに残っているのは、何十年か前の誰かの接続だ。テープが規定どおり重ねて巻かれているか、ゆるんで垂れていないか、スリーブの圧着は潰れきっているか。この5条件を知って見ると、開けた瞬間に「引き継いでよい配線」と「やり直すべき配線」が仕分けられる。自己融着性絶縁テープは屋外の防水処理でも主役で、巻き方を誤ると水が入る(自己融着テープの施工不良と漏電)——テープの種類と巻き方の知識は、そのまま屋外工事の武器になる。
家一軒の配線には、ジョイントボックスの中の接続点が何十か所もある。電線そのものが原因の事故より、接続点の緩み・抵抗増による発熱のほうが、日常の点検で見つけて防げる異常として身近だ。今日できることを1つ挙げるなら、手元の延長コードやテーブルタップのプラグ付近を触ってみるといい。通電中にほんのり温かい接続部は、抵抗が増え始めた接続点の、いちばん小さな見本だ。太陽光のコネクタ嵌合ミスやEV充電設備の端子緩みなど、これから増える設備も、結局はこの第12条の世界——接続点をいかに発熱させないか——の延長線上にある。
冒頭の非対称——強さには寛容で、抵抗には一切妥協しない理由。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。