在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
制御盤電気設計熱対策

制御盤の放熱設計と盤用クーラーの選び方|換気扇・熱交換器との違いと発熱量の計算

読了目安: 10分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

真夏の午後、密閉型の制御盤に収めたインバータが立て続けに保護停止した。配線も定数も、竣工検査のときから何も変えていない。担当者が疑ったのは経年劣化だったが、盤の扉を開けて温度計を当てると、盤内はすでに50℃を超えていた。原因は、更新工事のたびに機器を詰め足してきた盤内が、いつの間にか発熱の総量に見合わない密閉空間になっていたことだった。

この手のトラブルが厄介なのは、配線にも機器にも「壊れた部品」が見当たらない点にある。犯人は目に見える故障ではなく、盤という箱の中にじわじわ溜まっていく熱そのものだからだ。

なぜ盤内には熱がこもるのか——密閉度と防塵・防水のトレードオフ

制御盤は、外からの粉塵や水の侵入を防ぐために、程度の差はあれ密閉された箱として作られている。屋外設置や過酷環境向けの盤ほど、パッキンで扉を密着させ、隙間をふさぎ込む方向に設計は振れていく。

ところが、この密閉度を上げる設計判断が、そのまま放熱にとっての逆風になる。盤内の機器が発する熱は、対流や伝導によって盤の外側へ逃げていくしかないのに、密閉度を上げるということは、その逃げ道を自ら塞ぐことに等しいからだ。IP54やIP65といった保護等級を上げるほど盤内に熱がこもりやすくなるというのは、電気設計の現場では意外と共有されていない発見のひとつで、「防塵性能を上げたら安心」という判断だけで盤を選ぶと、今度は熱害という別の問題を招き込むことになる。

つまり、盤の設計は「粉塵・水をどれだけ防ぐか」と「熱をどれだけ逃がすか」という、逆方向に働く2つの要求のバランスの上に成り立っている。結露対策のようにこの盤内で起きる別の水分トラブルは、外気より盤内を「温かく」保つことで防ぐ設計だったが、放熱設計はその逆で、盤内を外気より「涼しく、あるいは同程度に」保つための設計だ。同じ盤の中で、季節や時間帯によって正反対の要求が同時に生じることさえある。

発熱源はどこにあるか——機器ごとの発熱量の目安

盤内の熱源は、盤そのものではなく、盤に収めた機器一つひとつだ。盤用熱関連機器工業会(TECTA、事務局は日東工業株式会社内)が公開する技術資料第001号「盤内収納機器の発熱量(目安)指針」には、代表的な機器の発熱量が定格に対する割合やW数として整理されている。

機器発熱量の目安備考
インバータ定格出力0.4kW:約12.5%/7.5kW:約6%/30kW:約4%小型ほど発熱比率が高い。連続定格出力時の値
変圧器定格容量100VA:約15%/3kVA:約5%/100kVA:約2%小型ほど発熱比率が高い。損失=発熱量とみなす
電磁接触器定格4kW:約7W/22kW:約30W/55kW:約90W3P・AC220Vの場合
配線用遮断器(MCCB)定格20A:約5W/225A:約35W/600A:約110W3Pの場合。極数に比例
ファンモータ(軸流)□90サイズ:約10W/□140サイズ:約40W定格入力を発熱量とみなす
PLC(AC電源・一体型)I/O点数10〜32点:約20〜35WI/O点数が増えるほど増加

(盤用熱関連機器工業会 技術資料第001号-2018による)

この一覧を眺めていて気づくのは、小型の機器ほど定格に対する発熱の「比率」が大きいという傾向だ。感覚的には大型機器の方が発熱も大きそうに思えるが、実際には0.4kWの小型インバータが定格の12.5%を熱に変えるのに対し、30kWクラスの大型インバータは4%程度にとどまる。省スペース化を狙って小型機器を数多く詰め込む設計ほど、見た目の容量以上に発熱がかさむ場合があるということだ。

放熱方式の比較——自然放熱・強制換気・熱交換器・盤用クーラー

発熱源と発熱量の見当がついたら、次はその熱をどう逃がすかを決める番になる。制御盤の放熱方式は、大きく4段階に分かれる。

自然放熱(ルーバー・通気口)は、盤にファンなどの動力を持たず、盤の隙間や通気口から自然対流で熱を逃がす方式だ。外気が盤内より十分低く、発熱量もわずかな場合に限って成立する、最もコストのかからない方法である。

強制換気(フィルタファン)は、ファンで外気を盤内に取り込み、温まった空気を排出することで盤内の温度を下げる。安価で最も広く使われる方式だが、盤内を冷やせるのはあくまで外気温付近までで、外気そのものが盤内許容温度を超える環境では効果が頭打ちになる(アピステ資料による)。加えて、外気を直接盤内に取り込む以上、粉塵やオイルミストが混ざった空気ではフィルタでは防ぎきれない微粒子が盤内に侵入するリスクを抱える。

熱交換器は、盤内と盤外の空気を混ぜずに、隔壁を介した熱伝導だけで盤内の熱を外へ逃がす。盤を密閉したまま使えるため防塵性はあるが、原理上、盤内を外気温より低い温度まで下げることはできない。TECTA-G01のガイドラインでは、熱交換器を選定する際の温度条件として「盤内許容温度が最高外気温度を上回っており、かつその差は10K以上が望ましい」とされており、外気が盤内より低い時間帯・季節が十分に見込める設置環境向けの方式だと分かる。

盤用クーラーは、家庭用エアコンと同じ冷媒回路を持ち、盤内空気をコンプレッサーで任意の設定温度まで積極的に冷却する。外気温に関係なく盤内を一定温度に保てる代わりに、4方式の中では消費電力・設置コストとも最も高くなる。

方式盤外より低い温度まで冷やせるか粉塵・油分への強さ主なコスト
自然放熱不可密閉のまま使えば強いほぼゼロ
強制換気(フィルタファン)不可(外気温が下限)弱い(外気を直接取込む)
熱交換器不可(外気温が下限)強い(盤を密閉)
盤用クーラー可(設定温度まで冷却)強い(盤を密閉)

(アピステ・リタール各社の技術情報を基に整理)

どの方式にすべきかは、結局のところ「盤内許容温度に対して、設置環境の外気温がどこまで迫るか」という一点に集約される。外気が常に盤内より涼しいなら熱交換器で足り、真夏の屋外や工場の炉近くのように外気自体が盤内許容温度を超えうるなら、盤用クーラーでなければ目標温度に届かない。

発熱量から必要能力を概算する

方式を選ぶ前提として、盤内総発熱量と必要な冷却能力を数値で押さえておく必要がある。アピステの技術資料では、必要冷却能力の基本式を次のように整理している。

必要冷却能力[W] = 盤内総発熱量[W]
                 + 熱通過率[W/㎡・℃] × (最高外気温度[℃] − 盤内希望温度[℃]) × 盤の有効表面積[㎡]

盤内総発熱量は、先の一覧表のように機器ごとの発熱量を積み上げて求める。熱通過率は一般的な鋼板製の盤で5〜6W/㎡・℃程度が目安とされ、盤用クーラーのカタログ値は「周囲温度35℃・盤内設定温度35℃」という条件で表示されるのが標準だ。つまりカタログの能力値は無条件の性能ではなく、特定の温度差を前提にした値であり、実際の設置条件がそれと大きくずれるなら、メーカーの特性グラフで補正して確認する必要がある(アピステ資料による)。

この式で算出した値をそのまま機種選定に使うのは危うい。TECTA-G01のガイドラインが示す屋外盤の計算例では、風速0.3m/sという無風に近い条件下で、日射だけで盤の各面に相当外気温度上昇が生じ、南面や西面では侵入熱量が数十Wに達する。盤内発熱量そのものは変わらなくても、日射を受ける屋外設置と日陰の屋内設置とでは、必要な冷却能力が数割単位で変わりうるということだ。加えて実務では算出値に対して1.2〜2倍程度の安全率を見込むのが一般的とされる(アピステ資料による)。盤内許容温度も、下げすぎれば結露の原因になるため、通常は35℃程度を基準に、設置環境に応じて調整する。

粉塵・油分・塩害環境での注意点

工場の切削・研磨・製粉ラインのように粉塵が多い現場、あるいは工作機械まわりのオイルミストが漂う現場では、外気をそのまま盤内に取り込む強制換気(フィルタファン)は選択肢から外れやすい。フィルタで捕集しきれない微粒子や油分の粒子が、わずかずつでも盤内に蓄積していくと、リレーやスイッチの接点不良、放熱フィンの目詰まりといった形で数か月〜数年単位のトラブルにつながっていく。こうした環境では、盤を密閉したまま熱だけを外へ逃がす熱交換器か、冷媒回路で完結する盤用クーラーを優先するのが実務上の判断になる。

沿岸部など塩害の懸念がある設置場所では、放熱方式の選定に加えて、盤用クーラー・熱交換器の外装や熱交換フィンの防食仕様(塩害仕様コーティング等)を確認したい。潮風にさらされる屋外機は、内陸設置に比べてフィンの腐食や冷媒漏れの進行が早く、メーカーカタログで塩害地域向けの仕様が用意されているかどうかを、設置場所とあわせて事前に伝えておく必要がある。

保守——フィルタ清掃を怠ると起きること

強制換気のフィルタファンも、熱交換器・盤用クーラーのフィルタも、目詰まりが進むと通風量が落ち、同じ発熱量に対して盤内温度が徐々に上昇していく。厄介なのは、この劣化が数日で表面化するものではなく、数週間から数か月かけてじわじわ進行する点だ。ある日突然機器が停止して初めて、フィルタが埃で目詰まりしていたことに気づくというのが典型的なパターンになる。

粉塵の少ない一般的な屋内環境であれば数か月に一度、切削・研磨など粉塵の多い現場や、夏季で稼働負荷が高まる時期は、それより短い間隔での点検・清掃を組み込んでおくと安全だ。清掃の間隔は設置環境ごとに大きく変わるため、まずは短めの間隔で様子を見て、フィルタの汚れ具合から自社の現場に合った周期を決めていくのが現実的な進め方になる。

まとめ——密閉と放熱は同時に設計する

制御盤の放熱設計は、「発熱源をどれだけ正確に見積もれるか」と「その熱を逃がす方式が設置環境に合っているか」という2つの判断の掛け算だ。小型機器ほど発熱比率が高いこと、熱交換器は外気温より低くは冷やせないこと、防塵・防水のためのIP等級を上げるほど熱がこもりやすくなること——どれも、機器を組み込む段階では見落とされがちな視点である。盤の密閉度を決める設計と、盤の温度を決める設計は、本来ひとつの検討として同時に進めるべきものだ。

制御盤の熱対策機器・見積りについて

電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)でお見積り・ご相談いただけます。盤内機器の構成や設置環境(屋内外・粉塵・油分の有無・日射の当たり方)をお伝えいただければ、換気扇・熱交換器・盤用クーラーの候補選定からご提案します。

見積もり依頼をする →

あわせて読みたい

関連する制御盤・放熱・盤用クーラー・選び方・発熱量・計算の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。

対象の電材・品種を検索する →

参考文献・出典

QUOTATION SIGNAL

電設資材・FA部品の無料見積もり

仕入れコスト削減、廃盤代替品の選定、お急ぎの在庫確認まで。型番や数量を送っていただくだけです。 手書きメモや型番リストの写真・PDFでも依頼できます。

SPONSOR / AD

Google AdSense 広告配信エリア

(AdSense管理画面で広告ユニットを作成し、実際のslot値に差し替えるとここに本番広告が挿入されます)

AIと状況を整理してから相談する

普段お使いのChatGPT・Gemini・Perplexity等に貼り付けられる質問文をコピーできます。 自分の状況を伝えて相談すると、最後に電材サーチへの見積依頼文もまとめてもらえます。