制御盤の改修現場で、DINレールに並んだ端子台の刻印を上から順に読んでいく。「UK 5 N」「UK 5」「UK 4」——数字だけ見れば、5が4より太い電線に対応していそうなものだ。ところが手元の資料でUK 4の仕様を確認すると、定格断面積は4mm²。UK 5 Nも同じく4mm²だという。数字が違うのに定格が同じとは、いったいどちらの型番が正しいのか、あるいは何かの誤植なのか——型番の並びだけを頼りに考えていると、そこで手が止まる。
フェニックス・コンタクトは端子台の分野で長い歴史を持つメーカーであり、UKシリーズ(ねじ締め)とPTシリーズ(プッシュイン、CLIPLINE complete)という二本柱の型番体系を持つ。WAGOのコネクタのように末尾の一桁が極数を素直に示すような単純な規則とは違い、この二つのシリーズは数字の意味そのものが違う設計思想の上に乗っている。フェニックス・コンタクト公式の製品データに基づいて、両シリーズの数字が実際に何を指しているのかを、ひとつずつ確かめていく。
PTシリーズの数字は、公称断面積そのものである
まず結論から言えば、プッシュイン接続のPTシリーズは読み方に迷う余地が少ない。公式製品ページのPT 2,5(型番3209510)の技術データには「Nominal cross section 2.5 mm²」という項目が明記されており、型番の「2,5」(カンマ区切りの小数表記)と公称断面積の数字がそのまま一致する。同ページは接続方式についても「Connection method: Push-in connection」と明記し、電線をレバーもねじも使わず差し込むだけで結線が完了する構造であることを示している。
この一致はPT 2,5-PE(接地用、型番3209536)やPT 2,5-TWIN(分岐用、型番3209549)といった派生型でも崩れない。接地用のPT 2,5-PEは公式ページで「color: green-yellow」と明記され、公称断面積は変わらず2.5mm²のまま、接地専用という機能だけが型番の末尾「-PE」に上乗せされている。数字が公称断面積を表し、末尾の記号が機能を追加する——PTシリーズの型番はこの二層構造で素直に読める。
UKシリーズでは、この前提が崩れる
同じ論理でUKシリーズを読もうとすると、そこでつまずく。公式製品ページのUK 3 N(型番3001501)を確認すると、技術データには「Rated cross section: 2.5 mm2」「Nominal cross section 2.5 mm²」とあり、型番の「3」に対して定格断面積は2.5mm²だ。数字と定格が、すでに一致していない。
さらに厄介なのは、この不一致がUK 5 Nでも起きていることだ。公式製品ページのUK 5 N(型番3004362)の技術データには「Rated cross section: 4 mm2」「Nominal cross section 4 mm²」と明記されている。つまりUK 5 Nの定格断面積は5mm²ではなく4mm²であり、しかもこの4mm²という値は、型番の数字が実際に4mm²と一致するUK 4(型番3003017、Cross section: 0.2 mm² - 4 mm²)の定格と、そっくり重なっている。型番が違うのに定格断面積が同じ製品が、同じUKシリーズの中に並んで存在する。
手元の主要サイズを公式データで並べ直すと、次のようになる。
| 型番 | 公式データ上の定格断面積 | 定格電流 |
|---|---|---|
| UK 3 N | 2.5 mm² | 24 A |
| UK 4 | 4 mm² | 32 A |
| UK 5 N | 4 mm² | 32 A |
| UK 6 N | 6 mm² | 41 A |
| UK 10 N | 10 mm² | 57 A |
| UK 16 N | 16 mm² | 76 A |
UK 6・10・16は型番の数字と定格断面積が一致する。ところがUK 3とUK 5だけが、この規則から外れている。UKシリーズの数字は「おおむね断面積の目安にはなるが、機械的に信じてよい絶対値ではない」という、PTシリーズより一段慎重な読み方が必要になる。
同じ4mm²定格のUK 4とUK 5 N、実際には何が違うのか
定格断面積が同じなら、この2つは同一品なのだろうか。公式データをもう一段掘ると、実際に違う項目が一つだけ見つかる。単線(撚っていない導体、solid)の最大対応断面積だ。UK 4の技術データは単線・より線(stranded)ともに最大4mm²と案内する一方、UK 5 Nの技術データは単線側だけ「Conductor cross section rigid 0.2 mm² … 6 mm²」と、より太い6mm²まで受け入れる仕様になっている。より線側の最大値は両者とも4mm²で揃っており、定格電流(32A)・定格電圧(800V)・ねじ規格(M3、Tightening torque 0.6…0.8 Nm)もすべて共通だ。
違いはこの一点、単線をどこまで太くできるかに集約される。制御盤の主開閉器まわりなど、撚っていない太めの単線を直接ねじ止めしたい箇所ではUK 5 Nの方に余裕があり、より線・圧着端子中心の配線ではUK 4でも過不足がない、という使い分けになる。
ちなみに「N」が付かない無印の「UK 5」(型番3004016)という製品も別に存在するが、公式データを見る限り単線・より線ともに最大4mm²で、UK 4とほぼ同じ範囲に収まっている。UK 5 Nの「N」が何の略なのかは公式資料の英語表記からは確認できなかったが、少なくとも今回突き合わせた範囲では、「N」の有無が単線の受け入れ幅を変える一つの目印になっている、という事実だけは複数の製品データの比較から裏付けが取れる。型番の一文字が持つ正式な由来までは、無理に決めつけずに「確認できた効果」の範囲で扱うのが安全だろう。
末尾の記号は色・分岐・接地を上乗せする
数字の後ろに続く記号は、UK・PTどちらのシリーズでも共通の考え方で読める。色記号はBU(青)・YE(黄)・GN(緑)・BG(ベージュ)などがあり、公式製品ページのUK 5 N BU(型番3004388)は、定格断面積・定格電流・定格電圧のすべてがUK 5 Nと同一で、色だけが青に変わった製品として案内されている。記号のないグレーが標準色というだけで、定格そのものは変わらない。
「-TWIN」は機能の追加だ。公式製品ページのUK 5-TWIN(型番1923021)は「1-level terminal block with double connection on one side」「designed for the basic task of potential branching」と説明されており、制御盤側で独立した2本の導体を受けられる分岐専用の端子台であることが分かる。「-PE」は保護接地専用で、PT 2,5-PEの公式ページは「Direct contacting with the DIN rail enables fast, error-free grounding without additional wiring effort」と、DINレールに直接接触させることで追加配線なしに接地できる構造だと説明する。色も緑・黄(green-yellow)に固定されており、これは配色そのものが「接地用である」という識別記号を兼ねている。
型番を読むときに、実務でしておきたいこと
ここまでの規則を整理すると、PTシリーズは型番の数字を公称断面積としてそのまま信用してよい。一方UKシリーズは、数字が定格断面積の目安にはなるものの、UK 3・UK 5のように例外があり、しかも隣接する型番同士(UK 4とUK 5 N)が同じ定格断面積を共有していることがある。撤去した端子台の型番を控えて後継品や代替品を探す際、UKシリーズであれば数字だけで判断せず、定格断面積・定格電流・単線とより線それぞれの最大対応断面積まで含めて照合したほうが、取り違えを防げる。
もっとも、この記事で確認できたのはUK 3・4・5・6・10・16とPT 2,5系という主要なサイズ・派生型に限られる。フェニックス・コンタクトのUK・PTシリーズにはこのほかにも多段式(多層)端子台やヒューズ内蔵端子台(HESI系)、ディスコネクト端子台など、型番の構成が異なる製品群が数多く存在する。今回扱っていない型番については、この記事の規則をそのまま当てはめず、現物写真を添えて公式データと照合するのが確実だ。
フェニックス・コンタクト端子台の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の刻印からの仕様確認、UK・PT両シリーズを含む代替品・後継品の選定まで対応している。UK 4とUK 5 Nのように定格が近い型番の使い分けに迷う場合も、現物写真を添えてもらえれば照合が早い。
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