制御盤の裏側で調節計を外すと、端子の脇の銘板に「C35TR0UA1000」という文字列が刻まれている。ところが正面の表示部には、はっきりと「SDC35」という文字が浮かんでいる。同じ一台の機械のはずなのに、書かれている名前が二つあり、しかも似ても似つかない。改造品だろうか、それとも自分が見ている位置を間違えているのだろうか——そう疑いたくなる気持ちは、無理もない。
アズビル公式カタログ「Single Loop Controller Model C35/36」(No.CP-PC-1418E、2022年9月発行の第9版)の型式選択表を開くと、この二つの名前がなぜ同時に存在するのか、その答えがそのまま載っている。「SDC35」「SDC36」は製品名であり、発注に使う型式は「C35T」「C36T」から始まる別の文字列だ、と。名前が二重になっているのは不具合でも改造でもなく、最初からそういう設計だった。
「SDC35」と「C35T」は、同じものの違う呼び名
型式選択表の最初の項目(Table I:Basic model No.)は、この関係をそのまま並べている。C35Tは「Single Loop Controller(48×96mmサイズ)」、C36Tは「Single Loop Controller(96×96mmサイズ)」。SDC35はC35Tを、SDC36はC36Tを指す製品名として使われており、盤面に埋め込む枠の大きさそのものが48×96mmと96×96mmで異なる。
サイズが違うのだから名前も別枠になるのは当然だが、この段階ですでに、型式の中身が一枚岩でないことが分かる。基本形式のあとには、まだ6つの位置が控えている。制御出力、入力方式、電源、そして二段構えのオプション、最後に追加処理——冒頭に出てきた「C35TR0UA1000」という12文字は、この7つの位置がすべて詰め込まれた結果だった。
制御出力の2文字が、リレーなのか電流なのかを言い分ける
型式選択表の「Control output」の項目には、R0・V0・C0・D0・R1・VC・VV・CC・VD・CD・DDという11種類の記号が並ぶ。最初の1文字が出力1の種類、2文字目が出力2の種類を表す、という規則で読むとすぐに見通しがよくなる。
R0は出力1がリレー、出力2は「–」(なし)。V0は電圧パルス出力、C0は電流出力、D0は連続電圧出力——ここまでは、いずれも出力を1点しか持たない組み合わせだ。ところがVC(電圧パルス+電流)、VV(電圧パルス+電圧パルス)、CC(電流+電流)、VD(電圧パルス+連続電圧)、CD(電流+連続電圧)、DD(連続電圧+連続電圧)と進むと、2文字目にも同じ系統の出力が現れ、1台の調節計が制御出力を2点持てることが分かる。ヒータの加熱・冷却を1台で受け持たせる、といった使い方はここで初めて可能になる。
11種類のうち、ひとつだけ毛色の違うものがある。R1だ。型式選択表の説明は「Motor drive relay」、備考欄には「With MFB(motor feedback)」とある。モータ駆動用のリレー出力であり、モータの位置をフィードバックするMFB入力とセットで使う——他の10種類が電気信号の出力方式を選ぶだけなのに対し、R1だけは調節計の使い道そのものを変えてしまう記号だ。
「U」は選べる体裁の、選べない記号
3番目の位置、Input typeにあたるのはUの1文字だけである。説明は「Universal(full multi)input」。熱電対・測温抵抗体・直流電圧・直流電流をひとつの入力端子でまとめて受け付ける、という意味だ。
型式選択表の作りとしては、他の項目と同じように独立した1マスを占めている。だが実際にそこへ書けるのはUだけで、他の選択肢は存在しない。選べる体裁を保ちながら、実際には選びようがない——この位置だけ、型式の中で毛色が違う。今のC35/36を発注する側からすれば、この1文字は事実上「必ずU」と覚えてしまって構わない。
電源の1文字が、遠く離れた2箇所の選択肢を同時に閉じる
4番目のPower supplyには、A(100〜240Vac)とD(24Vac/24Vdc)の2つしかない。ここだけを見れば、単純にAC電源かDC電源かを選ぶだけの位置に見える。
ところが型式選択表の脚注*1は「DC電源モデルでは選択不可」と断っている。この注が付いているのは、電源の項目そのものではない。さっき見たControl outputのR1と、この先で見るOption(1)の4・5・6番——まったく別の2箇所に、同じ脚注番号が振られている。つまりDを選んだ瞬間、モータ駆動用のR1出力も、Option(1)の一部の組み合わせも、選択肢から消える。電源という一見地味な1文字が、型式の中の離れた場所にある選択肢を、黙って封じている格好だ。DC電源のC35/36にモータ駆動出力を持たせたい、という発注は、この時点で存在しないことになる。
オプション(1)の3点と2点は、点数だけの違いではない
5番目、Option(1)の項目名は「EV(DO)」——イベント出力のことだ。1・2・3番は「3 points」、4・5・6番は「Independent 2 points」となっており、数字だけ見ればイベント接点が3点あるか2点あるかの違いに見える。だが4・5・6番には、さきほどのDC電源を締め出す脚注*1が付いている。3点タイプはAC・DC両方の電源で選べるのに対し、2点タイプ(Independent)はAC電源限定の構成なのだ。加えて各系統には、補助出力(Auxiliary output)を「なし」「電流」「電圧」のどれにするかという、もう一段の枝分かれが重なっている。
オプション(2)でRSPを選ぶと、デジタル入力が半分に減る
6番目、Option(2)は表がさらに込み入っている。CT(電流トランス入力)・DI(デジタル入力)・RSP(外部設定値入力)・通信の4項目が、0から4までの5パターンに束ねられている。0は全部なし。1番はCT2点とDI4点。2番はそこにRS-485通信が加わる。ここまでは、機能が単純に足し算されていく。
ところが3番になると様子が変わる。CTは2点のまま、DIは4点から2点に減り、代わりにRSPが使えるようになる。4番はそこに通信を足した形だ。DI4点とRSPは同時に手に入らない——1番・2番でDIを4点確保する代わりにRSPを諦めるか、3番・4番でRSPを取る代わりにDIを2点に削るか、この二択が型式の1桁に畳み込まれている。現場で「外部からリモート設定値を入れたいし、デジタル入力も4点欲しい」という要望が出たとき、型式選択表を見れば、その組み合わせがそもそも用意されていないと分かる。
さらにCTには脚注*2が付く。「R1を選択した場合、CTは非対応」。制御出力にR1(モータ駆動)を選んだ場合、CT入力は使えず、代わりに(R1の備考欄にあった)MFB入力に置き換わる。制御出力の1文字が、6番目のオプションの中身まで書き換えている。
末尾2桁は、品質保証の証明書とマーキングの組み合わせ
7番目、Additional processingは2文字構成になっている。1文字目は0(None)・D(With test data)・Y(With traceability certification)の3種類、2文字目は脚注*4によれば0(CE marking)かA(CE marking, cUL)の2種類。組み合わせると、00・0A・D0・DA・Y0・YAの6通りが末尾に現れることになる。試験データの有無、トレーサビリティ証明書の有無、そしてCEマーキングだけかcUL(北米向け認証)まで含めるか——見積書や輸出書類に必要な証明のレベルを、この2文字が決めている。
冒頭に出てきた「C35TR0UA1000」を、ここまでの規則で分解し直すとこうなる。C35T(48×96mmサイズ)+R0(出力1:リレー、出力2:なし)+U(ユニバーサル入力)+A(AC100〜240V)+1(イベント出力3点、補助出力なし)+0(オプション(2)なし)+00(追加処理なし、CEマーキング)。同じカタログの型式選択表に例として掲載されている型番そのものであり、7つの位置がひとつも欠けずに埋まっている。
型番を読めるようになった先にある、もっと切実な期限
ここまでの規則を押さえれば、「C35TR0UA1000」のような12文字を見ても、もう怯む必要はない。ただし、SDC35/36というシリーズそのものについては、型番の読み方より先に確認すべきことがある。
アズビルの制御機器公式サイトの当該製品ページには、形番C35・C36の欄に「2026年9月受注終了予定※お問合せ下さい」という一文があり、代替品として形C3A/C3Bが案内されている。型式の規則をどれだけ正確に読み解けても、発注できる期間そのものが目前に迫っているという事実は変わらない。既設のSDC35/36を型番から特定できたなら、次に確認すべきは在庫と、後継機種である形C3A/C3Bへの置き換えが必要かどうかだろう。
アズビル製SDC35・SDC36調節計の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の銘板に残った「C35TR0UA1000」のような型式の分解から、制御出力・電源・オプションの組み合わせの確認、受注終了が迫るSDC35/36から後継機種形C3A/C3Bへの置き換え相談まで対応している。型式の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
あわせて読みたい
- アズビル計装機器完全ガイド|調節計・温度圧力センサー・電動弁・DDCコントローラの選び方
- アズビルのSDC・C系列デジタル調節計の製品詳細
- 熱電対と測温抵抗体(RTD/Pt100)の違いと選び方|K・J・T熱電対の使い分け、精度・応答速度・耐久性を比較
- 4-20mA電流ループとは何か|なぜ電圧信号ではなく電流信号なのか、なぜ0-20mAではなく4-20mAなのか
- アズビルの取扱品種一覧
関連するアズビル・SDC35・SDC36・調節計・型番・見方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。