倉庫の棚に、外した覚えのある光電センサーが1個転がっている。刻印は「PZ-G61CN」。角ばった樹脂ケースに、側面からケーブル用のM8コネクタが飛び出している形だ。予備品の引き出しを開けると、同じ「PZ-G61」で始まる型番のセンサーが見つかった。だが手に取ると、形がまるで違う。角ばっていない。ナットのように丸く、前面にM18のネジ山が切ってある。型番の下4桁は「61B」。同じ回帰反射型、同じ長距離検出のはずなのに、なぜ本体の形からして別物に見えるのか。
キーエンスの光電センサー「PZ-G」シリーズは、検出方式・検出距離のバリエーションに加えて、形状・接続形態・出力形態という3つの軸が末尾のアルファベットに詰め込まれている。しかもこの3軸は独立に選べるわけではなく、組み合わせによっては存在しない型式が出てくる。今回はキーエンス公式サイトの型式一覧と仕様表という一次資料に沿って、PZ-Gの型番を数字部分(検出方式・検出距離)と末尾のアルファベット(形状・接続形態・出力形態)に分解し、両者がどう結びついているのかを一段ずつ確かめていく。
「PZ-G」のあとの数字が決めているのは、検出方式と検出距離
型番の骨格を最初に決めるのは、「PZ-G」に続く2〜3桁の数字だ。キーエンス公式仕様表を横断して見ると、この位置には次の8種類が並んでいる。
| 数字 | 検出方式 | 検出距離 |
|---|---|---|
| 51 | 透過型 標準 | 20m |
| 52 | 透過型 ハイパワー | 40m |
| 41 | 反射型 拡散反射 長距離 | 1m(30cm×30cm白紙検出時) |
| 42 | 反射型 拡散反射 近距離 | 300mm(10cm×10cm白紙検出時) |
| 101 | 反射型 狭視界 | 200mm |
| 102 | 反射型 限定反射 | 5〜45mm |
| 61 | 回帰反射型 長距離(P.R.O.機能付) | 0.1〜4.2m(R-2L使用時) |
| 62 | 回帰反射型 透明体検出(P.R.O.機能なし) | 0.1〜1m(R-2L使用時) |
透過型(51・52)は投光器と受光器が別体になり、光を遮ったかどうかで検出する方式。反射型(41・42・101・102)は投受光一体で、検出物そのものに当たって返ってくる光の有無を見る方式。回帰反射型(61・62)も投受光一体だが、対向に置いた専用リフレクタで光を折り返して検出する方式だ。
同じ検出方式の中でも、数字が枝分かれしている点に目が止まる。透過型は51(標準・20m、赤色LED)と52(ハイパワー・40m、赤外×2)に分かれ、反射型は拡散反射の41・42(長距離1mと近距離300mm)と、狭視界の101(200mm)、限定反射の102(5〜45mm)に分かれる。回帰反射型の61と62も、単に検出距離が違うだけではない。61は「P.R.O.機能付」、62は「P.R.O.機能なし」と仕様表に明記されており、62はとくに「透明体検出」という用途名を与えられている。同じ回帰反射型でも、検出対象がガラス瓶やフィルムのような透明体を想定しているかどうかで、末尾の数字自体が分かれているわけだ。
末尾のアルファベットが一括して動かす3つの軸——形状・接続形態・出力形態
数字のあとに続く1〜2文字のアルファベット。ここが今回の型番のいちばんの難所になる。冒頭のPZ-G61CNとPZ-G61Bの違いも、この部分に答えがある。公式仕様表を通して見ると、末尾記号と3つの仕様軸は次のように対応している。
| 末尾記号 | 形状 | 接続形態 | 出力形態 |
|---|---|---|---|
| N | 角型 | ケーブル(2m) | NPN |
| P | 角型 | ケーブル(2m) | PNP |
| CN | 角型 | M8コネクタ | NPN |
| CP | 角型 | M8コネクタ | PNP |
| EN | 角型 | ケーブル付M12コネクタ | NPN |
| EP | 角型 | ケーブル付M12コネクタ | PNP |
| B | ナット型 | ケーブル(2m) | Bipolar(NPN+PNP) |
| CB | ナット型 | M12コネクタ | Bipolar(NPN+PNP) |
一見すると、CがつけばM8またはM12のコネクタタイプ、Eがつけばケーブル付M12コネクタ、何もつかなければケーブルタイプ——という接続形態の規則だけに見える。だが表を縦に読むと、そこに形状と出力形態が黙って乗っかっていることに気づく。N・P・CN・CP・EN・EPの6つはすべて形状が角型で統一されており、出力形態はNPNとPNPのどちらかを個別に選べる。ところがB・CBの2つだけは形状がナット型に変わり、同時に出力形態もNPN単独・PNP単独ではなく「Bipolar(NPN+PNP)」という第3の形式に切り替わる。
冒頭の疑問に戻ろう。PZ-G61CNは角型・M8コネクタ・NPN出力。PZ-G61Bはナット型・ケーブル・Bipolar出力。検出方式(回帰反射型・長距離)と検出距離(0.1〜4.2m)はまったく同じなのに、末尾の1文字が変わっただけで、本体の形も、配線の仕方も、出力の性質も同時に切り替わっている。角ばった箱とナットのような丸い部品が、手に持ってまるで別のセンサーに見えたのも当然だ。型番の1文字が動かしているのは、接続方法という1つの軸ではなく、3つの軸をまとめて束ねたパッケージだった。
NPN・PNPに次ぐ第3の出力形式「Bipolar」
制御機器のNPN出力・PNP出力の違いは、検出時に出力線へ流れる電流の向きの違いであり、PLC(プログラマブルコントローラ)の入力ユニットがシンク入力かソース入力かに対応させる必要がある。ここまでは他の光電センサーの型番読み解きでも繰り返し出てくる話だ。
PZ-Gのナット型(B・CB)が背負っているBipolar(NPN+PNP)出力は、この2択のどちらかを選ぶのではなく、1台の型式でNPN出力とPNP出力の両方に対応する形式として、キーエンス公式仕様表に「出力形態:Bipolar(NPN+PNP)」と明記されている。個別の製品ページでも、たとえばPZ-G61CBのページタイトルは「ナット型 回帰反射型 M12コネクタタイプ NPN + PNP」となっており、NPNかPNPかをあらかじめ決め打ちしない設計であることが型番表記そのものに表れている。
ただし、この選択肢が使えるのはナット型に限られる。角型のケーブルタイプ・M8コネクタタイプ・ケーブル付M12コネクタタイプは、公式仕様表を見る限りすべてNPN出力とPNP出力を個別の型式として用意しており、Bipolar出力の設定はない。逆にナット型には、NPN単独・PNP単独という型式が見当たらない。形状と出力形態は、PZ-Gの型式一覧の中で切り離せない組み合わせとして設計されている——角型でBipolarが欲しい、ナット型でPNP単独が欲しい、という注文は、少なくとも公式の型式一覧上は存在しない相談になる。
生産終了したカラーマーク検出タイプ——B・G・Rは光源の色
PZ-Gの型式一覧には、これまで見てきた51・52・41・42・101・102・61・62とは別枠で、「PZ-G10」から始まる型式が並んでいる。PZ-G10BCN、PZ-G10GCN、PZ-G10RCN、そしてPNP出力版のPZ-G10BCP、PZ-G10GCP、PZ-G10RCP。いずれも公式サイトでは「生産終了」と表示されており、推奨代替機種としてファイバアンプ「FS-N41C」への切り替えが案内されている。
型式の中ほどに置かれたB・G・Rは、検出方式ではなく光源LEDの色を表している。PZ-G10BCNの製品ページには種類欄に「反射型 カラーマーク検出 青色」、光源(LED)欄に「青色」とあり、同様にPZ-G10GCNは「緑色」、PZ-G10RCNは「赤色」と明記されている。検出距離は8〜15mm、応答時間は50µsで、標準の反射型(41・42・101・102系列の500µs)よりも大幅に速い。印刷物や梱包資材上の色マークを高速に判別する用途に絞り込まれた、専用の型式だったことがうかがえる。すでに現行の型式一覧には存在しない系列だが、更新前の設備に残っていれば、この型番だけは「B・G・Rが色を表す」という規則を単独で覚えておく必要がある。
型番だけでは決まらないもの——リフレクタ・取付金具・接続ケーブル
回帰反射型(61・62)の検出距離「0.1〜4.2m」「0.1〜1m」には、いずれも「R-2L使用時」という注記が付いている。回帰反射型は投受光一体の本体に対して、光を折り返すリフレクタ(反射板)が別売部品になっており、公式仕様表の検出距離はあくまで標準リフレクタR-2Lを組み合わせた場合の数値だ。型式一覧にはR-2Lのほか、生産終了品のR-1、そしてR-3・R-4・R-5といった型式のリフレクタが並んでおり、どのリフレクタを組み合わせるかによってカタログ上の検出距離の前提そのものが変わる。本体の型番だけを見て検出距離を確定させるのは早計だということだ。
取付金具にも同様の別売構成がある。PZ-B01A・PZ-B02・PZ-B03・PZ-B04といった標準取付金具、PZ-B21A・PZ-B22Aなどの側面取付金具、PZ-B82のようなワンタッチ取付具まで、形状や設置条件に応じて型式が枝分かれしている。接続ケーブルもOP-73864(M8ストレート・2m・PVC)のような標準品に加えて、耐油仕様のOP-88069〜OP-88076といった型式まで用意されており、コネクタタイプ・ケーブル付コネクタタイプで本体を選んだ場合、ケーブル自体は別途この中から型式を選ぶ必要がある。
PZ-Gの型式は、数字とアルファベットの組み合わせで検出方式・検出距離・形状・接続形態・出力形態までを言い当てられる、かなり整理された体系だ。だが、リフレクタや取付金具、接続ケーブルのように本体の型番の外側に置かれた部品まで含めて初めて、現場で動くセンサーとして完結する。型番を分解して仮説を立てたあとは、組み合わせる部品の型式まで公式の型式一覧で照らし合わせておきたい。
キーエンス製PZ-Gの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残ったPZ-G61CN・PZ-G61B・PZ-G10BCNといった型番の分解から、検出方式・出力形態・形状の確認、リフレクタや取付金具との組み合わせ照合、生産終了品の代替機種の確認までのご相談を見積フォームで受け付けている。型番の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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