改修現場で外した古い分電盤の中から、韓国製らしき遮断器が一つ出てくる。プレートには「ABH203c」。三菱電機のNF/NVや富士電機のBW/EWを読み慣れた目には、まずAとBのどちらまでがメーカーを示す記号なのか、そこから判断に迷う。ABがひとまとまりなのか、Aだけが何かの符号で、Bから先が本体なのかも分からない。検索窓に打ち込めば型式は照合できるが、それでは記号の意味を理解したことにはならない。
LS ELECTRIC(旧LS産電)の配線用遮断器「Metasol」シリーズは、公式カタログに「Type numbering system」という型式構成図を掲げ、MCCBとELCBそれぞれの型式がどんな順序で組み立てられているかを明示している。以下、この一次資料に基づいて型式の並びを一段ずつ確認していく。
型式の骨格——AB+クラス+フレーム+極数+シリーズ
公式カタログのType numbering systemによれば、MCCBの型式は「AB+Type+Ampere frame+Pole+Series+/Rated current」という順で組み立てられている。先頭の「AB」がMCCBそのものを示す固定の記号で、続くアルファベット一文字がType(遮断容量クラス)、その後の数字がフレームサイズと極数、末尾のアルファベットがシリーズを表す。ABH203cを分解すると、AB=MCCB、H=Type、20=フレームコード、3=極数、c=シリーズという構成になる。
ここまでは、三菱電機やABBの型式解読記事で見てきた「シリーズ・フレーム・クラス」という積み上げ方と、大枠では似ている。ところがMetasolには、他社の型式にはあまり見ない特徴が一つある。極数の数字が、型式の文字列そのものに組み込まれているという点だ。三菱電機のNF/NVでは、同じ形名の下に2極品・3極品の定格電流が並んで掲載され、極数は型式の外側で別途指定する仕組みになっている。Metasolはこの極数を、フレームコードのすぐ後ろに続く一桁の数字として型式の内側に持っている。
N・S・H・Lが分けているのは「遮断容量のランク」
Type欄に入るアルファベットは、遮断器が短絡電流をどこまで安全に遮断できるかの性能ランクを表す。公式カタログの「Marking and configuration」ページは「ABN: Economic type」「ABS: Standard type」「ABH: High capacity type」と明記しており、経済型(ABN)<標準型(ABS)<高容量型(ABH)の順で遮断容量が大きくなる。
ただし、このページの定義には含まれていないもう一段上の区分がある。125AF以上のフレームのRatings表・Ordering typesを見ていくと、ABHよりもさらに高い遮断容量を持つ「ABL」という型が、フレームごとに追加で用意されている。125AFフレームで比べると、460V時のIcu(定格終局短絡遮断容量)はH-typeが50kA、L-typeが60kAとなっており、ABHの上にABLが積まれる構成になっている。「Marking and configuration」のページ一枚だけを見て「N・S・Hの3段階がすべて」だと思い込むと、この上位区分を見落とすことになる。
もう一つ、油断しやすい点がある。N・S・H・Lという同じアルファベットが、フレームをまたぐと別の数値を指すという点だ。460V時のN-typeを比べると、50AF・60AFフレームでは14kA、100AFフレームでは18kA、250AFフレームでは26kA、400AFフレームでは37kAとなっている。S-typeも同様に、50AFで18kA、125AFで37kA、400AFで50kA、800AFで65kAと、フレームが大きくなるにつれて数値が上がっていく。同じ「N」の一文字を見て、50AFの遮断器と400AFの遮断器の性能を横並びで比較することはできない。
フレームコードと極数——「10」という数字が抱える二重の意味
Type numbering systemに添えられたAmpere frameコード表には、次のような対応が示されている。3=30AF、5=50AF、6=60AF、10=100/125AF、20=225/250AF、40=400AF、80=800AF、100=1000AF、120=1200AF。フレームコードの後ろには、2(2極)・3(3極)・4(4極)のいずれかの数字が続く。50AFフレームでABS52c・ABS53c・ABS54cという型式が並ぶのは、フレームコード「5」に極数の数字が続いているからだ。
この規則をそのまま100AF・125AFフレームに当てはめると、フレームコード「10」に極数の数字が続いて「102」「103」「104」という並びになる。ここまでは規則通りに読める。ところが、この「102」「103」「104」という同じ数字の並びが、実は2つの異なるAF区分にまたがって使われている。公式カタログのOrdering typesによれば、ABN102c・ABN103c・ABN104c(N-typeのみ)は「100AF」の製品として、定格電流(In)15〜100Aの範囲で掲載されている。一方、ABS102c・ABH102c・ABL102c(S/H/L-type)は「125AF」の製品として、定格電流(In)15〜125Aの範囲で掲載されている。
フレームコードと極数の組み合わせ自体は、N-typeでもS/H/L-typeでも同じ「102」「103」「104」だ。分かれているのは、その数字の並びに、どのTypeを組み合わせられるか、そして定格電流の上限がどこまで伸びるかという点にある。三菱電機の記事で見た「フレームの数字は定格電流ではなくグルーピングの値」という注意点を、Metasolはさらに一段複雑にしている。フレームコードが同じだからといって、それがどちらのAF区分の製品なのかまでは、型式の並びだけを追っても判断できない。組み合わされているTypeの記号まで含めて初めて、100AF品なのか125AF品なのかが定まる。
定格電流は型式の外——「/」の後ろに続く数字
型式の骨格を分解できるようになると、逆に型式の文字列だけでは決まらないものも見えてくる。Type numbering systemの図では、AB+Type+フレーム+極数+シリーズという基本型式のあとに、「/」を挟んで定格電流が続く構成になっている。125AFフレームのS-typeで、定格電流100Aの製品を指定する場合、型式は「ABS102c/100」という表記になる。
つまりABS102cという文字列そのものは、遮断器の器としての仕様——フレーム・遮断容量クラス・極数——までしか決めておらず、実際に何アンペアでトリップするかは、「/」の後ろに続く数字によって別途決まる。基本型式だけを伝えて発注すると、機能・容量帯・極数の見当は付いても、実際に手配できる一台には行き着かない。発注の際は、基本型式に加えて定格電流(In)を必ず併記する必要がある。
末尾のシリーズ記号(多くの型式で見られる「c」)については、公式カタログのType numbering system図が該当する列を「Series」と呼んでいる以上のことは、この記事で確認できた資料からは分からない。ただし観察できる事実はある。1000AF・1200AFフレームの製品は「ABS1000b」のようにbで終わり、100AFフレームのN-typeには、通常の「ABN102c(18kA/460V)」に加えて「ABN102e(31kA/460V)」という、同じフレーム・同じ極数のまま遮断容量だけを引き上げた別シリーズの製品がOrdering typesに並んでいる。シリーズ記号一文字が、単なる世代の違いだけでなく、同じフレーム内の性能違いを表すことがあるという点は、現物のプレートを読み解くうえで覚えておいたほうがよい。
漏電遮断器(ELCB)は「EB」から始まり、感度電流がもう一段続く
ここまではMCCB(配線用遮断器)の型式を追ってきたが、Metasolシリーズには漏電遮断器(ELCB)のラインナップもある。公式カタログのMarking and configurationページは「EBN: Economic type」「EBS: Standard type」「EBH: High capacity type」と定義しており、先頭の記号がMCCBの「AB」から「EB」に変わるだけで、Type・フレームコード・極数・シリーズという骨格はMCCBと共通している。
違うのは、定格電流の後ろにもう一段、情報が続く点だ。カタログのOrdering types例では「EBS32c/5/30」という表記を、「EBS 32c、Rated current 5A、Rated residual current 30mA」と分解している。つまりELCBの型式は「基本型式/定格電流/定格感度電流(漏電を検出する電流の設定値)」という2段構えのスラッシュ表記になる。MCCBの「/定格電流」だけを覚えていると、ELCBのプレートに並ぶ2つ目の数字を見落としかねない。
Metasolシリーズの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物プレートに残ったMetasolシリーズの型式から、フレーム・遮断容量クラス・定格電流・極数の照合、旧Meta-MECシリーズからの読み替え相談まで対応している。プレートの文字がかすれて判読しづらい場合や、韓国メーカー特有の表記に不慣れな場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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