ネグロス電工の商品情報サイトで、幅200mmの直線ラックを探していたとする。SR20という型番が最初に出てくる。少し下にSD-SR20、Z-SR20、S-SR20という、頭に文字が付いた仲間が並んでいる。どれも同じ幅200mmの直線ラックだと分かるので、値段は「無地が一番安く、あとは頑丈さに比例して上がっていくのだろう」と当たりを付ける。ところが実際の標準価格を並べてみると、SD-SR20は11,100円、Z-SR20は12,900円。SDのほうが安い。そしてS-SR20だけが41,500円と、突然桁が変わったように跳ね上がる。
材質の名前だけでは、この並び順の理由は見えてこない。ネグロス電工のケーブルラック(SRシリーズ)とパイラック(PH1シリーズ)の型番を、商品情報サイトと標準価格表に基づいて分解する。
型番の骨格——属性コードは全カテゴリ共通の一枚の表に従う
結論から言うと、ネグロス電工の型番は「属性コード(省略されることが多い)+シリーズ名+数字」という構造をしている。ここで言う属性コードは、製品ごとにバラバラに決められているわけではない。標準価格表の「価格表について」ページに「品番の属性表示について」という一枚の表があり、ケーブルラックだろうとパイラックだろうと吊り金具だろうと、この同じ表に従って頭文字が決まる。
表面処理・材質の表示は次の10種類だ。AZ(溶融亜鉛アルミニウム合金めっき仕上げ)、F(粉体塗装)、N(無電解ニッケルめっき)、P(塗装)、S(ステンレス鋼)、SD(高耐食性めっき鋼板・スーパーダイマ)、TI(チタン)、X(指定色塗装)、Y(溶融亜鉛めっき鋼板)、Z(溶融亜鉛めっき仕上げ)。加えて適合ねじの表示(M10・M12・ウィットワース3/8のW3・ウィットワース1/2のW4)と、色の表示(青のB・グレーのE・緑のG・オレンジのJ・黒のK・ブラウンのM・赤のR・白のW・黄のY・マンセル値5Y7/1の5Y)が別表として続く。ただし表の脚注に「標準品が上記仕様の製品については、属性表示が無い製品があります」とある通り、その製品にとっての標準仕様であれば、コードが表に載っていても型番には現れない。
SR20の商品ページを見ると、仕様欄には「P」(塗装)と記載されている。これはSR20が標準品だからこそ表に載る内部区分であって、型番自体に「P-SR20」とは表示されない。SD・Z・Sは標準ではない選択肢なので、型番の頭にそのまま現れる——という対応関係になる。
分解——同じ骨格が、ケーブルラックとパイラックの両方で成立する
SRシリーズの数字は幅(mm)を10で割った値だ。SR20は幅200mm、SR40は幅400mm、SR80は幅800mm。商品ページの仕様欄はいずれも「W」(幅)としてそのままの数値(200・400・800)が記載されており、割り算の必要すらない。SR20の親桁厚さは1.6mm、子桁厚さは1.2mmで、これは仕様Pの標準品としての数値になる。
パイラック(一般形鋼用管支持金具)のPH1シリーズは、数字を持たない代わりに適合フランジ厚という別の軸で規格が決まっている。PH1・Z-PH1・S-PH1のいずれも適合フランジ厚は3〜16mmで共通で、変わるのは仕上げだけだ。PH1の仕様欄は「E」、Z-PH1は「Z」、S-PH1は「S」。ZとSは属性コード表のとおり、溶融亜鉛めっき仕上げとステンレス鋼を指している。標準価格は20個入りでそれぞれ92円・255円・380円だった。
もう一つ、吊りボルト回りの部材にも同じ表が効いている。チャンネル吊り金具DHU-M10の「M10」は適合ねじの表示どおり10ミリメートル並目ねじを、チャンネル中ナットZ-DHN-M10の「Z」は溶融亜鉛めっき仕上げを指している。板厚4.5mmという数値も商品ページに明記されている。ケーブルラック・パイラック・吊り金具という見た目の異なる製品群が、発注時には同じ一枚の表を介してつながっている格好だ。
驚きのある発見——「Z」は必ずしも亜鉛めっきの意味ではない
ここまでは属性コード表がきれいに当てはまる例だった。ところが全ねじボルトのシリーズを見ると、この規則が崩れる場面に出くわす。
全ねじボルトの標準品はZW3-1000という型番で流通している。属性コード表の読み方に従えば、頭のZは溶融亜鉛めっき仕上げに見える。ところが商品ページの仕様欄を確認すると、ZW3-1000の仕様は「E」だ。Sの意味を持つステンレス版は、Zの前にさらにSが付いたS-ZW3-1000という型番になっている。つまりZW3-1000というシリーズ名そのものに、すでにZという文字が組み込まれている。属性コードとしてのZ(外から付け足す亜鉛めっきの印)と、シリーズ名の一部として最初から存在するZは、見た目が同じ一文字でありながら役割が違う。
同じネグロス電工の型番の中に、Z-PH1やZ-SR20、Z-DHN-M10のように属性コード表どおりにZが働く例と、ZW3-1000のようにZがシリーズ名に埋め込まれていて表とは無関係な例が、両方とも実在する。型番の頭にZが付いているからといって、それだけで溶融亜鉛めっきだと決めつけるのは早計だということになる。
なぜそうなっているのか——推測できる部分と、資料が答えない部分
属性コード表を全カテゴリ共通にしている理由は、ある程度想像がつく。発注する側からすれば、ケーブルラックであろうと吊り金具であろうと「S」と読めばステンレス、「Z」と読めば溶融亜鉛めっきという対応を一度覚えれば済む。製品ごとに記号の意味が変わるより、はるかに発注ミスを減らせる設計だろう。
SDがZより安い理由は、標準価格表にも商品ページにも説明がない。ただしSDとZの違いが「素材の段階でめっきされた鋼板を成形するだけで済むか」「成形・組立が終わった後でまとめて溶融亜鉛の槽に浸すという追加工程が必要か」という、製造工程の違いに起因するのだとすれば、後工程が増えるZのほうが高くなるという理屈は成り立つ。とはいえ、これは一般的なめっき鋼材の知識から導ける推測であって、公式資料がその理由を明記しているわけではない。
全ねじボルトの型番になぜ最初からZという文字が組み込まれているのか、この一点については手がかりがなかった。「全ねじ」の頭文字と読めなくもないが、根拠のある話ではなく、ここは分からないと正直に書いておく。
現場での実務的な注意点
まず、属性コードを省略して発注すると、その製品にとっての標準仕様が届くという前提を忘れないようにしたい。SR20と書けば塗装の標準品が、PH1と書けばZ・Sを付けない仕上げの標準品が届く。塩害環境や屋外設置が想定される現場では、SD-・Z-・S-のどれを付けるかを図面段階で決めておく必要がある。
次に、コードの意味を製品ごとに確認する癖は付けておいたほうがよい。今回見たとおり、Zという一文字は多くの製品では属性コード表どおり溶融亜鉛めっきを指すが、全ねじボルトのように例外もある。型番の頭文字だけで即断せず、商品ページの仕様欄で実際の材質を確認してから見積もりや発注に進むのが安全だ。
耐食性を理由に即ステンレス(S)を選ぶ前に、スーパーダイマ(SD)で足りるかどうかを検討する価値もある。SR20の例では、SD-SR20はS-SR20の3分の1以下の価格だった。もちろんステンレスとスーパーダイマでは耐食性のメカニズムも耐用条件も異なるため、単純に安いほうを選べばよいという話ではない。設置場所の塩害区分や設計図書の指定を確認したうえで、過剰な仕様を避けられないかを一度検討してみる余地はある。
最後に、吊りボルト・支持金具側では適合ねじの表示(M10・M12・W3・W4)にも注意したい。古い建物ではウィットワースねじ(W3・W4)の埋め込みボルトが使われている場合があり、新しいメートルねじ(M10・M12)の金具をそのまま組み合わせられるとは限らない。現地のボルト規格を確認してから、対応する金具の型番を選ぶ必要がある。
冒頭のSD-SR20とS-SR20の価格差に戻る。SDはZより安く、Sだけが大きく跳ね上がる——この並びは、材質の頑丈さの直感的な序列とは一致しない。属性コードの一文字を読み違えたまま見積もりを進めると、必要以上に高い仕様で発注してしまう場面も、逆に耐食性が足りない標準品を発注してしまう場面も、どちらも起こり得る。
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