改修現場で外した遮断器のカバーに、こう刻まれている。「BW32AAG-3P032」。フレームを示す「32」まではまだいい。だが続く「AAG」の、3文字目と4文字目が同じ『A』だという並びに、担当者は一瞬手を止める。片方が経年で薄れて別の文字が『A』に見えているだけではないか——そう疑いたくなるほど、同じ文字が続けて現れる型式は他ではあまり見ない。だが疑いは外れる。この2つの『A』、由来がまったく違う。片方は遮断器の性能ランクを、もう片方は形式名そのものを締めくくる固定文字を表している。読み方さえわかれば、たまたま同じ字が隣り合っているだけだと見分けがつく。
富士電機の配線用遮断器・漏電遮断器の型式は、公式カタログの「形式説明」という一枚の図に、基本形式・フレーム・遮断容量区分・機種区分・極数・定格電流という階層で分解されている。以下、この図に基づいて、記号の並びを一段ずつ剥がしていく。
BWとEWが分けているのは「漏電を検出するかどうか」
富士電機の低圧遮断器は、大きくBW形とEW形という2つの頭文字に分かれる。公式の製品ページは、この2系統をまとめて「ビルや工場の配電盤や機械装置の制御盤で電気事故から人や設備を守る、『とりあえず迷ったらこれ!』の配線用遮断器(MCCB)/漏電遮断器(ELCB)です」と紹介しており、ここでいうMCCBがBW形、ELCBがEW形にそれぞれ対応する。BW形は過電流(過負荷・短絡)からの保護に特化した配線用遮断器で、漏電は検出しない。EW形はこのBW形の機能に漏電検出を追加した漏電遮断器を指す。
型式の頭文字だけを見ると、漏電に関わる機能は『BW』の派生記号で表されそうなものだと考えがちだ。実際、メーカーによっては漏電遮断器を主系列の型式に一文字足すだけで表す例もある。だが富士電機の体系はそうなっていない。漏電遮断器はBWの延長ではなく、EWというまったく別の頭文字で独立して立てられている。
ただし話はここで終わらない。公式カタログの形式説明には、BW形の機種区分に『L』を割り当てた「漏電警報付オートブレーカ」という項目があり、型式はBW50EAL-3P050のような形をとる。ここで『L』が示すのはあくまで警報だ。漏電を検知したら知らせるだけで、EW形のように回路を自動で遮断する機能ではない。「漏電関連の文字が入ったBW」と「漏電遮断器そのものであるEW」を混同すると、警報が鳴るだけで電気は流れ続ける回路を、漏電遮断器のつもりで発注してしまう。
型式の骨格——フレームと遮断容量区分が『AA』の正体をつくる
公式カタログの形式説明図は、BW形一般配線用の型式を「BW・32・A・A・G – 3P・032」という7つの箱に分けて示している。頭のBWは基本形式、続く32はフレームを表す枠で、この数字は32AF・50AF・63AF・100AF・125AF・250AF・400AF・630AF・800AFという9段階のどれかに対応する。3つめのAは遮断容量区分——ここでは経済形——を表す。ここまでは他メーカーの型式ともよく似た、素直な読み進め方だ。
厄介なのは、その次に置かれた4つめの箱にも『A』が入ることだ。カタログの凡例をたどると、この4つめの『A』は遮断容量区分とは無関係で、基本形式そのものの記号として「BW□A」が定義され、名称は「G-TWIN配線用遮断器」とされている。つまり基本形式は先頭の『BW』だけで完結しているのではなく、フレームと遮断容量区分を間に挟み込んだうえで、末尾の『A』までを含めて初めて「BW□A」という一つの形式名になる。冒頭のBW32AAGでいえば、①BWと④A(基本形式の骨格)の間に、②32(フレーム)と③A(経済形)が割り込む形で組み込まれている——2つの『A』が並んで見えるのは、この割り込み方のせいだ。
漏電遮断器のEW形でも構造は同じで、基本形式は「EW□A」(G-TWIN漏電遮断器)と定義されている。EW32AAGのような型式でも、同じ位置に同じ固定文字の『A』が現れる。この固定文字の存在を知らずに型式を読むと、4文字目の『A』まで遮断容量区分の一部だと思い込み、経済形なのか別の区分なのか、そこだけで混乱する。
経済形を表す文字が、一般配線用と電動機保護用で違う
さらにややこしいのは、この遮断容量区分の記号自体が、用途によって振り直されている点だ。カタログの一般配線用の表では、Aが経済形、Jが汎用形、Rが汎用高性能形、Hが高性能形とされている。ところが同じカタログの電動機保護用の表を見ると、経済形の記号はAではなくEに変わっている。汎用形のJと汎用高性能形のRは一般配線用と共通のままで、経済形だけがAからEに入れ替わっている形だ。
なぜこの振り分けが必要になるのか、カタログ自身は理由を説明していない。ただ、基本形式の末尾にすでに固定文字の『A』が使われていることを踏まえると、辻褄は合う。もし電動機保護用の遮断容量区分にもAをそのまま使っていたら、BW32AAMのような型式では『A』が3つ連続することになり、一般配線用以上に紛らわしい並びになっていたはずだ。経済形の記号をEに変えたことで、電動機保護用の型式(例えばBW32EAM)では、遮断容量区分のEと基本形式の固定文字Aが少なくとも見た目で混同されずに済んでいる。
なお、一般配線用の遮断容量区分の表にはE・Sという記号の欄も枠として用意されているが、対応する区分名は空欄のままで、このカタログの一覧からは意味を確認できない。電動機保護用の表にもSの欄が同様に空欄で残っている。見慣れない遮断容量区分の記号に出会った場合は、この一覧だけで類推せず、型式全体を商社に照合してもらうほうが安全だ。
定格電流の3桁——小数点は『P』で埋め込まれる
フレームと遮断容量区分の次に置かれる機種区分(一般配線用ならG・A・K、電動機保護用ならM)と、ハイフンをはさんだ極数(2P・3P・4P)を確認すれば、残るは型式末尾の定格電流だけになる。BW32AAG-3P032の末尾「032」は、そのまま32Aと読んでよい。カタログの定格電流表は3から800まで、実際のアンペア値と桁数をほぼ一致させて並べており、100Aなら「100」、800Aなら「800」という具合に、数字の見た目通りの値が符号になっている。
ところが電動機保護用の型式になると、この素直な対応が崩れる箇所が出てくる。電動機保護用の定格電流表には「0P7」「1P4」「2P6」という符号が並び、それぞれ0.7A・1.4A・2.6Aに対応する。小数点の代わりに『P』という文字を挟み込むことで、3桁の枠の中に小数を表現しているわけだ。電動機の定格電流は1A未満や1A台の細かい刻みになりやすいため、この工夫が電動機保護用の表にだけ現れる。一般配線用の定格電流表には、この『P』表記は一切出てこない。
ちなみに、漏電検出と電動機保護を両方兼ねるEW形の電動機保護用は、フレームが250AFまでしか用意されていない。400AF以上の大容量帯で電動機保護と漏電検出を両立させたい場合、EW形の電動機保護用という組み合わせそのものが選択肢に存在しない。
端子の接続方式は、本体形式のさらに後ろに続く
本体形式(BW32AAG-3P032)まで確定しても、盤にどう取り付け、どう配線するかを決める記号はまだ続く。カタログの「工場取付の指定付属品、特殊仕様の指定」という項目には、本体形式のすぐ後ろに続けて指定する取付・接続方式の欄がある。無記入なら表面形——盤面にねじ止めして圧着端子で配線する標準的な形——を意味し、Xなら裏面形、Eなら埋込形(スタッド留め)、Yなら埋込形(端子留め)、Pなら挿入形となる。32〜100AFの埋込形(E・Y)で鉄製のフラッシュプレートが必要な場合は、別途『=テツセイ』という特殊仕様の指定を加える必要があるとも注記されている。
表面形・裏面形・埋込形という接続方式の区分そのものは、三菱電機のMCCBにも同じ発想の分類があり(当サイトの三菱電機の型式解説記事を参照)、業界としてはよく見る整理の仕方だ。ただし記号の割り当てはメーカーごとに独立しており、三菱電機で使われている記号を富士電機の型式にそのまま当てはめることはできない。
定格感度電流はEW形だけに現れる欄
漏電遮断器のEW形には、BW形にはない欄がもう一つ加わる。極数の後ろに続く定格電流の符号の、さらに後ろに付く1文字の定格感度電流だ。カタログの表では、Aが15mA、Bが30mA、Cが100mA、Kが100/200mA(フレームによっては100/200/500mA、100/200/500/1000mA)の切替品を示す。BW形の型式には、そもそもこの欄自体が存在しない。漏電を検出しない機種に、感度電流という概念は成立しないからだ。EW32AAG-3P032Bという型式であれば、末尾のBが感度電流30mAを意味している。
富士電機の配線用遮断器・漏電遮断器の型式読み方のまとめ
冒頭のBW32AAGに戻れば、答えはもう出ている。3文字目の『A』は遮断容量区分の経済形、4文字目の『A』は基本形式「BW□A」を締めくくる固定文字——たまたま同じ字が隣り合っただけで、どちらも印字ミスではない。フレーム・遮断容量区分・機種区分・極数・定格電流、そしてEW形だけに付く定格感度電流までを順に追えば、盤から外した現物の型式一枚から、性能の見当を自力で付けられるようになる。ただし工場取付の付属品や特殊仕様まで含めた組み合わせは、機種ごとの対応表を突き合わせる必要があり、判断に迷う型式は現物の写真を添えて照合を依頼するのが確実な近道になる。
富士電機の配線用遮断器・漏電遮断器の型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物プレートに残ったBW・EW形の型式から仕様の読み解き、極数・定格電流を含めた発注仕様の確定まで対応している。型式の判読に迷う場合は、プレートの写真を添えてもらえると照合が早い。
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