現場で電線を束ねるあの白いプラスチックのバンドを、多くの人が「インシュロック」と呼ぶ。だが、これは正確には誤りだ。インシュロックはヘラマンタイトン株式会社の登録商標であり、一般名称としては「結束バンド」「ケーブルタイ」と呼ぶのが正しい。では芝軽粗材の製品を何と呼べばいいのかというと、答えは「コンベックス」——同社が展開する自社ブランド名である。セロテープや宅急便と同じで、商標が一般名詞化してしまった典型例に過ぎない……と片付けてしまってよいのだろうか。実はこの「呼び方のズレ」の奥に、もう一つ見落とされがちな事実が隠れている。
ケーブルタイは、電気工事の現場で最も軽視されやすい部材の一つだ。配線を束ねて留めるだけの、単価数円の消耗品。だからこそ「白くて同じ形なら何でもいい」という選び方がまかり通ってしまう。しかし屋内用として設計されたナイロン66製の標準タイプを屋外の配管や太陽光パネルの配線固定に使うと、紫外線を浴び続けた樹脂は数ヶ月から1〜2年ほどで硬化・脆化し、ある日パラリと破断する。中の電線が宙に垂れ下がって初めて、誰かがそれに気づく。
芝軽粗材とは——樹脂加工から配線資材へ広がった専業メーカー
芝軽粗材株式会社は、1967年6月に熱可塑性樹脂を主体とした素材の製造・販売を目的として資本金100万円で創業した会社だ。配線資材(結束バンド等)の製造・販売に参入したのは創業4年後の1971年3月で、以来、樹脂加工技術を土台とした電設資材専業メーカーとして事業を広げてきた。資本金はその後1968年に200万円、1977年に500万円、1992年に1,000万円へと段階的に増資されている。
本社は東京都品川区に置きつつ、1982年に大阪営業所を開設(1988年に支店へ昇格)、1994年には九州出張所を開設(2013年に営業所へ昇格、2016年に福岡営業所へ改称)と、拠点を東京から西日本へ広げてきた沿革を持つ。主力製品であるコンベックス各タイプはUL認証(UL File No. E82894)を取得しており、カドミウム・鉛・水銀・六価クロムなど特定有害物質を含まないRoHS2指令適合品としても案内されている。海外製設備や特定有害物質規制のある調達先への納入では、この規格適合が確認材料になる。
製品体系——ケーブルタイの材質・規格の見取り図
芝軽粗材の配線資材は、コンベックス(結束バンド)を中心に、周辺の固定具・保護資材まで枝分かれしている。
| カテゴリ | 主なシリーズ・型番 | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| 標準タイプ | CV-70N〜CV-450N | 屋内用の恒久結束、ナイロン66・白 |
| 耐候性タイプ | CV-150B〜CV-800B | 屋内・屋外両用、紫外線対策済み |
| 仮止め用 | CV-100AF/A/R等 | 着脱・再使用が可能な仮結束 |
| 表示用 | CV-100M | 電線束に識別タグを付けられる |
| 押込用 | CV-100i〜200i(-B) | パネル穴に差し込むだけで固定 |
| ビス止め用 | CV-100F〜350F | バンド頭部のビス穴でネジ固定 |
| 配線固定具 | コンベックスベース/マウント、CSクランプ、フラットケーブルクランプ、ナイロンクリップ | 結束バンド・電線束を壁面やパネルに固定する土台 |
| その他消耗資材 | 保護チューブ(CGシリーズ)、絶縁テープ、ケーブルマーカー | 配線の保護・絶縁・識別 |
標準タイプ(Nタイプ)と耐候性タイプ(Bタイプ)は、見た目こそよく似ているが別物として設計されている。前者は屋内専用、後者は屋内・屋外両用として紫外線対策を施したグレードだ。加えて「特殊用途コンベックス」という括りで、着脱可能な仮止め用、識別タグ付きの表示用、パネル固定用の押込用、ネジ固定用のビス止め用まで用途別に細分化されている点は、単なる結束バンドメーカーというより、配線固定の場面ごとに部品を作り分けてきたメーカーだと捉えたほうが実態に近い。
選び方——耐候性・耐薬品性・引張強度の3軸
耐候性——「白いから屋内用」ではなく型番で見る
屋外に露出する配線には、必ず耐候性タイプ(Bタイプ、多くは黒色でカーボンブラックが配合されている)を選ぶ。一般に、屋内向けの白いナイロン66製結束バンドを屋外で使うと、紫外線によって分子量が低下し、1〜2年ほどで脆くなって破断する事例が報告されている。太陽光発電設備の配線固定や屋外の設備配線で「黒いタイ」が推奨されるのは、色の好みではなく樹脂への紫外線対策のためだ。
ただし、耐候性タイプを使えば永久に安心というわけでもない。耐候性を持たせたナイロン66でも、屋外での実使用は数年から十年前後を目安に劣化が進むという報告があり、屋外の恒久結束は「一度取り付けたら終わり」ではなく、定期点検の対象として扱うのが実務上は安全だ。この点は、屋内用VVFケーブルを屋外露出配線してシースが劣化した事例(エアコン室外機のVVFケーブル紫外線劣化ガイド参照)と構造がよく似ている。
耐薬品性——ナイロン66の得意・不得意を知る
芝軽粗材のコンベックスは主にナイロン66(UL規格94V-2の難燃グレード)製だ。ナイロン66は機械的強度・柔軟性のバランスに優れる反面、酸性の薬品には比較的弱いという性質がある。工場の薬液配管まわりなど強酸・強アルカリに触れる可能性がある環境では、ナイロン以外にフッ素樹脂製やステンレス製の結束バンドを選ぶ製品も市場には存在する。芝軽粗材のラインアップは屋内・屋外の一般的な電気工事用途を主軸にしているため、薬品雰囲気が強い特殊環境向けの選定では、現場の薬品の種類を明確にした上でご相談いただくのが確実だ。
引張強度——サイズは「結束範囲径」と「強度」がセット
コンベックスは型番のサイズ数字(CV-100Nなら「100」)が長さを表し、サイズが大きくなるほど幅・厚みが増し、引張強度も上がる。例えばCV-100Nは引張強度98N(約10kgf)、結束できる束の直径や使用温度範囲(-40〜85℃)まで製品ごとに規定されている。太い電線束を細いサイズのタイで無理やり締めると、締め付け時にタイ自体が伸びきって固定力が不足したり、最悪その場で切れたりする。逆に太すぎるサイズは結束範囲径の下限を下回り、緩んで抜け落ちる原因になる。束の本数・直径を数えてからサイズを選ぶのが基本だ。
比較・注意点——標準タイプと仮止め用を取り違えない
標準タイプ・耐候性タイプのコンベックスは、いずれも「一度締めたら外せない」恒久結束を前提に設計されている。ラチェット構造(一方向にしか送れない歯)が入っているため、配線ルートを後で調整したい場面でこれを使うと、外すには結局ニッパーで切断するしかない。位置がまだ確定していない仮の結束や、後で調整が入りそうな配線には、着脱・再使用ができる仮止め用(AF・A・Rタイプ)を選んでおくと、やり直しのたびに新品を消費せずに済む。
反対に、パネルやシャーシへの固定を結束バンド本体だけでやろうとするのも、遠回りになりやすい選び方だ。壁面・パネルへの固定にはコンベックスベース(両面テープ)やコンベックスマウント(ビス止め)といった専用の固定具シリーズが用意されている。バンドと固定具は別部品として発注する必要がある点は、リレーとソケットの関係と同じで、まとめて型番を揃えておかないと現場で片方だけ足りないという事態が起こりうる。
まとめ
ケーブルタイは単価数円の消耗品だが、屋内用と屋外用は樹脂の設計思想からして別物であり、見た目の白さや黒さだけで判断すると数年後の破断につながる。芝軽粗材のコンベックスは、標準(N)・耐候性(B)という基本軸に加え、仮止め・表示・押込・ビス止めという用途別の枝分かれ、さらに固定具までを自社シリーズとして揃えている専業メーカーだ。呼び方が「インシュロック」であっても「コンベックス」であっても実務上の支障はないが、選定の際に効くのは型番とサイズ、そして使用場所の耐候性・耐薬品性の条件である。
よくある質問
結束バンドを「インシュロック」と呼ぶのは間違いですか?
厳密には別会社(ヘラマンタイトン)の登録商標なので、芝軽粗材のコンベックスを指して使うのは正確ではありません。ただし現場用語として定着しているため、発注時に「コンベックスの」「型番は◯◯」と品番を添えれば誤解は生じません。呼び方より型番の一致が重要です。
屋外で使うケーブルタイは何を基準に選べばよいですか?
まず耐候性グレード(芝軽粗材ならBタイプ)を選び、次に結束したい束の直径がタイの結束範囲径に収まるかを確認します。耐候性タイプでも紫外線劣化はゼロになるわけではないため、屋外の恒久結束は定期的な点検を前提にするのが安全です。
コンベックスの引張強度はどこで確認できますか?
サイズごとに製品ページへ記載があります。例えばCV-100N(100mmサイズ)は引張強度98N(約10kgf)、使用温度範囲-40〜85℃、材質はナイロン66(UL規格94V-2)です。束ねる本数・重量に対して余裕のある強度のサイズを選びます。
仮止め用(AF/A/Rタイプ)と標準タイプはどちらを買えばよいですか?
配線ルートを後で調整する可能性があるなら仮止め用(着脱・再使用可能)、位置が確定していて配線し直す予定がないなら標準タイプ(恒久結束)を選びます。標準タイプは一度締めると原則切断以外での取り外しができない点にご注意ください。
芝軽粗材の製品はどこで購入できますか?
松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームからお見積り・ご購入いただけます。標準タイプ・耐候タイプ・特殊用途コンベックス・配線固定具まで、サイズ・数量をお知らせいただければ型番の選定からご相談に対応します。
- Web: 見積フォーム(24時間受付)
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