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盤内資材端子・コネクタ制御盤

端子台の仕切板・絶縁バリア|隣接端子の絶縁強化はいつ必要で、いつ省略できるか

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

制御盤の扉を開けて、端子台がずらりと並んだ列を眺める。フェニックス・コンタクトのオレンジ色のレバーが並ぶ盤もあれば、同じ型番のはずの盤で、端子台と端子台の間にもう一枚、薄いプラスチックの板が挟まっている盤もある。どちらも竣工検査を通過し、何年も無事故で稼働している盤だ。だとすれば、あの一枚の板は、あってもなくても構わない部材なのだろうか。それとも、片方の盤は本来必要な処置を省略していただけなのだろうか。

この違和感の答えは、仕切板という部材の正体を「安心を買うための部品」と捉えている限り出てこない。

仕切板・絶縁バリアの正体——沿面距離を物理的に延ばす部材

端子台の仕切板(絶縁バリアとも呼ばれる)は、隣り合う端子の間に差し込む薄い絶縁板だ。見た目はただの仕切りにしか見えないが、果たしている役割ははっきりしている。隣の端子までの表面距離——沿面距離を、物理的に迂回させて延ばすことだ。

Phoenix Contactの技術資料は、端子台を並べて設置する際の注意点として「必要な空間距離・沿面距離が確保されているかを確認すること。特に異なるサイズやシリーズを隣接させる場合は重要」と明記し、その手段として「光学的または電気的な分離のために、仕切板やカバーを端子台の間にはめ込むことができる」と続けている。仕切板は装飾でも念のためのカバーでもなく、この沿面距離という規格上の数値を成立させるための構造部材だというわけだ。

なぜ一枚板を挟むだけで距離が延びるのか。JIS C 60664-1は、絶縁物の表面に「リブ(ひだ)」を設けることで沿面距離を短縮できるという規定を置いている。表面を汚れや水分が這って伝わる経路に、突起を立てて迂回させれば、同じ設置面積でも実質的な経路長を稼げるという発想だ。ただしこの緩和には条件がある。汚損度3の環境でのみ有効で、対象となる沿面距離が8mm以上の場合に限られ、リブの高さは規定値の25%以上、幅は20%以上という数値要件も付く。仕切板が隣接端子の間に垂直に立つ姿は、まさにこの「リブ」の考え方を部品として独立させたものに近い。端子台の樹脂ハウジングの形状を変えずに、後から挿し込む一枚で沿面距離の帳尻を合わせられる——これが、仕切板が「あれば安心」ではなく「計算に基づいた部材」である理由になる。

設置が必要になる条件

では、どんな場面で仕切板の追加が必要になるのか。Phoenix Contactの技術資料からは、少なくとも3つの具体的な条件が読み取れる。

一つめは、異なるサイズ・シリーズの端子台を隣接させる場合だ。技術資料は「特に異なるサイズやシリーズを隣接させる場合は重要」と名指ししている。設計上の沿面距離が確保されている前提は、同一シリーズ内で完結している場合が多く、異機種を並べた瞬間にその前提が崩れる。

二つめは、渡り配線用のブリッジ(電位を共通化する橋渡し部品)を、隣接する端子台同士で向かい合わせに挿す場合だ。技術資料は「隣り合うブリッジが互いに正対する配置になる場合は、仕切板・カバー・絶縁板のいずれかを間に取り付ける必要がある」としている。ブリッジは端子台の外に露出した金属部品であるぶん、樹脂ハウジング内部の沿面距離設計だけでは足りなくなる。

三つめは、ブリッジを現場で切り詰めて使う場合だ。技術資料は「切り詰めたブリッジを使用する場合、定格電圧は低下する」としたうえで、「必要な空間距離・沿面距離を維持するために、指定のカバーと仕切板を取り付けること」と求めている。切断面という新しい露出部が生まれる以上、そこにも絶縁上の手当てが要る。

省略できる場合

裏を返せば、これらの条件に当てはまらない場面では、仕切板は必須ではない。同一シリーズの端子台を、同じ電位のブリッジで自然な並び順のまま接続している回路であれば、端子台の樹脂ハウジング自体の沿面距離・空間距離設計だけで規格要件を満たすよう作られている。Phoenix Contactの技術資料も「一定の電圧を超えたところから、ブリッジレールの端部に絶縁板やカバーを挿入する必要がある」という表現をしており、逆に言えばその電圧に達しない回路では、標準の端子台構成のままで足りるという含みになる。

低圧の制御回路だけで完結した盤で、隣接端子の電位差が小さく、汚損度の高い環境でもない——この条件がそろえば、仕切板を追加しないという判断も規格上は成立する。ただしこれは「省略しても大丈夫だろう」という感覚的な判断ではなく、電位差・汚損度・端子台単体の沿面距離という3つの変数を確認したうえでの結論であるべきだ。この3変数の詳細は、沿面距離・絶縁距離そのものを扱った別記事で扱っている。

仕切板がない場合のリスク——工具が橋渡しする一瞬

仕切板の役割を、数値の帳尻合わせとしてだけ理解していると、現場での危険性を見誤る。

四国電気保安協会が公開している事故事例集には、こんな記録がある。工場内の200V動力ブレーカーで、負荷側端子のねじがつぶれていたことをきっかけに、64歳の作業者が停電せずに活線状態のまま部品交換を始めた。負荷側端子を切り離したあと、電源側端子を切り離そうとした瞬間、不注意で電動ドライバーが銅バー(黒相)に接触し、単相短絡が発生。その短絡で生じたアークが左側の充電部にまで広がり、三相短絡へと拡大した。低圧ゴム手袋や絶縁シートといった保護具も使われていなかった。結果は、胸部・両上肢・顔面・頸部に及ぶ全身熱傷で、約2か月の入院だったという。

この事故は端子台の仕切板そのものが争点になった事例ではない。だが、そこで起きた物理現象——工具という導電体が、隣り合う二つの充電部を一瞬で橋渡ししてしまう現象——は、仕切板が防ごうとしている事態そのものだ。端子台の隣接端子は、通常の配線作業でもドライバーの先端や外れた電線の端が触れうる距離に並んでいる。仕切板が入っていれば、工具が斜めに滑ってもまず絶縁板に当たり、隣の端子まで届かない。入っていなければ、その一段が丸ごと欠けている状態で、あとは作業者の注意力だけが頼りになる。

メーカーが用意する仕切板の種類——標準品と専用品

仕切板は端子台メーカー各社がアクセサリーとして品番展開しており、その展開のしかたに違いがある。

WAGOはTOPJOB Sシリーズ向けに、厚み0.8mm・1mm・2mm、さらにオーバーサイズ品まで、複数の厚みで仕切板・端板を用意している。同じシリーズの中でも、必要な絶縁強化の度合いに応じて板厚を選べる設計だ。Weidmüllerも自社の端子台システム向けに、隣接する渡り配線を電気的に分離する目的を明記した専用仕切板を展開している。

一方、国内メーカーの日東工業は、ブレーカ用端子台TBFシリーズに対応する絶縁バリアを、対応機種ごとに個別の品番(TB-60BF・TB-250BF・TB-400BFなど)として用意し、4個入りという実務的な梱包単位で販売している。海外メーカーがシリーズ横断の汎用仕切板を厚み違いで揃える発想であるのに対し、国内メーカーは対応端子台の型番との一対一対応を明確にする発想に近い。どちらが優れているという話ではなく、選定時に「このシリーズの、この型番に対応する仕切板」まで正確に照合する必要があるという点は共通している。

設計・施工時の判断の付け方

ここまでを踏まえると、実務での確認手順は次のように整理できる。

まず、隣接する端子同士の電位差を確認する。同一回路・同一電位のブリッジ接続であれば、仕切板の必要性は下がる。次に、渡り配線(ブリッジ)が隣接端子台同士で正対する配置になっていないかを確認する。正対していれば、Phoenix Contactの技術資料が示す通り仕切板が要る場面だ。さらに、設置環境の汚損度を確認する。粉じん・湿気の多い環境では、同じ電位差でも必要な沿面距離自体が伸びるため、仕切板の要否判断も厳しくなる。最後に、これらの条件を満たしたうえで、実際に使う端子台メーカー・シリーズの技術資料で、単体のハウジングがどこまでの沿面距離・空間距離を確保できているかを確認する。

型番と厚みが違えば、必要な絶縁強化の量も変わる。感覚で「入れておけば安心」と足すのではなく、逆に「入っていないから不良」と決めつけるのでもなく、電位差・環境・ブリッジ配置という3条件から機械的に判断するのが、この部材との正しい付き合い方になる。

よくある質問

仕切板・絶縁バリアは、法令やJISで設置が義務付けられている部材ですか?

『仕切板を使え』という直接の条文があるわけではありません。義務付けられているのは、JIS C 60664-1などが定める沿面距離・空間距離という数値要件のほうです。仕切板はその数値要件を、端子台のサイズを変えずに満たすための手段の一つという位置づけです。同じ数値要件は、端子台自体の樹脂ハウジングの形状(リブ構造)や、端子台同士の間隔を広げることでも満たせるため、仕切板が唯一の解決策ではありません。

同じメーカー・同じシリーズの端子台なら、仕切板の要否も同じと考えていいですか?

シリーズが同じでも、隣接する回路の電位差・環境の汚損度・渡り線(ブリッジ)の配置次第で要否は変わります。Phoenix Contactの技術資料でも、同じ端子台シリーズであっても「対向するブリッジ同士は仕切板が必要」「非隣接端子台間のブリッジは定格電圧が下がる」といった条件付きの記述がされています。型番だけで判断せず、実際の配線構成(どの端子とどの端子が隣り合い、どちらが渡り配線されるか)を踏まえて確認するのが安全です。

仕切板を後から追加する場合、どのメーカーの端子台でも共通品が使えますか?

共通では使えません。WAGOのTOPJOB Sシリーズは厚み0.8mm・1mm・2mm・オーバーサイズ品まで自社シリーズ向けに品番展開しており、Weidmüllerも自社端子台向けの専用形状で仕切板を用意しています。日東工業のTB-BFシリーズのように、対応する端子台の型番ごとに仕切板側の品番が個別に決まっている例もあります。既設端子台に後付けする場合は、端子台本体の型番からメーカーの適合品番を確認する必要があります。

低圧の制御回路だけの盤なら、仕切板は基本的に不要と考えていいですか?

一般的には不要になる場面が多いですが、断定はできません。判断材料は電圧の高低そのものではなく、隣接する端子間の電位差、設置環境の汚損度、端子台の樹脂ハウジングが単体でどこまでの沿面距離・空間距離を確保できているかの3点です。同じ制御回路でも、隣に高圧側の渡り配線が来る配置や、粉じん・湿気の多い環境では、電圧が低くても仕切板が必要になることがあります。

仕切板がないまま出荷されている盤を見つけたら、不良品と判断すべきですか?

その場で不良品と断定するのは早計です。仕切板は絶縁協調を満たすための手段の一つであり、端子台の間隔や樹脂ハウジングの形状で必要な沿面距離・空間距離をすでに満たしている設計であれば、仕切板がなくても規格上は問題ありません。気になる場合は、盤メーカーまたは端子台メーカーに、その配置での絶縁協調がどう確保されているかを問い合わせて確認するのが確実です。

端子台・仕切板の選定について

電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、フェニックス・コンタクト、WAGO、ヴァイドミュラー、日東工業をはじめ複数メーカーの端子台・仕切板アクセサリーを取り扱っています。隣接回路の電位差、渡り配線の配置、設置環境の汚損度をお伝えいただければ、適合する仕切板・絶縁バリアの品番からご提案します。

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参考文献・出典

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