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「モーターの銘板には『0.75kW』としか書いていない。でも電磁開閉器やサーマルリレーのカタログを見ると『A』の表記ばかりで、どれを選べばいいのか分からない」——制御盤の更新や動力設備の新設に携わる非エンジニアの担当者が、最初につまずくのがここだ。
さらに「サーマル」という略称だけが現場で飛び交い、電磁接触器(マグネットスイッチ)とは何が違うのか、ダイヤルの「3.6〜5.4A」のような目盛りをどう合わせればいいのかも分かりにくい。
本記事では、モーターの「W(kW)」・電源の「V」・機器の「A」の関係を実務的な目安として整理した上で、電磁開閉器(電磁接触器+サーマルリレー)の役割、整定電流の合わせ方、富士電機・三菱電機の主要シリーズの型番の読み方までを解説する。
なお、配線用遮断器(MCCB)・漏電遮断器(ELCB)そのものの選び方・容量計算(AT/AF)については、ブレーカーの種類と選び方で体系的に解説している。本記事はモーター保護用の電磁開閉器・サーマルリレーに焦点を絞る。
この記事でわかること
- モーターの「W(kW)」・電源の「V」・機器の「A」の関係と実務的な変換目安
- 電磁接触器(マグネットスイッチ)とサーマルリレー(熱動継電器)がセットで必要な理由
- サーマルリレーの整定電流(ダイヤル)の合わせ方
- 富士電機・三菱電機の電磁開閉器・サーマルリレーの主要シリーズと型番の読み方
- 選定チェックリスト
モーターの「W」・機器の「A」・電源の「V」の関係
なぜこの3つの単位で迷うのか
モーターのカタログ・銘板には出力(軸から取り出せる仕事量)が「kW」で書かれている。一方、電磁開閉器やサーマルリレー、ブレーカーのカタログには「A(アンペア)」でしか容量が書かれていない。この2つをつなぐのが電源電圧「V」だ。
三相モーターの場合、この3つの関係は次の式で近似できる。
電流 I(A) = 出力 P(W) ÷(√3(約1.73)× 電圧 V(V)× 力率 cosθ × 効率 η)
√3は三相交流特有の係数、力率(cosθ)は電流と電圧の位相のズレ、効率(η)はモーター内部の損失を表す。一般的な汎用三相誘導モーターでは、力率・効率ともにおおむね80〜90%程度とされる(機種・容量によって差がある)。
重要なのは、この式を毎回自分で計算する必要はないという点だ。 三相200Vモーターの場合、モーターメーカーやJIS規格に基づいて容量(kW)ごとの標準的な電流値(全負荷電流・規約電流と呼ばれる)が調査・整理されている。実務ではこの早見表を参照するのが基本になる。
三相200Vモーターの出力(kW)と電流(A)の目安
以下はJIS C 4210・JIS C 4213に基づく全負荷電流の調査値をもとにした、三相200Vモーターの出力と電流のおおまかな対応だ(メーカー・機種により実際の値は前後するため、最終判断はモーター銘板の定格電流値で行うこと)。
| 出力 | 電流の目安 |
|---|---|
| 0.4kW | 約3.2A |
| 0.75kW | 約4.6A |
| 1.5kW | 約8.0A |
| 2.2kW | 約11.1A |
| 3.7kW | 約16.8A |
| 5.5kW | 約24.6A |
| 7.5kW | 約34.0A |
| 11kW | 約48.0A |
| 15kW | 約64.0A |
別の技術系サイトでは、三相200V・3.7kWの規約電流を「16A」とする例も紹介されている。出典・年式・想定条件によって多少の差はあるが、おおむね近い値になる。「3.7kWなら16〜17A程度」という感覚を持っておけば、カタログの数字を見たときに桁違いの間違いには気づける、というのが実務上の使い方だ。
「だいたい1kWあたり何A」という早見感覚
上の表を見ると、容量が大きくなるほど1kWあたりの電流はやや小さくなる傾向がある(小容量モーターほど効率が下がるため)。ただし大まかな目安として「三相200Vなら1kWあたり4〜5A程度」と覚えておくと、現場でモーター銘板のkW表示から必要なA数の見当をつけやすい。
注意点: 単相100V・単相200Vモーターの場合は式に√3が入らず(I=P÷(V×cosθ×η))、同じkWでも電流値は変わる。動力用の三相モーターかどうかをまず確認すること。
電磁開閉器(電磁接触器+サーマルリレー)が必要な理由
配線用遮断器だけでは足りない
ブレーカー(配線用遮断器)は電路の短絡(ショート)事故から配線を保護するための機器だ。しかしモーターの運転制御には向かない理由が2つある。
- 頻繁な入り切りへの耐久性がない:ブレーカーは「異常時にたまに遮断する」ことを前提に設計されており、1日に何十回もON/OFFを繰り返す用途には接点寿命が持たない。
- 緩やかな過負荷を検出しにくい:モーターがわずかに過負荷(例えば定格の110〜120%程度)で運転し続けても、ブレーカーの動作特性ではすぐには反応せず、モーター巻線がじわじわと過熱し焼損に至ることがある。
電磁接触器(マグネットスイッチ)の役割
電磁接触器は、コイルに電圧を加えることで主接点を開閉し、モーターの始動・停止を電気的にコントロールする機器だ。押しボタンスイッチや自動制御信号から離れた場所にある大電流の主回路を、安全にON/OFFできる。頻繁な開閉に耐える接点構造を持つのが特徴だが、これ単体では過負荷保護の機能はない。
サーマルリレー(熱動継電器)の役割
サーマルリレーは、電磁接触器と組み合わせて使う過負荷保護専用の機器だ。内部のバイメタル(温度で反り返る金属板)に電流を流し、設定値を超える電流が一定時間流れ続けると、その熱変形で接点を動かして電磁接触器のコイル回路を遮断する。これにより、モーターが過負荷状態のまま運転し続けることを防ぐ。
電磁接触器とサーマルリレーをセットにしたものが「電磁開閉器」と呼ばれる。ブレーカーで短絡事故を、電磁開閉器でモーターの運転制御と過負荷保護を受け持つ——という役割分担が、モーター回路設計の基本形だ。
サーマルリレーの整定電流(ダイヤル)の合わせ方
サーマルリレーには電流調整ダイヤルが付いており、多くの品番は「3.6〜5.4A」のように範囲で表示されている。合わせ方の基本は以下の通り。
- モーター銘板の定格電流値を確認する(例:定格電流4.2A)
- その定格電流値が整定範囲に収まるサーマルリレーの品番を選ぶ(例:3.6〜5.4Aの範囲品番なら4.2Aは範囲内)
- ダイヤルを実際のモーター定格電流値(例:4.2A)に合わせる
定格電流が整定範囲の上限・下限をわずかに超える場合は、別の整定範囲の品番に選び直す必要がある。また、周囲温度が高い制御盤内に設置する場合は、周囲温度補償機能付きの品番(多くの現行シリーズに搭載)を選ぶと、盤内温度上昇による誤動作(過検出)を避けやすい。
自動復帰・手動復帰の設定も確認しておきたいポイントだ。無人設備で自動復帰にしていると、過負荷の原因を解消しないまま再始動を繰り返し、モーター損傷や事故につながることがあるため、多くの現場では手動復帰が標準的に選ばれている。
富士電機の電磁開閉器・サーマルリレーの型番の読み方
富士電機機器制御株式会社は、電磁接触器・サーマルリレーを専門に製造するメーカーで、代表的には以下のシリーズを展開している(詳細な選定は必ず最新カタログ・メーカー選定表で確認すること)。
- SCシリーズ(電磁接触器):モーターの起動・停止・正逆転制御に使われる主力の電磁接触器。小容量から大容量まで幅広いラインナップがあり、コイル電圧(AC/DC)や補助接点の追加にも対応する。
- TRシリーズ(サーマルリレー):SCシリーズの電磁接触器と組み合わせて使う過負荷保護用のサーマルリレー。バイメタル方式で過負荷・欠相を検出し、整定電流調整ダイヤルと手動/自動復帰の切替を備える。
- BMシリーズ(モータブレーカ):電磁開閉器とは別に、モーター専用の配線用遮断器(電動機保護兼用ブレーカー)としてのラインナップもあり、電流調整ダイヤルで整定電流を設定できる。汎用の配線用遮断器はBW(G-TWIN)シリーズで、こちらは電動機保護用ではない。
型番はシリーズ名+容量ランクの組み合わせで構成されることが多く、同じシリーズ内でも適用モーター容量(kW)に応じて複数のランクが用意されている。選定時はモーターのkW・電源電圧(200V/400V)・コイル電圧(AC100V/AC200V/DC24V等)・使用頻度(操作回数/h)を確認し、頻繁な始動・停止が発生する用途では接点寿命に関わる使用カテゴリ(AC-3・AC-4等)も踏まえて選ぶ。
三菱電機の電磁開閉器・サーマルリレーの型番の読み方
三菱電機のFA(ファクトリーオートメーション)向け低圧開閉器も、電磁接触器・電磁開閉器・サーマルリレーを体系的にラインナップしている。
- S-T形(電磁接触器):モーターの開閉のみを行う電磁接触器単体。フレームサイズ(T10・T20等の数字)によって適用容量が変わる。
- MSO-T形/MS-T形(電磁開閉器):S-T形電磁接触器にTH-T形サーマルリレーを組み合わせた電磁開閉器。MSO-T形は配電盤・制御盤へ組み込む開放形(ユニット単体)、MS-T形は箱に収めた単体設置用という違いがある。可逆式(正逆転用)の品番には型番中に「2」が付く(例:2T10)など、フレーム表記に規則性がある。
- TH-T形(サーマルリレー):単体としても供給されるサーマルリレー。周囲温度補償機能付きの品番もあり、制御盤内外どちらに設置するかで選定が変わる。
三菱電機は配線用遮断器(BH形等)・漏電遮断器(NV形等)も同一ブランドでラインナップしているため、制御盤の更新工事では電磁開閉器と分岐ブレーカーを同一メーカーで揃えやすいという利点がある。
電磁開閉器・サーマルリレー選定チェックリスト
現場で電磁開閉器・サーマルリレーを選ぶ際に確認すべき項目。
- モーターの定格電流(A)の確認 → 銘板記載値を優先。kWしか分からない場合は本記事の早見表で概算
- 電源電圧・相数の確認 → 単相100V/200Vか、三相200V/400Vか
- コイル電圧の確認 → AC100V・AC200V・DC24V等、制御回路の電圧に合わせる
- サーマルリレーの整定範囲の確認 → モーター定格電流が範囲内に収まる品番を選定
- 使用頻度(操作回数/h)の確認 → 頻繁な始動・停止がある場合は接点寿命・使用カテゴリを考慮
- 自動復帰・手動復帰の選択 → 無人設備では誤動作防止の観点から検討
- 設置環境の確認 → 制御盤内の周囲温度が高い場合は温度補償機能付き品番を検討
- 上位ブレーカーとの保護協調 → 短絡保護はブレーカー、過負荷保護はサーマルリレーという役割分担を確認
始動時の突入電流でブレーカーがトリップしてしまう問題は電磁開閉器の選定とは別の論点になるため、モーター起動時のブレーカートリップ対策も合わせて確認しておきたい。モーターの定格電流・始動方式から必要な機器容量を概算したい場合はモーター用ブレーカー選定支援ツールも利用できる。
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