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インバータ二次側で漏電遮断器が誤動作する理由|対地静電容量による漏れ電流と、実際の漏電の見分け方

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

改修工事から半年ほど経ったころ、同じ相談が電気主任技術者のもとへ舞い込むことがある。「新しく入れたインバータのラインだけ、漏電遮断器が月に何度も落ちる。でも絶縁抵抗を測ると数値はいつも正常」。担当者は最初、どこかの被覆が傷んでいるに違いないと考える。土曜出勤までしてケーブルを一本ずつ目視で追い、端子台を締め直し、モータの接続部を点検し直す。ところが漏電の痕跡はどこにも見当たらない。そして月曜の朝、ラインを再稼働させた瞬間、また同じブレーカーが落ちる。

ここで見落とされがちなのは、漏電遮断器が「トリップする」という事実と、「どこかで絶縁が壊れて電気が漏れている」という事実が、必ずしもイコールではないという点だ。インバータの二次側では、機器が故障もなく設計どおりに動作しているだけで、漏電遮断器を刺激するだけの電流が生まれてしまう場面がある。壊れているのはケーブルでも機器でもなく、現場の理解の方かもしれない。

PWM制御のスイッチングが、なぜ「漏れ電流」を作り出すのか

インバータは、交流電源を一度直流に変換したのち、パワー半導体(IGBT等)を数kHz〜十数kHzという速さでON・OFFさせることで、擬似的な交流波形を作り出している。このON・OFFの瞬間、電圧は急激に立ち上がり、また急激に立ち下がる。滑らかな正弦波とはほど遠い、鋭いパルスの連続だ。

このパルス状の電圧変化が、思わぬ経路に電流を流し込む。インバータからモータへ延びるケーブルと大地の間、そしてモータの巻線と鉄心の間には、目に見えない静電容量(コンデンサとしての性質)がわずかに存在している。コンデンサは電圧の変化が急であるほど電流を通しやすくなる素子であり、PWMスイッチングが作る急峻な電圧変化は、この対地静電容量を介して大地側へ流れ込む高周波の電流を生み出す。三菱電機FAのFAQは、インバータやモータの回路にも感電保護のために漏電遮断器が必要だとした上で、この高周波の漏れ電流によって漏電遮断器が不要動作する場合があると説明している。住友重機械工業のドライブテクノロジーズSBUの解説も同様に、対地とケーブル間の静電容量、およびモータの巻線と鉄心間の浮遊容量を介して漏れ電流が発生するメカニズムを挙げ、インバータの運転時は入力側・出力側とも高調波成分を含むため漏れ電流が大きくなるとしている。

漏電遮断器は、電路の行き(電圧側)と帰り(接地側)の電流をまとめて零相変流器(ZCT)に通し、その差分を検出することで漏電を判断する仕組みを持つ。この検出回路にとって、電流の「差」が高調波を含む高周波成分であるか、絶縁劣化による本物の地絡電流であるかは、区別する術がない。感度電流の設定値を超える差分が流れた瞬間、遮断器はただ規定どおりに動作するだけだ。インバータの正常な動作そのものが、漏電遮断器の目には「漏電」として映ってしまう――これが、故障ではなく仕様に近い現象だと言われる所以である。

対地静電容量による漏れ電流と、絶縁劣化による本物の漏電の違い

では、この2つの漏れ電流は、まったく見分けがつかないのだろうか。

そうではない。両者は、電流が生まれる仕組みそのものが違う。絶縁劣化による本物の地絡は、電線の被覆が経年劣化やかじり傷、浸水などで破れ、本来絶縁されているはずの導体が大地側と直接つながってしまうことで起きる。この電流は基本的に電源周波数(50Hzまたは60Hz)そのものであり、絶縁の破れが進行するにつれて、時間の経過とともに右肩上がりに増えていく性質を持つ。ある日突然ゼロから大きな値に飛ぶことはあっても、健全な状態に自然に戻ることは基本的にない。

一方、インバータの対地静電容量による漏れ電流は、PWMスイッチングのキャリア周波数やその高調波成分を主体とした、数kHzから数十kHzオーダーの高周波電流だ。住友重機械工業の解説は、インバータやモータの絶縁が正常であっても、高調波成分によって漏電遮断器や地絡保護リレーの種類によっては誤動作する場合があると明記している。つまりこの漏れ電流は、絶縁の良し悪しとは独立に、インバータが稼働している限り一定の条件下で常に存在し得るものであり、ケーブルの劣化が進んでいなくても、配線が長ければ長いほど、あるいは運転台数が増えるほど大きくなる。時間とともに悪化していくのではなく、運転条件(キャリア周波数、ケーブル長、台数)が変わらない限り、ほぼ同じ水準で推移し続けるという点が、本物の絶縁劣化との決定的な違いだ。

漏電遮断器の検出方式と、機種による「過敏さ」の差

漏電遮断器はどれも同じようにトリップするわけではない。一般形の漏電遮断器は、ZCTで検出した電流の差分をほぼそのまま感度電流と比較する構造になっている。この構造では、電源周波数の地絡電流だけでなく、インバータ由来の高周波成分も検出電流に上乗せされてしまうため、絶縁は健全でも、高周波の漏れ電流が積み上がった分だけ感度電流のしきい値に近づきやすい。

三菱電機FAのFAQが挙げる「高調波・サージ対応形」の漏電遮断器は、この構造に手を加えている。漏電検出電子回路の中にアクティブフィルタを設け、高調波成分をあらかじめ除去したうえで、電源周波数の地絡電流成分だけを判定に使う。地絡電流を検出する性能そのものを落とすことなく、高周波由来の不要動作だけを選択的に減らす設計だ。さらに独自のDPDCサージ判別回路によって、開閉サージや誘導雷サージによる不要動作も抑えている。同じ「漏電遮断器」という名前の機器であっても、検出回路の作り込みひとつで、インバータ二次側での振る舞いは大きく変わる。

インバータ用として設計された漏電遮断器という選択肢

頻発する誤動作への対処として、まず検討すべきなのが漏電遮断器そのものの交換だ。三菱電機FAのFAQは、インバータ回路に使用する漏電遮断器の選定にあたって、定格電流はインバータのカタログに記載された負荷電流に対して1.4倍以上の裕度を持たせること、そして「高調波・サージ対応形」の製品を用いる場合は、実測または算出した漏洩電流値に対して定格感度電流を10倍以上の余裕をとって選定することを示している。あわせて、漏電遮断器はインバータの一次側(電源側)に設置するのが原則であり、二次側(モータ側)への設置は推奨されていない。

安川電機のFAQは、既設のモータをインバータ駆動へ更新した際に漏電ブレーカーが誤動作するケースを取り上げ、インバータ1台につき定格感度電流30mA以上の高周波対策済み漏電ブレーカーの使用を推奨している。すでに設置済みの一般形漏電遮断器をそのまま使わざるを得ない場合の代替策として、感度電流を200mA以上に上げる、あるいはインバータのキャリア周波数を2.5kHz以下に下げるという2つの調整も紹介されている。ただし後者には副作用があり、キャリア周波数を下げるとモータの電磁音(うなり音)が大きくなる。誤動作は収まっても、今度は騒音のクレームに変わるだけということもあり得るため、どちらの調整も「とりあえず」で済ませず、現場の許容条件と照らし合わせて選ぶ必要がある。

ケーブルの長さ・台数が漏れ電流量を左右する

対地静電容量による漏れ電流は、配線の物理的な条件に強く左右される。ケーブルと大地の間の静電容量は、ケーブルが長くなるほど大きくなる。三菱電機FAのFAQが漏電遮断器の感度電流を「実測値の10倍」という大きな余裕をとって選ぶよう求めているのも、配線が長くなるほど漏れ電流の絶対量が読みにくくなる現実を踏まえてのことだ。住友重機械工業の解説は、対地浮遊容量の小さいCVケーブルを使用し、インバータとモータ間の配線を最短距離にすることを対策として挙げている。加えて、ゼロ相リアクトルの設置や、ノイズフィルタの接地コンデンサをオフに切り替えることも、漏れ電流を減らす手段として紹介されている。

台数についても同じことが言える。東芝産業機器システムのFAQは、漏電しゃ断器1台にはインバータ1台のみを接続することを対策のひとつに挙げている。複数のインバータが同じ漏電遮断器の下にぶら下がっていると、それぞれが生む漏れ電流は合算されて検出される。1台単独では感度電流のしきい値に届かない程度の漏れ電流であっても、2台、3台と束ねるほど合計値が積み上がり、いずれかのタイミングでしきい値を超えてトリップする。設備を増設するたびに既設の漏電遮断器へ新しいインバータをただ継ぎ足していくと、増設した回路とは無関係に見える既設の設備側で誤動作が起き始める、という一見不可解な現象の正体も、たいていはこの合算構造にある。

誤動作と実際の地絡事故を区別する実務手順

現場でまず確認すべきは、トリップのタイミングだ。東芝産業機器システムのFAQは、インバータの運転を開始したあとに繰り返しトリップする場合は高周波の漏れ電流が、電源投入直後(運転を開始する前)にトリップする場合はノイズフィルタの接地コンデンサに流れる充電電流が、それぞれ疑わしいとしている。「動かした瞬間に落ちるのか」「動かしてしばらくしてから落ちるのか」「そもそも動かす前から落ちるのか」を記録しておくだけで、原因の見当は大きく絞り込める。

次に必要なのが、インバータを電路から切り離した状態での絶縁抵抗測定だ。メガーで測定した値が正常であれば、少なくともその時点でケーブルやモータの絶縁は健全であり、トリップの原因は絶縁劣化ではなく漏れ電流にあると判断できる。逆に絶縁抵抗値が基準を下回っていれば、それは対地静電容量の話ではなく、本物の地絡事故に向き合う必要がある場面だ。

絶縁抵抗が正常だと確認できたら、条件を変えて再現性を見る。キャリア周波数を一時的に下げてみて、その間だけトリップが収まるようであれば、高周波の漏れ電流が原因だとほぼ断定できる。あるいは、同じ漏電遮断器にぶら下がっている他のインバータを一時的に停止させ、それでもトリップが再現するかどうかを見れば、漏れ電流が合算されて起きている現象なのか、特定の回路固有の問題なのかを切り分けられる。本物の地絡であれば、こうした条件変更をしても症状は変わらず、時間の経過とともにむしろ悪化していく。原因を「なんとなく高周波っぽい」で済ませず、絶縁抵抗値・トリップのタイミング・条件を変えたときの再現性という3つの記録を積み重ねることが、故障探索の遠回りを防ぐ。

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よくある質問

なぜインバータを導入すると漏電遮断器が誤動作しやすくなるのですか?

インバータはPWM制御でパワー半導体を高速にスイッチングして疑似的な交流を作り出しており、このスイッチングに伴う高周波成分が、ケーブルと大地の間、モータの巻線と鉄心の間にある対地静電容量(浮遊容量)を介して、大地側へ流れる漏れ電流を生み出すためです。三菱電機FAのFAQは、この高周波の漏れ電流によって漏電遮断器が不要動作する場合があり、頻発する場合はインバータ対応の漏電遮断器への交換が必要だとしています。絶縁が壊れているわけではなく、インバータが正常に動作していること自体が漏れ電流の発生源になっている点が、通常の漏電トラブルと異なります。

対地静電容量による漏れ電流と、絶縁劣化による本当の漏電はどう見分けますか?

東芝産業機器システムのFAQは、トリップのタイミングで一次的な切り分けができるとしています。インバータの運転を開始したあとに繰り返しトリップする場合は高周波の漏れ電流が疑わしく、電源を投入した直後(運転前)にトリップする場合はノイズフィルタの接地コンデンサに流れる充電電流が原因である可能性が高いとされます。いずれの場合も、インバータを電路から切り離した状態で絶縁抵抗測定(メガー測定)を行い、数値が正常であれば絶縁劣化ではなく漏れ電流が原因だと判断できます。加えて、住友重機械工業のドライブテクノロジーズSBUの解説は、インバータやモータの絶縁が正常であっても高調波成分によって漏電遮断器や地絡保護リレーが誤動作する場合があると明記しており、絶縁抵抗の値と実際のトリップ挙動を突き合わせて判断することが実務上のポイントです。

インバータ用の漏電遮断器(高調波・サージ対応形)と一般形は何が違いますか?

三菱電機FAのFAQによれば、高調波・サージ対応形の漏電遮断器は、漏電検出電子回路の中にアクティブフィルタを設けて高調波成分を除去し、地絡電流の検出性能を落とすことなく高周波の漏れ電流による不要動作を抑える構造になっています。あわせて独自のDPDCサージ判別回路により、サージ電流による不要動作も防いでいます。一般形の漏電遮断器は高周波成分もそのまま検出電流に含めてしまうため、絶縁が正常でもインバータの高周波漏れ電流だけでトリップに至りやすいという違いがあります。

インバータとモータ間のケーブルが長いと、なぜ漏れ電流が増えるのですか?

ケーブルと大地の間には対地静電容量が存在し、その容量はケーブルの長さにほぼ比例して増えていきます。三菱電機FAのFAQは、インバータ回路の漏電遮断器を選定する際、実測または算出した漏洩電流値に対して定格感度電流を大きく余裕を持たせて選ぶ必要があるとしており、これはケーブルが長くなるほど漏れ電流の絶対量が増える現実を踏まえた考え方です。住友重機械工業の解説も、対地静電容量の小さいCVケーブルの採用と、配線を最短距離にすることを対策として挙げています。ケーブルを短くする、あるいは対地静電容量の小さいケーブルへ変更することが、漏れ電流そのものを減らす直接的な手段になります。

1台の漏電遮断器に複数台のインバータをまとめて接続してもよいですか?

推奨されません。個々のインバータが発生させる漏れ電流は、同じ漏電遮断器を共有すると合算されて検出されるため、1台あたりでは問題にならない漏れ電流でも、台数が増えるほど感度電流のしきい値に近づき、トリップしやすくなります。東芝産業機器システムのFAQは、漏電しゃ断器1台にはインバータ1台のみを接続することを対策として挙げています。複数台のインバータを扱う設備では、漏電遮断器を分岐ごとに分散配置し、1台あたりの漏れ電流を抑える設計が基本になります。

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よくある質問

なぜインバータを導入すると漏電遮断器が誤動作しやすくなるのですか?

インバータはPWM制御でパワー半導体を高速にスイッチングして疑似的な交流を作り出しており、このスイッチングに伴う高周波成分が、ケーブルと大地の間、モータの巻線と鉄心の間にある対地静電容量(浮遊容量)を介して、大地側へ流れる漏れ電流を生み出すためです。三菱電機FAのFAQは、この高周波の漏れ電流によって漏電遮断器が不要動作する場合があり、頻発する場合はインバータ対応の漏電遮断器への交換が必要だとしています。絶縁が壊れているわけではなく、インバータが正常に動作していること自体が漏れ電流の発生源になっている点が、通常の漏電トラブルと異なります。

対地静電容量による漏れ電流と、絶縁劣化による本当の漏電はどう見分けますか?

東芝産業機器システムのFAQは、トリップのタイミングで一次的な切り分けができるとしています。インバータの運転を開始したあとに繰り返しトリップする場合は高周波の漏れ電流が疑わしく、電源を投入した直後(運転前)にトリップする場合はノイズフィルタの接地コンデンサに流れる充電電流が原因である可能性が高いとされます。いずれの場合も、インバータを電路から切り離した状態で絶縁抵抗測定(メガー測定)を行い、数値が正常であれば絶縁劣化ではなく漏れ電流が原因だと判断できます。加えて、住友重機械工業のドライブテクノロジーズSBUの解説は、インバータやモータの絶縁が正常であっても高調波成分によって漏電遮断器や地絡保護リレーが誤動作する場合があると明記しており、絶縁抵抗の値と実際のトリップ挙動を突き合わせて判断することが実務上のポイントです。

インバータ用の漏電遮断器(高調波・サージ対応形)と一般形は何が違いますか?

三菱電機FAのFAQによれば、高調波・サージ対応形の漏電遮断器は、漏電検出電子回路の中にアクティブフィルタを設けて高調波成分を除去し、地絡電流の検出性能を落とすことなく高周波の漏れ電流による不要動作を抑える構造になっています。あわせて独自のDPDCサージ判別回路により、サージ電流による不要動作も防いでいます。一般形の漏電遮断器は高周波成分もそのまま検出電流に含めてしまうため、絶縁が正常でもインバータの高周波漏れ電流だけでトリップに至りやすいという違いがあります。

インバータとモータ間のケーブルが長いと、なぜ漏れ電流が増えるのですか?

ケーブルと大地の間には対地静電容量が存在し、その容量はケーブルの長さにほぼ比例して増えていきます。三菱電機FAのFAQは、インバータ回路の漏電遮断器を選定する際、実測または算出した漏洩電流値に対して定格感度電流を大きく余裕を持たせて選ぶ必要があるとしており、これはケーブルが長くなるほど漏れ電流の絶対量が増える現実を踏まえた考え方です。住友重機械工業の解説も、対地静電容量の小さいCVケーブルの採用と、配線を最短距離にすることを対策として挙げています。ケーブルを短くする、あるいは対地静電容量の小さいケーブルへ変更することが、漏れ電流そのものを減らす直接的な手段になります。

1台の漏電遮断器に複数台のインバータをまとめて接続してもよいですか?

推奨されません。個々のインバータが発生させる漏れ電流は、同じ漏電遮断器を共有すると合算されて検出されるため、1台あたりでは問題にならない漏れ電流でも、台数が増えるほど感度電流のしきい値に近づき、トリップしやすくなります。東芝産業機器システムのFAQは、漏電しゃ断器1台にはインバータ1台のみを接続することを対策として挙げています。複数台のインバータを扱う設備では、漏電遮断器を分岐ごとに分散配置し、1台あたりの漏れ電流を抑える設計が基本になります。

参考文献・出典

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