分電盤の予備品棚に、型式プレートだけが残った遮断器が転がっている。「T5N400」。フレームを示すTの後ろの数字は5、続くアルファベットはN、そのあとの数字は400——三菱電機や富士電機の型式解読記事を読んできた担当者なら、この並びをフレームサイズ・遮断容量クラス・定格電流の三段構成だと見当を付けるはずだ。実際、その見当は当たっている。ABBの技術カタログを開けば、T5N400は定格通電電流(Iu)400Aのフレームに、遮断容量クラスNを組み合わせた型式だと素直に確認できる。
同じ棚の奥から、もう一台出てくる。「T7S800」。さっきの読み方をそのまま当てはめれば、Sより下のクラスがあるはずだ、と思う。T5にNがあったのだから、T7にもN——つまり「T7N800」という、もう少し安価な廉価版が存在してもおかしくない。ところがABBの型式一覧のどこを探しても、T7のNは出てこない。Sが、T7における最も低いクラスとして扱われている。フレームが大きくなるほど選択肢は増えていくものだと決めてかかっていたが、増え方は単純な右肩上がりではないらしい。
ABBのTmaxシリーズは、公式の技術カタログに「Ordering codes」という章を設け、T1からT7までの各フレームについて、遮断容量クラス別のIcu(定格終局短絡遮断容量)と定格電流のラインナップを型式ごとに表で示している。以下、この一次資料に基づいて、型式の並びを一段ずつ確認していく。
型式の骨格——フレーム・遮断容量クラス・定格電流の三段
ABBの技術カタログの略語一覧によれば、型式の基本パターンは「T+フレーム番号+遮断容量クラス+定格電流」という順で組み立てられている。T5N400を分解すると、Tはシリーズ名Tmaxの頭文字、5はフレーム番号、Nは遮断容量クラス、400はそのフレームの定格通電電流(Iu)を表す。カタログの表記では「T5N 400」のように間にスペースが入ることが多いが、流通の場ではスペースを詰めて「T5N400」と書かれることも珍しくない。
この型式のあとには、実際に組み込む引外し装置の種類(熱動電磁式のTMD・TMA・TMG、電子式のPR221DS・PR222DS・PR223DS等)と、その引外し装置での定格電流(In)、極数(3p/4p)、端子形式(F=前面端子等)が続けて指定される。つまりT5N400という文字列そのものは、遮断器の「器」の仕様——フレームサイズと遮断容量クラス——までしか決めておらず、実際にどこまでの電流で引き外すかは、後ろに続く引外し装置の型式によって別途決まる。この構造を踏まえたうえで、まずはT5N400のNとT7S800のSが指す遮断容量クラスから見ていく。
遮断容量クラスは、フレームをまたぐと数値が変わる
ABBの技術カタログのOrdering codes章には、T4「250」「320」、T5「400」「630」、T6「630」「800」「1000」、T7「800」「1000」「1250」「1600」のそれぞれについて、遮断容量クラス別のIcu(415V時)を並べた表がある。突き合わせると、次のような数値になる。
- T4・T5:N=36kA、S=50kA、H=70kA、L=120kA、V=200kA
- T6:N=36kA、S=50kA、H=70kA、L=100kA、V=150kA
- T7:(Nなし)S=50kA、H=70kA、L=120kA、V=150kA、X=170kA
Nは36kAで統一されているように見える。だがT7の欄にNという項目自体が存在しない。T7の最下位クラスはSであり、そのSの50kAは、T4・T5・T6のSと同じ値ではあるものの、位置付けとしては「その他フレームのN相当」を兼ねている格好になる。さらにLを比べると、T4・T5では120kAだが、T6のLは100kAしかない。同じアルファベット一文字のLが、フレームによって20kAの差を持つ。
もう一段古い世代のカタログまで遡ると、この不揃いはさらに際立つ。T1・T2・T3の遮断容量クラスは、次の通りだ。
- T1:B=16kA、C=25kA、N=36kA
- T2:N=36kA、S=50kA、H=70kA、L=85kA
- T3:N=36kA、S=50kA
T1にはH・L・Vが存在しない。B・C・Nの3クラスで打ち止めだ。T2のLは85kAで、これはT4・T5のLである120kAはおろか、T6のLである100kAにも届かない。そしてT3に至っては、N・Sの2クラスしか用意されていない。T3はT1・T2よりも定格電流が大きい250Aフレームでありながら、遮断容量クラスの選択肢はT1・T2よりも少ない。フレームが大きいほど高性能版の選択肢が増える、という直感的な期待は、ここで裏切られる。遮断容量クラスの記号は、あくまで同一フレーム内での相対的な序列を示すものであって、フレームをまたいだ絶対的な性能比較の物差しにはならない。
定格電流の数字は、引外し装置によって届かないことがある
型式の末尾に置かれた定格電流も、一見すると素直な数字に見える。T5N400なら400A、T6N800なら800A——そのまま読んで、たいていは正しい。ただし一つだけ、注意しておくべき組み合わせがある。
ABBの旧世代カタログのOrdering codesを見ると、T5N400のフレームに熱動電磁式(TMA)の引外し装置を組み合わせた場合、選べる定格電流(In)は320Aか400Aのどちらかで、フレーム表記の400ときちんと符合する。ところが同じT5でもフレーム表記が630のT5N630になると、熱動電磁式(TMA)の引外し装置ではInが500Aまでしか用意されておらず、フレーム表記の630には届かない。電子式の引外し装置(PR221DS-LS/I等)を選んだ場合だけ、In=630Aまで設定できる。
つまりT5N630という型式は「定格通電電流630Aのフレーム」を示しているのであって、「必ず630Aまで引外し電流を設定できる」ことまでは保証していない。熱動電磁式のまま630Aフレームを使う場合、実際の引外し設定は500Aが上限になる。現物のプレートにT5N630と刻まれていても、中身の引外し装置が熱動電磁式か電子式かによって、実際に発注・交換できる定格電流の上限が変わってくるということだ。
フレームサイズT1〜T7が対応する定格通電電流
遮断容量クラスと定格電流の関係が分かったところで、フレームそのものの規模感を押さえておく。ABBの技術カタログによれば、T1・T2は定格通電電流(Iu)160Aまで、T3は250Aまで、T4は250A・320Aの2段階、T5は400A・630Aの2段階、T6は630A・800A・1000Aの3段階、T7は800A・1000A・1250A・1600Aの4段階という構成になっている。T4以降は一つのフレームの中に複数の定格通電電流が用意され、その一つひとつが型式の末尾の数字として現れる。
この段階分けを見ると、T1〜T3が160A〜250Aという比較的狭い電流帯を分担しているのに対し、T4〜T7は250Aから1600Aまでを4フレームでカバーしている。分電盤の主幹用途で使われることが多いT4・T5と、大容量の幹線保護に使われるT6・T7とでは、想定される用途の重心も変わってくる。ただしカタログ自体は用途を明記しているわけではなく、あくまで定格通電電流とIcuの組み合わせから、選定側が用途に合わせて選ぶ設計になっている。
T5〜T7の標準品は、2026年末で終息が決まっている
ここまで読み解いた型式の規則は、現物のプレートを照合するうえで今も有効だ。だが一つだけ、時期に関わる注意点を付け加えておく必要がある。
ABBが公開しているライフサイクル管理の通知(LCM update 2026/01)には、Tmax T5・T6・T7の標準版(690VAC・750VDCまでの対応品、IEC版・UL版・付属品を含む)について、既存プロジェクトの完了向けに限定した供給へ移行し、2026年末までに生産を終息すると明記されている。最終発注(ラストタイムバイ)は2026年9月までとされ、納入期限は同年12月までだ。後継として案内されているのは、Tmax XTという新シリーズになる。T4以下については、この通知の対象に含まれていない。
つまりT5N400のようなT5フレームの型式を、制御盤の新設や予備品として今から手配しようとしている場合、在庫状況と納期を早めに確認したほうがよい局面に入っている。型式の読み方が分かっても、その型式の遮断器がいつまで新規に手に入るかは、また別に確認しておくべき情報だということになる。
ABB Tmaxシリーズの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物プレートに残ったABB TmaxシリーズT1〜T7の型式から、遮断容量クラス・定格電流の照合、後継シリーズTmax XTへの置き換え相談まで対応している。型式の判読に迷う場合や、終息が近い型式の代替を検討したい場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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