制御盤の増設工事で、コモン(共通)端子に新しい機器を1台追加することになったとしよう。すでにその端子台には、隣の端子から電線が1本渡してあり、さらにその隣へまた1本、というふうに、コモン線が電線でジグザグに配線されている。今回もそのやり方を踏襲し、既存の配線の隣にもう1本、電線を継ぎ足す。作業自体は難しくない。ただ、この盤を作った担当者は最初からそうしていたわけではなかったはずだ、と気づく。端子が増えるたびに電線も増え、盤内はいつの間にか電線の束でコモンの範囲が見えなくなっている。
電線1本を足すだけの作業のはずなのに、なぜこの煩雑さが積み重なっていくのだろうか。
「電線で繋げばどこでも同じ」という思い込み
複数の端子を同じ電位でつなぐ方法として、電線をその都度渡していくやり方は、部材が手元にあればすぐ実行できるという意味で確かに手軽だ。端子ネジを緩め、電線を差し込み、締め直す。この一連の作業に特別な部材は要らない。
だが、この手軽さは端子の数が少ないうちだけの話だ。端子が5つ、10と増えていくと、電線は隣の端子へ、そのまた隣の端子へと数珠つなぎに増えていく。増設のたびに新しい電線を1本足す作業が発生し、盤を開けたときにどこからどこまでがコモンの範囲なのか、電線の束を目で追わないと分からなくなる。
この状態に対して、端子台メーカー各社は電線とは別の専用部材を用意している。ジャンパーバー、あるいは渡り線・短絡バー・ブリッジと呼ばれる部材だ。
ジャンパーバーとは何か——電気的接続を前提に設計された専用部材
ジャンパーバーは、端子台の複数の端子を、電線ではなく金属バーで直接橋渡しし、電気的に接続するための専用部品だ。端子の挿入口にそのまま差し込む、あるいはねじ止めするだけで、隣接する端子同士が一つの電位でつながる。
オムロンは、色付きの短絡バーをあらかじめ装着した状態で出荷する「XW6T 見えるコモン端子台」という製品を用意しており、その特長を「煩わしい渡り配線作業は不要。コモンの範囲が分かりやすい」「色付きの短絡バーを装着済。短絡バーは、端子台正面から見えるので、コモンの範囲が容易に分かります」と説明している。電線での渡り配線という作業そのものを、部材の選定によって不要にするという発想だ。
ここで確認しておきたいのは、ジャンパーバーが電線の「代用品」ではないという点だ。電線での渡り配線も、金属バーでの橋絡も、複数の端子を同じ電位にするという電気的な結果は同じになる。しかし、ジャンパーバーは端子の挿入構造・ピッチ・極数に合わせて専用設計された部材であり、電線のように任意の長さ・任意の本数で自由に構成できるものではない。むしろ、あらかじめ用意された極数の中から、その配線構成に合ったものを選ぶという発想の部材だ。
電線での渡り配線との違い——施工性・視認性・許容電流
この違いは、大きく3つの観点で現れる。
一つめは施工性だ。電線での渡り配線は、端子の数だけ電線を切って剥いて差し込むという作業を繰り返す必要がある。ジャンパーバーであれば、対応する極数の1本を挿し込むだけで複数端子分の橋絡が完了する。オムロンのプッシュインPlus端子台のように、そもそも1つの端子に2つの挿入口を持たせ、片方を渡り配線専用にする設計もあるが、これも「電線を都度足す」作業そのものを減らす方向の工夫という点では、ジャンパーバーと狙いは同じだ。
二つめは視認性だ。電線での渡り配線が積み重なると、どの端子とどの端子が同じ電位かを目で追うのが難しくなる。ジャンパーバーは端子台の正面に金属バーとして露出しているため、どこからどこまでが一つのコモンかが一目で分かる。オムロンが「見えるコモン端子台」という製品名を付けているのは、この視認性の違いを正面から製品価値として打ち出した例だ。
三つめが、見落とされがちな許容電流の違いだ。電線は太さ(断面積)を自由に選べるため、流したい電流に応じて電線側を太くするという調整ができる。ところがジャンパーバー(渡り線)自体にも、部材としての定格電流が決まっている。この一点が、次の章で扱う話につながっていく。
どこで使うか——コモン端子・電源分岐という「同じ電位を配る」場面
ジャンパーバーが活躍するのは、複数の端子に同じ電位を配る必要がある場面に限られる。代表例が、センサーの電源(コモン)端子や、リレー・PLCの共通端子(COM)、盤内での電源分岐だ。これらはいずれも、隣接する端子群に同一の電位(0V、24V、アース電位など)を行き渡らせる必要がある、という共通点を持っている。
逆に、隣り合う端子が別々の電位・別々の回路である場合には、ジャンパーバーの出番はない。端子台の隣接端子をむしろ電気的に隔てておきたい場面については、沿面距離・絶縁距離や仕切板・絶縁バリアを扱った記事のほうが参考になる。ジャンパーバーと仕切板は、同じ「隣接端子」を舞台にしながら、目的が正反対の部材だ。仕切板は端子間の絶縁を確保するための部材であり、ジャンパーバーは逆に端子間を意図的に電気的接続する部材になる。
種類——極数・段数・締結方式の違い
ジャンパーバーは、メーカー各社がアクセサリーとして品番展開しており、選び方に押さえるべき軸がいくつかある。
一つめは極数だ。オムロンのXW5T-P用短絡バーは2・3・4・5・10極という単位で品番が分かれており、必要な極数分に足りない場合は複数の短絡バーを組み合わせて任意の台数を短絡できる。ただしこれは「1段タイプ」の場合の話で、「2段タイプ」は挿入口が1段につき1か所しかなく、1段タイプのように複数を組み合わせて連続した渡りを取ることができない、という制約がある。
二つめは締結方式だ。ヴァイドミュラーは、ねじ止め式の「WQV」シリーズと差し込み式の「ZQV」シリーズという2系統のクロスコネクタ(渡り線)を展開しており、フェニックス・コンタクトのFBSシリーズも差し込み式のプラグインブリッジとして品番展開されている。WAGOもTOPJOB Sシリーズ向けにプッシュイン式のジャンパーバーを用意しており、DigiKeyの製品カテゴリを見ても、フラットピン式・プッシュイン式という形状の違いがメーカーを問わず併存していることが分かる。締結方式が端子台本体の方式(ねじ式かばね式・プッシュイン式か)と対応している点も選定時の確認事項になる。
三つめは切断の可否だ。ここはメーカーによって設計思想が分かれる。フェニックス・コンタクトの技術資料は、切り詰めたブリッジを使用する場合は定格電圧が低下すると明記し、必要な絶縁距離を維持するための指定カバー・仕切板の追加取り付けを求めている。一方オムロンのXW5T-P用短絡バーのFAQは、側面が樹脂で覆われているため切断すると絶縁処理がなくなるとして切断そのものを禁止しつつ、あらかじめ設けられた中間のピンを折って極数を減らすことは可能としている。「切って使う」という発想が製品によって認められている場合と認められていない場合があるということであり、現物の取扱説明を確認せずに電動工具でジャンパーバーを切り詰めるのは避けたほうがよい。
定格電流の考え方——ジャンパーバー自体にも許容電流がある
電線であれば「太くすれば電流を増やせる」という調整が効く。ジャンパーバーの場合、この発想がそのままでは通用しない。
オムロンのXW5S-Pシリーズの短絡バーは、対応する端子台の端子幅ごとに定格電圧・定格電流が決まっている。端子幅1.5mm²対応のXW5S-P1.5は定格電圧500V・定格電流17.5A、2.5mm²対応のXW5S-P2.5は定格電圧800V・定格電流24A、4.0mm²対応のXW5S-P4.0は定格電圧800V・定格電流32Aだ。フェニックス・コンタクトのFBSシリーズも、ピッチが広い(端子1つあたりの幅が大きい)品番ほど定格電流が高くなる傾向があり、ヴァイドミュラーのねじ止め式クロスコネクタ「WQV 4/10」は10極・ピッチ6.1mmで定格電圧400V・定格電流41Aという仕様になっている。いずれのメーカーも、ジャンパーバーの物理サイズと定格電流が対応関係にあるという点は共通している。
ここで見落としやすいのが、この定格電流が「端子1つ分」ではなく「橋絡した区間全体を流れる電流の合計」に対する上限だという点だ。オムロンのFAQも「複数の端子台を短絡させる場合、定格電流を超えないようにしてください」と明記している。コモン端子に接続する機器を1台、また1台と増やしていけば、そのコモン端子群を流れる電流の合計も増えていく。電線であれば「足りなければ太い電線に替える」という選択肢があるが、ジャンパーバーは規格化された部材である以上、定格電流を超える構成になった時点で、より大きな定格のジャンパーバーへの変更か、コモン自体を系統分割するという判断が必要になる。
似た発想は、まったく別の仕組みでも登場する。オムロンの温度調節器E5□C-Bシリーズは、電源を渡り配線で数珠つなぎにできるが、その接続台数はAC100-240Vタイプで16台まで、AC/DC24Vタイプで8台までと上限が決められている。理由は、電源に最も近い1台の電源基板に大きな突入電流が集中すること、そして数珠つなぎの末端に近い機器では電圧降下が懸念されることにある。ジャンパーバーとは別の機構だが、「同じ電位・同じ経路を複数の機器で共有すると、その経路自体に流せる電流には上限がある」という考え方は共通している。
増設時に見落としがちな注意点——ジャンパーバーの数は端子数に足りているか
盤の増設工事で実際に起きやすいのは、次のようなすれ違いだ。既設の端子台にちょうど1極分の空きがあり、そこへ新しい機器のコモン線を追加する。端子自体は空いているので、電線を1本足せばよいと考えてしまう。だが、その端子台のコモンがジャンパーバーで構成されている場合、新しく使う空き端子にジャンパーバーが橋絡されていなければ、その端子は電気的にコモンから孤立したままになる。
この見落としが起きやすいのは、ジャンパーバーが端子台の正面に固定された部材であるがゆえに、「そこにあるから当然つながっている」と錯覚しやすいためだ。極数の合った新しいジャンパーバーに交換するか、1段タイプであれば手持ちの短いジャンパーバーを追加で組み合わせるか、いずれかの手当てが必要になる。前述の通り2段タイプはこの組み合わせができないため、増設の余地がそもそも設計時点で決まっている、という点も確認しておきたい。
もう一つ、増設時に起きがちなのが、他社製・他シリーズの端子台へジャンパーバーだけ流用しようとする発想だ。ジャンパーバーは端子のピッチ・極数・挿入構造がメーカー・シリーズごとに専用設計されているため、型番の違う端子台に別シリーズのジャンパーバーを無理に差し込むことはできない。増設・更新の場面では、端子台本体の型番からメーカーの適合ジャンパーバー品番を照合するのが安全だ。
よくある質問
ジャンパーバーと電線での渡り配線、結局どちらを使えばいいですか?
同じ端子台内・隣接する端子同士をつなぐ場合は、専用のジャンパーバーが用意されていればそちらを優先するのが実務的です。施工時間が短く、コモンの範囲が見た目で分かり、電線のように緩みや被覆の擦れで断線する心配もありません。一方、端子台が離れている場合や、対応するジャンパーバーが存在しない組み合わせでは電線での渡り配線が必要になります。どちらも「同じ電位を複数端子に配る」という目的は同じですが、適用できる場面が異なります。
ジャンパーバーは他社製・他シリーズの端子台にも流用できますか?
できません。ジャンパーバーは端子のピッチ(間隔)・極数・挿入構造がメーカーやシリーズごとに専用設計されており、同じメーカーでもシリーズが違えば形状が合わないのが一般的です。DigiKeyの製品カテゴリでも、フェニックス・コンタクトのCLIPLINEシリーズ、WAGOのTOPJOB Sシリーズがそれぞれ専用のジャンパー品番を展開しています。端子台本体の型番からメーカーの適合品番を確認する必要があります。
ジャンパーバーを現場で切って使ってもよいですか?
メーカーと製品によって扱いが分かれます。Phoenix Contactの技術資料は、切り詰めたブリッジ(ジャンパー)を使用する場合は定格電圧が低下すると明記し、絶縁距離を維持するための追加処置を求めています。一方オムロンのXW5T-P用短絡バーはFAQで「切断しないでください」としつつ、あらかじめ設けられた中間のピンを折って極数を減らすことは可能としています。どちらも「任意の場所で自由に切ってよい」という意味ではなく、メーカーが想定した方法の範囲でのみ加工が許容されている点は共通しています。
ジャンパーバーの定格電流は、どの数値を基準に確認すればよいですか?
端子1つ分の定格電流ではなく、ジャンパーバーで橋絡した区間全体に流れる電流の合計で確認する必要があります。オムロンのFAQも「複数の端子台を短絡させる場合、定格電流を超えないようにしてください」と明記しており、コモン端子に接続する機器が増えるほど、そこを流れる合計電流も増えていく点に注意が必要です。
増設のときに、ジャンパーバーが足りないことに気づかないケースはありますか?
よくあるケースです。既設の端子台に空き端子があっても、そこに装着すべきジャンパーバーの極数が現在の構成と合っていなければ、新しく増設した端子だけコモンから外れてしまいます。1段タイプは複数のジャンパーバーを組み合わせて任意の極数に対応できますが、2段タイプは連続して組み合わせることができない、という制約もメーカーの仕様として存在します。増設前に、対象タイプが何段構成かと、必要な極数分のジャンパーバーが揃っているかを確認するのが安全です。
端子台・ジャンパーバーの選定について
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、フェニックス・コンタクト、WAGO、ヴァイドミュラー、オムロンをはじめ複数メーカーの端子台・ジャンパーバー(渡り線・短絡バー)を取り扱っています。既設端子台の型番、必要な極数、コモン端子に流れる合計電流をお伝えいただければ、適合するジャンパーバーの品番からご提案します。
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