制御盤の予備品棚に、色の少し違う電磁接触器が2つ並んでいる。片方は「LC1D09」、もう片方は「LC1D18」。ラベルの数字がそのまま9A・18Aに対応していることは、AC-3級の定格を見ればすぐに裏が取れる。三菱電機のS-Nシリーズのように「20」と書いて18Aを指すような、ひねった読み方をする必要はない。素直な型式だ——そう思って棚の奥をさらに探っていると、見慣れない一台が出てくる。「LC1D40A」。数字のあとに、アルファベットが一文字だけ増えている。
40Aというフレームサイズの言い方なのだろうか。それとも別の意味を持つ記号なのだろうか。隣には「LC1D80」もあるが、こちらには何も付いていない。40より80のほうが大きい電流なのに、記号が増えるのは40の側だ。この非対称を放置したまま在庫を照合するわけにもいかない。
基本記号——LC1は単体、LC2は可逆ペア
型式の一番手前、「LC1」と「LC2」の違いから見ていく。シュナイダーエレクトリックの技術資料集は、LC1Dを3極の単体接触器として一つの表にまとめ、LC2Dは別の章で「機械的インターロック付き、工場で組み立て済みの可逆接触器ペア」として扱っている。単体か、あらかじめ2台1組で連動させたペアか——この違いが、型式の最初の3文字目で分かれる。
日本の公式サイトに掲載されているLC2D18M7の製品ページも、名称欄に「Reversing Contactor」と明記している。モーターの正転・逆転を切り替える可逆運転には、電磁接触器が2台、機械的に噛み合った状態で必要になる。LC1Dが「部品としての接触器」であるのに対し、LC2Dは「機能としての可逆ユニット」だと言い換えてもいい。
技術資料集にはもう一段深い規則も載っている。可逆ペアのうち、電気的インターロックまで工場出荷時に配線済みにした製品には、末尾に「V」を追加する。例として挙げられているのはLC2D09P7がLC2D09P7Vになるという変化だ。機械的な連動はLC2Dという基本記号ですでに表現されているが、電気回路まで作り込むかどうかは、型式の一番後ろでもう一段、選べるようになっている。
フレーム番号は素直に電流値——ただし三つだけ例外がある
次に、D09からD150まで並ぶフレーム番号を追う。技術資料集の一覧表では、D09・D12・D18・D25・D32・D40A・D50A・D65A・D80・D95・D115・D150という順に並び、それぞれのAC-3定格電流は9A・12A・18A・25A・32A・40A・50A・65A・80A・95A・115A・150Aと、フレーム番号にほぼそのまま対応している。日本公式サイトのLC1D09M7・LC1D18M7の各製品ページでも、名称欄にそれぞれ「9A」「18A」と記載されており、この対応は実物の型式でも確認できる。
素直な数字の並びに見える。ところが、40・50・65のところだけ、フレーム番号の後ろに「A」という文字が挟まる。D32の次はD40Aであって、D40ではない。この段差の理由を、技術資料集の脚注が説明している。
「A」の正体——EverLink端子を持つ、たった三つのフレーム
技術資料集は、LC1D40A・LC1D50A・LC1D65Aの脚注に「Power connections by EverLink® BTR screw connectors」という一文を添えている。EverLinkは、電源側の配線接続に使われる、シュナイダーエレクトリック独自のねじ式コネクタ技術の名称だ。つまり「A」は、電流の大きさを示す記号ではなく、この3フレームだけに採用された特定の端子接続方式を示す識別子だった。
この読み方が正しいことは、フレーム番号がさらに大きいD80・D95で確かめられる。技術資料集はD80・D95を「screw clamp terminals or connectors」、つまり通常のねじ締め端子として扱っており、フレーム番号に「A」を付けていない。日本公式サイトのLC1D80M7の製品ページも、型式に「A」を含まないまま80Aの接触器として掲載されている。40・50・65より大きい電流帯であるD80・D95に「A」が付かないのだから、「A」は電流の大小と連動する記号ではあり得ない。40A・50A・65Aという、たまたま連続する三つのフレームにだけ、EverLink端子という固有の技術が採用され、それが型式に痕跡を残している——そう理解するのが正確だ。
端子形式は、コイル電圧コードの直前に数字で割り込む
型式の後半、コイル電圧を示す記号の直前にも、もう一つ別の情報が挟まることがある。端子の形式だ。技術資料集の脚注によれば、フレーム番号のあとに何も挟まない標準形はねじ締め端子を意味する。ここに「3」を挿入するとばね式端子になり、たとえばLC1D09M7はLC1D093M7という型式に変わる。「6」を挿入すると圧着端子・バー接続用になり、LC1D09M7はLC1D096M7になる。
日本公式サイトでも、この2つの型式は実在の製品として個別に掲載されている。LC1D093M7の名称欄には「spring terminals」、LC1D096M7の名称欄には「lugs-ring terminals」と記載されており、同じ9Aのフレーム・同じ220Vコイルでありながら、端子の形式だけが型式の中間に挿入された1桁の数字によって切り替わっている。
この規則には、さらに小さな例外が一つ重なる。技術資料集は、「LC1D09とLC1D12に限り、ばね式端子を示す『3』の代わりに『9』を使う」という但し書きを添えている。この「9」はFaston(クイック接続)端子を示す記号で、同じばね式端子系統の中でも、最小の2フレームだけがコネクタ形状の違いにより別の数字を割り当てられている。型式の途中に挟まる1桁の数字は、フレーム番号の一部のようでいて、実際にはフレームごとに意味の変わる端子コードだった、ということになる。
コイル電圧コードは、電圧の数値と比例しない
型式の一番後ろに残るのが、コイル電圧を示す記号だ。三菱電機のS-Nシリーズでは、コイル電圧が型式とは別枠の「操作コイル呼び」として注文時に指定される方式だったが、シュナイダーエレクトリックのLC1Dシリーズでは、電圧情報がアルファベットと数字の組み合わせとして型式そのものに組み込まれる。
技術資料集の制御回路電圧コード表を見ると、交流50/60Hz共用コイルでは、24VがB7、42VがD7、48VがE7、110VがF7、120VがG7、208VがLE7、220VがM7、230VがP7、240VがU7、380VがQ7、480VがT7、600VがX7という記号に対応する。数字の7がそのまま電圧を示しているわけではなく、末尾の「7」は50/60Hz共用であることを示す記号で、フレームによっては50Hz専用の「5」、60Hz専用の「6」という別系統のコードも用意されている。直流コイルになると記号の体系はさらに変わり、12VがJD、24VがBD、48VがED、220VがMDというように、アルファベット主体の記号へ切り替わる。
日本公式サイトのLC1D09M7が「220V AC 50/60Hzコイル」、LC1D09BDが「24V DCコイル」として掲載されているのは、この表と正確に対応する実例だ。型式の末尾2〜3文字だけを見て電圧を言い当てるには、この対応表を手元に置いておくしかない。数字が大きいほど電圧が高い、といった直感的な規則性は、このコード体系には存在しない。
現行ブランド名「TeSys Deca」と型式の関係
ここまで見てきたLC1D・LC2Dという型式は、シュナイダーエレクトリックの現行製品ページでは「TeSys Deca」というシリーズ名の下で紹介されている。日本公式サイトのLC1D09M7の製品ページタイトルにも「Contactor, TeSys Deca」という表記が入っている。だが型式の文字列自体は、LC1D09、LC1D18というように、フレーム番号・端子記号・コイル電圧コードという構造をそのまま維持している。ブランドの呼び方が「TeSys D」から「TeSys Deca」へ変わっても、発注に使う型式のルールそのものは変わっていない、ということだ。現物のラベルや過去の見積書に古い呼称が残っていても、型式さえ一致していれば同一製品として照合できる。
シュナイダーエレクトリック製電磁接触器の型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残ったLC1D09・LC1D40A等の型式から、コイル電圧コードの照合、端子形式(ねじ締め・ばね式・圧着端子)の確認、LC2D可逆ペアへの組み替え相談まで対応している。型式の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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