制御盤の奥、コンベアの通過検知に使っている近接センサーを一つ取り外す。摩耗しかけた刻印を目の高さまで持ち上げて、ようやく読めたのが「形E2E-X4MD1-M1G」。Mの文字が二回出てくる。同じ意味なのだろうか、それとも別の意味なのだろうか。棚には予備品として「形E2E-X8MD1」という型番も並んでいる。オムロンの公式商品ページで両方を引くと、形E2E-X4MD1-M1Gは検出ヘッドがM8で検出距離4mm、形E2E-X8MD1は検出ヘッドがM12で検出距離8mm。型番に出てくる4と8は太さではなく検出距離で、しかも前者の末尾に付く「M1」の指すM12は、本体ではなくコネクタのサイズだという。同じ「M」なのに、一つの型番の中で違うものを指している。
指が止まる。ここで適当に「似ているから大丈夫だろう」と判断するのは危うい、とは分かっている。
オムロンの近接センサー「形E2E」は、公式データシート「スタンダードタイプ近接センサ E2E」(CSM_E2E_DS_J_11_1)に「形式基準」という型番分解表を掲載している。①形状から⑬コード長まで、13の位置に記号が割り当てられた表だ。今回はこの一次資料に沿って型番を分解し、その途中で見つかった、同じ文字が位置によってまったく別の意味を持つという規則にまで踏み込む。
型番の骨格——13の位置に割り当てられた記号
公式データシートの「形式基準」は、形E2Eの型番を次の枠組みで説明している。
形E2E-①②③④⑤⑥⑦-⑧⑨-⑩-⑪-⑫ ⑬
各位置の記号は次のとおりだ。
| 位置 | 分類 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|---|
| ① | 形状 | X | 円柱形(ネジつき) |
| ② | 検出距離 | 数字/R | 検出距離(単位mm)、Rは小数点(例:1R5=1.5mm) |
| ③ | シールドの有無 | 無表示/M | 無表示=シールドタイプ、M=非シールドタイプ |
| ④ | 電源と出力仕様 | B・C・D・E・F・T・Y | 直流3線式(オープンコレクタ/コレクタ負荷内蔵)、直流2線式、交流直流2線式、交流2線式 |
| ⑤ | 出力開閉素子の形態 | 1/2 | 1=ノーマルオープン(NO)、2=ノーマルクローズ(NC) |
| ⑥ | 発振周波数区分 | 無表示/5 | 無表示=標準周波数、5=異周波数(相互干渉防止用) |
| ⑦ | 自己診断出力機能 | 無表示/S | 無表示=なし、S=あり |
| ⑧ | 接続方式 | 無表示・M1・M3 | 無表示=コード引き出し、M1=金属コネクタM12サイズ、M3=金属コネクタM8サイズ |
| ⑨ | コネクタ仕様 | 無表示・G・J・GJ・TJ・TGJ | 直出し/中継/スマートクリック中継の別と、ピン配線の種類 |
| ⑩ | 直流2線式の極性 | 無表示/T | 無表示=有極性、T=無極性(コネクタ中継タイプのみ) |
| ⑪ | コード仕様 | 無表示・R・U | 無表示=標準PVC、R=耐屈曲PVC、U=耐油強化ポリウレタン |
| ⑫ | モデルチェンジ/規格認証 | N/US | N=モデルチェンジ品、US=ULレコグニション認証品 |
| ⑬ | コード長 | 数字M | コード長(単位m)。例:2M、0.3M |
冒頭の「形E2E-X4MD1-M1G」で確かめてみる。X(円柱形)4(検出距離4mm)M(③非シールドタイプ)D(④直流2線式)1(⑤NO)-M1(⑧M12コネクタ)G(⑨コネクタ直出し・IECピン配線)。オムロンの公式商品ページが載せる商品概要「近接センサ, 直流2線式, 検出距離 4mm, 非シールドタイプ, NO, M8, M12コネクタタイプ(IECピン配線), 有極性」と突き合わせると、この分解がそのまま合っていることが確かめられる。同時に、検出ヘッドのサイズはM8であって、⑧のM1が指すM12はコネクタの寸法でしかないことも読み取れる。ここまで分解すると、確かにMという文字が二回、③と⑧という違う位置に、しかも違う対象を指して現れていることが見えてくる。
検出距離の数字とサイズは、実は一対一ではない
型番の中で最初に目に入る数字——②の検出距離——は、そのままセンサーの太さ(M8・M12・M18・M30)を示していると思い込みやすい。だが公式データシートの定格/性能表を横断して見ると、そう単純には割り切れないことが分かる。
M12サイズのシールドタイプだけを取り出しても、電源方式によって検出距離の数字が違う。
- 直流2線式(形E2E-X3D□):検出距離3mm
- 交流2線式(形E2E-X2Y□):検出距離2mm
- 直流3線式(形E2E-X2E□/F□):検出距離2mm
同じM12という外形サイズなのに、直流2線式は「3」、交流2線式と直流3線式は「2」を型番に背負っている。M8サイズも同様で、直流2線式(形E2E-X2D□)は2mm、交流2線式(形E2E-X1R5Y□)と直流3線式(形E2E-X1R5E□/F□)は1.5mmだ。M18サイズも、直流2線式(形E2E-X7D□)が7mm、交流2線式(形E2E-X5Y□)と直流3線式(形E2E-X5E□/F□)が5mmとずれている。
ところがM30サイズだけは、直流2線式(形E2E-X10D□)、交流2線式(形E2E-X10Y□)、直流3線式(形E2E-X10E□/F□)のいずれも検出距離10mmで揃う。前二者は公式商品ページでも確認でき、形E2E-X10D1-Nが「直流2線式, 検出距離 10mm, シールドタイプ, M30」、形E2E-X10Y1が「検出距離: 10mm, シールドタイプ, 交流2線式」で検出ヘッドサイズM30だ。非シールドタイプまで含めて確かめても、M8・M12・M18は電源方式ごとに数字がずれ続けるのに対し、M30だけがきれいに一致する。数字のずれ方に規則性がありそうで、最後まで押し通せる保証はない——ここでも、その手触りに出くわす。
型番の数字は、サイズを表すために割り振られた記号ではなく、あくまで実測される検出距離の規格値そのものだ。同じ太さの製品でも、直流2線式と交流・直流3線式では内部の発振回路の設計が異なり、その結果として達成できる検出距離が違う。この回路設計上の理由までは公式データシートに明記されておらず、ここは資料の外側にある推測であることを断っておく。ただし、型番の数字だけを見てサイズを逆算しようとすると、電源方式を確認しないまま外形寸法を誤って見積もる恐れがあるという事実は、定格/性能表を突き合わせるだけで確認できる。
「M」「R」「T」は、位置によって別の顔を持つ
先ほどの形式基準の表を、一文字ずつ横断して読み直してみる。すると、同じアルファベットが複数の位置で、互いに無関係な意味を担っていることに気づく。
一つめは「M」だ。③の位置のMは非シールドタイプを表す。だが⑧の位置では、M1が金属コネクタM12サイズ、M3が金属コネクタM8サイズを表す。形E2E-X4MD1-M1Gという一つの型番の中に、③の非シールドを示すMと、⑧のM12コネクタを示すM1のMが、両方とも現れている。
二つめは「R」だ。②の位置のRは、検出距離の数字の中に置かれる小数点を表す。形E2E-X1R5Y1という交流2線式の型番は、1R5という並びで検出距離1.5mmを示している。一方、⑪の位置のRは、耐屈曲PVCコードを表す記号で、目的別セレクションガイドには「形E2E-X□D1-R」「形E2E-X□E1-R」という、可動部取りつけ用の耐屈曲コードタイプが挙げられている。数字の中の小数点と、コードの材質。同じRという一文字が、この二つを兼務している。
三つめは「T」だ。④の位置のTは直流交流両用2線式(データシートでは交流直流両用2線式とも書かれる)を表し、公式商品ページで確かめると形E2E-X3T1(M12・検出距離3mm)・形E2E-X7T1(M18・7mm)・形E2E-X10T1(M30・10mm)がいずれも実在する。だが⑩の位置のTは、直流2線式コネクタ中継タイプにおける無極性を表す記号で、形E2E-X3D1-M1J-T 0.3Mという型番の末尾に現れる。交流直流両用という電源仕様と、直流2線式の極性という、まったく別の軸をTという一文字が背負っている。
形式基準の表を一望しただけでは、こうした重複には気づきにくい。位置ごとに縦に読んでいる限りは矛盾なく整理されているからだ。だが型番を横に一続きの文字列として眺めたとき、Mが二回、あるいはRやTが別の顔で現れることに気づかないまま、型番の一部分だけを手がかりに「似た記号だから同じ仕様だろう」と判断すると、足をすくわれる。
なぜ、こういう設計になっているのか
同じ文字を複数の位置で使い回す設計判断の理由は、今回参照した公式データシートには書かれていない。形式基準の表そのものが「形式から仕様などの意味をご理解いただくために記載しています」という位置づけで公開されているだけで、記号の割り当ての経緯には触れていない。
推測にとどめるなら、13個という位置の多さに対して、意味のまとまりが把握しやすいアルファベットの組み合わせ(M=Metal-less/Mount、R=Round/Resistant、T=Two-wire)を位置ごとに独立して割り当てた結果、文字自体が偶然重なった、という可能性はある。ただし、これは公式資料の裏付けがない仮説であり、断定はできない。確かなのは、記号の意味は「どの位置にあるか」で初めて確定するのであって、文字それ自体からは確定しない、という一次資料から読み取れる事実だけだ。
現場で型番を読み解くときの注意点
型番の分解ができるようになっても、そのまま発注に使える保証にはならない場面がいくつかある。
一つめは、⑫のNとUSの適用範囲だ。公式データシートは「N(モデルチェンジ品)」について「直流2線式・コード引き出し・シールドタイプのみに適用」という備考を明記している。非シールドタイプやコネクタタイプの型番に-Nを勝手に付け足しても、実在する形式にはならない。
二つめは、⑩の無極性タイプの残留電圧だ。形E2E-X3D1-M1J-Tのような無極性タイプは、公式データシートの脚注で「残留電圧が5Vとなりますので、接続負荷とのインターフェース条件(例:PLCのON電圧など)にはご注意ください」と注記されている。標準の有極性タイプの残留電圧3V以下という基準をそのまま当てはめると、PLCの入力しきい値によっては誤判定を招きかねない。
三つめは、⑦のS(自己診断出力機能)の扱いだ。形E2E-X3D1Sは公式商品ページでも「検出距離: 3mm, シールドタイプ, 直流2線式, NO, 自己診断出力機能」として実在し、コイル断線などの異常を診断出力線で知らせる。ただしこれは④の直流2線式(D)に組み合わせて用意されている機能で、ほかの電源方式にSを付けた型番は、少なくとも今回確認した形式一覧・価格表には見当たらなかった。
型番の桁を分解して仮説を立てたところで、その組み合わせが実在する製品であるかどうかは別の話だ。最後は形式一覧表か、見積り時の確認で裏を取る必要がある。
オムロン製E2Eの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残った形E2E-X4MD1-M1G・形E2E-X3D1・形E2E-X8MD1といった型番の分解から、シールドの有無・電源方式・検出距離の確認、後継品の照合までのご相談を見積フォームで受け付けている。刻印が摩耗して読み取りにくい場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
あわせて読みたい
- オムロン制御機器完全ガイド|MYリレー・H3Yタイマー・E3Zセンサーの選び方と型番の読み方
- オムロンの光電センサーE3Zの型番はどう読むのか|E3Z-T61・E3Z-D81が並べる検出方式・出力形式・接続方式・検出距離の規則
- 【現場のやらかし】ステンレス製の治具をアルミ製に交換したら、近接センサーが検出できなくなった!金属材質で変わる検出距離「補正係数」の落とし穴
- 近接センサー・光電センサーの選び方|FA・自動化ラインの検出機器基礎
関連するオムロン・E2E・型番・見方・近接センサー・シールド・非シールドの品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。