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電材基礎制御機器電源

スイッチング電源の選び方|制御盤・FA機器への直流電源供給の基礎

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

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制御盤の設計・施工において、電源まわりの選定ミスは機器の誤動作や予期せぬ停止に直結する。国内の製造現場ではPLC・センサー・電磁弁の多くが24VDC動作であり、AC電源から安定した直流を供給するスイッチング電源は制御盤の心臓部といえる存在だ。にもかかわらず「とりあえず大きめの容量を選んでおけばよい」という感覚的な選定が現場では少なくない。本記事では容量計算の根拠からディレーティングの意味、DINレール取付品の選定ポイントまでを体系的に整理する。

電源選定の失敗例として多いのが、容量不足による電圧降下と、過負荷継続による発熱・早期故障の2パターンである。前者は起動時の突入電流で保護回路が動作してシステム全停止を招き、後者は数年後に制御盤全体の更新工事へと発展することがある。適切な選定根拠を持つことで、こうしたトラブルを未然に防げる。

この記事でわかること

  • スイッチング電源とリニア電源の違いと使い分けの基準
  • 出力電圧の種類(24V / 12V / 5V)と対応する用途
  • 容量(W・A)の計算方法とディレーティングの考え方
  • DINレール取付タイプの選定ポイントとワイドレンジ入力のメリット
  • 瞬停対策・UPS連携の基本的な考え方
  • 代表メーカーの製品系列と選定の手がかり

スイッチング電源とリニア電源の違い

直流電源の方式は大きくスイッチング方式とリニア(シリーズレギュレータ)方式の2種類に分かれる。

比較項目スイッチング電源リニア電源
変換効率80〜92%程度40〜60%程度
発熱少ない多い(損失分がほぼ熱になる)
重量・体積小さい大きい(トランスが重い)
ノイズスイッチングノイズあり少ない
価格比較的安価高価になりやすい
主な用途制御盤・FA機器全般高精度計測・通信機器

制御盤用途ではスイッチング電源が事実上の標準である。変換効率が高いため発熱が少なく、盤内の温度上昇を抑えられる。また体積・重量が小さいため、スペースが限られたDINレール内にコンパクトに収まる利点がある。

ノイズについての実態

スイッチング電源は数十kHz〜数百kHzのスイッチングノイズを発生させる。ただし現代の製品はEMCフィルタ(EMIフィルタ)が内蔵されており、CE/ULマーク取得品であれば一般的な制御用途では問題になることは少ない(機器マニュアルのノイズ耐量と照合すること)。高精度アナログ計測や低レベルセンサー回路が混在する場合は、電源系統を分離するか、リニア電源の採用を検討する。


出力電圧と用途の対応

スイッチング電源の出力電圧は用途に応じて選択する。

24VDC — 制御盤の主電源として最多

国内のFA機器は24VDCを標準動作電圧とする製品が圧倒的に多い。PLCの入出力ユニット、近接センサー・光電センサー、電磁弁(ソレノイドバルブ)、操作表示機器(表示灯・タッチパネル)などが該当する。1台の制御盤に複数の24V電源を設置し、動力系と制御系で電源を分けることも多い。

12VDC — 照明・通信機器・低電圧センサー

LED照明ユニット、Ethernetスイッチ、シリアル通信コンバータ、一部のカメラ類が12VDCで動作する。24Vほどの大容量は不要なケースが多く、10〜30W程度の製品を選ぶことが多い。

5VDC — 制御基板・ロジック回路

マイコンボード、表示用LCD、シリアル通信IC(RS-232C)など制御基板上のロジック回路が対象となる。制御盤内に5V機器が少ない場合は、24V→5VのDCDCコンバータで対応するケースもある。


容量(W・A)の選定方法

消費電流の集計

電源容量の選定は、接続するすべての機器の消費電流(またはW数)を積み上げるところから始まる。

計算手順:

  1. 接続機器リストを作成し、各機器の定格消費電流(A)または消費電力(W)を仕様書から確認する
  2. すべての消費電流を合算する(例:PLC 2A + センサー群 3A + 電磁弁 4A = 合計 9A)
  3. 合計値に1.3〜1.5倍の係数を乗じる(業界目安)
必要電源容量(A) = 接続機器の消費電流合計(A) × 1.3〜1.5

上記の例では 9A × 1.5 = 13.5A となるため、15A品を選定する。

ディレーティングを考慮した選定

係数1.3〜1.5を乗じる理由は「ディレーティング」の考え方に基づく。

ディレーティングとは、定格に対して実際の使用負荷を意図的に低く抑える設計手法のことである。スイッチング電源を定格100%で連続動作させると内部温度が上昇し、電解コンデンサなどの部品劣化が加速する。IEC 61439シリーズ(低圧開閉装置・制御装置)でも盤内温度上昇に関する計算が規定されており、電源の発熱は盤内全体の熱設計に影響する。

一般的には定格の70〜80%以下で使用することで寿命・信頼性を確保できるとされる(業界標準的な設計マージン)。すなわち15A品の電源は実負荷を10.5〜12A以下に抑えて使用するのが望ましい。

ディレーティング係数の目安

使用率状態
100%定格限界。連続使用は推奨しない
80%一般的な設計上限(業界目安)
70%以下余裕があり長寿命・高信頼性
50%以下瞬間的な突入電流への余裕も十分

起動時の突入電流に注意

誘導性負荷(電磁弁・モータ)やコンデンサ入力型の機器は起動時に定格の数倍の突入電流が流れることがある。電源の保護回路が動作して出力が遮断されるケースがあるため、機器メーカーの仕様書で突入電流値を確認し、電源の許容突入電流と照合すること。


DINレール取付タイプの選定ポイント

制御盤内の標準的な実装

国内の制御盤ではDINレール(IEC 60715規格準拠の35mm幅レール)への取付が標準だ。スナップオン・スナップオフで着脱できるため、追加・交換・メンテナンスが容易である。電源の選定時は必ず「DINレール取付対応」の記載を確認すること。

入力電圧範囲:ワイドレンジ品のメリット

単相AC入力品では「AC85〜264V対応」のワイドレンジ品が主流となっている。入力段の整流・平滑とスイッチング制御の設計により、国内の100V/200V系統や海外の110V/220V系統をすべてカバーできる(一定容量以上の機種では、高調波規制への対応としてPFC回路も内蔵している)。海外向けに輸出する装置や、将来的に電圧系統が変わる可能性がある設備では、ワイドレンジ品を標準採用しておくと変更コストを抑えられる。

出力調整トリマ

多くのDINレール取付電源には出力電圧を±10%程度で調整できるトリマが付いている。長距離配線による電圧降下を補正する際に役立つ。配線長が長い場合は電圧降下を計算(V = I × R)したうえで出力電圧を補正することを推奨する。

代表メーカー

TDKラムダはDINレール取付スイッチング電源の国内トップメーカーの一つであり、DRZ・DSPシリーズ等が制御盤用途に広く採用されている。高効率・低発熱と長期間の部品供給(製造終了後10年程度)が評価されている。そのほかオムロン・パナソニックIDCS・コーセルなどが産業用電源市場に製品を展開している。


UPS連携と瞬停対策

瞬停とその影響

工場の電力系統では、雷サージ・近隣大型機器の起動・系統切替などにより瞬時電圧低下(瞬停)が発生することがある。一般的な瞬停は20ms以下だが、PLCのCPUユニットがリセットされたり、インバータが停止したりする原因となる。

バッファモジュールによる対策

スイッチング電源のDC出力ラインに直列接続するバッファモジュール(キャパシタ式)は、24VDCラインの電力を一時的にキャパシタに蓄え、瞬停時に放電して負荷への電力供給を維持する仕組みだ。一般的な製品で20ms〜数百msの保持時間をカバーできるとされる。DINレール取付で電源と並べて設置できる製品が主流である。

UPS(無停電電源装置)との連携

秒〜分単位のバックアップが必要な設備(サーバー・データ収集装置・重要制御ラインなど)では、AC入力段にUPSを設置する方法が確実だ。UPS出力はほぼ正弦波またはそれに準じた波形を出力するため、スイッチング電源の入力として問題なく使用できる。UPS選定時は接続する電源・機器の合計W数と保持時間(分)を確認し、UPSの定格出力W数と電池保持時間が要件を満たすことを確認すること。


選定チェックリスト

制御盤用スイッチング電源を選定する際は以下を確認する。

  • 出力電圧は用途に合っているか(24V / 12V / 5V)
  • 接続機器の消費電流合計を仕様書から積み上げたか
  • 電源容量は消費電流合計の1.3〜1.5倍以上か(ディレーティング考慮)
  • DINレール取付タイプであるか
  • 入力電圧はワイドレンジ対応か(AC85〜264V)
  • 周囲温度範囲・取付方向の制限を確認したか
  • 保護機能(過電流・過電圧・短絡保護)が備わっているか
  • 瞬停対策の要否を検討したか(バッファモジュール・UPS)
  • 安全規格(UL・CE等)の取得状況を確認したか
  • 長期供給・補修部品の見通しを確認したか

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よくある質問

24VDCの電源で何Aの製品を選べばよいですか?

接続するすべての機器の消費電流を合計し、その1.3〜1.5倍の電流容量を持つ製品を選ぶのが業界目安である。たとえばPLC・センサー・電磁弁の合計が10Aなら、13〜15A品を選定する。将来の増設余裕を見込むならさらに上位を選ぶとよい。各機器の消費電流は必ずメーカー仕様書の「定格消費電流」欄を参照し、カタログの定格値ではなく実際の動作状態での値を確認することを推奨する。

ディレーティングとは何ですか?なぜ重要なのですか?

ディレーティングとは、定格に対して実際の使用負荷を意図的に低く抑える設計手法である。電源を定格100%で連続使用すると内部温度が上昇し、電解コンデンサなどの部品劣化が加速する。一般に定格の70〜80%以下で使用することで寿命と信頼性を確保できるとされる。長期的な視点では、電源の早期交換コスト・ライン停止リスクを考えれば、わずかな容量アップによるコスト増は十分に回収できる。

スイッチング電源はリニア電源より本当にノイズが多いですか?

スイッチング電源は数十kHz〜数百kHzのスイッチングノイズを発生させるため、原理上リニア電源よりノイズが多い。ただし現代の製品はEMCフィルタが内蔵されており、CE/ULマーク取得品であれば一般的な制御盤用途では実用上の問題は少ない。高精度計測やオーディオ機器等ではリニア電源が選ばれることもある。ノイズが懸念される場合は電源のEMCカテゴリ(クラスBなど)と機器側のノイズ耐量(IEC 61000シリーズ等)を照合して判断するとよい。

DINレール取付タイプ以外の取付方式はありますか?

ねじ取付(プリント基板ユニット型)、シャーシ取付、パネル埋込型などがある。制御盤内ではDINレール取付が標準だが、盤外に設置する機器や産業用ロボットのアーム内などではコンパクトなねじ取付型やユニット型が用いられることもある。取付方式によって冷却方向(自然空冷・強制空冷)や取付方向の制限が異なるため、メーカー仕様書の「取付方向」欄を必ず確認すること。

瞬停対策にはどのような方法がありますか?

最もシンプルな方法はバッファモジュール(キャパシタ式または鉛蓄電池式)をDC出力ラインに接続する方法である。一般的な瞬停(20ms程度)に対応できる製品が多い。より長時間のバックアップが必要な場合はUPS(無停電電源装置)との組み合わせが有効である。重要度の低い補助回路と重要制御回路で電源を分離し、重要系のみUPSでバックアップする構成がコスト効率上よいとされる。

スイッチング電源の寿命はどのくらいですか?

メーカー公称の平均寿命(MTBF)は製品によって異なるが、設計寿命として5〜10年を謳う製品が多い(業界目安)。実際の寿命は周囲温度と負荷率に大きく左右される。電解コンデンサが寿命の律速となることが多く、高温・高負荷環境では劣化が早まるため定期的な更新を推奨する。一般的に周囲温度が10℃上がると電解コンデンサの寿命が半分程度になるとされる(アレニウス則の経験則)ため、盤内の熱設計とあわせて電源の交換サイクルを計画することが重要だ。

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参考文献・出典

  • スイッチング電源のディレーティング・容量選定に関する一般的な業界慣行(メーカーカタログ等)
QUOTATION SIGNAL

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