改修工事の現場で、外した分電盤のプレートに「NV125-SV」とだけ刻まれているのを見て、担当者が手を止める。NVで始まるから漏電遮断器だろう、というところまでは直感でわかる。だが続く「125」が何を、「SV」が何を保証しているのかは、直感の外にある。カタログサイトの型式検索に打ち込めば答えは出る。ただし、それは型式の意味を理解しているからではなく、検索窓に文字を渡しているだけだ。記号そのものを読めるようになれば、検索窓に頼らずとも、現物のプレート一枚から遮断容量の見当まで付けられるようになる。
三菱電機の配線用遮断器(MCCB)の型式は、思いつきで並んだ文字列ではない。シリーズ・フレーム・クラスという3つの階層が、この順番で積み重なっている。以下、公式カタログとFAQに基づいて、この階層を一段ずつ剥がしていく。
NFとNVが分けているのは「機能」であって「大きさ」ではない
型式の頭に来るNFとNVは、シリーズ名というより、遮断器が持つ保護機能そのものの名前だ。三菱電機は1933年(昭和8年)に国内初のノーヒューズ遮断器を発売しており、以来この製品群を国内向けにはノーヒューズブレーカ(NFB)、海外の規格上ではMCCB(Molded Case Circuit Breaker)と呼び分けている——同社のFAQは「国内ではノーヒューズブレーカ(NFB)またはMCCBと称される」と説明する。
型式先頭のNFは、このノーヒューズ遮断器を指す。過電流(過負荷・短絡)からの保護のみを行い、漏電は検出しない。NVはこのNFの機能に漏電検出を追加した漏電遮断器を指す記号だ。三菱電機の技術用語集は、時延形のNVについて「定格感度電流における動作時間が0.1秒を超え2秒以内のNVをいう」と定義しており、NVという一文字が漏電保護機能そのものを前提にした記号だとわかる。NFとNVの違いは型式の見た目以上に大きい。片方は火災を防ぎ、もう片方は火災に加えて感電も防ぐという、保護範囲の差を背負っている。
フレームを示す数字は「定格電流」ではない
型式の次に続く数字——NF125やNV250の「125」「250」——を、定格電流(何アンペアでトリップするか)だと思い込む人は少なくない。実際には違う。三菱電機FAのFAQは「AF(アンペアフレーム):『フレームA』、AT(アンペアトリップ):『定格電流』」とはっきり両者を区別したうえで、「アンペアフレームは機種グルーピングの値であり、性能や定格などの定格を示すものではない」と注記している。
つまり型式に書かれた「125」は、その遮断器がどの体格(フレーム)に属するかを示すグループ分けの値であって、実際にトリップする電流の値そのものではない。同じ125Aフレームの中に、60A・75A・100A・125Aといった複数の定格電流(AT)品番が並んで存在する。フレームという言葉自体が「容量そのもの」と「容量の入れ物」を混同させやすく、この取り違えは現場でも珍しくない。
C・S・Hが分けているのは「遮断容量のランク」
フレームの後ろ、ハイフンに続くアルファベットのうち最初の一文字——C・S・Hは、遮断器が短絡電流をどこまで安全に遮断できるか、その性能ランクを表す。三菱電機FAのFAQ「遮断器のクラスとは何でしょうか」は、「クラスは遮断器の遮断性能(遮断容量)を表しており、同一Aフレームの場合」Cクラス(経済品)<Sクラス(汎用品)<Hクラス(高性能品)の順で定格遮断容量が大きくなると回答している。別のFAQでは経済品と汎用品の違いを問われ、「同じAフレームで比較すると、例えばNF63-CV<NF63-SVとなります」と、実在の型式で具体的に示している。
同じフレームの遮断器を、コストを抑えて選ぶか、想定される短絡電流に余裕を持たせて選ぶかは、このC・S・Hの一文字で決まる。先のFAQは選定条件として「定格遮断容量≧推定短絡電流を満たすよう選定する必要がある」とも述べている。設置点の短絡電流が読めているなら、この一文字だけで選定の入り口に立てる。カタログにはこの3段階のほかにRクラス・Uクラスという区分もあり、Rクラスは高性能品と並んで案内され、Uクラスは超限流遮断器という独立の区分として案内されている。ただし三菱電機の公開資料からC・S・Hほど明確な序列の説明を確認できたわけではないため、この記事ではC・S・Hの3段階を軸に扱う。
なぜ型式が世代ごとに変わるのか——NV63でも中身の記号が違う
ここまでの3つの階層——NF/NV・フレーム番号・クラス——を押さえれば、現物のプレートに書かれた型式一つから、機能・容量帯・性能ランクの見当まで一気に付けられるようになる。ただし配線用遮断器にも「今は作っていない型式」が数多くある。
三菱電機の総合カタログに掲載されている製作履歴表を見ると、50A・60Aフレームの経済品はNV50-CF・NV60-CFから始まり、NV50-CP・NV60-CP、NV50-CW・NV60-CWを経てNV63-CWとなり、現行のNV63-CVへと代を重ねてきた経緯が示されている。末尾のアルファベットがFからP、W、そしてVへと変わってきたのは、偶然ではない。同社が2010年に投入した最新世代「World Super V Series(WS-V Series)」以降、型式末尾にVを持つ製品群へ切り替わってきたことが、この製作履歴表の並びからも読み取れる。
古い設備の更新現場で「その型式はもう廃番だ」と言われても、末尾のアルファベット一文字の違いに戸惑う必要はない。まず読むべきはNF/NVの区分とフレームの数字——ここが一致していれば、容量帯としては同じ土俵にいる。末尾のアルファベットは世代の違いを表しているだけで、後継機種への読み替えはメーカーの製作履歴表を確認するか、現物の写真を商社に送って照合してもらうのが最も確実な近道になる。
紛らわしいもう一つの「F」——接続方式のFと「F Style」のF
型式の末尾には、C・S・Hに続いてさらにアルファベットが付くことがある。三菱電機の製品ページは配線用遮断器の接続方式について「表面形、裏面形、埋込形、さし込形等様々な接続方式をご用意しております」と説明しており、総合カタログの仕様一覧表には表面形(F)・裏面形(B)・埋込形(FP)・さし込形(PM)という対応関係が明記されている。型式末尾にFが単独で付く場合、多くはこの表面形——本体を盤面に直接ねじ止めし、圧着端子で配線する標準的な接続方式を指している。
ここでもう一つ紛らわしさが生まれる。三菱電機は2010年のWS-V Series投入にあわせて、業界最小クラスの小形化を実現した製品群を「F Style」と呼んでいる。この「F」は接続方式の表面形を指すFとは別物で、本体サイズの世代を表すブランド名としてのFだ。同じアルファベット一文字が、文脈によって指すものが違う。カタログの「F Style」という表記を見て、型式末尾の接続方式記号と同じ意味だと早合点すると、話がかみ合わなくなる。
型式だけでは決まらないもの——極数は別枠で指定する
型式を分解できるようになると、逆に「型式に書かれていないもの」も見えてくる。総合カタログの仕様一覧表を見ると、例えばNF63-CVFという一つの形名の下に、2極品・3極品それぞれの定格電流が並んで掲載されている。つまり同じ「NF63-CVF」という型式は2P品にも3P品にも共通して使われており、極数は型式の文字列そのものには含まれていない。
発注の際は、型式に加えて極数(2P/3P/4P)と定格電流(AT)を必ず別途指定する必要がある。型式だけを伝えて発注すると、機能・容量帯・性能ランクの見当は付いても、実際に手配できる一台には行き着かない。既設設備からの更新であれば、現物プレートの写真を添えるのが最も確実な近道になる。
配線用遮断器の型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物プレートに残った型式から現行品への読み替え、極数・定格電流(AT)を含めた発注仕様の確定まで対応している。旧い型式の場合は、プレートの写真を添えてもらえると照合が早い。
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