海外製の生産ラインを保守していると、盤の中に見慣れない型番のプレートが挟まっていることがある。「140M-C2E-A63」。ハイフンで区切られた記号の並びは、三菱電機やオムロンの型番を読み慣れた目には、どこか読み解きにくく映る。数字の「140」に続く「M」は何を指すのか、「C2E」の3文字はひとまとまりなのか、末尾の「A63」は電流の値なのか品番の枝番なのか——手がかりがないまま検索窓に打ち込んでも、代理店のカタログページが並ぶだけで、記号の意味までは説明してくれない。
Rockwell Automation(Allen-Bradleyのブランドを展開する米国メーカー)は、この型番の組み立て方を「Catalog Number Explanation」という一枚の表にまとめて公式資料に載せている。表を追っていくと、「140M-C2E-A63」は8つのブロックに分解できる、規則性のある記号列だと分かる。ただし、その規則性の中身が独特だ。末尾の「A63」は、単なる連番ではない。アルファベット1文字が10のべき乗の桁を担い、続く2桁の数字が有効数字を担う——理科の授業で習った指数表記と同じ発想で、定格電流の値を圧縮している。
型番の骨格——8つのブロックがそれぞれ一つの仕様を決める
公式資料は、型番の構造を「140M – C 2 E – A63 – KN – CC – GJ」という例で示し、これをa〜hの8ブロックに区切っている。
- a:ブリテン番号。「140M」はモータ保護用ブレーカ/モータサーキットプロテクタという製品群そのものを指す。
- b:フレーム。C(最大32A)・D(最大32A)・F(最大45A)の3種類。
- c:遮断容量クラス。2=Normal Break、8=High Break。
- d:保護タイプ。E・T・V(サーマル+磁気)またはN(磁気のみ)。
- e:電流帯。アルファベット+2桁の数字で定格運転電流を指定する。
- f:付加仕様。ロック可能な操作ノブの色や、専用マウント金具の有無。
- g:補助接点。本体前面下部側と右側側面側、それぞれの接点構成。
- h:不足電圧引外し・シャント引外し。左側に取り付ける付加装置の種類と動作電圧。
一見すると三菱電機のMCCBやオムロンのリレーの型番と同じ、「頭から順に一つずつ仕様を確定させていく」方式に見える。実際そのとおりではあるのだが、eブロックの中身を仔細に見ていくと、単純な連番ではないことに気づく。
「A63」は連番ではなく、桁と有効数字の組み合わせだった
公式資料のCatalog Number Explanationには、電流帯記号の基準値として次の対応が示されている。A=0.10、B=1.0、C=10、D=100、E=1000。そしてProduct Selection(品番一覧表)を確認すると、Cフレームの品番は「140M-C2E-A16」(0.16A)から「140M-C2E-C32」(32A)まで並んでいる。
並べてみると規則が見える。A16は0.16A、B16は1.6A、C16は16A——同じ「16」という2桁の数字が、頭のアルファベットが一つ変わるごとに、値が10倍ずつ動いている。B10は1A、B63は6.3A、C10は10A、C29は29A。数字の並び自体は電流の有効数字(1・6・3や2・9)をそのまま表しており、アルファベットのA〜Eは、その有効数字にどの位の小数点を打つかを指定する桁記号として働いている。
これは、抵抗器のカラーコードや理科の指数表記に近い発想だ。国内メーカーの型番では、定格電流はたいてい「16」「32」といった数字がそのまま,あるいは電圧帯の記号と組み合わさって現れる。Allen-Bradleyの140Mでは、電流の値そのものを1文字の桁記号と2桁の有効数字に分解して埋め込んでいる。0.1Aから1600Aまでの広いレンジを、たった数文字の組み合わせでカバーできる設計だと考えれば合理的ではあるのだが、初めて見る側からすれば、数字の並びだけをアルファベット順に読もうとして、かえって混乱しやすい記号だとも言える。
同じ「140M」が、中身の違う2つの製品を指している
型番のdブロック(保護タイプ)を見ていくと、もう一つ見過ごせない分岐に気づく。公式資料は「Bulletin 140M Motor Protection Circuit Breakers」と「Bulletin 140M Motor Circuit Protectors」という、見出しの異なる2つの節を用意しており、それぞれに別々のCatalog Number Explanationの表を掲載している。
前者(モータ保護用ブレーカ)の機能一覧には、分岐用の開閉器(Disconnect)・短絡保護(Branch-Circuit, Short-Circuit Protection)に加えて「Overload Protection (Thermal Protection)」、つまり熱動式の過負荷保護が明記されている。dブロックの記号もE・T・Vの3種類が並び、いずれも「Adj Thermal/Fixed Mag」——サーマル保護は調整式、磁気保護は固定式、という中身になっている。
後者(モータサーキットプロテクタ)の機能一覧からは、Overload Protectionの項目そのものが消える。並ぶのは分岐用の開閉器と短絡保護だけだ。dブロックの記号も「N=Fixed Mag only(13×In)」の一択しかない。過負荷保護の機能を持たない代わりに、別置きのサーマルリレーやコンタクタと組み合わせて、過負荷保護を後から足す前提の製品だということになる。
同じ「140M」という頭番号を共有しながら、dの1文字が変わるだけで、製品としての立ち位置がまるごと入れ替わる。しかもこの区別は、単なるオプションの有無ではない。公式資料によれば、E・T・Vを持つ製品の多くはUL規格上「Type E自己保護型コンビネーションモータコントローラ」として認定されており、短絡試験のあとに6000回の電気的動作と4000回の機械的動作をクリアする試験まで課されている。一方のN(磁気のみ)は、そこまでの認定を単体では担っていない。型番の1文字が、法規上の扱いそのものを分けている。
フレームと遮断容量クラスは、実際には固定の組み合わせでしか出てこない
cブロックの遮断容量クラス(2=Normal Break、8=High Break)も、表の見た目だけを追うと「bのフレームとcの遮断容量クラスは独立に選べる」ように読める。ところがProduct Selectionの一覧表を実際に突き合わせると、様子が違う。Cフレームの品番はすべて「140M-C2E-…」「140M-C2T-…」というように必ず「2」を伴い、DフレームとFフレームの品番はすべて「140M-D8E-…」「140M-F8E-…」というように必ず「8」を伴っている。
Catalog Number Explanationの表組みだけを見ていると、なぜこの資料にはCフレーム×8や、Dフレーム×2という品番が一つも載っていないのか、正直なところ理由まではわからない。フレームのサイズが大きくなるほど、内部で確保すべき遮断容量の余裕も自然と大きくなるため、設計上そもそも小さいフレームに高遮断容量の機構を詰め込む必要がない、という程度の推測はできる。だが公式資料がその設計判断を明言しているわけではないので、ここでは「掲載されている品番の範囲では、フレームと遮断容量クラスは事実上一対一に固定されている」という観察にとどめておく。
なお型番の先頭寄りには、もう一つ隠れた記号がある。「140M-」の直後、フレーム記号の手前に「R」が挿入された「140M-RC2E-A16」のような品番も掲載されており、これはねじ端子の代わりに配線を押し込むだけで接続できるスクリューレス端子版を示す接頭記号だ。同じCフレーム・同じ電流帯でも、端子の方式そのものが型番の中に別枠として組み込まれている。
現場での実務的な注意点
輸入設備や海外製ラインの保守で140M系の品番を扱う場合、まず確認すべきはdブロックの1文字だ。EやTが付いた品番はサーマル保護込みの単体で過負荷保護まで完結するが、Nが付いた品番は磁気保護しか持たない。壊れた部品の代替を探すときに、dの1文字を見落として「N」品を「E」品の代わりに手配してしまうと、盤の中から過負荷保護の機能そのものが抜け落ちる。逆にNの製品にサーマルリレーを重ねて過負荷保護を二重に構成している盤であれば、代替品もNを選ばないと定数の整合が崩れる。
次に、eブロックの電流帯記号は、アルファベット部分だけを見て「同じ文字だから近い電流だろう」と早合点しないことだ。A16とB16は見た目こそ似ているが、実際の電流は0.16Aと1.6Aで一桁違う。現物のプレートが摩耗して数字の一部が読み取りにくい場合は、アルファベット部分の判読を最優先にしたほうがいい。
最後に、国内での入手性についても触れておく。Allen-Bradleyは北米向け製造装置で標準的に採用されるブランドの一つだが、国内の電材流通における出現頻度は、三菱電機やオムロンの同種製品ほど高くない。北米向けに設計された生産設備を国内工場へ導入したあとの予備品確保や、海外製ラインの保守という場面で必要になることが多く、在庫状況や納期は個別に確認したほうがよい。
あわせて読みたい
- モータ保護用ブレーカ(MMS)とは|サーマルリレー・配線用遮断器との違いと選び方
- シーメンスのSIRIUS 3RT電磁接触器の型番はどう読むのか
- シュナイダーエレクトリックのLC1電磁接触器の型番はどう読むのか
- ABBのTmaxシリーズ配線用遮断器の型番はどう読むのか|T5N400が示すフレーム・遮断容量クラス・定格電流の規則
関連するAllen-Bradley・140M・モータサーキットプロテクタ・型番・見方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。