制御盤の予備品棚に、シーメンス製の接触器が二台並んでいる。ラベルにはそれぞれ「3RT2017-1AP01」「3RT2017-1AP02」と刻印されている。最後の一文字しか違わない。枝番なのか、別サイズの型式なのか、それとも印字ミスで同じ部品が二重に並んでいるだけなのか。三菱電機のS-Nシリーズ、富士電機のSC形、シュナイダーエレクトリックのLC1Dシリーズであれば、型式の後半にコイル電圧や端子形式を示す記号が並ぶことはすでに確認してきた。だがシーメンスのSIRIUS 3RTシリーズは、ハイフンの前後を合わせると12文字ある。これをどう分解すれば、棚の二台が「同じ接触器の補助接点違い」なのか「まったくの別部品」なのかが、その場で判別できるのか。
基本形――「3RT20」はSIRIUS 3RT2世代・3極接触器を示す
型式の頭、「3RT20」から見ていく。シーメンスの公式カタログ「Industrial Control Product Catalogue」の「3RT contactors, 3-pole – Size S00 to S3」の項では、サイズS00からS3までの3極接触器が、すべて「3RT20」という共通の頭文字で始まっている。「3RT」がSIRIUSシリーズの接触器を示す基本形式、続く「2」がこの世代(3RT2=現行のSIRIUS Innovationsブランドに属する製品群)を、末尾の「0」が3極構成を示す位置に入っている。カタログとは別に公開されている製品マニュアルの表紙にも「SIRIUS Innovations - SIRIUS 3RT2 Contactors」という正式名称が明記されており、3RT2という数字が単なる型番の一部ではなく、ブランド名の一部でもあることが分かる。
サイズがこれより大きいS6・S10・S12になると、頭文字は「3RT10」に切り替わる。同カタログの「3RT contactors, 3-pole – Size S6-S12」の項に載る型式は、3RT1054・3RT1064・3RT1075といったように、いずれも「3RT10」で始まっている。サイズが変われば、電流の桁だけでなく型式の頭文字そのものが入れ替わるわけだ。三菱電機のS-Nシリーズが1系統の記号のままフレーム番号だけを伸ばしていく方式だったのに対し、シーメンスはサイズの境界そのものを頭文字の変化として型式に埋め込んでいる。本稿では、実在する取扱品番と公式データシートによる裏付けが最も厚いサイズS00〜S3の範囲に絞って型式を分解する。
フレームコードは、電流値をそのまま表さない
続く2桁、「17」の部分に進む。この数字が電流の大きさを直接示していると考えたくなる。シュナイダーエレクトリックのLC1D09が9A、LC1D18が18Aと、フレーム番号がほぼそのまま電流値に対応していたからだ。
だが公式カタログのSelection and ordering data表を見ると、様子が違う。サイズS00に属する型式は3RT2015・3RT2016・3RT2017・3RT2018の4つで、AC-3定格電流はそれぞれ6A・9A・12A・16Aとなっている。型式の数字は15→16→17→18と1ずつ増えるのに、電流は6→9→12→16と増分がまちまちだ。「17」だから12Aだと逆算できる規則性は存在しない。RS Onlineで公開されているシーメンス公式データシートも、3RT2017-1AP01を「12 A、5.5 kW / 400 V」の接触器として記載しており、電流値は型式の数字からではなく、この表を引いてはじめて確定する種類の情報だった。
サイズが変われば、数字の並びも一から仕切り直される。サイズS0は3RT2023(9A)から3RT2028(38A)まで、サイズS2は3RT2035(40A)から3RT2038(80A)まで、サイズS3は3RT2045(80A)から3RT2047(110A)までという具合に、サイズごとに独立した連番が割り当てられている。この2桁は「フレームサイズの中での順番」を示すコードであって、電流の目盛りをそのまま数字に置き換えたものではない。ここだけは、対応表を都度引くしかない。
ハイフン直後の1桁――端子形式、しかもサイズによって数字が変わる
ハイフンの直後、「1」が来る。三菱電機のS-Nシリーズなら可逆・非可逆を示す位置、シュナイダーエレクトリックのLC1Dシリーズなら基本記号の直後にあたる場所だ。シーメンスの場合、この桁は端子形式を示しているのだが、規則にもう一段ひねりがある。
公式カタログの一覧表によれば、サイズS00とS0では「1」がねじ締め端子、「2」がスプリング式端子を示す。3RT2015-1AP01がねじ締め端子である一方、同じ定格の3RT2015-2AP01はスプリング式端子になる。ここまでは素直な二択に見える。ところがサイズS2・S3になると、スプリング式端子を示す数字が「2」ではなく「3」に変わる。3RT2035-1AP00がねじ締め端子、そのスプリング版は3RT2035-2ではなく3RT2035-3AP00になる、という具合だ。ねじ締め端子を示す「1」はサイズを問わず共通なのに、スプリング式端子を示す数字だけが、サイズS00・S0では「2」、サイズS2・S3では「3」と途中で切り替わっている。1桁の数字を「端子形式の二択スイッチ」とだけ覚えていると、大きいサイズのスプリング版を探すときに足をすくわれる。
コイル電圧コードは、シーメンス自身が「第10・11桁」と呼ぶ位置にある
次の1文字、「A」に進む。公式カタログはこの位置をコイルの種類として説明しており、AC電磁コイルには「A」、DC電磁コイルには「B」、AC/DC両用の電子式コイル(UC、バリスタ内蔵)には「N」を割り当てている。ただしサイズS2・S3のDCコイルに限り、「B」の代わりに「K」を使う24VDC専用の例外がある。サイズが変わると記号が総取り替えになる感覚は、この位置にも顔を出す。
コイルの種類を1文字で確定したあとに続く2文字、「P0」のような部分がコイルの電圧を示す。この位置について、シーメンスのカタログは位置そのものを名指ししている。定格制御電源電圧の一覧表の見出しに「(changes to 10th and 11th positions of the Order No.)」――「型式の第10・11桁が変化する」という注記が付いているのだ。実際に3RT2017-1AP01の文字を先頭から数えると、ハイフンをまたいで10番目と11番目にあたるのが、まさに「P」と「0」の2文字にあたる。
この2文字の電圧コード表も、一枚岩ではない。50Hz専用のコイルでは230VがP0、110VがF0、24VがB0という記号になるが、50Hz/60Hz両用のコイルになると、同じ230Vでもサイズによって記号が割れる。サイズS00では230Vが引き続きP0のままだが、サイズS0・S2では同じ230Vが「L2」という別の記号に変わる。カタログが挙げる実例では、3RT2023-1AP00が「ねじ締め端子・50Hz用電磁コイル・定格電圧230V AC」、3RT2023-1AG20が「ねじ締め端子・50/60Hz用電磁コイル・定格電圧110V AC」と説明されており、110Vの50/60Hz両用コードが「G2」であることも確認できる。DC側では、3RT2025-2BB40が「スプリング式端子・定格電圧24V DC」、3RT2025-2BG40が「スプリング式端子・定格電圧125V DC」という実例で、24VDCが「B4」、125VDCが「G4」であることが裏付けられる。
さらに、この電圧コードには地域限定の系統も用意されている。北米向けには110/120Vと220/240Vにそれぞれ「K6」「P6」という専用コードがあり、日本向けにも「For Japan」として100/110Vに「G6」、200/220Vに「N6」、400/440Vに「R6」という専用コードが別枠で用意されている。同じ「230V」という数字を見ても、標準50Hz品か、両用品か、北米向けか、日本向けかによって、割り当てられる2文字はまったく別の記号列になる。
末尾の1桁――補助接点の構成、そしてサイズS00だけが持つ選択の余地
最後に残るのが末尾の1桁、冒頭の2台を分けていた「1」と「2」の違いだ。RS Onlineで公開されている両者の公式データシートを見比べると、3RT2017-1AP01は「補助接点:1 NO」、3RT2017-1AP02は「補助接点:1 NC」とだけ記載が異なり、それ以外――サイズS00、定格電流12A、5.5kW/400V、コイル電圧230V AC 50/60Hz、ねじ締め端子――はすべて一致している。末尾の1桁だけが、接点をメーク(NO)にするかブレーク(NC)にするかを切り替えるスイッチだった。
この選択肢は、しかしサイズS00だけの特権でもある。サイズS0以上の一覧表を見ると、3RT2023-1AP00のように末尾が「0」で固定されており、公式データシート上も「補助接点:1 NO + 1 NC」と両方が最初から組み込まれた仕様になっている。サイズS00の接触器を選ぶときだけ、NOかNCかを型式の末尾で選び分ける自由が残っており、サイズが一段上がると、その自由の代わりに「両方付いてくる」という仕様に置き換わる。棚の2台の違いは、枝番でも別製品でもなく、この末尾1桁が担う補助接点の選択そのものだった。
サイズが変われば、記号の意味も総入れ替えになる
ここまでの4か所――フレームコード、端子形式、コイル電圧コード、補助接点コード――を通して見えるのは、シーメンスのSIRIUS 3RTシリーズが「1つの記号が全サイズで同じ意味を持つ」設計になっていない、という点だ。端子形式のスプリング版はS00・S0で「2」、S2・S3で「3」に変わる。コイル電圧の230Vは50Hz専用なら「P0」のままだが、50/60Hz両用でサイズが上がると「L2」に変わる。DCコイルの記号はサイズS2・S3では「B」ではなく「K」に変わる。桁の位置だけを暗記しても、サイズをまたいだ瞬間にその暗記は通用しなくなる。型式を読むときは、まずフレームコードからサイズを特定し、そのサイズ用の表を引く、という順番を踏むしかない。
シーメンス製電磁接触器の型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残った3RT2017・3RT2023等の型式から、コイル電圧コードの照合、補助接点構成(NO/NC)の確認、ねじ締め・スプリング式端子の選定まで対応している。型式の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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