制御盤の予備品棚に、ラベルの薄れた電磁接触器がある。刻印はかろうじて読める。「SC-N1」。6文字、短くて素直な表記だ。その隣、古い注文控えの束をめくっていると、こう書かれた一枚が出てくる。「SC25BAA-222T1Z3」。
一見、まったく別の部品を指しているようにしか見えない。片や6文字、片や16文字近くあり、途中にはハイフンまで挟まっている。同じ棚に、系統の違う電磁接触器が2つ紛れ込んでいるのだろうか。
種明かしをすると、この2枚は同じ製品を指し得る表記だ。富士電機のSC形電磁接触器・SW形電磁開閉器には、カタログや銘板に載る短い「形式」と、注文のために仕様のすべてを1本の文字列へ畳み込んだ長い「商品コード」という、2つの型番体系が並行して存在する。三菱電機のS-NシリーズやシュナイダーエレクトリックのLC1Dシリーズが、基本的に1つの文字列の中でフレーム番号・コイル電圧・端子形式を読み分ける方式だったのに対し、富士電機はそもそも「読むための文字列」と「発注のために組み立てる文字列」を、最初から別物として用意している。
長い方の「SC25BAA-222T1Z3」を位置ごとに崩していくと、この二重体系がなぜ必要なのかが見えてくる。
形式――カタログと銘板に載る、読むための型番
まず短い方、「形式」から見ていく。富士電機機器制御の総合カタログは、SC形・SW形の形式を次のように分解している。
基本形式は「SC」(電磁接触器)と「SW」(電磁開閉器)の2種類だ。SCは主接点の開閉だけを行う部品そのもの、SWはSC形にサーマルリレー(過負荷保護)を組み込んだユニットを指す。三菱電機のS-N形とMS-N形の関係と、構造としては同じだ。
続く「フレーム」は、容量帯を示す区分になる。カタログの製作機種一覧表を見ると、フレームは新SCシリーズ(03、0、05、4-0、4-1、5-1)とNEO SCシリーズ(N1〜N16)という、世代の異なる2系統が同居している。新SCシリーズは電流値〔11〕〔13〕〔13〕〔18〕〔19〕〔19〕という並びで容量が大きくなり、NEO SCシリーズはN1〔26〕からN16〔800〕まで、より広い容量帯をカバーする。SC-05・SC-4-0という、当サイトの取扱品目にも載っている型式は、この新SCシリーズのフレームに属する現行品だ。
ここに一つ、注記が付く。カタログは「フレームN5の交流操作形はN5の後ろに『A』が付きます(N5A)」と説明しており、脚注にはさらに「SC-N5A形(交流操作形)が標準品になります」とある。フレームN5という区分自体はNEO SCシリーズの容量帯の一つに過ぎないが、その中で交流操作の標準品だけが「N5A」という、末尾にAの付いた形式で呼ばれることになる。
同じ「A」という一文字でも、シュナイダーエレクトリックのLC1D40Aで見た「A」(EverLink端子という接続技術を示す記号)とは、由来も意味もまったく別物だ。記号1文字だけを頼りに、メーカーをまたいで類推するのがいかに危ういか、この符合が裏付けている。
フレームのあとには、補助接点構造(無=双点、H=高容量補助接点〔単接点〕付)、非可逆形・可逆形の区分(無=非可逆形、RM=可逆形〔パーフェクトロック付〕)、保護構造(無=ケースカバーなし、C=ケースカバー付、P=押ボタン付)、操作方式(無=交流操作形、G=直流操作形、SE=交流・直流両用操作形、V/VG/VS=機械ラッチ形の交流・直流・交直両用、U=低電圧補償形)、端子カバーの有無(無/T)、サーマルリレーのリセット方式(無=手動、A=自動)、SW形に限っては付属サーマルリレーの種類(無=2ヒートエレメント、3H=3ヒートエレメント、2L・3L=遅動形、3Q=速動形、2E・2EQ・2EL=2Eリレー系統)という記号が、この順番で連なっていく。「SW-N10RMC」という形式なら、SW(電磁開閉器)・N10(フレーム)・RM(可逆形)・C(ケースカバー付)という4区分を、この順で読み下せば足りる。
ただしカタログ自身が、この読み方に一つ留保を付けている。「形式は,手配形式になりますので,製品の銘板記載が異なる場合がございます」という注記だ。ここまで分解してきた「形式」は、あくまで発注・カタログ掲載のための表記であって、現物の銘板に刻印される文字列と完全に一致する保証はない、ということになる。
商品コード――発注のために、仕様を数字へ畳み込む一続きの文字列
冒頭の「SC25BAA-222T1Z3」に戻る。カタログはこの文字列を、①から⑮までの位置に分解して説明している。
① S=機種区分(電磁接触器・開閉器) ② C=シリーズ区分(新SC,NEO SCシリーズ) ③④ 25=フレームサイズ(コード表と照合すると、これはN1を指す) ⑤ B=変更インデックス(NEO SCシリーズ) ⑥ A=ケースカバー付(非可逆形・ケースカバーなし) ⑦ A=コイル,接点仕様(標準形・交流専用) ⑨ 2=コイル電圧(AC200V) ⑩⑪ 22=補助接点構成(2a2b) ⑫⑬ T1=端子カバー付(N1〜N3フレームの2a2bなら端子カバーあり) ⑭⑮ Z3=特殊処理(熱帯寒冷処理)
つまり「SC25BAA-222T1Z3」は、SC-N1という形式の電磁接触器のうち、NEO SCシリーズ・非可逆・ケースカバーなし・標準形交流専用コイル(AC200V)・補助接点2a2b・端子カバー付・熱帯寒冷仕様、という一台を指している。形式「SC-N1」だけでは分からなかったコイル電圧・補助接点構成・特殊環境対応まで、この文字列だけで一意に確定する。
なぜここまで違う体系を、同じ製品に対して並走させる必要があったのか。形式は人間がカタログを読み、容量帯や機能をざっくり把握するための表記だ。一方の商品コードは、注文書やシステムに載せて、発注内容を取り違えなく処理するための表記だと考えれば筋が通る。三菱電機のS-Nシリーズが、コイル電圧を型式の外側で「操作コイル呼び」として別途指定する方式を採っていたのに対し、富士電機はコイル電圧も補助接点構成も特殊処理も、すべて同じ一続きの文字列の中に位置として埋め込んでしまう。読みやすさを取るか一意性を取るか——形式と商品コードという2本の文字列を別々に用意することで、その両方を成立させている。
補助接点コード「22」の中身――a接点数とb接点数がそのまま並ぶ
商品コードの中でも、補助接点構成のコード表には、覚えておくと得をする規則性がある。1a=10、1b=01、2a=20、1a1b=11、2b=02、2a2b=22、3a3b=33、4a4b=44。
数字を並べて眺めると、これは10の位がa接点(メーク接点)の数、1の位がb接点(ブレーク接点)の数を、そのまま並べたコードだと分かる。2a2bなら「2」と「2」で22、3a3bなら「3」と「3」で33。1aだけなら「1」と「0」で10、1bだけなら「0」と「1」で01。任意の記号を割り当てたのではなく、接点数という実数をそのまま2桁の数字として埋め込んでいる。商品コードのほかの位置——フレームサイズの「25」やコイル電圧の「2」——が、対応表を都度引かないと読めない記号だったのに対し、この補助接点のコードだけは、表を引かなくてもその場で組み立てられる数少ない例外になっている。
コイル電圧コード――数字と記号が混在する理由
コイル電圧のコード表は、交流専用・直流専用・交直両用の3系統に分かれている。交流専用ではAC24V=E、AC48V=F、AC100V=1、AC110V=H、AC120V=K、AC200V=2、AC220V=M、AC240V=P、AC380V=S、AC400V=4、AC440V=T、AC500V=5。直流専用ではDC12V=B、DC24V=E、DC48V=F、DC60V=G、DC100V=1、DC110V=H、DC120V=K、DC200V=2、DC210V=Y、DC220V=M。交直両用では24V=E、48V=F、100V=1、200V=2、300V=3、400V=4、500V=5、という具合だ。
この表を見て気づくのは、数字とアルファベットに規則性なく切り替わる箇所があることだ。AC100Vは「1」、AC200Vは「2」と、数字が電圧の並び順にそのまま対応しているように見える一方で、AC24Vは「E」、AC110Vは「H」と、途中からアルファベットに変わる。しかも交流専用の「E」(AC24V)と直流専用の「E」(DC24V)は、同じ記号を共有している。これは、商品コードの⑦の位置(コイル,接点仕様)ですでに交流専用(A)か直流専用(G)かが確定したあとで、⑨のコイル電圧コードを読むという順番が前提になっているから成立する話だ。⑨の1文字だけを単独で暗記しても、直前の位置と合わせて読まなければ電圧は確定しない。
SW形だけに増える位置――モータ容量とサーマルリレー定格
SC形(電磁接触器)の商品コードが①〜⑮の15位置で完結するのに対し、SW形(電磁開閉器)の商品コードは、これに主回路電圧/サーマルリレー指定区分(AC200V=2、AC400V=4、AC500V=5、サーマルリレー指定=T)、モータ容量/サーマルリレー定格(0.1kW=0、0.2kW=1、0.4kW=2……という具合にモータ容量を1桁のコードへ、0.1〜0.15A=A、0.13〜0.2A=Bというサーマルリレーの整定電流範囲を1桁のコードへ、それぞれ変換する表)、サーマルリレー素子数・リセット方式(3素子付〔標準形のみ〕=D、自動リセット式=A、3素子付・自動リセット式=B)という3項目が追加された、より長い文字列になる。
SC形の商品コードがコイル電圧・補助接点構成・端子形式という「接触器本体の仕様」を畳み込む文字列だったのに対し、SW形の商品コードは、それに加えて「適用モータの容量」と「サーマルリレーの整定範囲」まで、同じ1本の文字列の中に位置として組み込む。三菱電機の記事で扱ったサーマルリレーの整定電流は、電磁接触器・電磁開閉器の型式とは別枠で確認する数値だったが、富士電機のSW形では、その情報の一部が商品コードの中にすでに数字として畳み込まれている、という違いになる。
型番が読めても、現物と一致するとは限らない
ここまでの規則を積み上げると、形式・商品コードという二重体系がどう機能しているかは見えてくる。ただし、読み方が分かることと、現物のラベルがそのとおりに書かれていることは別の話だ。カタログ自身が「製品の銘板記載が異なる場合がございます」と断っている以上、予備品棚の現物を照合するときは、形式だけを頼りに突き合わせるのではなく、可能であれば商品コード、それも難しければ実際の定格電流・コイル電圧・補助接点数という仕様値まで確認したほうが確実だ。特にコイル電圧は、同じフレーム・同じ補助接点構成でも別の商品コードになる項目であり、「発注で最も取り違えやすい項目」という位置づけは、三菱電機・シュナイダーエレクトリックだけでなく富士電機のSC・SW形でも変わらない。
富士電機製電磁接触器・電磁開閉器の型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残ったSC-05・SC-N1等の形式から、フレームサイズ・補助接点構成・コイル電圧の照合、SW形(サーマルリレー付)への組み替え相談まで対応している。形式の一部が判読できない、または「SC25BAA-222T1Z3」のような商品コードだけが手元にある場合も、写真や控えを添えてもらえると照合が早い。
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