分電盤の予備品棚に、見覚えのある型式プレートがある。「S201-C16」。左からS・2・0・1、ハイフンを挟んでC・16という並びだ。ABB Tmaxシリーズの読み方を知っている担当者なら、この並びも似たようなものだろうと当たりを付けるはずだ。実際、その当たりはそう遠くない。ABBの技術カタログを開けば、S201-C16は「System pro M compact S200シリーズ・1極・C特性・16A」だと素直に確認できる。
同じ棚のもう少し奥、制御盤の予備品を入れた箱から、もう一枚プレートが出てくる。「S801C-C16」。さっきの読み方をそのまま当てはめれば、S8で始まって01が極数、その後ろのCがトリップ特性、16が電流——そう読みたくなる。ところが、それは半分しか正しくない。ABBの技術カタログを突き合わせると、S801C-C16の最初の「C」(ハイフンの前)はトリップ特性ではなく、遮断容量クラスを表す記号だった。トリップ特性を示す「C」は、ハイフンのあとにもう一度登場する。同じ「C」という文字が、一つの型式の中で二つの違う情報を背負っている。
ABBはSystem pro M compactのミニチュアサーキットブレーカ(MCB)について、技術カタログの中に各シリーズごとの「Ordering details」という一覧表を設け、型式・定格電流・遮断容量を対応づけて示している。以下、この一次資料に基づいて、S200シリーズとS800シリーズ、それぞれの型式の並びを一段ずつ確認していく。
S200シリーズの骨格――極数のすぐあとに、そのままトリップ特性が来る
ABBの技術カタログのOrdering details表を見ると、S200シリーズの型式は「S20+極数の数字+ハイフン+トリップ特性+定格電流」という順で組み立てられている。S201-C16を分解すると、Sはシリーズの頭文字、20は System pro M compact S200シリーズであることを示す固定部分、続く1が極数、ハイフンのあとのCがトリップ特性、16が定格電流(In)だ。
極数を示す数字は素直な規則に従っている。カタログのOrdering details表には、S201-B6・S202-B6・S203-B6・S204-B6という型式がそれぞれ並んでおり、対応する「Number of poles」欄はきれいに1・2・3・4になっている。1極ならS201、2極ならS202、3極ならS203、4極ならS204——極数がそのまま型式の3桁目の数字に現れる。ABB公式の製品ページでもS201-C16のCatalog Descriptionは「Miniature Circuit Breaker - S200 - 1P - 16 A - C - (AC) 6 kA」となっており、01の01が1極(1P)を指していることが裏付けられる。3極品であるS203-C16なら、この位置の数字が3に変わるだけで、あとの規則は変わらない。
トリップ特性のあとには、絶縁ニュートラル(中性線の開閉機構)を追加したオプション品を示す「NA」というサフィックスが付くことがある。カタログの表記では、極数欄が「1+NA」となったS201-B6NA・S201-C0.5NAのような型式が別枠で用意されており、通常のS201とは別の製品として扱われている。現物のプレートに末尾NAの文字があれば、中性線側にも開閉極を持つタイプだと判断できる。
トリップ特性B・C・D・K・Zは、想定する負荷で選び分けられている
型式の中で最も実務判断に直結するのが、ハイフンのあとに置かれるアルファベット一文字、トリップ特性だ。ABBの技術カタログには、それぞれの特性について用途の説明が付いている。
B特性は、過負荷・短絡から回路を保護しつつ、人体保護や長い配線への保護も担う、住宅・商業施設・産業設備向けの基本形だ。C特性は、突入電流の小さい抵抗性・誘導性負荷向けで、B特性よりわずかに動作を鈍くしてある。D特性になると、変圧器や放電灯のように投入時に大きな突入電流が流れる負荷を想定しており、なおさら動作を鈍くする。K特性は毛色が違う。モーターや変圧器、補助回路といった、機能上のピーク電流が定格電流の最大10倍程度まで一時的に流れる回路を対象にしており、高感度なバイメタル引外し機構によって、この種の誤動作(不要動作)を避けながら過電流域の保護を確保する。Z特性はさらに特殊で、電子回路のような小さく長時間続く過負荷・短絡を検知する用途に絞られている。
同じS201という極数・シリーズの中でも、末尾のアルファベット一文字を変えるだけで、想定している負荷の性格がまったく違ってくる。分電盤の主開閉器としてB・Cを選ぶのか、モーター回路の保護としてKを選ぶのかは、型式の見た目以上に、その先につながる負荷で決まる話だ。
S200とS200Mは、遮断容量が違う――型式では「M」の有無で見分ける
同じ極数・同じトリップ特性・同じ定格電流でも、遮断容量が異なる二つの系列が存在する。ABBの技術カタログのS 200 technical featuresを見ると、S200シリーズの定格短絡遮断容量Icn(IEC/EN60898-1基準)は6kA、S200Mシリーズは10kAとされている。
型式上の見分け方は単純で、極数の数字とハイフンの間に「M」が入るかどうかだけだ。S201-B6はS200シリーズの1極・B特性・6A・6kA品だが、S201M-B6は同じ1極・B特性・6AのままS200Mシリーズの10kA品になる。分電盤の更新工事で、既設が6kA品だったところに短絡容量の余裕を持たせたい場合、同じ極数・トリップ特性・定格電流のままM付きへ切り替えるという選定ができる、ということになる。
S800シリーズになると、文字の位置が変わる
ここまでの規則――「極数の次にそのままトリップ特性」――は、System pro M compactの中でも標準グレードのS200シリーズに限った話だ。制御盤や大電流回路向けのハイパフォーマンスMCB、S800シリーズに移ると、この規則がそのままでは通用しなくなる。
ABBの技術カタログのOrdering details表を見ると、S800シリーズの型式は「S8+極数の数字+遮断容量クラス+ハイフン+トリップ特性+定格電流」という順になっている。S801S-B0.5を分解すると、極数を示す8の次の数字は1(1極)、続くSが遮断容量クラス、ハイフンのあとのBがトリップ特性、0.5が定格電流だ。極数の位置はS200シリーズと同じ(S801=1極、S802=2極、S803=3極、S804=4極)だが、極数のすぐあとに来る文字の役割が、S200シリーズのトリップ特性から遮断容量クラスへと入れ替わっている。
遮断容量クラスの文字は、カタログの各シリーズ技術データ(Icu、AC240/415V基準)によれば次のように対応する。
- S:Icu=50kA
- N:Icu=36kA
- C:Icu=25kA
- B:Icu=16kA(カタログ目次記載)
- HV:Icu=1.5〜4kA(定格電流帯により変動)ただし定格使用電圧はAC580〜1000Vまで対応
- UP・U:カタログ目次でそれぞれ25kA・50kAに区分
ここで厄介なのが、遮断容量クラスにも「C」という記号が使われていることだ。トリップ特性にも「C」がある。両方とも実在の型式に登場する。ABBのOrdering details表には「S801C-C10」から「S801C-C32」までの一連の型式が並んでおり、これは1極・遮断容量クラスC(25kA)・トリップ特性C・定格電流10〜32Aという意味になる。ハイフンの前のCと後ろのCは、見た目こそ同じ一文字だが、指している情報は遮断容量とトリップ特性というまったく別のパラメータだ。S200シリーズの感覚のまま「ハイフンの前の文字=トリップ特性」と思い込んでS800シリーズの型式を読むと、遮断容量クラスをトリップ特性と取り違えることになる。
現場で間違えやすい点――S800HVには4極がない
もう一つ、型式の並びだけでは気づきにくい落とし穴がある。S800シリーズの各クラスは、基本的に1極から4極(S801〜S804)まで揃っているが、HVクラスだけは例外だ。ABBの技術カタログのS800HV series technical featuresには「Poles 1…3」と明記されており、S804HVという4極品は存在しない。S・N・C・Bの各クラスにS804が用意されているのを見慣れていると、HVでも同様に4極まであるはずだと考えてしまいがちだが、この思い込みは資料の裏付けを欠く。HVクラスは定格使用電圧がAC580〜1000Vまでと他クラスより高い代わりに、Icuは0.5〜125Aの電流帯で1.5〜4kAにとどまっており、高電圧対応と大容量の短絡遮断は、そもそも別の設計目標として切り分けられている。極数の選択肢も、この設計目標の違いに従っている。
発注前に確認しておきたいこと
型式(Type Code)は現物のプレートを読むための手がかりとして有効だが、実際の発注ではProduct ID(注文コード、たとえばS201-C16なら2CDS251001R0164)とEANコードのほうが照合の精度が高い。ABBの技術カタログにはType CodeとProduct ID、EANが並んで掲載されており、型式から一意にProduct IDへたどり着ける設計になっている。現物のプレートが摩耗して型式の一部が読み取りにくい場合や、S200とS800のどちらのシリーズか判断に迷う場合は、EANコードやProduct IDの数字列を優先して照合したほうが、手配ミスを避けやすい。
ABB System pro M compactの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物プレートに残ったABB System pro M compact S200・S800シリーズの型式から、極数・トリップ特性・遮断容量クラスの照合、後継品や代替品の相談まで対応している。型式の読み取りに迷う場合や、S200とS800のどちらのシリーズか判別しづらい場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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